健康指標として見るワーク・エンゲイジメントとは?生産性・採用力強化のために

2020年9月28日 更新 / 2020年4月22日 公開
ストレスチェックで組織改善

社員の生産性を上げたい、従業員満足度を高めて定着率を上げたい、など、人材マネジメントに悩んでいる方、多いのではないでしょうか。
そんな悩みを解決する新しい概念が、ワーク・エンゲイジメントです。

ワーク・エンゲイジメントは、「社員のいきいき働いている状態」を見える化する指標です。ワーク・エンゲイジメントが高い社員は、健康的で、生産性やサービスの質も高いことが分かっています。

今回は、多くの企業が注目するワーク・エンゲイジメントについて、なぜ注目されているのか、企業でどう活用していけるのかをご紹介します。

ワーク・エンゲイジメントは、健康経営や産業保健の観点でも広く注目されています。基本を抑えて、戦略的な人材マネジメントに活用してみてください!

ワーク・エンゲイジメントが企業にもたらすメリット

多くの企業は、なぜワーク・エンゲイジメントに注目するのでしょうか?

それは、ワーク・エンゲイジメントを高めることで、社員自身と経営の両方にメリットが生まれるからです。[1][2]

社員のワーク・エンゲイジメントが高いと、社員が健康的になり、生産性向上や離職防止、サービスの質の向上など、様々な経営的メリットに繋がります。

図1.ワーク・エンゲイジメントが高い効果

社員の健康へのメリット

ワーク・エンゲイジメントが高めると、こころと身体が健康的になります。ワーク・エンゲイジメントを高めるメリットの例です。

  • ストレスが低い(心理的ストレス反応)
  • 抑うつ感が低い
  • 睡眠の質が良い
  • ウェルビーイングが高い(生活満足度、従業員満足度)
  • 自律心臓活動が健康的
  • ストレスホルモンが適切に制御される(コルチゾール)
    ※括弧内は産業保健上の指標

経営指標(人件費や労災等)へのメリット

社員がいきいき働くことで、経営的にもメリットが生まれます。社員のワーク・エンゲイジメントが高いと、このようなメリットがあります。

  • 仕事のパフォーマンスが高い
  • より良い人間関係を築ける
  • 病気が原因で長期休業になるリスクが低い
  • 離職意思が低い
  • イノベーティブで、クリエイティブである
  • サービスの質が高い
  • ミスが少ない

社員がいきいき働く職場にしたい!という会社はもちろん。人件費を抑えたい、生産性を上げたい、仕事に積極的に取り組んでもらいたい、といった課題感をもつ企業も、ワーク・エンゲイジメント向上に取り組んでいるのです。

では、ワーク・エンゲイジメントとはどういった概念なのでしょうか。

ワーク・エンゲイジメントの定義

ワーク・エンゲイジメントは、一般的にこのように定義されています。

「ワーク・エンゲイジメン トは,仕事に関連するポジティブで充実した心理状態 であり,活力,熱意,没頭によって特徴づけられる。 エンゲイジメントは,特定の対象,出来事,個人,行動などに向けられた一時的な状態ではなく,仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」。[3]

簡単に言うと、仕事に熱中して前向きに働いている状態のことです。

活力、熱意、没頭の3つがそろっていることを、「ワーク・エンゲイジメントが高い」と言います。[4]

活力:「仕事から活力を得ていきいきとしている」状態
熱意:「仕事に誇りとやりがいを感じている」状態
没頭:「仕事に熱心に取り組んでいる」状態

つまり、ワーク・エンゲイジメントが高い人は、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て、いきいきとしています。

ワーク・エンゲイジメントを高める方法

ワーク・エンゲイジメントはどうすれば高くなるのでしょうか?ワーク・エンゲイジメント向上に影響する要因と、その要因にアプローチする方法をご紹介します。

ワーク・エンゲイジメントの規定要因

ワーク・エンゲイジメントを高める要因(規定要因)は、「組織/仕事の資源」と「個人の資源」の2つです。

(図2.ワーク・エンゲイジメントを高める要因[3]島津明人 職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント ストレス化学研究 2010,25,1-6をもとに作成)

組織/仕事の資源とは、社員に影響を与える周囲の環境のことです。

仕事上のストレスを軽減して、個人の目標達成や自己成長を促す効果があります。例えば、上司からのパフォーマンスに対するフィードバックや、企業や周囲の人たちからの支援、自分の仕事における裁量権、報酬や承認などがあります。

個人の資源とは、社員が自分自身をどう評価しているかです。

自分がまわりの環境をコントロールする能力や精神力をもっている、という自己評価になります。「自分はこれができる」という自己効力感を高めたり、自尊心や楽観性、積極的に物事を対処する姿勢などを身につけることが大切です。

会社の組織/仕事の資源や、従業員の個人の資源を高めることで、ワーク・エンゲイジメントは高くなっていきます。

企業が実践できる取り組み

実際に企業ができる取り組みには、職場環境改善や研修があります。「組織/仕事の資源」と「個人の資源」を高めることを目指します。

職場環境改善

ストレスチェックの集団分析で推奨されている職場環境改善は、ワーク・エンゲイジメント向上の大きなチャンスです。職場環境改善の詳細はこちら

ストレスチェックでは、「組織/仕事の資源」を測ることができます。次に紹介するワーク・エンゲイジメントの尺度で効果を測りながら、「組織/仕事の資源」を高める職場環境改善を進めていきましょう。

