復職支援プログラム 休職中の社員から復職の連絡があった時どう対応する?

2019.10.18 更新 / 2019.9.18 公開
休職・復職にムリなく対応
復職支援プログラム 休職中の社員から復職の連絡があった時どう対応する?

若手エンジニア柴田が過重労働と業務上のミスがきっかけで休職に入ってから6カ月、主治医からそろそろ復帰しても良いと言われたので、復職したいと人事へ連絡が入った。

若手エンジニアの復職ケースを題材に、2016年6月に開催された第6回保健師交流会に参加した保健師の皆さんとiCARE代表で現役産業医でもある山田が復職支援プログラムについて勉強会を行いました。

休職中の若手エンジニアから復職したいとの連絡

ケースの要約

システムナンバーワン株式会社は、東京都新宿区にある受託開発をメインに行うIT企業である。社長は、会長に経営手腕を買われコンサルタント業界から8年前に転職、売上を着実に伸ばし5年前にはマザーズ上場も果たした。従業員数は500名、内訳は350名がエンジニアやデザイナー、100名が営業、その他がバックオフィスで構成されている。

企業であるため採用力はあるものの、時間外に伴う人件費高騰や採用コスト増が原因で3年前には赤字に転落した。その頃から、社内のメンタルヘルス体制を含めた健康体制を強化するため、新たに保健師を採用することにした。田中明日香が保健師として採用され、現在2年が経過していた。田中は人事部付で、毎日出社して過重労働対象者の対応や健康診断関連業務、メンタルヘルス初期対応も担っている。産業医は50歳の内科医で、月1回、2時間会社に訪問している。

26歳男性システムエンジニアの柴田は大型プロジェクトのメンバーで、2カ月後の納期を前に過重労働が続いており、3カ月連続で80時間を超える勤務状況であった。疲れがたまった柴田は、業務上ミスをしてしまう。プロジェクトは、このミスを挽回し納期を死守するため、これまで以上の過重労働を余儀なくされる。責任を強く感じた柴田の不安は強くなり、不眠、抑うつ状態に陥ったのだった。その後、1カ月の自宅安静が必要と主治医から診断書が郵送され、柴田は休職に入った。以降、月1回程度傷病手当金の申請などの事務手続きのためにメールでのやり取りをしていた。

休職3カ月目頃より抑うつ状態は改善し、友人と旅行に行くなど外出できるようになっていた。柴田は一人暮らしであり経済的にも早く復職したい気持ちがある。休職6カ月、主治医からそろそろ復帰しても良いと言われ、その旨、柴田から人事へ連絡が入った。夜遅くまで起きていることもあり、朝の疲れは多少残るものの朝も出勤時間には起きられるようになってきている。

復職したいと連絡があったとき、何を基準に復職可否を判断する?

休職中の社員から復職の相談を受けた際、どのような点に気をつけて対応を行うかについて議論を行いました。山田:

このように復職の話があったときに、どのように対応しますか?参加者:

規則正しく生活しているか、薬をちゃんと飲んでいるかを確認します。山田:

「規則正しく生活してますか?」と聞くと、多くの場合「してます」と言いませんか?(笑)こういう場合、どう質問したら確認の精度をあげられるでしょう? もう少し踏み込まないと内容をしっかりと確認できないですよね……参加者:

何時くらいに寝ますか? とかでしょうか……山田:

その質問、大事ですね。
では、その質問に「わからないです」、「まちまちです」と答えられたらどのように聞きますか?「正確には答えられない」と言われる場合も多いですよ。参加者:

「夜何してますか?」と聞きます。山田:

夜の生活実態を聞くのですね。参加者:

「ご飯はちゃんと食べていますか?」など日中の生活を聞くようにします。山田:

睡眠、食事、生活(外出しているか)など、どれも大切な項目ですが、このうち一番重要視すべき項目はどれだと思いますか?参加者:

食事だと思います。家族など周囲のサポートが得られているかなど、環境がわかるから大事だと思います。山田:

この中で最も大事なのは「睡眠」です。そして、睡眠の中でも特に重要なポイントが「起床時間」。起床時間が会社に来る状態に戻っていないのであれば、復職の要請ははねてしまってもいい。それくらい重要なポイントです。朝の起床時間を徹底的に聞くのです。だから、休職中には生活記録表を作ってもらい、それをベースに話をするというのがいいと思います。参加者:

1日を通じて「活動できているか」を確認したいです。山田:

1日中活動できるかも重要なポイントです。復職判断をするためには、単に生活が改善しただけでなく、「会社で働ける状態」かどうかを判断する必要があります。その上で、休職中に本を呼んだりしているか? パソコンを使っているか? などを聞きたいですね。2カ月以上仕事から離れると、活字を読むのがおっくうになる、算数などの計算や段取りがうまくできなくなるものです。算数ドリルなんかをやってもらうケースもありますし、外出するというトレーニングにもなるので図書館とかに行くのもオススメです。

復職するとしたら同じ部署?それとも配置転換?

