産業保健師向け
2022年7月7日 更新 / 2021年10月28日 公開

【後編】人事との協働がカギ!時代のニーズを捉えてキャリアを再考する『変わっていく時代のニーズにどう対応するか』

【後編】人事との協働がカギ!時代のニーズを捉えてキャリアを再考する

独立産業保健師として活躍中の後藤みずえ氏と、iCARE代表取締役CEO 山田洋太が『人事との協働がカギ!時代のニーズを捉えてキャリアを再考する』をテーマに前後編に分けて対談を行いました。前編では『バランス感覚の重要性』をキーワードに対談を行いました。引き続き後編では『 変わっていく時代のニーズにどう対応するか』をキーワードに対談を行います。

新しい情報を仕入れるアンテナ

山田
山田
前半に引き続きよろしくお願いします。後編では『 変わっていく時代のニーズにどう対応するか』をキーワードにお話を進めていただければと思います。

時代が変わるとこれまでの王道の働き方に変化/応用を加えていかないといけないと思うんですよ。
後藤さん
後藤さん
それができなければ時代のニーズに応えられなくなりますしね。
山田
山田
ニーズって仕事で使う道具にも及ぶ場合もありますよね。
例えば企業から「データのやり取りはクラウドでお願いします」って言われた時、「紙でしかできません…!」ってなったら仕事にならない。後藤さんは新しい情報や方法論をどのように仕入れてますか?
後藤さん
後藤さん
新しいことはTwitterなどのSNSに散らばっています。ただ情報の出処が民間の場合もあるのでチェックする必要がありますが。やっぱり頼りになるのは信頼の置ける学会、組織が発刊する機関紙ですね。定期購読してます。ちゃんとした人たちが書いた言語表現に触れておくのは大事かと思って。
山田
山田
どのような種類の機関紙を定期購読されていますか?
後藤さん
後藤さん
まずは自分のメインになる産業保健師に関するもの。それだけだと偏ってしまうので公衆衛生学会、日本公衆衛生看護学会も併せて目を通しています。さらに取引のある企業の人事/総務の方にお願いして労政時報も読ませていただいてます。
山田
山田
僕も色々な機関紙を家に届くようにしてるんですよね。届くと一通りパーっと見る。自分の興味あるとこだけ読んで終わるんだけども。それだけでも大体の時代の流れって見えますよね。
後藤さん
後藤さん
うんうん、興味がある所が出てきたら更に深堀りすればいいですしね。
山田
山田
後藤さんが自身のメイン以外の事柄もチェックしているのは素晴らしいですね。労政時報って後藤さんの専攻から離れていると思っていて。そこをチェックしようと思ったきっかけは?
後藤さん
後藤さん
我々がサービスを提供する上で主役ってやっぱり「企業」です。その主役たちが「何を考えているのか」「何に困っているのか」を知りたかったんです。面白いですよ。時間があるとずっと見ちゃいます。
山田
山田
専門家の皆様は後藤さんのように踏み込んでもらいたいです。

王道を学び、本質を知る必要がある

山田
山田
時代のニーズは常に変わりますが、やっぱり王道って凄く大事だと思うんですよね。
後藤さん
後藤さん
王道って普遍的なものですからね。もしかしたら今の私に最も影響を与えてるのは大学院修士課程で学んだ王道だと思います。王道って根本/本質に繋がるじゃないですか。根本/本質を考えられないと提供するあらゆるサービスを適切に運用できないと思います。いつでも根本に立ち返るために手元に公衆衛生看護学の教科書を二冊置いてます。王道に立ち返ることができるからこそ、顧客からのニーズ/デマンドを探っていけます。
山田
山田
王道って顧客から寄せられる「Why」に応えるためにも必要ですよね。例えば健康診断を開催する場合、専門家はしっかりと「なぜやるか」を答えられる必要があります。「法律で定められているから」って答えて欲しくないんですよね。
後藤さん
後藤さん
あぁ…それをやると苦しさが出るんですよね…。法律で定められているなんて百も承知ですから。深い回答ができないとしっかりした関係性が作れないですよね。
山田
山田
言われた方も凄く残念な顔しますよね・・・。そうじゃなくて、その奥に行って欲しい。もっと具体的な必要性や、効果を話して欲しい
後藤さん
後藤さん
なんか今、リアルな感情が込もってる(笑)。
山田
山田
実際に見たことありますよ。たまたま人事/総務の先輩と後輩の会話を耳にしたんですよ。後輩が先輩に健康診断を行う理由を質問したら「法律に書いてあるから」って答えていて…。後輩が非常に残念な顔をしてたんですよね…!これで「人事/総務の仕事ってつまらない…」って思われてしまったら残念です。
後藤さん
後藤さん
自分の言葉で説明できるようにならなければ、本質には近づけないですよね。だからこそ王道を学び、根本/本質を知る必要がありますよね。

