ストレスチェックで組織改善
2021年10月5日 更新 / 2020年7月6日 公開

高ストレス者への法的に正しい対応と産業医面談の注意点

厚生労働省が推進するメンタルヘルス対策として、ストレスチェック制度が企業には義務付けられています。労働者のストレス状況を検査し、結果を分析することで、就業上の措置を行ったり職場環境の改善につなげることが目的です。

実際にストレスチェックを実施した企業でよく課題にあがるポイントが、「高ストレス者に対してどのような対応をとるべきなのか?」です。今回の記事では、高ストレス者への法的に正しい対応や実務として産業医面談をセッティングする注意点もふまえてご紹介します。

ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、労働者が抱えているストレスがどのような程度であるのかを調査する検査のことです。「労働安全衛生法」が改正されたことにより、2015年12月から「ストレスチェック制度」がスタートしました。事業所で働く労働者が50人以上の場合、毎年1回ストレスチェックを実施することが義務付けられています(ただし契約期間が1年未満、所定労働時間が通常の4分の3未満となる短時間労働者については、検査義務の対象外)。

労働者がメンタルヘルス不調に陥るのを防ぐために、まずは労働者自身がストレスの状態を把握することが大切です。ストレスチェックを実施することで、高ストレス者に対して医師の面談を促し、仕事の軽減など必要な対処が可能となります。

ストレスチェックを実施する際は、選択回答式の質問票を労働者に配布し、記入してもらいます。このとき紙の質問票ではなく、ITシステムを利用して実施することも可能です。(厚生労働省 ストレスチェック実施プログラム

質問票の回収は、実施者(医師や保健師など)もしくは実施事務従事者(外部委託も可能)が行います。その後は、実施者が結果の集計・分析を行い、労働者本人に結果を通知するという流れです。ストレスが高い状態であるのか、産業医面談が必要なのか、という内容が直接本人に通知され、必要に応じて医師の面談指導が行われます。

ストレスチェックにおける高ストレス者とは

実施者はストレスチェックの結果をもとに、個人のストレスの状態を評価し、高ストレス者を選定します。ストレスチェックの結果を本人に通知する際には、ストレスプロフィールの詳細について、レーダーチャートなどの図式で示すと分かりやすいでしょう。

ストレスチェックにおける高ストレス者とは、「○点以上の人」というような指標で具体的に決められるものではありません。ストレスチェック結果の評価方法、高ストレス者の選定ポイントについては、厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」で例が示されています。ただし、これは全国平均をベースとして算出されているものなので、すべての事業所に該当するとは限りません。ストレスチェックにおける高ストレス者とは、一般的に事業所内で上位10%程度であるといわれています。

誰が高ストレス者なのかを会社は把握できるのか?

ストレスチェックの結果は、受検者それぞれ個別に送付されます。本人の同意を得ずに、事業所にストレスチェックの結果が通知されることはありません。また事業所側も、受検者に対して結果の開示を求めてはならないとされています。

実施者が受検者に結果を送付する際、本人以外に閲覧されることがないよう十分に配慮する必要があります。通知には電子メールや封書を使用しますが、結果の詳細が漏洩しないよう配慮するだけでなく、面談指導の要否についても類推されないよう注意が必要です。

高ストレス者は面談をしなければならないのか?

ストレスチェックを行い高ストレス者と判定された場合、産業医との面談指導を実施できます。とはいえ、面談はあくまで本人の申出によって行われるものであり、義務というわけではありません。高ストレス者と判定された人のうち産業医面談を希望するのは6%。実に94%の高ストレス者に対して、企業側はアプローチできていないが現状です。

ストレスチェックを実施する際には、ストレスチェックを行う意義を理解してもらった上で、面談を行うことによって不利益な取り扱い(リストラ、配置転換、減給など)を行わないことを理解してもらう必要があります。普段から産業医が従業員とコミュニケーションをとったり、ささいなことでも産業医面談を設ける環境をつくることで、高ストレス者が気軽に産業医との面談を申し込めるようになります。

なお、高ストレス者である従業員が面談を希望する場合、1ヶ月以内に面談指導を実施する必要があります(労働安全衛生法第66条の10の3)。

ストレスチェックで高ストレス者が見つかった場合の注意点

ストレスチェックによって高ストレス者が判明した場合、どのような対応を行えばよいのでしょうか。ここでは、高ストレス者に対してフォローを行う際につまずきやすいポイントを説明します。

