上司なら知っておくべき、部下の仕事のストレスを和らげる基本と解消法

2019.9.3 更新 / 2019.9.3 公開
ストレスチェックで組織改善
部下のストレス状況を的確に把握できてる?

あなたは部下のストレス状況を的確に把握できていますか?

ストレス?それって心の問題だから仕事に関係ない話でしょ・・・

もしかするとそう思われた方は、今すぐこの記事を読んでください。部下のストレス状況を把握して対応していくことは企業として必ず取り組まなければならないことです。

なぜなら、「安全配慮義務」が使用者には課されているからです。

大切なポイントですので、分かりやすく説明させてください。
使用者とは、経営者だけでなく労働者を管理する業務を行っている人も含まれます。つまり人事労務担当者や部下への命令権をもっている上司も使用者にあたります。
安全配慮義務とは、労働者が健康上の問題を起こすことなく安全に働けるよう必要な対処は実施しなければならないことです。

もともとは安全に=怪我なく病気なく働ける、ということを指していましたが、近年ではストレスによる心の健康も含めて配慮することが求められています。2015年12月から始まったストレスチェックの義務化からもわかりますね。

とはいえ、ストレスが目に見えない問題であることには変わりません。

そこでこの記事では、自分の部下がどれくらいのストレスを抱えているのかを判断し、ストレスを解消するためにはどういった方法が有効であるのか。をご紹介します。

特に仕事におけるストレスは、人間関係が原因であることが多いため職場内での相談をとまどってしまう従業員も多くいます。上司として、人事労務担当として、ストレスに関する正しい知識と解消方法を身に着けて、働きやすい職場づくりを進めていきましょう。

ストレス・ストレッサー・ストレス反応、これら違いを知っていますか?

これからストレスの正しい対処方法をお伝えしようと思うのですが、その前に「ストレス」そのものについて説明します。

目に見えない心の問題のように思えるストレス。
ですが、医学的な知識を持っていなくても人間関係の悩みであったり、長時間働き続けたり寝不足が続くと、「ストレスが溜まってきた」という実感を持つことができます。

ここでストレスという言葉には3つの意味が含まれています。

ストレッサー

ストレス要因。過労や睡眠不足といった生活習慣だけでなく、気温の変化や騒音といった物理的なこと、不安や興奮といった心理的なこともストレス要因になります。

ストレス反応

ストレッサーによって身体や感情、そして行動に表れる反応です。イライラしたり涙もろくなったり、寝付きが悪くなったりすることなど人によって様々な反応が見られます。

元の状態に戻ろうとする反応

ストレスがかかった状態から復帰しようとする反応のこともストレスと呼ばれます。スポーツ選手が高いパフォーマンスを発揮するには適度なストレスが必要、と言われている場合にはこの戻ろうとする反応のことを指しています。

ストレス・ストレッサー・ストレス反応、これら違いを知っていますか?

ちなみに、よく「ストレスに強い人・弱い人」という意味でストレス耐性という言葉使われます。これは元に戻ろうとする速さのことを指しています。

気をつけてほしいことは、ストレス耐性が高いとは元の状態にもどるのが早いというだけで、ストレス反応による身体のダメージは回復しているわけではない、ということです。

ストレスという言葉に含まれた意味を理解していただくと、どのようにストレスへ向き合っていくべきかが理解しやすくなりますね。

次はストレスがどの程度の負担になってしまっているのか?をストレス反応によって見極めていくノウハウをお伝えします。

仕事のパフォーマンスから、ストレスの状態を推測する

ストレス反応によって感情面の不安定さがもたらされることを私たちは知っています。が、一方で感情面の変化が仕事のパフォーマンスにまで影響を及ぼす、ということも上司として知っておかなければなりません。

慢性的なストレスがかかると仕事の生産性も下がってしまう。この点をもう少し丁寧にご説明します。

(※以下の説明では医学的に多少不正確な面もあります。が、人事や上司として知っておくべきことを分かりやすく説明するための表現になっています。あらかじめご了承ください。)

私たちは日々の仕事の中で、創造的なアイデアを生み出したり、計画的にプロジェクトを進め意思決定を下すために、集中力を高めたり論理的な思考を繰り返しています。

こういった抽象的で高度な思考は、脳の中の前頭前野とよばれる部分が司っています。

しかし、この前頭前野の細胞は不安や心配といった感情によって働きが弱まってしまうことが研究の中で分かってきました。

一方で、私たちの脳はストレッサー(ストレス要因)によってストレスがかかると、不安や怒りと言った感情面を司る扁桃体の働きが強まることも分かっています。

ストレスにより扁桃体の働きが強まると、仕事のパフォーマンスに直結する集中力や論理的思考力が下がってしまうということです。

反対に言えば、仕事のパフォーマンスを観察することで部下にどれほどストレスがかかっているのか・・・を推測することができるのです。

判断基準は、「ゲイツ心配おねしょ」

仕事上のストレスは、人間関係による心理的な悩みであったり、長時間労働による身体的な疲労であったりするので、ストレスがうまく解消されないことが多々あります。

これまでお話したとおり、日常的にストレスにさらされ続けると、ストレス反応として心と身体に異変が現れ始めます。では具体的にどのような変化が起きるのかをまとめてみました。

