ストレスチェックの対象者とは?目的や事業場の人数、注意点などの基本情報を紹介

2020年7月6日 更新 / 2020年7月6日 公開
ストレスチェックで組織改善

従業員が50人を超えると、労務管理として新しい義務がいくつも発生します。中でも代表的な義務がストレスチェックです。

あなたは「従業員が50人以上」とは、どういった勤務形態の従業員が含まれるのか知っていますか?また義務化の対象になる従業員の範囲と、実際にストレスチェックを受検する従業員の範囲では異なることは知っていますか?

今回は、ストレスチェック制度の対象者の範囲について人事が知っておくべき事項を解説するとともに、初めてストレスチェックを実施する事業者向けに制度の基本情報もご紹介します。

ストレスチェック制度が義務化になる事業場の人数、目的とは?

まずは初めてストレスチェックを実施する人事担当者のために、ストレスチェックの制度(労働安全衛生法第66条の10に係る制度)を見ていきましょう。

ストレスチェック制度とは

従業員の心理的な不調を計測する目的のストレスチェックは従来でも行われていました。しかし年々増加する精神疾患やメンタル不調による労災請求に対応するため、平成27年(2015年)12月に「改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度」が施行されました。

ストレスチェック制度では、企業単位ではなく事業場単位(物理的なオフィスや職場)で常時使用する労働者が50人以上の場合、年に1回以上ストレスチェックを実施することが義務化されたのです。大手企業であっても50人未満の小規模事業所(支社や店舗)の場合、ストレスチェックの実施は努力義務となります。

ストレスチェック制度の目的と意義

ストレスチェック制度には、以下のような目的・意義があります。

労働者にとってのメリット

「ストレスチェックを受けるように言われるものの、検査を受ける意味が分からない」という声が社員からあがってきます。そのような人には、ストレスチェックを受検することのメリットを説明してください。

  • 自らが感じているストレスの程度を視覚的に把握できる
  • 産業医によるメンタルヘルスのサポートを受けられる
  • 結果の分析により職場環境の改善につながる

事業者にとっての目的・意義

従業員がメンタル不調になる要因は様々です。ストレスチェックではメンタル不調になりやすいハイリスクな従業員や部署を把握することが可能です。仕事の量や質、上司や同僚との人間関係について定量的に把握できるチャンスです。

  • メンタル不調による欠勤や休職を未然に予防できる
  • プレゼンティズム(就業中の生産性低下)に気付ける
  • 職場環境の改善に役立つデータが手に入る
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ストレスチェックの対象者とは?

アルバイトや派遣社員、海外勤務者など、労働者の働き方はさまざまです。次に、ストレスチェックの対象者となる条件について詳細を解説します。

ストレスチェックの義務化対象となる「常時使用する労働者」とは

ストレスチェック制度で定められる「対象者」には2つの範囲があります。ひとつは、ストレスチェック制度の義務化対象になるかどうかの労働者の範囲。もうひとつは、実際にストレスチェックを受検するべき労働者の範囲です。

まずは義務化の対象になる「常時使用する労働者」については以下の通りです。

①期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。

②その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度 実施マニュアル」厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室

上記の①②を両方とも満たす従業員が「常時使用する労働者」であり、常時使用する労働者が事業所内に50人以上いる場合にストレスチェックの実施義務が発生します。

そのため、パート・アルバイト・派遣社員は「常時使用する労働者」としてカウントされます。

ストレスチェックの受検対象者である労働者の範囲はどこまで?

「会社に勤めている」という点で同じであっても、雇用形態や勤務状況などによってストレスチェックの受検対象者であるかが決定します。それぞれ詳細をチェックしていきましょう。

役員

役員は「使用者」であり、「労働者」の範囲に含まれません。そのため、事業者は役員に対してストレスチェックを受けさせる法的義務はありません。

ただし、いわゆる「名ばかり役員」のように名称だけの使用者は、実質的に労働者であるため受検する義務が発生します。詳しくは以下の記事をご確認ください。

パート・アルバイト

パートやアルバイトの場合、契約期間や労働時間数が前述した「ストレスチェック対象者の条件」に該当すれば受検対象となります(※一般定期健康診断の基準と同じ)。

派遣社員

派遣先の事業場がストレスチェックの実施義務にあたるかの対象に含まれますが、ストレスチェックを受検させる義務があるのは派遣先ではなく派遣元です。ただし、派遣先でまとめてストレスチェックを行うケースもあります。

