産業看護職のための戦略的キャリアハック

小川明夏(おがわ さやか)さんに「産業看護職のための戦略的キャリアハック」をお話してもらいました。
聞き手はiCARE代表取締役CEO 山田洋太と、さんぽむら 堀部。
小川さんは看護師→産業看護職と戦略的に転職を実現してきました。
産業看護職を目指す皆さんが今後のキャリアプランを形成する上で参考になるハックをご紹介します。
【Profile】
小川明夏さん
大学卒業後、看護師を経験した後に産業看護職へ転職。転職一社目の整った産業保健体制のもとで多くのことを学ぶ。葛藤の末に将来を見据えて一社目と同規模の現職に転職。今現在もキャリアアップのため新しい道にチャレンジしようと模索中。

戦略的に情報を探す

さんぽむら
本日はよろしくお願いします。初めにこれまでの経歴を簡単に教えてください。

小川さん
私は看護大学を卒業した後、看護師として5年ほど勤務しました。臨床は循環器の集中治療室でした。その後、未経験で産業保健の世界に入り、一社目では2年7ヶ月ほど勤務しました。その後は同規模の現職に転職して現在に至ります。社内では健康教育や管理職研修を担当しています。

さんぽむら
産業保健の世界に飛び込まれたきっかけを教えてください。

小川さん
もともと大学生の頃から将来的には産業保健の分野に進む予定でした。大学内に専門的に産業保健を学ぶ専門のカリキュラムはありませんでしたが、可能な限り自分の将来のために有効なものを選択しました。研究室も産業保健に進むことを前提で選択しました。

山田
学生時代に産業看護職が企業で活躍する様子を想像できましたか?

小川さん
凄い成績が良い生徒は企業に実習に行けたんですよね。ただ上位2名とかでしたが(苦笑)。

さんぽむら
少なっ!

小川さん
ただ私は実習には参加できなかったので、参加できた生徒から様子を教えてもらいました。

山田
産業保健の世界への転職を考えたタイミングは?

小川さん
最初は看護師として経験を積むのは3年で終わらせようと考えていました。ただ3年が経過してみて充分な手応えを感じられなかったので、5年勤めてから転職することになりました。

さんぽむら
産業保健の世界にはどのようなルートで入ってこられたのですか?

小川さん
人材派遣会社への登録でした。最初の方は全然、面接に受からなかったです…!何社、落ちたか覚えていないくらい(苦笑)。最終的にはコツを掴んで複数社に合格して、その中から一番行きたいところを選択しました。

山田
落ちた時と、合格した時では何が違いましたか?

小川さん
面接慣れが大きかったですね(笑)。数をこなしていくと企業が求めている人材像が見えてきました。後は自分のできる事と、企業のニーズが合致するところを中心に面接を重ねていったら合格率が段違いに増えました。

山田
企業側のニーズを事前に把握しておくのは効果的ですよね。ちなみに派遣会社は企業側が求めるニーズは教えてくれなかったですか?

小川さん
まちまちでしたね…。親身になってくれるところもあれば、まったくアドバイスをくれない所も。企業側のニーズは自分で調べました。

さんぽむら
企業側のニーズは、なかなか外部に伝わりにくい印象なんですが、どのような方法で調べましたか?

小川さん
まずはひたすら企業のHPを確認しました。並行して産業保健に携わっている仲間に各企業の内情を共有してもらって面接に挑むか判断しました。もし今から転職するとしたらSNS上の産業看護職のネットワークに加入して、興味のある企業に携わっている方に質問するかもしれません(笑)。

山田
凄く戦略的な転職ですね…!

さんぽむら
やっぱり情報網は大事ですよね。産業看護職になられてからも転職されていますが、理由を教えてください。

小川さん
一社目も環境は凄く良かったです。ただ非正規雇用でしたので、正社員待遇を求めて転職しました。

さんぽむら
なるほど、雇用形態も様々ですよね。現職に転職してみていかがでしたか?

小川さん
一社目と全然違いました。面接時からある程度は違いを把握していましたが、入社してから改めて実感しました。一社目が攻めの産業保健とするなら、現職は堅実といった印象でした。一社目の方が性格的には合うのですが、条件面で現職に満足しています。

さんぽむら
やっぱり企業によって全然違うのですね…!
現職への転職活動の際は働きながらかと思いますが情報はどのように収集されましたか?
現職への転職活動の際は働きながらかと思いますが情報はどのように収集されましたか?

小川さん
狙い撃ちです。まず自分が入りたいと思っている企業を複数、リストアップしておきました。何れかの企業が求人を出したら即座に応募ができるように準備しておきました。

山田
凄いですね…!リストアップに入れた企業の条件は?

小川さん
まず一社目と同規模、同業種であること。加えて産業保健体制もしっかり整っていることですね。

山田
産業保健体制の充実度はどのような把握されましたか?なかなか、公にされていない印象がありますが。

小川さん
公の場で人事/総務の方が話されていることもありますよ。

さんぽむら
なるほど!入念な調査をされていたのですね。

山田
転職って2パターンあるじゃないですか。1つ目がある程度、条件があえばとりあえず応募する。
2つ目は転職エージェントに託して条件が悪くなければ転職する。小川さんはこれらと違いますよね。戦略的に動いている。
2つ目は転職エージェントに託して条件が悪くなければ転職する。小川さんはこれらと違いますよね。戦略的に動いている。

小川さん
能動的にアンテナを張っていたかとは思います。今は調べるためのIT/WEBサービスも豊富ですよね。

山田
Googleアラートと相性が凄く良いでしょうね。「◯◯ 求人」のような設定したキーワードがWEB上で更新があればすぐに知らせてくれるサービスです。私は自分の担当するクライアントは登録しておいて最新の情報は必ずチェックするようにしています。
ITを積極的に活用する

山田
新たな知識やスキルを学ばれる際はどのようにされていますか?