山田:

保健師田中さんの立場で、柴田さんのリズミカルな生活以外にチェックすべきポイントはありますか?参加者:

休職状態になった理由をあらためて聞きます。山田:

今回、柴田さんが休職になった理由は何ですか?参加者:

一番目立っているのは、過重労働だと思います。山田:

他はどうですか?参加者:

人間関係などもあったかもしれないと思います。柴田さんは仕事でミスをしていますが、ミスをフォローする職場の体制があったかの確認も必要だと思います。山田:

過重性だけであれば、45時間以上の過重労働で脳に影響があると言われているものの、2カ月程度の継続性でうつ状態になる可能性は科学的には言われていません。精神労災と過重労働の因果関係は、今のところよくわからないのです。その中で、今回のケースでは業務上のミスがあったことは非常にインパクトが大きいと思います。PTSDのような状態は不安をさらに助長するし、取引先、同僚、上司からミスのことを言われると精神的に参ってくるものです。参加者:

あと、本人がなぜ復職を焦っているかを聞きたいです。山田:

傷病手当では生活できない、家族に言えないなど、復職を希望する背景にはいろいろな理由があります。本当の意味での就業意欲なのかどうかを確認すべきです。あと、休職理由と休職期間にもなんとなく目安があって、大きな業務上のミスによる休職の場合は、復職まで6カ月以上かかるケースが多いですし、同じ職場に戻ることに関して不安が大きいものです。そのあたりの情報も復職判断をする際には、目安として考慮したいです。参加者:

復職するときは同じ部署がいいのでしょうか?山田:

同じ部署で復職する場合は、職場の環境改善が行われているかどうかを確認しておく必要があります。相手先の担当者が変わるだけで、環境が変化することということも大きい。ただ、本人がその職場に戻るのを嫌がるケースも多いです。参加者:

本人から配置転換を求められたときはどうしたらいいでしょうか?山田:

本人から配置転換を求められたても、できるできないをコメントしない。人事から相談があった場合については、本人の意見も参考に最適だと思うプランについて意見を伝えるべきです。ただ、配置転換を行う場合もリスクがあります。現状の組織と不一致が起こっていたという事実はわかるけれど、異動後の環境がわからないので、成功確率のばらつきは大きくなる。なので、もし配置転換を行う場合は、異動先の上長が過去に復職社員の受け入れ経験があるかどうかをヒアリングをするといいと思います。

復職プランを作成し、再休職定義を明確に

復職に関しては、復職プランを作成しそれにしたがってきっちり運用していくことが必要です。では、手順にしたがって見ていきましょう。

まず、前回の休職の回でお話したように、「主治医の診断書と働けること(=産業医の判断)は違うということを、しっかりと休職者に伝えることが重要です。一人暮らしかどうかとか、発達障害傾向にあるかとか、通院状況はどうかとかを確認し、日常生活ではなく“社会生活”がクリアできる状態にあるかを確認します。その判断の正確性を高めるためにも、ルールとして2週間の生活記録表を書かせることが重要です。生活記録表から、本人にアドバイスできる情報が出てくるのです。

【復職で重要な5つのポイント】

1. 就業意欲の確認

なぜ、復職したいのかという理由を確認します。お金の問題など復職を希望する背景を確認し、本当の意味での就業意欲なのかどうかを確認します。

2. 生活リズムの確保

生活記録表を用いて、睡眠時間がしっかりと確保できているかどうかを確認します。特に、起床時間が復職可能な時間に安定しているかどうかは重要なポイントです。

3. 疲労の回復度合い

生活記録表で確認して、疲れの度合いを確認します。10段階で記入してもらい、2〜3残っている場合は微妙、5以上になったらアウトというようなルールを本人に伝えておきます。

4. 通勤と業務の遂行性

通勤時間帯のラッシュは想像以上に疲れを助長し、休職者の負担になります。週5日、毎日電車で通勤できるかどうか、事前にトレーニングしておくことがオススメです。

5. 環境への適応性

最近気になったニュースは? と聞くことで、本人の集中力を確認できます。思い出せないとか、読んでいても集中力がない場合などはアウトです。また、人と話をしているか? という確認も重要です。いろんな話をしているかどうかが重要で、買い物に行って店員さんと話ができているなど、家族以外と話をしているのはポイントが高いです。


以上の5項目を確認し、ひとつでも問題があれば復職の「リスクがある」と判断できます。どこまでを求めるかは会社の判断になります。休職期間を満了していたり、会社で休職者の復職が切望されていたりする場合は、それらの状況をバランスさせていくことが重要です。

復職は、「復職判定委員会」で復職ルールに基いて行うことが重要です。
このとき、リワークやリハビリ勤務等の対応方針も考えておいた方がよいです。復職者から「うちはリワークないんですか?」と聞かれる場合も多いです。繰り返しの休職対応者は適応するなど、事前にルールを決めておくとよいです。体力勝負の工場系などは場合によってはリワークは向いているが、IT系はリワークには向かないなど対象産業によって効果もさまざまです。行政の無料のものとかもあるので、うまく使ってみてもよいでしょう。リハビリ勤務についても、給料は発生するのか、労災は発生するかなどのルールも決めておく必要がありますし、なあなあな運用にならないようルールを決めてしっかりと徹底しておく必要があります。

復職直前に注意するポイント

さいごに

休職している社員の復職対応について、理解できましたか? 復職対応のポイントは3つです。

  1. 復職前のさまざまな状況の理解
  2. 復職の判断を実行
  3. 復職プランにおけるコンディション

現場でこのような休職者対応のケースに遭遇したら、これらのポイントをぜひ思い出してください。

iCAREでは、保健師のみなさんが知識を習得し、さまざまな観点から自分のスキルを見つめ直し、ステップアップする場を提供しています。
産業衛生に興味関心のある保健師・看護師の皆さまのご参加をお待ちしています。

■過去の研修会の模様はこちら

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