産業医とスムーズな連絡・共有
2022年6月13日 更新 / 2020年12月16日 公開

#リモラブ の復習8話目。なぜ、企業が生活習慣病の予防に取り組むのか?

おはようございます、産業医の山田です。

#リモラブ 8話目での産業医業務のキーワードは「生活習慣病」。ストレスに弱い人事部の五文字(ごもっちゃん)がマスクかぶれを起こしてしまいましたが、その診察おわりに「はいこれ、生活習慣病予防教室の従業員リスト。」と産業医・大桜美々とUSBの受け渡しをしていました。また最後のシーンも生活習慣病予防教室の案内(紙)をシュレッダーにするシーンが見られました。

「生活習慣病なんて、それこそ個人のプライベートが原因の病気。産業医が予防に取り組む必要性はあるのか?」

まさにそこです。企業の健康管理は従業員個人の生活にどこまで踏み込んでいいのか?逆に踏み込むべきなのか?について生活習慣病予防を一例に解説しましょう。

今週の富近先生の明言「はじまる恋もあれば、終わる恋もある。結婚という形に変化しなければ。」

生活習慣病による企業リスク

すでにご存知だとは思いますが、生活習慣病についておさらいしましょう。

生活習慣病とは、高血圧や糖尿病、肥満、脂質異常症といった疾病です。たとえば、最高血圧が160以上ある方は一般の方に比べて心臓発作で亡くなる確立は10倍以上になる、といった研究もすすんでいます。

これらの疾病の要因は、運動や食事、喫煙、ストレスといった日常の生活習慣によるものです。そして、生活習慣病が進行すると日本人の三大死因であるがん、心臓病、脳血管疾患へのリスクが高まります。

生活習慣病のイメージ

企業のリスク1:もしエース社員が生活習慣病になったら

生活習慣病は40代〜60代の、企業内で中心的なポジションにいる年齢の従業員こそ進行する疾病であることが分かっています。たとえば、もし営業部の稼ぎ頭であるエース社員が血圧160を超えていた場合にどんな影響があるのでしょうか。

まずは治療や通院により会社を欠勤することが増えてきます。同時に体調不良のまま仕事を続けたとしても本来の生産性を発揮できなくなってきます。(アブセンティズムとプレゼンティズム)何よりも大きなリスクは、営業車を運転中や客先での商談中に倒れてしまうことがあっては、企業ブランドの毀損は免れませんよね。

健康リスクは従業員の個人的な課題、だけに収まらず企業成長にブレーキをかけてしまう課題でもあります。一定以上に健康リスクが高くなった従業員には、経営者や人事から予防策を講じる必要がでてくる一つの事例です。

企業のリスク2:生活の大部分を職場で過ごしている

生活習慣病は、食事や運動、喫煙、ストレスといった日常の要因がいくつも積み重なることで引き起こされます。さて、ここで考えてみてください。あなたの会社で働く従業員が生活の多くの時間を過ごすのはどこでしょうか?

はい、職場です。従業員が働いているオフィスと仕事を行う場所です。

生活習慣病がどのように発症して、どれくらい進行するのか、は人間関係を含む職場環境によって大きく左右されます。企業には安全配慮義務が定められており、従業員が健康で安全に働ける環境を整備しなければいけません。

以下に生活習慣病を悪化させる職場での習慣を6つピックアップしました。人事労務の方はひとつひとつチェックしておいてください。特にテレワークがはじまってから生活習慣病を悪化させる習慣が増えています。

一人暮らし歴が長いはずの青林、なぜかハムを開けられないほどに料理が苦手。(左利き)

生活習慣病を悪化させる職場の習慣

夜遅くまでの残業

日常的に残業する、あるいは帰宅する時間が遅くなることで夕食の時間が遅くなる習慣は気を付けてください。夜遅くの食事は胃腸に負担がかかり消化不良を起こすだけでなく、太りやすく糖尿病につながるリスクが高まります。

昼休憩が短い

仕事に追われて十分な休憩時間がとれない場合や、テレワークによってオンオフの切り替えがなくだらだらと仕事をしている場合も要注意です。昼休憩をきちんと取らないと、短時間で空腹を満たすために、糖分の多い栄養ドリンクや菓子類で小腹を満たす傾向があるからです。糖尿病や脂質異常症へのリスクが高まります。

通勤がなく運動不足

通勤による運動量は意外にも多いです。東京や大阪の都市部に住んでいて電車通勤をしている方であれば2000〜3000歩は歩いており、加えて階段の上り下りも加わります。テレワークの開始当初は通勤がないことでストレスが軽減されるのですが、長期間(3ヶ月以上)続くと、運動不足による影響で肥満症へのリスクが高まってきます。

人間関係のトラブル

職場においてストレスがかかる場面は様々なありますが、人間関係によるストレスは要注意です。ストレスを解消しようとして、暴飲・暴食に走ってしまう傾向があります。特に過度な飲酒はストレスを解消するどころか、精神的にも身体的にもストレスをためてしまう行動です。

大量の飲酒

当たり前ですが、大量の飲酒を続けることは肝機能障害をはじめ、糖尿病や高血圧、心臓疾患、脳血管疾患につながります。お店ではなくZoomなでの行うリモート飲み会は、手軽に開催できるとともに時間制限がないので、ついつい飲みすぎてしまう要注意なイベントです。