小川さん
オンライン上の産業保健のコミュニティに入っているので勉強会にひたすら参加して漁っています。(笑)
参加されている先生方に親切に教えていただいてます。
参加されている先生方に親切に教えていただいてます。

さんぽむら
TwitterなどのSNSはいつ頃から活用されていますか?

小川さん
コロナ渦に突入する直前からですね。運用しはじめてからは1年ほどです。

山田
なるほど!コロナ渦に突入する前はどのようにして学ばれていましたか。

小川さん
現実世界の勉強会で中心でしたね。もっとも今はコロナ渦なのでオフラインで勉強会を開催するのは難しいですが…。

さんぽむら
専門家同士の人脈作りもオフラインからオンラインに切り替わってきてますよね。これまで参加できなかった地方の方はオンライン中心なってからのほうが参加できる機会が増えたと聞きますよね。

山田
確かに。地方の産業医の先生方もコロナ渦以前は勉強会の参加には苦労されてましたからね。開催されるのが関東/関西の大都市部だけだから参加してたくてもできない状況でしたよね。

小川さん
これまでは情報の格差もありましたよね。でもオンラインで完結できるものが増えれば地理による障壁もなくなりますね。転職されたい方や、何か悩まれたる方はオンライン上の勉強会に積極的に参加したほうがよろしいと思います。悪い人はいないですし。
チャンスを戦略的に創出する

さんぽむら
今後のキャリアプランをお聞かせください!

小川さん
転職は考えていませんが、今の会社に在籍したまま自分が出来ることを広げる方法を模索しています。足りないことの穴埋めと同時に自分の強みが欲しいと思っているので。2021年の4月から東大SPH(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻)に進学しました。

さんぽむら
お〜〜!進学されたきっかけは?

小川さん
チャンスが巡ってきたからです。元々は大学院にいつかは進学したいと考えていました。昨年にコロナ渦に突入し、説明会をオンラインで聞いてた時に入試試験の大幅な変更が発表されました。その時に「これはチャンスだ」と思って受験しました。

山田
なるほど!狙っていたわけですね (笑) 。戦略的にキャリアを作るってこういうことかもしれないですね。

さんぽむら
仕事は休職されましたか?

小川さん
私の場合は進学のための休職をまだ使えません。辞職も仕方がないと考えていましたが、上司に相談したら「行けるようにサポートしてあげる」と言ってもらえたので両立させています。
テレワークでの在宅勤務と、オンラインで大学院の授業を受けています。狙ったチャンスは逃しません(笑)。
テレワークでの在宅勤務と、オンラインで大学院の授業を受けています。狙ったチャンスは逃しません(笑)。

さんぽむら
めっちゃタフですね。大学院ではどのようなことを学ばれる予定ですか?

小川さん
職場のメンタルヘルスに強い教授がいらっしゃるところなので。その教授の元で学びたいです。もうチャンスを逃さず、飛び込みました(笑)。

山田
戦略的に行った情報収集力が作り出したチャンスですね!

小川さん
何か行動を起こすにも大学院で研究したという実績があれば取り組みやすくなります。
今後は現職での経験+大学院で学んだことを活かしていければと考えています。
今後は現職での経験+大学院で学んだことを活かしていければと考えています。
未来から逆算して市場価値のある存在に

山田
今後のビジョンについて聞かせてください。

小川さん
私は市場価値のある産業看護職でいたいと考えてます。今後は二極化していくと考えています。
1つ目が企業ニーズに合致させながらも自分らしく活躍できる専門家。
2つ目が企業側に使われるだけの専門家。前者の方が圧倒的に市場価値がある産業看護職ですよね。
1つ目が企業ニーズに合致させながらも自分らしく活躍できる専門家。
2つ目が企業側に使われるだけの専門家。前者の方が圧倒的に市場価値がある産業看護職ですよね。

さんぽむら
良い言葉ですね。

山田
凄く参考になるくらい戦略的に行動されてますが、自分の強みはどのようなタイミングで気づかれましたか?

小川さん
私の場合、産業看護職としての一社目の時です。産業医の先生方に凄く恵まれていたから、率直にフィードバックくださいました。

さんぽむら
一緒に仕事してる時にフィードバックもらえるのはいいですね。

小川さん
ストレングスファインダーをやってみても良いかと思います。

山田
弊社でも会社で経営層に近い人は全員、やりました。そんなに値段が高いわけではないですしね。

さんぽむら
強みを知り、活かして2極化の中で勝ち抜けと(笑)。

山田
最後に、分岐点に立っている人たちにメッセージをお願いします。

小川さん
私は何かに迷った時は自分の5年後、10年後の未来から逆算して最適だと思える方を選択しています。転職にしろ、進学にしろ、皆様も未来から逆算して自分がなりたいと思う姿に近づける方を選択されてみるとよろしいと思います。

さんぽむら
ありがとうございます!

山田
次は働きながら勉強する苦労などをお聞かせください(笑)。