王道を時代に合わせて変化させる

山田
山田
王道も大事なんだけどそれを踏まえてお化粧直しする応用力。「How」って大事だと思うんですよ。
後藤さん
後藤さん
時代のニーズに合わせて王道と呼ばれるノウハウを生まれ変わらせる必要がありますしね。今までに生まれたノウハウは、5年後には変わりますよね?
山田
山田
だいぶ、変わるでしょうね。まず、そのノウハウを作り出したベテランが引退して居なくなっていく。
後藤さん
後藤さん
50代とか60代のベテランの方々が引退した時に、これまでのノウハウをそのまま使うのは難しいですよね。今後を引き継ぐ若手がノウハウをどのようにお化粧直しするのか興味深いです。
山田
山田
「何故それをやる必要があるのか」と言った自問自答を繰り返しながら本質を理解して、時代の変化に合わせるために「How」の力を発揮していくのでしょうね。
後藤さん
後藤さん
多分、私達くらいの世代って頭が固まり始めてると思うんですよね。
山田
山田
僕ら、オーバー40ですものね(笑)。
後藤さん
後藤さん
柔らかい頭を持った若手たちが色々なアイデアを出しながら変化させていって欲しいです。20代30代をもっと応援してやろうよって。
山田
山田
尻拭いは我々がすればいいですしね。若手たちが時代の変化に一番、適応できますからね。
後藤さん
後藤さん
新しい「How」が誕生する可能性もありますしね。どんどん背中を押してあげたいです。時々、蹴るかもしれないけど(笑)。
山田
山田
でもベテランの方々は変化に抵抗ありそうだな(笑)。
後藤さん
後藤さん
何年もかけて作り上げてきた自信があるしね。
山田
山田
もちろん、ベテランの方々が作り上げてきた物にはこだわって欲しいです。本質は変わらないし。
ただ変わっていく時代のニーズへの合わせ方は、20代30代の「How」で生まれ変わらせなきゃいけない。
ベテランの経験と若手の発想がうまく組み合わさると、時代にマッチした強力な取り組みができるんだろうね。
後藤さん
後藤さん
もうこれからは人材も潤沢じゃないですからね。少数で上手くやる方法を考え出さなきゃいけない。若手たちが課題解決を考える時間を作って渡してあげたい。
山田
山田
我々は時の経過と共に最先端ではなくなっていくから。本質を教えたら、若手に託した方が良いと思います。

限界を見極め、自分自身を知る

後藤さん
後藤さん
後は「自分はここまでしかできない」って限界を把握しておく事が大事かな。嘘ついちゃいけない。ここから先は違う専門家に任せるべきだとか。
山田
山田
自分の限界ってどのように定めますか?背伸びして、挑戦することもあるでしょう?
後藤さん
後藤さん
背伸びするときもありますね。背伸びする時は、自分自身と長時間、対話しています(笑)。
山田
山田
「できるから!できるから!私ならできる!」みたいな?(笑)。
後藤さん
後藤さん
ううん、感情だけでは判断しません。「自分がちゃんと責任を持ってできるか」「自分の権限を越えてしまっていないか」「仮に資格は持っていたとしても本当にできるのか」など自分自身と対話を重ねた上で背伸びします。
山田
山田
自分の限界を見定めるため、とりあえずやってみるのはありですか?
後藤さん
後藤さん
自分が責任を取れる範囲ならばいいんじゃないかな。挑戦するときって背伸びしてることを凄く意識しているから案外、上手くいくかもしれないですしね。自分が傷つくのは問題はないですし、私もたくさん失敗もしてます。上手く行かなければ凄く凹むんだけど、そこから始めればいい。
山田
山田
後藤さんが失敗した時のエピソード、聞かせてください(笑)。
後藤さん
後藤さん
セミナー/研修を開催した際に調子に乗ってたから足元をすくわれたことがあります(笑)。
山田
山田
僕も経験あります。セミナーとか研修って準備が全てじゃないですか。慣れてくると、準備を怠るんだよね。そうすると足元を「スコーン!」ってすくわれるんだよね。
後藤さん
後藤さん
そうなんです。大事なところを忘れちゃったりね(苦笑)。でも挑戦した上での失敗だから色々と発見もありました。失敗した原因の振り返りから、自分のできる範囲が把握できますしね。そこで把握した範囲の中で企業から寄せられる新しいニーズに応えていく。
山田
山田
やっぱり経験しながらさじ加減を見ていくんでしょうね。
後藤さん
後藤さん
新しいことにチャレンジしていかないと時代に追いつかなくなっちゃう。ちょっとずつ小さいことから試させてもらうのがいいでしょうね。後は自分がやる意義を説明できないんだったら、取り組むべきことではないのかも。
山田
山田
わかる、意義を説明できないと内容が浅くなるんだよね。
後藤さん
後藤さん
そうそう。ちゃんと入り込んでないので無理が生じるのはよくないですね。こんなところでしょうか。
山田
山田
本日はありがとうございました。

執筆・監修

  • 後藤みずえ
    このテーマを話した人
    後藤みずえ
  • さんぽむら
    この記事を書いた人
    さんぽむら
    さんぽむらは、「産業看護職の価値を高める」コミュニティ。
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