【前編】人事との協働がカギ!時代のニーズを捉えてキャリアを再考する 『バランス感覚の重要性』

独立産業保健師として活躍中の後藤みずえ氏と、iCARE代表取締役CEO 山田洋太が『人事との協働がカギ!時代のニーズを捉えてキャリアを再考する』をテーマに前後編に分けて対談を行いました。
二人は以前にも『独立産業保健師に聞く「自分らしい価値」を出すには?』をテーマに対談を行っています。
前編では『バランス感覚の重要性』をキーワードに対談を行います。
担当者はバランス感覚を見ている

山田
本日はよろしくお願いします。前半は『バランス感覚の重要性』をキーワードにお話しいただければと思います。
産業看護職って、専門家としての正解に忠実に従いやすいと思うんですよ。だけどその正解をストレートに企業に伝えて上手くいくかというと、多くのケースでNO。そこで企業との折り合いをうまくつけるために重要なバランス感覚を後藤さんにお聞きしたいと思います。
産業看護職って、専門家としての正解に忠実に従いやすいと思うんですよ。だけどその正解をストレートに企業に伝えて上手くいくかというと、多くのケースでNO。そこで企業との折り合いをうまくつけるために重要なバランス感覚を後藤さんにお聞きしたいと思います。

後藤さん
私、バランス感覚は自信あります(笑)。お付き合いのある企業の人事/総務の担当者から「後藤さんってバランス感覚が良いよね」って言っていただいたことがあります。やっぱり担当者はバランス感覚を見ていますね。

山田
素晴らしい(笑)。僕は様々な専門家を企業に紹介してきましたが、担当者から信頼されている方ってやっぱりバランス感覚が優れてます。

後藤さん
企業にサービスを提供する際、やっぱり専門家としては取り組んでもらいたい課題もあります。だけどゴリゴリに押し通そうとすることはしませんね。「少しで大丈夫なので◯◯をできませんか?」と言ったかたちをとることで相手に気づきを与えます。

山田
なるほど。担当者から求められている期待や役割を満たしつつも、上手に課題に気づかせてあげられるように導くんですね。

後藤さん
そうですね。ちゃんと気づかせてあげられていればいいですけど(笑)。
対話でバランス感覚を確立する

山田
企業が専門家の担当できる範囲を把握しきれてない場合って、後藤さんはどのように対応していますか?

後藤さん
それぞれの専門家の役割やできない理由をしっかりと説明します。単に「NO」って回答は良くないです。ニーズがあって聞いてくれただけですしね。それなら理由も伝えたほうが良いと思います。邪険にする必要はないですね。

山田
ニーズって言えば「採用時の不調者を見極めたい」ってオファーって来ませんか?

後藤さん
私のところにはまだ来てないけど。

山田
仮に後藤さんのところに来たらどのように対応しますか?

後藤さん
「意味あるの?」って言ってしまいそう(笑)。

山田
でも顧客からのニーズですよね?

後藤さん
まず理由を尋ねます。採用時に不調者を見極めたいとのことですから、何か現在進行系で課題が発生しているはずですよね。相手の状況を細かく聞いた上で、問題解決できる提案をすることになるでしょうね。単に「NO」って回答では、担当者との適切なバランス関係を維持できませんね。

山田
後藤さんは自身の中心領域の産業保健以外のことでも、寄せられたニーズに対しても対話を重ねていくことで、何らかの方法で応えるですのね。
企業との間のバランス感覚を確立するのに対話って大切ですよね。対話を通して問題の本質に気づきを得ることも。
企業との間のバランス感覚を確立するのに対話って大切ですよね。対話を通して問題の本質に気づきを得ることも。

後藤さん
凄く上手にまとめてくれました(笑)。本当その通りです。じっくりと対話を重ねれば、問題の本質が別にある事を発見することもありますからね。仮に最終的に行き着く場所が代わったとしても確かな満足があると思うんですよね。バランス感覚を養うために対話力は大事ですね。
適切なバランス感覚で距離を保つ

山田
業務中にイラッとすることってありませんか?