面談の日程調整に難儀する

高ストレス者が面談を希望する場合、産業医と調整しつつ面談の日時を決定します。しかしながら、その日程調整に難儀するケースが多いため注意が必要です。

高ストレス者が産業医による面談を希望したら、その後1ヶ月以内に実施する必要があります。ただし、高ストレス者への対応を焦るあまりに、無理やり面談の日程を設定してしまうことのないよう注意しましょう。業務の忙しさや会議日程を考慮して、面談の曜日や時間帯を決める配慮が必要です。

面談に対して高ストレス者のプレッシャーになる何かがある

面談は基本的に就業時間内で行われます。しかし、面談の目的が広く周知されることのないよう、面談の実施時には十分に配慮する必要があります。

なぜなら、高ストレス者の中には「面談を受けること自体を知られたくない」という人もいるからです。上司や同僚の目が気になる場合、「高ストレス者向けの面談」としてではなく、「健康診断結果による面談」として呼び出すなど、柔軟な対応を行うことが大切です。

また日程調整だけでなく、面談の場所にも十分に注意してください。産業医の面談では、仕事内容や人間関係など、ストレスの根源となるものについて話すケースもあります。社外で面談を行ったり、産業医と電話やオンライン上で話したりするなど、なるべく労働者の負荷が少ない場所で行うとよいでしょう。

面談後の業務周りのサポートが改善していない

ストレスチェックの面談では、産業医が労働者から聴取を行い、ストレス軽減のためのアドバイスを行います。ただし、メンタルヘルス不調が深刻な場合も「うつ病」などの病気の診断を行うわけではなく、専門医療機関への受診を勧奨するにとどまります。

面談での聴取により、業務周りのサポートや職場環境の改善が必須だと判断された場合、面談を担当した医師が事業者側にその旨を伝えることもあります。しかし、事業者が実際に高ストレス者に対して業務上のフォローを行わなければ、面談の意味が薄れてしまいます。高ストレス者の面談後は、産業医からの意見をもとに対象者の就業時間を減らしたり、仕事内容を負担の少ないものに変更したりするなど、就業上の措置を適宜行うことが必要です。

New call-to-action

まとめ

ストレスチェックで高ストレス者と判定された人に対して、産業医の面談を実施した上で、必要な就業上の措置を行います。ただし、高ストレス者が対象の面談は任意であるため、面談の申出をしない人が多いのが大きな問題です。

ストレスチェックを有意義なものとするためにも、ストレスチェック結果の取り扱い、面談の日程調整、面談後のフォローなど、産業医との連携が必須となります。今回ご紹介した注意点を参考にしつつ、ストレスチェックを実施してみてくださいね。

