人事の皆さんは、不調者対応で休職と有給をどう使い分けていますか?

2019.8.29 更新 / 2019.8.28 公開
休職・復職にムリなく対応
人事の皆さんは、不調者対応で休職と有給をどう使い分けていますか?

産業衛生や人事の仕事に携わっていると、体調を崩した従業員が休職に入るケースに直面することがあります。こういったケースで従業員をスムーズに健康な状態に回復させられるよう配慮したいものです。そこでよく問題になるのが、「休職と有給」の関係です。
人事や産業衛生スタッフ(産業医、保健師)としてどのように休職と有給を使い分けているのか見てみましょう。

休職と有給の違いとは?

一般的に休職制度とは、病気やケガ、メンタル失調など何らかの理由で体調を崩した従業員をすぐに解雇するのではなく、「会社が定めた期間中、療養することで働ける状態を目指し労働契約を継続させるための制度」のことを言います。
意外と知られていませんが、休職は法律上必須の制度ではありません。会社側が福利厚生の一環や解雇猶予措置として定めているのです。そのため全ての会社が休職制度を持っているわけではありません。

法的には私傷病で「休職」となる場合、原則として会社は給料を支払う必要はありません。そうなると休職者の経済面が気になりますが、心配はいりません。なぜなら、休職者は所属している健康保険組合から「傷病手当金」といわれる金銭的な援助を受けられるため、会社が給与を支払わなくても無報酬とはならないのです。また、休職中給与を一部支給している会社も少なくはありませんし、GLTD(団体長期障害所得補償保険)のような保険に加入している会社もありますので、自社の制度について確認しておきましょう。

一方、有給とは「年次有給休暇」のことをいいます。年次有給休暇とは、一定期間勤続した全労働者に対して、身体および精神的に休養するために与えられる休暇のことです。年次有給休暇は取得しても賃金が減額されない、つまり「有給」の休暇です。年次有給休暇は、労働者が使用したい時期に与えなければならないと労働基準法で定められています。

休職の代わりに有給は使えるか?

日本の企業で多く見られるのが、本来「私傷病休職」の代わりに有給からまずは消化させるようなやり方です。外国の企業だとsick leaves とannual paid leavesとは明確に使い分けをしており、私傷病休職を有給で代用しようとすれば、HR(人事部)も従業員も嫌な顔をします。

日本の多くの企業においては、有給を消化できず翌年に繰越をすることで最大20日間の権利を得るわけですが、私傷病で休まざるを得ない場合、有給から使うように人事部から言われることがあります。これ自体問題はないのですが、以下のように考えてみましょう。

  • 私傷病の回復期間が明確かつ2週間以内と予想されるもの:有給
  • 私傷病の回復が不明確、2週間以上が予想されるもの:休職

最近の傾向として、早めにメンタル不調を含めて私傷病による休職を伝えることが多くなったために、早く回復し、早い期間で復職に至るケースが増えてきています。1つの目安は2週間ではないでしょうか。メンタル不調などは、症状にムラがあり、波があるのが一般的です。おおよそ2週間で良いときもあれば、悪いときもあり2週間での状況を休むことで明確になるのは、次のアクションが起こしやすくなります。
従って2週間以内であれば有給を使って『判断する状況をつかむ』という意味ではとても効果的です。また従業員にとっても休職はとっても大きなことになります。従って有給で不調が戻る可能性があるのであれば、有給から使いたいといった声は多くいます。

休職と有給で人事・産業保健師が気をつけるポイントとは…?

1. 休職と有給取得に関する運用ルールを決める

あくまでも私傷病における対応として、2週間を目安に有給と休職を伝えましたが、「2週間」としなければならないことはありません。3日間でも1週間でも良いわけです。自社の私傷病において問題となりやすい対象となる私傷病を考え、産業医とどの程度の期間で判断が出来るのか相談しながら期間を定めると良いでしょう。

その場合は、就業規則に載せる必要は全くありませんが、就業規則にひもづく健康規則・規定等に明文化しておくと良いでしょう。そのことを踏まえて、休むことが必要な従業員への説明文書にもなり、従業員も納得して有給や休職の決心が付きやすいからです。

2. 有給や休職期間の残りをすぐに出せるようにおく

繰越の有給期間がどのくらいなのか、休職期間が通算なのか、前回どのくらい使ったのかといったことはとても大切な情報である一方、すぐに出せないと何となくで判断をしてしまいます。有給が残り3日しかない中で、私傷病の判断をすることは難しいのが一般的です。従って、従業員の「休める期間」を常に出せるようにしておくことは重要です。
多くの企業は、人事システムの中でこれらすぐに出せるようにしているかと思います。それを現場でも使えるように整理しておきましょう。

3. 有給でなく休職であれば過ごし方やお金について説明しましょう

休職者にとって、体調だけではなく金銭面は心配事の1つです。扶養者がいればなおさらです。休職になっても、健康保険組合から傷病手当金が支給されることや、受給のための手続きについてしっかりと説明しましょう。またもし体調が戻らない場合には、有給から休職にスムーズに移行させること可能性についても触れておきましょう。
休職中は必ず通院することや、2〜4週に1度会社から連絡をすることなどを事前に伝えておきましょう。休職直後は連絡取らないほうがいいのですが、元気になってきた2カ月目くらいからは、会社から定期的に連絡をすることで復職率が高まると言われています。
また、中には休業中に旅行に行った写真をSNSにアップしたりする人もでてきます。旅行に行く際には事前に連絡すること、休職中には同僚等への配慮が必要であることからSNSにアップすることがないようになど事前に連絡しておきましょう。また、休職の目的、連絡先、復職判断の基準、リワークプログラムの案内、生活記録表の書き方と提出方法などを伝えておくことで復職に向けたトラブルが少なくなります。

休職者が発生した場合の事例についてはこちらの記事を参照してください。
若手エンジニアが休職? 休職者発生時の対応方法を学ぶ【保健師サロン】

さいごに

企業として、従業員の健康を害してはならない。しかし同時に、現場レベルでは本人を休ませることに苦慮することは多々あります。その際に、有給という手法をどう活かすのか、逆に休職をすることでどうしっかりと休ませるのかということを念頭に対応するのがよいでしょう。

健康労務のメルマガを購読する