#リモラブ の復習9&10話目。復職の難しさと、産業医を解任する理由

2020年12月23日 更新 / 2020年12月23日 公開
産業医とスムーズな連絡・共有

おはようございます、産業医の山田です。

#リモラブ ついに最終回を迎えますね。本シリーズも9話目と10話目の合併号としてこの記事が最後になります。これまでドラマの中で登場した産業医業務のキーワードについて解説してきました。そして最後のキーワードは「復職」と「産業医の解任」です。

手縫いのぞうきんが、間をとりもった。富近先生メリークリスマス!

ひとつめのエピソードは、青林の元恋人であり営業部の我孫子が感染症対策チームから外れることになった。もともと営業部で産休していた大島さんの代役であったところ、復職することになったから。健康管理室での申し送りでも「営業部の大島さんが復職するのでサポートを」と産業医・大桜美々が言っていました。

「復職するなら普段通りの仕事をするだけでは?」

いいえ、復職にあたっては健康管理として気を付けなければいけないポイントがいくつかあります。特に復職する従業員の部門長、人事、産業医の連携が特に必要になってくる業務です。解説しておきましょう。

ふたつめのエピソードは、カネパルの分社化によって専属産業医・大桜美々が業務委託になるのでは?という衝撃の展開。産業医であっても企業から解任されることがあります。具体的にどういったケースなのか、シリーズ最終話としてふさわしいこのテーマについてもお話します。

メンタルヘルスによる休職・復職者対応の落とし穴

まずは恒例のあさらいです。人事労務の方でも誤解していることがあるので、従業員であれば知らない方が多いかと思いますが、休業と休職は異なる制度です。

休業と休職の違い

休業とは、働く意志はあるけれど会社都合または本人都合で働けない理由があるときに使われる制度です。

たとえば、#リモラブ 9話目で話題にあがった産休(正式には産前産後休業)は休業制度として、労働基準法第65条に規定されています。他には、新型コロナウイルスの流行により多くの飲食店が休業せざるを得ない状況となりました。この場合は、会社都合で従業員が休業しなければならないため一定の給与補償が必要です。

一方で休職とは、法律上の規定はなくあくまでも企業毎に定められた福利厚生制度です。

近年では休職理由の約60%がメンタルヘルスとなってますね。#リモラブ でも少しメンタルヘルスに関するエピソードがありましたので、メンタルヘルスによる休職からの復帰について、どのように産業医が関わっているのかをこのあと解説しましょう。

メンタルヘルスによる休職は、復職の前後が難しい

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産業医は従業員が健康で安全に働くための健康管理を常に心がけていますが、やはりどうしても一定の割合(約100人に1人)で休職に至ってしまう従業員は発生します。そのため休職・復職者の対応も産業医にとっては重要な業務です。そして数ある産業医の仕事の中でも、人事や部門長との連携が求められる難易度の高い仕事でもあります。

そんな中で起きる休復職者対応での代表的な3つの落とし穴をご紹介しておきましょう。

落とし穴1:主治医の診断書だけで復職判断は不十分

これまでのシリーズでも何度かお伝えしている通り、主治医と産業医では同じ医師であっても役割は異なります。復職判断において人事や部門長の方にも理解していただきたいことは、「仕事は日常生活よりも負荷が高い」ということです。

主治医は従業員本人の疾病性から日常生活が送れるかどうかを判断しています。一方で産業医は、日常生活に加えて仕事ができるかどうかまで含めて判断しています。

もちろん主治医によっては仕事ができるかどうかまでを判断してくださる方もいらっしゃいますが、従業員本人がどんな仕事をどういった職場環境で、どれくらいの目標を課せられているのか、といったことまで考慮して復職判断することは主治医にとっては難しいことです。

そのため企業の中のことを理解している産業医が復職を予定している従業員と面談することで、これまで通りの仕事ができるかどうかの判断をするのです。

青林と五文字、これまでの話では見られなかったピリついか空気感があります。

落とし穴2:週5働ける体力・集中力がない

「フルタイムでの勤務はまだまだ難しいけど、週3で時短勤務ならできる」

従業員本人からこのような申し出があった場合でも、早々に復職に踏み切らないように注意してください。社員として復職するということは、休職前と同じように週5の通勤とフルタイムの業務ができるだけの体力や集中力が戻っていることが必要です。

そこで企業によってはリハビリ出社制度を設けているところもあります。この際にも中途半端に業務を行ってしまうと、復職したものとみなされ従業員には傷病手当金が支払われず、会社は賃金を支払わないといけないことにもなります。

そのため復職にあたっては産業医に加えて、人事と部門長が連携して適正なポジションを用意しておくことも重要になります。

落とし穴3:以前と変わらない職場環境で再度休職

メンタルヘルスによる休職は、仕事とは関係ないプライベートが原因のこともありますが、人間関係を含む職場環境が要因であることもあります。その場合、休職前と変わらない職場環境ではメンタルヘルス不調を再発してしまい、繰り返し休職が発生します。