執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。

お役立ち資料

  1. 人事・労務向け メンタルヘルス対策ガイド
    企業や従業員のメンタルヘルスに課題を持つ人事・労務担当者向けの資料になります。
    メンタル / 過重労働
    資料をダウンロードする
  2. 健康経営優良法人2023 完全ガイドブック
    「健康経営優良法人2023 完全ガイドブック」の冊子をダウンロードいただけます。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  3. 従業員の離職予防のカギは健康データにあり!データを活用した組織改善のノウハウを解説
    本資料では、離職予防につながる健康データの活用方法と担当者が抱える悩みに対する解決方法を知ることが出来ます。
    メンタル / 過重労働
    資料をダウンロードする
  4. IT企業に適した健康管理体制基本ガイド
    IT企業が健康管理体制を構築する上でおさえておきたい、基本となるポイントをお伝えします。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  5. ストレスチェックを効果的に行うための集団分析の基本を解説
    さまざまなストレス要因が増加する中、担当者にとって組織のメンタルヘルス不調対策は欠かせないものとなりました。 実際にストレスチェックを効果的に活用し、不調を予防する方法を紹介しています。
    メンタル / 過重労働
    資料をダウンロードする
  6. 健康経営優良法人の攻略ガイド〜調査票の健康管理編〜
    健康経営優良法人取得に向けて、調査票作成という観点で押さえておくことが望ましいポイントをお伝えします。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  7. Carelyの活用で健康経営優良法人を攻略する
    認定企業数が増え続けている健康経営優良法人。 変化の激しい現代では、コロナウイルスへの対応項目やSDGsへの取り組み項目など、新しい項目が続々と追加されています。 そんな中、毎年取得し続けなければいけない健康経営優良法人にプレッシャーを感じていませんか? 今回は、健康管理システム「Carely」を使って、健康経営優良法人を効率的に取得する方法をお伝えします。
    健康診断
    資料をダウンロードする
  8. Carelyサービス資料
    健康管理システムCarelyの大企業向けサービス資料です。 Carelyは産業保健スタッフや人事労務の実務担当者の方が抱える、健康診断、ストレスチェック、過重労働等の健康データを一元管理し、効率的に実施する仕組みづくりをサポートします。
    健康管理システム
    資料をダウンロードする
  9. 定期健康診断の事後措置ガイドブック 冊子版(PDF)
    健康診断の義務は、実施よりも"事後措置"の方が重要です。業務効率化を図りながら、ミス・モレのない実務ノウハウを解説します。
    健康診断
    資料をダウンロードする
  10. 製造業人事担当者向け/お役立ち資料一括ダウンロード
    製造業の人事労務担当者向けに、調査データや健康管理の基本が詰まったお役立ち資料がまとめてダウンロードできます。
    健康管理システム
    資料をダウンロードする
  11. 外資系企業人事担当者向け/お役立ち資料一括ダウンロード
    外資系企業の人事労務担当者向けに、調査データや健康管理の基本が詰まったお役立ち資料がまとめてダウンロードできます。
    健康管理システム
    資料をダウンロードする
  12. 特殊健診は怖くない!有機溶剤編
    初めて特殊健診を管理する保健師・衛生管理者向けに、「有機溶剤予防規則に基づく健康診断」について解説しました。(監修:産業医・労働衛生コンサルタント 山田洋太)
    健康診断
    資料をダウンロードする
  13. 健康診断をペーパレス化。メリットと外部業者の選び方
    まだ紙で管理しますか?延べ200社の健康診断の管理をペーパレス化してきたから分かった、人事労務・保健師の業務を効率化するコツと運用法を解説します。
    健康診断
    資料をダウンロードする
  14. 働き方改革の新しい義務『健康情報管理規程』の策定マニュアル
    厚労省から公表されているサンプルでは分かりづらい、という人事の方へ。ハンザツな規程作成が5ステップで完了します。
    法律 / ガイドライン
    資料をダウンロードする
  15. 集団分析の社内報告マニュアル
    ストレスチェック担当者が、上司・経営者から評価を得るために。厚労省の判定図の正しい読み方から社内報告の方法を産業医視点で解説します。
    メンタル / 過重労働
    資料をダウンロードする
  16. ベテラン人事こそ失敗する、休復職者対応5つの落とし穴
    「スムーズに復職は、休職前の準備は大事」 人事の工数を最小限におさえる休復職対応を、保健師が解説します。
    産業医
    資料をダウンロードする
  17. 先回りメンタルヘルス対策
    -IT企業編-
    クリエイティブ職が多いIT企業だからこそ注意が必要なメンタルヘルスの予防と対策。心の問題以外にも焦点をあてて解説します。
    健康診断
    資料をダウンロードする
  18. 見逃し配信 / プレ健康経営サミット
    「従業員の健康を第一にする」というのは、実は健康経営ではありません。企業の事業戦略に基づいた、「本質的な健康経営」を紐解きます。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  19. 健康管理のデジタル化に、失敗する理由と成功した事例
    2020年春、新型コロナウイルスの流行によりテレワークが余儀なくされました。これまでのアナログな健康管理では、従業員の健康を守ることが難しくなりました。健康労務をペーパレス化して法令遵守を徹底するための企業事例を解説しました。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  20. 従業員50人からはじめる健康管理の法令遵守
    どこまで健康管理業務を徹底すれば、法令遵守になるんでしょうか?労務管理の義務が増える従業員50人を超える”前”から読んでおきたい入門ガイドを産業医が書き下ろしました。
    法律 / ガイドライン
    資料をダウンロードする