ジョブ・クラフティング

仕事の取り組み方や捉え方を工夫することで、ワーク・エンゲイジメントを向上させる方法です。研修プログラムがあり、徐々に多くの企業で実施されてきています。実施マニュアルはこちらです。

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)

組織の良いところに注目して、従業員どうしの対話によって組織の良いところを伸ばしていこうとする取り組みです。 AIの概要はこちらをご覧ください。

ワーク・エンゲイジメントを測る尺度

自社のワーク・エンゲイジメントはどの程度なのか、全国平均と比較して高いのかを調べるためには、社員にワーク・エンゲイジメントのアンケート紙を配り、答えてもらいます。

有名なアンケート用紙が2つあるので、使いやすい方を選びます。自社の社員がどれだけいきいき働いているのかを把握したり、取り組みの効果を検証したりする時に、活用してみてください。

(ワーク・エンゲイジメントの全国平均はこちらを参照[4])

ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES)

Utrecht Work Engagement Scale(UWES)は、ワーク・エンゲイジメントの最も有名な尺度です。

活力、熱意、没頭の3つの要素について、それぞれ測ることができます。日本語版は、3項目、9項目、17項目の3種類があります。個人ごとに全項目の平均値を出して、ワーク・エンゲイジメントの点数とすることが多いです。

尺度のダウンロードは、慶応義塾大学島津研究室のウェブサイト(こちら)からできます。

新職業性ストレス簡易調査票(新BJSQ)

ストレスチェックで広く使われている職業性ストレス簡易調査票(BJSQ)の、新しいバージョンです。ワーク・エンゲイジメントについての質問が2項目あり、その2つの平均値がワーク・エンゲイジメントの点数になります。

従来のストレスチェックの質問紙に替えて使うことができるので、UWESよりも手軽に使うことができます。現行のストレスチェックに、ワーク・エンゲイジメントの2項目だけ追加するのでも良いでしょう。

ダウンロードは東京大学大学院精神保健学分野のウェブサイト(こちら)からできます。

ワーク・エンゲイジメントと他の概念の関係性

ワーク・エンゲイジメント以外に、社員の働く状態を表す概念にどんなものがあるのでしょうか。ワーク・エンゲイジメントと関連する概念には、ワーカホリズム、燃え尽き症候群、リラックスがあります。

社員の4種類の働く姿勢との関係性

仕事に取り組む姿勢は、どれだけ快く取り組んでいるか、どれだけ活発的に活動しているかによって、4つに分類されます。

ワーカホリズム

「仕事から離れた時の罪悪感や不安を回避するために仕事をせざるをえない」状況を指します。ワーク・エンゲイジメントが「I want to work」という姿勢なのに対して、ワーカホリズムは「I have to work」という否定的なモチベーションで仕事をしています。

燃え尽き症候群(バーンアウト)

ワーク・エンゲイジメントの正反対の概念です。一生懸命仕事を頑張りすぎて、こころと身体が疲れてしまった状態です。健康に悪影響があり、離職意思も高まるため、企業は燃え尽き症候群にならないように注意する必要があります。

リラックス

職務満足感が高く、リラックスして仕事をしている状態です。社員への負荷は少ない一方、活動水準が低くなっています。

(図3.ワーク・エンゲイジメントと関連概念の関係性[3]島津明人 職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント ストレス化学研究 2010,25,1-6をもとに作成)

ワーク・エンゲイジメントとワーカホリズムを見分ける必要性

ワーク・エンゲイジメントとワーカホリズムは、どちらも仕事に熱中しているのは同じです。企業としては活動水準が高いのは良いことのように見えます。

しかし、ワーク・エンゲイジメントなのかワーカホリズムなのかで、2年後の健康状態が全く違ってしまいます。ワーカホリックな社員は2年後に不健康になり、生活満足感や仕事のパフォーマンスも低くなってしまうのです。

一方で、ワーク・エンゲイジメントな社員は、2年後に健康度や生活満足感、仕事のパフォーマンスが高くなります。

(図4.ワーク・エンゲイジメントとワーカホリックそれぞれが高い人の2年後の健康アウトカム[5]Shimazu et al. (2015) IntJ BehavMed, 22, 18-23を基に作成)

活動水準が高くても、「働かないといけない」という緊迫感で働いている社員には、注意が必要です。周囲からは、いきいき働いているように見えますが、体調不良に陥る危険があります。

管理者や人事は、社員がいきいきと前向きに働いているのか、それともムリして我慢しながら働いているのか、気を付けてみてください。

参考文献・資料

[1]ShimazuA, Schaufeli WB, Kubota K, WatanabeK, Kawakami N (2018) Is too much work engagement detrimental? Linear or curvilinear effects on mental health and job performance. PLoS ONE 13(12):e0208684.https://doi.org/ 10.1371/journal.pone.0208684
[2]Dominguez LC, Stassen L, de Grave W, Sanabria A, Alfonso E, Dolmans D (2018) Taking control: Is job crafting related to the intention to leave surgical training? PLoS ONE 13(6): e0197276. https://doi.org/10.1371/journal. pone.0197276
[3]島津 職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント ストレス科学研究 2010, 25, 1-6
[4]厚生労働省 令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-第Ⅱ部第3章 https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/19/19-1.html
[5]Shimazu, A., Schaufeli, W.B., Kamiyama, K. et al. Workaholism vs. Work Engagement: the Two Different Predictors of Future Well-being and Performance. Int.J. Behav. Med. 22, 18–23 (2015). https://doi.org/10.1007/s12529-014-9410-x

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