復職したばかりの従業員には、業務量の調整をサポートしたり通院のための時間的な配慮を行うことは不自然ではありません。また座席の配置への配慮も再発防止に役立ちます。

もともと人間関係が原因であることが疑われる場合には、人の目が気にならないように視線の集まらない席に移動したり、パーテーションを用いてパーソナルスペースを確保してあげる。あるいは耳栓やイヤホンをしながらの業務を認めることも有効です。

復職者自身だけでなく、他の従業員からも新たな休職者を出さないためにも、職場環境の改善や配慮を普段から取り組んでおくことを産業医として助言しています。

できない産業医は解任される時代がきた

そして#リモラブ 最終話では、なんと産業医・大桜美々がクビになって業務委託になるのでは?というエピソードが飛び込んできました。カネパルが分社化を考えており、従業員が1,000人を超えなくなるので専属産業医を選任する義務がなくなるためです。

とはいえ、従業員数が1,000人未満の会社でも産業医の選任は必要です。義務がなくなるのはあくまで常駐義務のある専属産業医だけ。

カネパルのような規模の会社では嘱託産業医であっても、週2〜4程度の頻度で産業医業務を実施する必要があります。社内で「大桜美々先生を守る会」の署名運動が起こったように、企業から求められている産業医は分社化したとしてもカネパルに残っていくでしょう。

署名運動のおかげもあって、分社後も産業医は継続。岬さんの明言にはしびれました。

産業医を解任する理由

産業医はひとつの事業所(オフィスや店舗)で50人以上の従業員がいれば選任しなければいけません。一度選任した産業医はずっとその会社で産業医を続けるのかと言うと、そんなことはなく何らかの理由で企業から解任されることがあります。

解任理由1:最低限の産業医業務を実施しない

産業医には法律上産業医がすべき仕事がいくつか定められています。この中でも最低限必要な業務さえも実施しない産業医がいることは事実です。

たとえば、ストレスチェックの実施者にならない。
たとえば、健康診断後にハイリスク者への面談を実施しない。
たとえば、安全衛生委員会に積極的に参加しない。

少なからずこういった最低限の仕事をやってくれない産業医を選任しつづけることは、企業としても労務リスクに直結します。

解任理由2:労務管理への理解不足

産業医は医学的な知見から従業員の健康と安全を守ることが仕事ですが、同時に企業成長に資することも重要です。そのため、労務管理の法律や福利厚生の制度についても十分な理解が必要です。

今日お話したような休業制度、休復職者への対応。あるいは今年発生したように緊急時の感染症対策も、専門家として助言指導できなければいけません。

解任理由3:企業フェーズに合わない

さきほどの2つはネガティブな理由でしたが、ポジティブな理由で産業医の交代が必要になることもあります。#リモラブ復習5話目でお話したように、産業医は従業員だけを優先するわけにいきません。企業の成長につながる能力が産業医には求められています。

産業医を選任したばかりの50人の企業と、急成長中で上場を目指している企業では、産業医がやらなければならない業務は変わります。業フェーズと産業医の能力についてまとめましたので参考にしてみてください。

マンネリ産業医は淘汰されていく

さて#リモラブ復習シリーズも終わりが見えてきました。これまで産業医の業務にスポットをあてて、従業員の健康と安全を守る仕事をポジティブに説明してきました。

最後にこれからの産業医についてお話させてください。

産業医は、今後も社会情勢によって求められる仕事がどんどん変わっていきます。産業医は結核による感染症対策からはじまって有業業務への対応が主でした。それからサラリーマンの長時間労働で脳心臓疾患が増えていき、不景気になるとメンタルヘルスに不調をきたす従業員への対応が必要になりました。

そして今、裁量労働制やテレワークなど働く場所と時間が固定されない働き方が誕生し、今後は副業する労働者の健康管理が問題にあがってくるでしょう。

こうした新しい問題に対しては、産業医や保健師のような産業保健の有資格者が頭を使って解決策を設計していくべきです。

しかし、法律に書かれている業務だけをこなすだけであったり、いつまでも紙や手書きがラクだと言ってデジタル化を拒んでような産業医では、頭を使った高価値業務はできません。私たち産業医は時代に合わせて健康管理をアップデートしていかなければいけないのです。

健康管理室のみなさん。リモラブおつかれさまでした!

#リモラブ が世の中に与えた影響

今日まで#リモラブ復習シリーズをお読みいただいて、ありがとうございました。

地上波のドラマで産業医が主人公に抜擢されることは初めてのことですね。健康管理はこれまであまり注目されてこなかった仕事ではありますが、2020年の情勢もあってみんながその重要性を再発見したことでしょう。そして#リモラブは専門家だけでなく、ふだんから企業で働くひとと組織にも影響を与えてくれました。

健康管理は特別なことではありません。
当たり前のことですが、これまでないがしろにされていたことも事実です。

このドラマをきっかけに、これまでの企業での健康管理(カンパニーケア)の常識が変わっていくことを願って、これからも健康管理の記事を届けていきます。それではまた。

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