判断基準は、「ゲイツ心配おねしょ」

キーワードの頭文字をとって「ゲイツ心配おねしょ」と呼びます。

詳しい説明がなくとも分かりやすい症状が並んでいるかと思います。

「ゲ: 元気がない」「イ:イライラする」「ツ:疲れやすい」は、仕事を進める中では避けては通れない症状かもしれませんし、仕事とは別の要因によるものかもしれません。

一時的なものであれば仕事のストレスによるものとは断定できませんが、1週間以上日常的に続いていくようであればストレス要因があるのではないかと考えた方がいいでしょう。

上司としては「心配性」に注意すべし

目に見える影響が現れはじめる重要なラインが「心配」です。詳しく説明しましょう。

心配のラインまで症状が進んでしまった場合、仕事上のパフォーマンスとして明らかな遅れやミスが目立ってきます。

例えば、

  • ルーティング作業で慣れた仕事に対して、30分で完了していたものが60分かかるようになった
  • ひとつひとつの作業を進めるごとに上司や同僚へ確認を取る行動が増えた
  • 会議中、人の会話内容が頭に入っていないようでコミュニケーションが取れない
  • メールの誤字脱字が多くなり、改行さえうまくできなくなってくる

100%のパフォーマンスを発揮していた仕事を知っている上司から見ると、「まさかこんなミスを・・・」と思ってしまうことばかりです。しかし、会社としては「心配性」の症状を知った段階で何らかの対処を打つべきです。

もし心配性がさらに悪化していくと、「お:起きられない」「ね:眠れない」「し:身体愁訴(めまい、頭痛、動悸、食欲不振、軟便)」といったように身体上の健康を残ってしまうからです。

冒頭にご説明したとおり、使用者には労働者への安全配慮義務が課されています。

従業員が健康に安心して働けるように、仕事のパフォーマンスからどれくらいのストレスにさらされているかを判断して、早め早めに対処することが求められています。

それでは具体的にどういった方法でストレスを解消していくのか、を解説していきます。

職業ストレスモデルから見る、2つのストレス解消法

慢性的なストレスにさらされると起こるストレス反応。
上司としては心配性が見られた段階からは積極的にストレス解消に動き出したいところです。

しかし、インターネット上にあふれるストレス解消法の多くはセルフケアとして取り組むものばかり。仕事のストレスを解消するには、職場や上司からの協力が必要不可欠になってきます。

そこで上司としてできる従業員のストレス解消法をお伝えします。

NIOSHの職業ストレスモデル

仕事のストレスを解消するために、どういった点からアプローチすると効果的なのか。

アメリカの政府機関であるNIOSH(アメリカ国立労働安全衛生研究所)の職業ストレスモデルを見ることでアプローチするべきポイントが見えてきます。

ちなみに、NIOSHのストレス調査票は日本のストレスチェックの参考にもされているものです。

NAIOSHの職業ストレスモデル

職業ストレスモデルから、ストレスの解消法には大きく分けて2つの方法があることがわかります。
ひとつはストレッサー(ストレスの要因)を取り除くこと、
もうひとつはストレスを緩和していくことです。

ストレスには3つの意味が含まれているところでも説明しましたが、ストレスを与える要因であるストレッサーには様々なものが含まれます。

仕事上の人間関係や長時間労働による要因だけでなく、金銭的な悩みや生活スタイルの変化、さらには季節の変わり目(温度や湿度の変化)もストレス要因となります。

これらすべてのストレッサーに対処することは現実的ではありません。
上司として、会社として、ストレスによる症状が見られる従業員がいた場合、まずは仕事のストレス要因を取り除くことからはじめましょう。

上司が相談にのることで客観性をもたせる

それでは上司として仕事のストレス要因を取り除くために、まずは試してもらいたいことがひとつあります。それは相談にのることです。

大前提として、日常的にストレスにさらされ続けてしまっていると、視野が狭くなってしまい自分自身で解消していくセルフケアをすすめることは難易度が高い解消法です。

また、仕事がストレッサーとなってしまっている状況では業務量のコントロールや配置転換を含めた人事の対応が必要になってきます。そのためには上司が主体的にストレスケアに協力することが必要不可欠です。