後藤さん
ありますよ。「何年、同じことを言ってるんだろう!」とか(笑)。
でも戦いませんよ。もちろん「言わなかったじゃん」って言われるのを防ぐために毎回、担当者にも課題は共有しますけど(笑)。
なぜ、できないのかを対話を重ねて考えます。物事を細かく分けながら課題の解決を考えていけば冷静に対策を立てることもできます。今すぐ取り組まなかったとしても未来は分かりませんからね。
でも戦いませんよ。もちろん「言わなかったじゃん」って言われるのを防ぐために毎回、担当者にも課題は共有しますけど(笑)。
なぜ、できないのかを対話を重ねて考えます。物事を細かく分けながら課題の解決を考えていけば冷静に対策を立てることもできます。今すぐ取り組まなかったとしても未来は分かりませんからね。

山田
健康行動の指導にもよく似ていますね!例えば糖尿病の方に現状の生活を続けた場合に発生するリスクの説明と、改善方法の提案をします。でも「あれはダメ!◯◯を△△だけ食べなさい!」って押し付けるのではなく、本人がやりたい形で支援していく。説明の上で相手が従わない場合でも、相手の生き方を尊重します。
だけど1年後や2年後とかになるかもしれませんが、相手が気づいてくれて行動変わることもあります。相手の行動変容を諦めないんだけど、諦めるみたいな。一度引いて適度な距離感を持って見守るバランス感覚って大事ですよね!
だけど1年後や2年後とかになるかもしれませんが、相手が気づいてくれて行動変わることもあります。相手の行動変容を諦めないんだけど、諦めるみたいな。一度引いて適度な距離感を持って見守るバランス感覚って大事ですよね!

後藤さん
グレーな感じ(笑)。凄く大事ですね。

山田
相手が戻ってきたときにちょっと気分がアゲアゲになりますよね。「ほら言ったじゃん」って。準備万端だからね。

後藤さん
これどうぞって(笑)。

山田
バランス感覚ってゼロイチじゃないですよね。ただ相反するじゃなく、いつの日か気づいてくれるのを待って一度引いて適度な距離感を持って見守るみたいな。もちろん、必ずしも相手が気づいてくれるとは限りませんが。

後藤さん
本当、その曖昧さ。曖昧さを自分が楽しめるかとか、何か曖昧さに耐えられるっていうか感じなのかな。

山田
そういう意味では期待するけど、期待しないみたいなものですね。押し付けないっていうことですね。

後藤さん
本当に押し付けない。それは健康経営のサポートでも思いますけど、押し付けはデメリットしかない。専門家の分析だからって押し付けちゃうと、あまりハッピーにならないですね。
論理と感情をバランス良く持つ

山田
企業へ提案を出す時って色々なパターンで採用されますよね。全面的に受け入れられる場合もあれば、一部分だけが採用されたり、何も受け入れられなかったり。この違いが何で生まれるか考えることがあります。

後藤さん
まず提案したものそのものが良くなければ相手に「いいね!」って思ってもらえないですよね。担当者が専門家から出す提案をどのような形で受け入れるにしても「良いことだけど、導入するのが大変なんだよね…」というのが彼らの本音だと思います。社内調整もありますし。まずそこを理解する必要があります。

山田
そうですよね。会社を全部、動かすことになりますしね。

後藤さん
担当者は私達が見てるよりより広い分野を担当しなきゃいけないです。社内の根回しも必要ですしね。

山田
その通り!簡単なことじゃないですよね!本当は我々、専門家が頑張るためのエネルギーを担当者に渡してあげないといけませんよね。「大丈夫、私も同席するから!」みたいな。

後藤さん
そうそう(笑)。

山田
やっぱロジカルと、エモーショナルの両方をバランス良く持ってないと、人の心を動かせないですよね。

後藤さん
本当にそうと思います。

山田
担当者を心から応援したい。この想いが最終的に必要になると思います。

後藤さん
もの凄く必要ですよね。人事/総務の中で担当者を務める方って割と良い地位にいるから、弱音を吐けない。でも結果を出さなくてはならない。そんな立場の人の応援できるのって、専門家の私達くらいですよね。

山田
僕は上司がいる場面では、担当者をベタ褒めしたこともありますよ。

後藤さん
あ〜、私も凄くやります!

山田
担当者がその場に居て嬉しくて仕方ないような感じにしちゃう!担当者の評価が高まるようにしてあげますね。彼らは凄く頑張ってますから。でも社内での評価のプロセスは見えない。

後藤さん
彼らのおかげでどれだけ助かってるかっていうのは多分、社内では数値化されないんですよね。だから意図的にお伝えする。嘘はついてないですし。

山田
そう、何回もやる。チャンスがあれば何回でもやる。ここらへんで前半を終わりましょう。