この記事では、健康経営の推進に取り組むご担当者様に向けて、睡眠課題の改善に役立つ情報をご提供します。健康や生産性に大きく関係する睡眠の重要性や、組織として取り組める具体的な睡眠施策などをご紹介しておりますので、ぜひご参考ください。睡眠と健康経営の関係睡眠の質や時間が、健康に影響することは、一般的な知識としてすでにご存じの方も多いと思います。そのため、従業員の健康に積極的に投資することにより、個人の能力を発揮してもらい、事業成長につなげることを目的とした健康経営の施策として、興味を持つ人も多いでしょう。ここでは、なぜ健康経営の一環として、睡眠課題の解消が役立つのか、その理由について詳しく解説していきたいと思います。睡眠不足の健康リスク睡眠不足が続くと日中の集中力不足や倦怠感、軽い記憶障害などメンタル面での影響がありますが、最近の研究では生活習慣病と密接な関係があることが分かってきています。(睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省))睡眠時間が短い場合、食欲を抑えるホルモンの分泌が少なくなり、食欲が増大します。加えて長時間労働などにより食事が不規則になることで、より肥満のリスクが高まります。また、睡眠不足が続く場合、交感神経が優位となり血圧が高い状態が続くため、高血圧症のリスクが高まる恐れもあります。さらに、睡眠不足は血糖値のコントロールを担うインスリンの働きも阻害するため、糖尿病リスクも高まります。こうした睡眠不足に起因する様々な体の不調が蓄積されることで、結果的に生活習慣病の罹患リスクが高まります。睡眠と生産性への影響人間の健康に大きく影響する睡眠ですが、労働生産性への影響も大きくなっています。睡眠不足がもたらす業務への影響として、以下のようなものが挙げられます。業務の正確性・判断力の低下睡眠には身体や脳の機能を回復させ、リセットする効果があります。そのため、十分な睡眠を取れずにいると、集中力や判断力が低下し、業務における正確な意思決定に悪影響を与える可能性があります。創造性の低下脳は眠りの浅いレム睡眠時に、取得した情報を結びつけ、創造的な思考を行うためのプロセスを実行します。そのため、睡眠が不十分な場合、新たなアイデアの創造や、問題解決能力の面で影響が出る可能性があります。ストレス耐性の低下睡眠はメンタルヘルスの面でも密接に関係しています。睡眠はストレス反応に関わるストレスホルモンの調節に関連しており、良質な睡眠を取ることで、ストレスを軽減することができます。そのため、睡眠不足が続くと仕事のプレッシャーに対処することが難しくなり、心身のバランスを崩すことにつながります。これらの労働生産性と睡眠の関連性に関しては、東京医科大学・慶應義塾大学の共同研究チームにより、数値的にも明確に示されています。この研究によれば、睡眠不足による日本の経済損失はおよそ7.5兆円にのぼることが示されたほか、睡眠不足の年代別の影響として、若い世代(33歳以下)への影響が最も強いことがわかりました。出典:PR TIMES 株式会社こどもみらい 「睡眠と生産性の関係」日本が抱える睡眠課題OECDの調査によれば、日本の睡眠時間は7時間22分で、その他調査対象となった33カ国の中で最下位となっています。また、同じくOECDの調査によれば、日本の時間あたりの労働生産性は52.3ドルでOECD加盟国38カ国中30位であることがわかっています。※出典:日本生産性本部「労働生産性の国際比較」 経済協力開発機構(OECD)Gender data portal 2021 また、世界経済フォーラムの調査によれば、平均睡眠時間が長い国のほうが一人あたりのGDPが高いことが分かってきました。出典:世界経済フォーラムこの図で見ると日本は一番下に位置しており、生産性の低さが分かります。日本は世界と比較しても睡眠時間が短く、かつ生産性の低い国なのです。実際、睡眠時間がどのくらい生産性に影響するのかについて、アメリカのシンクタンクが調査を行っています。その結果、7〜9時間睡眠の人に比べると、6〜7時間睡眠の人は生産性の損失が1.5ポイント高く、6時間未満の人は2.4ポイント高くなることが分かりました。これは、労働時間に換算すると6時間未満の人は年6日、6〜7時間の人は年3.7日分の労働時間を失っていることになります。この事実は従業員を雇っている企業にとっても、従業員本人にとっても良い結果をもたらしません。日本の睡眠時間が短い理由では、なぜ日本の睡眠時間は短くなっているのでしょうか。その理由としては以下が考えられます。労働時間の長さOECDの調査によると、日本の平均労働時間は減少傾向にあります。しかし、この統計には短時間労働者も含んでおり、実態としては減少していないと指摘されています。また、週休2日制の影響で平日の労働時間が伸びていることも問題として挙げられています。統計としては減少傾向にあるものの、まだまだ日本は働きすぎだと考えられます。通勤時間の長さ「平成28年 社会生活基本調査」によると、日本の都市部で働く人たちは通勤時間が長い傾向にあります。そのため、残業時間が短くても、移動に時間が取られ、相対的に睡眠時間が短くなっているようです。スマートフォン等の普及スマートフォンやPCが普及したことにより、睡眠時間に影響が出ていることも指摘されています。寝床に入ってからもスマートフォンなどを見ている時間が長く、睡眠時間が減少しています。