ですので、ストレスの悪化を防ぐ有効な手段が「上司として相談にのる」ことになります。

心理的に抱えている悩みや身体上の疲れなどを従業員に話させることで、自分のことを客観視しやすくなり、自ら解決策を見つけることもできるようになります。

従業員自身で解消することが難しいストレス要因があったとしても、上司からすれば簡単に解消することができることも少なくありませんよね。

この記事を読んでいる上司の方には、部下が想像以上に相談しにくいと思っていることを知っておいてください。

ストレスにより視野が狭くなっているために、「忙しくしていて話す時間がとれない・・・」「個人的な問題位だから話しても理解はしてくれないだろう・・・」と思い込んでしまうこともストレスによる症状です。

まずは相談にのって客観性をもたせてあげること。
仕事上のストレス要因を取り除くためにまずは相談からはじめてみてください。

【図解】医学的に証明されている緩和方法

ストレスを解消するために、まず取り組んでいただきたいことは「相談にのること」です。これは仕事上のストレス要因を取り除くことにつながります。

ストレス解消のもう一つの方法は、ストレスを緩和すること。ここではストレスにさらされていることを客観的に気付くことができた従業員が、セルフケアとして行える方法をご紹介します。

飲酒は厳禁!医学的に証明されている3つの方法

ストレスを和らげることで解消する方法として、医学的に証明されている方法は次の3つです。

運動

具体的には、「心拍数の上がる強度」で「1時間」だけでも良いので「定期的」に行うことがストレス緩和につながる運動です。運動によって脳内ではセロトニン(感情や衝動を調整する)やドーパミン(前向きな気分をもたらしてくれる)といったホルモンが分泌されます。

睡眠

慢性的な睡眠不足は、感情を司る扁桃体を働きを強めてしまい不安や怒りといった感情が起きます。こういった感情は集中力や注意力の低下にもつながり、心身にストレス反応が起きてしまいます。

瞑想

Googleが取り入れたことで有名なマインドフルネスや、ヨガや呼吸法などによって脳の働きを休ませることが目的です。ストレス反応として脳内ではコルチゾールというホルモンが分泌されます。瞑想はコルチゾールの値を低下されることが研究により分かりました。

ストレスの解消法として上司がついついやってしまう間違いは「お酒の席に誘う」ことです。アルコールの飲むことはストレッサーになりうるものです。

気分が高揚すること=ストレスが解消されることではありませんので気をつけてください。

とはいえ、業務命令として「週一回の運動を義務付ける」や「毎日10時には就寝すること」などの指示を明確に出すことは難しいですよね。

そこで職場内でもできるストレス緩和法を図解でご紹介します。
仕事というのは少なからずストレスにさらされつづけている状態ですので、この方法を紹介して休憩時間などに実践してみてください。

【図解1】呼吸法 Deep Breathing

一言で呼吸法といっても様々な方法論がありますが、医学的にストレスの低減が証明されている呼吸法は「Deep Breathing」と呼ばれている方法だけです。

【図解1】呼吸法 Deep Breathing

【図解2】筋弛緩法(リラクセーション法)

「なんだか肩がこってきたなぁ」という時に、肩をすぼめてストンと落とす、といった行動をとったことはありませんか?あれも筋弛緩法のひとつです。座りながらできる方法ばかりを集めました。

【図解2】筋弛緩法(リラクセーション法)

身近にストレスを抱えている方がいらっしゃる方へ

ストレスによって心理的に、身体的に、症状がではじめている方は身近にいらっしゃいませんか?

すでにお話したとおり、日常的にストレスにさらされてしまっている人自身が、ストレスに対して有効な対処法(セルフケア)を行うことは難易度の高いストレス解消法です。

ストレスを受けることにより理性的な判断力が落ちてきてしまうことは研究からも分かってきています。ですので、ストレスを解消するためにまず大切なことは「相談にのる」ことです。

特に仕事上のストレスは、人間関係による悩みや業務による身体的な疲労が原因であることも多く、従業員が一人だけで解決できることには限りがあります。

上司として、あるいは人事労務として、ストレスによる生産性低下の仕組みを知り、ストレス要因を取り除けるように行動を起こしていきましょう。そして医学的に証明されているストレス緩和方法を取り入れてみてください。

もし身近にストレスを抱えている方がいらっしゃるなら、ぜひ【図解】しているストレス解消法をおすすめしてみてください。画像は弊社が作成したものですので、安心してダウンロードしたり印刷してご活用ください。

それでは。

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