出向者

出向先の事業場がストレスチェックの実施義務にあたるかの対象に含まれますが、受検する義務があるかは出向者の労働契約関係によって異なります。出向元と出向先のどちらの事業者が実施するかは、賃金の支払いや指揮命令権などをふまえて判断されます。

海外勤務者

海外勤務者であっても、日本の企業に在籍しているのであれば、ストレスチェックの実施義務が発生します。雇用先が海外の現地法人である場合は日本の法律が適用されないため、ストレスチェックの対象者となりません。

海外への長期出張など、タイミングが合わず日本でのストレスチェックを受けられない場合もあるでしょう。その場合は、海外勤務者に対して別途ストレスチェックを行います。

休職者

病気、産休、育休、介護などの理由により休職している場合、ストレスチェックを受検させる義務は発生しません。

雇用予定者

新人・中途採用者の場合、入職してから1年以内にストレスチェックを実施します。入職前にストレスチェックを実施する必要はありません。

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ストレスチェック実施の際の注意点

事業場がストレスチェック実施する際に気をつけること

ストレスチェックを行うにあたって、どのような点に配慮が必要となるのでしょうか。最後に、事業場がストレスチェックを実施するにあたって気を付けたい注意点を解説します。

ストレスチェックを受けるよう強要してはいけない

ストレスチェックを受検させるのは事業場の義務ですが、労働者に対してストレスチェックの受検を強要できないことを理解しておきましょう。労働者に受検を勧めること、受検の有無を確認することはできますが、ストレスチェックはあくまで任意の検査です。受検しないからといって仕事内容に影響を与えたり、懲戒処分の対象としたりすることはできません。

また、ストレスチェックの実施自体が労働者の負荷とならないよう配慮する必要があります。ストレスチェックの目的を労働者に説明し、検査結果が今後の仕事内容に影響するわけではないことを理解してもらう必要があります。また、実施時期はなるべく繁忙期に重ならないようにするのが望ましいです。

人事権を持つ役員等が実施者になるのはNG

ストレスの多い労働者にとって、「ストレスチェックの結果次第で、配置転換させられるのでは?」と心配事が浮かんでくるかもしれません。人事権を持つ役員や管理職が実施者となれば、労働者にとって不利益な人事異動が行われ、ますます精神面での負荷が大きくなる可能性があります。このような事態を防ぐため、実施者は産業医や保健師など厚生労働省が定める者が担当すると決められています。

役員等が対象者の許可なく結果を見ることも禁止

ストレスチェックの実施者(産業医や保健師など)は、対象者の同意を得ずに検査結果を事業者に漏らしてはなりません。もちろん、役員や管理職が許可なくストレスチェックの結果を見ることも厳禁です。実施者だけでなく、実施事務従事者(社内のメンタルヘルス担当者、事務職員、外部機関の担当者など)についても同様です。ストレスチェックにあたって知り得た情報を、対象者以外に漏らしてはなりません。

ストレスチェックの実施者・実施事務従事者が守秘義務に違反した場合は刑罰の対象となりますので、十分に注意しましょう。社内でストレスチェックや面接指導の結果を扱う場合も、紛失や漏洩がないよう適切に管理する必要があります。

まとめ

はじめてストレスチェックを実施する企業にとって分かりづらい点が、ストレスチェックの対象者です。実施義務が発生するかどうかの対象範囲と、実際に受検する対象範囲の違いは正しく理解していないと、知らないうちに法令違反となってしまうため丁寧に確認しましょう。

また支社や店舗などで50名以下の事業場の場合でもなるべく本社同様にストレスチェックを実施することをおすすめします。50名以下の事業場では努力義務ではあるので、実施しない特別な理由がない限りは安全配慮義務を徹底するために、ストレスチェックを実施することが一般的です。

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