過度な集中と緊張の継続

長時間の集中作業や緊張感の継続は、自律神経、特に交感神経の緊張を高め血圧上昇の要因となります。テレワークによるオンライン打ち合わせやWEB商談は、従来の対面での会議に比べて高い集中力と緊張状態にあることがいくつかの研究で言及されています。血圧の上昇が長期化することは、突然死につながる心疾患や脳血管疾患を発症する恐れがあります。

英語の教師で、モンゴル語・ベトナム語・ジャワ語と青林の語学堪能ぶりはここからきた。青林のおばさん。

生活習慣病への企業の対策

それでは生活習慣病のリスクが高い従業員に対して企業はどのような対策をとるべきでしょう。よくある対策のひとつに特定健康診査(通称メタボ健診)と特定保健指導があげられますね。

平成20年4月にはじまった制度ですが、その効果には賛否が分かれています。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64643550V01C20A0CR8000

そこで産業医目線でおすすめしたい、企業の生活習慣病への対策を解説して今日の#リモラブ 8話目の復習をおわりにしましょう。

健康診断と特定健診はちがう制度

よく誤解されてしまうので、ここもおさらいの意味をこめてご説明しておきます。企業が毎年実施している一般健康診断とメタボ健診と呼ばれる特定健康診査は、目的も法律の制度もまったく違う「健診」です。

 一般健康診断特定健康診査
法律労働安全衛生法第66条高齢者の医療の確保に関する法律第18条、国民健康保険法第82条
対象者すべての労働者40歳〜74歳の被保険者・被扶養者
受診義務強制規定なし
実施者事業者(企業)保険者(健康保険組合)
問診過去の仕事について喫煙・服薬
罰則実施しない場合に刑罰後期高齢者支援金の加算
保健指導事業者に努力義務保険者に実施義務
※費用は自己負担

実際に医療機関で検査する項目には共通する項目が多いため、人事から見ると混同してしまいがちです。しかし企業としての対策という観点では、一般健康診断を十分に活用することからはじめましょう。

産業医がおすすめする生活習慣病4つの対策

健康診断結果の分析

一にも二にも、生活習慣病の対策は健康診断結果を活用することからはじまります。産業医から再検査が必要であると指示された従業員には、再検査を受診しやすい環境をつくります。受診費用は自己負担であっても、受診日は勤務扱いにするなど労務管理上の措置をとって従業員の背中をおしてあげてください。

また実際の職場環境、たとえばテレワークや部署の移動といった働き方の変化に注目して、健康診断結果のフィードバックを送るようにしてみてください。従業員自身が自分事で振り返ることができるので、健康意識の向上につながります。

定期的な健康アセスメント

これまでは全員がオフィス勤務をして、毎日同じ時間に同じ場所で顔を合わせていたので自然と体調に不安を抱える従業員を見付けることができていました。しかし、一部でもテレワークを導入している企業では体調不良に気付くタイミングが遅れてしまっています。

以下のようなカンタンなチェックリストでいいので、定期的に(週1〜週2)健康状態を評価してみてください。健康診断の結果や、ストレスチェックの結果をあわせて分析することで生活習慣病のリスクが高まっている従業員を早期発見できるようになります。

禁煙対策

最も健康に害を及ぼす生活習慣が、喫煙です。社員が喫煙をする原因として、仕事によるストレスの他、喫煙所が情報交換の場になっていたり、社員のコミュニケーションの場となっている場合が考えられます。

また喫煙は二次被害(受動喫煙)だけでなく三次被害(たばこの臭い)まで広がり、生活習慣病と同様に企業のリスクになります。個人の健康の問題にとどまらないことを理由に禁煙の重要性を説くことも、人事の大切な仕事です。

過重労働対策

そして長時間労働、過重労働への対策です。単に仕事量が多いことが理由の長時間労働は、残業時間を管理することが第一の予防策になります。一方で、高度な技術力や注意力が求められる仕事では決して残業をしていなくても、身体的・精神的に疲労がたまり過重労働となってしまうケースがあります。

ストレスチェックの結果を分析することで、ストレスのかかった従業員や部門を見付けることができます。健康診断だけでなく残業時間やストレスチェックといった複数の健康情報を組み合わせて対策することが理想です。

営業部トップを目指すことにした岬さん。頬には「よいお年を」のシール。

3つの恋の行方と、産業医の仕事

今週まで見続けた#リモラブ ですが、ラブストーリーはついにクライマックスに近づいてきたようですね。産業医・大桜美々は週をおうごとに産業医としての業務が描かれることがなくなってきたので、この記事でもエピソードは直接関係ない産業医業務を解説することも増えてきました。

しかし、産業医が従業員の健康を創る仕事はまだまだあります。どんなささいな業務でもいいので、健康管理室でのエピソードが流れることを願って今日の#リモラブ 8話目の復習をおわります。それではまた。

執筆・監修

  • 山田 洋太
    この記事を書いた人
    山田 洋太
    金沢大学医学部卒業後、2008年久米島で離島医療に従事。
    2010年慶應義塾大学MBA入学。2011年株式会社iCAREを設立。2012年経営企画室室長として病院再建に携わり、病院の黒字化に成功。
    2017年厚生労働省の検討会にて産業医の立場から提言。2018年より同省委員として従事。

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