また、ブルーライトの影響で寝付きが悪くなったり、睡眠の質が悪くなることも調査によりわかってきています。組織としての睡眠課題対策従業員の生産性に大きく関わる睡眠への対策は、企業にとても重要です。ここからは睡眠課題への対策として有効な企業の取り組みについて紹介していきます。フレックスタイム制・勤務間インターバル制度フレックスタイム制はコアタイムを定めて、コアタイム以外の時間については本人の希望に応じて自由に調整できる制度です。これらの制度は、睡眠時間の調整に役立つものです。残業で夜が遅くなった場合、従業員自身の判断で翌日の始業を遅らせることで睡眠時間を担保できます。勤務間インターバル制度は、前日の退社から翌日の始業までに一定の休息時間(インターバル)を確保することを定めた制度です。この制度により、残業が発生した場合でも翌日の出社時間を遅らせることで、労働者の健康を守ることが目的とされています。勤務間インターバル制度は働き方改革関連法案で企業の努力義務となりました。出典:勤務間インターバル制度をご活用ください-東京労働局HPパワーナップ制度・シエスタ制度パワーナップ制度やシエスタ制度も、いわゆる昼寝の時間を定めた制度のことです。業務時間中に15〜30分程度の昼休憩を取ることが可能です。睡眠時間の調整はもちろん、残業していないタイミングでも、昼寝をすることで業務効率の上昇に寄与するとされ、推奨されています。米国ではGoogleやナイキなど世界的な企業で取り入れられています。産業医面談従業員の業務生産性に大きく関係する睡眠の問題にも、産業医を活用できます。産業医は睡眠について、企業側には睡眠環境をよくするための職場環境や業務環境、インターバル制度をはじめとした制度に対するアドバイスなどを行います。また、睡眠に関する健康教育を実施することで、企業全体の睡眠リテラシーを高めます。また、コロナ禍によりリモートワークが普及したことで、睡眠時間が改善傾向になったこともあり、場所にとらわれない働き方も有効と考えられます。在宅での仕事の場合、通勤時間がかからず、睡眠に当てる時間を増やすことができます。自社の従業員の勤務状況を把握し、適切な制度を導入していきましょう。セルフケアを促す睡眠研修の一例労働生産性と大きく関係し、組織としても対策が必要な「睡眠」。しかし、睡眠はあくまでプライベートな時間のため、制度を充実させるだけでは改善が難しい場合もあります。そのため、組織として従業員に対して、セルフケアを促すことも必要になってきます。以下では、睡眠課題を解決するために必要なセルフケア方法の一部をご紹介します。1:飲酒の抑制寝酒は、寝つきを良くするように思われるかもしれませんが、意識を失っているような状態になるだけで、睡眠の質を悪化させる習慣といえます。睡眠が浅くなるだけでなく、アルコールの利尿作用の影響で早朝目が覚めてしまうことも多く、これによって睡眠が中断され、質がさらに悪化します。お酒は寝る3時間前くらいまでに終えるように支援するとよいでしょう。2:食事の見直し深夜など不規則な時間の食事は睡眠の質に影響を与えます。睡眠の質を妨げないようにするには、就寝前3時間までに食事をしておく必要があります。残業などで夜が長い場合は間食などをうまく利用し、空腹すぎず満腹すぎないお腹の状態を作りましょう。組織としては、オフィスにいても食事が取れるように、社食や惣菜を用意するなど適切な時間に食事がとれるような支援を行うことも可能です。3:睡眠環境の改善睡眠に影響を与える環境要因として、明るさ、温度、湿度が挙げられます。明るさについては、寝室の明かりは薄ぼんやりと形が分かる程度が最適です。暗すぎると逆に不安感を引き起こす場合があり、適度な明るさがリラックスを促進するためです。遮光カーテンを使用している場合でも、室内灯を利用して調整するよう指導しましょう。温度は、夏場は28度以下、冬場は10度以上がよいとされています。エアコンなどの空調に加え、寝具などで調整しましょう。また、湿度は通年で50%程度がよいとされています。従業員個人の睡眠リテラシーを上げることも必要上記で挙げたものはあくまで一例であり、睡眠の質を上げるための生活習慣はまだまだたくさんあります。セルフケア方法の周知はもちろん、これまで紹介してきたような睡眠不足のリスクなどについても周知することで、従業員の睡眠へ意識を変容させることができます。具体的な睡眠研修の内容については、契約している産業医などに相談してみるとよいでしょう。睡眠は従業員の健康、業務パフォーマンスに大きく関連しているため、改善を行うことは健康経営の施策としてとても有効です。従業員の睡眠時間の確保、睡眠の質を向上させるために、今回ご紹介した制度や知識をぜひご活用ください。当社では、産業医をはじめた経験豊富な専門職人材の紹介サービスや、専門職による業務サポートを行っております。研修内容はもちろん、健康経営の推進にお悩みがございましたら、まずはご相談ください。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2F%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2FEj22szh%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E