#リモラブ の復習7話目。産業医のハラスメントへの関わり方

2020年12月9日 更新 / 2020年12月9日 公開
産業医とスムーズな連絡・共有

おはようございます、産業医の山田です。

#リモラブ 7話目ではついに産業保健に関するエピソードがなくなってしまいましたね。専属産業医・大桜美々のプライベートが多く描かれるようになり、健康管理室が舞台のシーンも少なく産業医としては少し残念な展開ですね。

産業医の業務に関係するエピソードがなかったので、一見すると関係なさそうな「ハラスメント対応」について産業医目線から解説してみましょう。関係なさそうで、実務の中ではよく発生する産業医業務です。

大阪出張のために、健康診断とPCR検査の実施。コロナ禍では必要な措置です。

ハラスメント事案でも、産業医面談の原則は変わらない

代表的なハラスメント事案は、パワーハラスメント・セクシャルハラスメントの2つが企業として対策必須ですね。この他にも、職場内で発生するハラスメントは徐々に拡大しており、スメル(香水・タバコ・体臭)やマタニティ・育児に関するハラスメントも企業としては何らかの対策を考えなければいけません。

産業医としてはハラスメント事案に応じるシチュエーションはいくつかあります。

たとえば、従業員が人事にハラスメントの相談を持ちかけた際に、人事としての対処方法を産業医に質問したり。管理職向けにハラスメント研修を依頼されることもあります。あるいは、長時間労働などの産業医面談時に従業員からこっそりと相談されることも。

このような場合、企業と労働者の中立性を保っている産業医としてはどのように関わればいいのでしょうか?

そもそも、ハラスメントに対応する理由は?

2020年5月に労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)が改正されたことから分かるように、近年ハラスメントに対する規制は厳格化されてきています。

なぜパワハラやセクハラといった類型に関係なく、企業としてなぜハラスメント対策をとらなければいけないのでしょうか?

基本的な考え方として「仕事以外の要素で、本来の評価が著しく下げられること」はあってはならない、という共通認識があるからです。「仕事以外の要素」とはたとえば性別や年齢、妊娠、育児、外見、宗教などがあたります。

つまり仕事以外の要素で労働者の評価を著しく下げてしまうような行為がパターン化されて、パワハラやセクハラといった形になっているのです。

そしてハラスメントによって、ハラスメントを受けた労働者が本来発揮できたであろう仕事の成果が損なわれることは企業として見過ごすわけにはいきません。これが、ハラスメント対策を企業が実施しなければならない理由です。

さらっと誕生日に花束を送る朝鳴部長。これを自然にできるとはさすがミッチーです。

産業医として対応すべきこと、してはらないこと

産業医の仕事としては、健康にリスクを抱えている労働者を診断するなかで「医学的見地で体調不良が発生していないか?」と「このまま今の仕事を続けて大丈夫か?」を確認することです。

ですのでハラスメント事案に対するときにもこの原則は変わりません。

企業側(人事)から質問を受けた時であっても、労働者自身から相談された時であっても、感情的に一方の視点から状況説明されることが考えられます。企業と労働者の中立性を保つためには対応すべきこと、してはならないことの境界線は事前に決めておきましょう。

まず対応すべきことは「労働者の体調不良と就業可否の確認」です。

ハラスメントにより心身の不調を抱えている可能性があります。医学的見地からどういった症状を抱えており、現状のままで仕事ができるのかどうかの確認が最優先です。

その際に、体調不良の原因がハラスメントと決めつけることは要注意です。客観的にヒアリングを重ねることでハラスメント以外にも要因がないかどうかを探ります。

つぎに実行すべきは「誰が何を言ったのかやりとりの記録」です。

産業医は相談を受けている事案がハラスメントかどうかを判断する立場にはありません。ハラスメントかどうかは企業が判断することですので、人事のサポートをする意味で詳細に記録をとっておきます。

また記録を残していない場合に、言った・言わないが発生してしまうことも。あくまでも産業医としては健康管理・体調サポートのための記録を残しておきます。

そしてNGな対応は「ハラスメントであることの判断・明言」です。

繰り返しになりますが、ハラスメントかどうかは企業が判断することです。産業医としては労働者の体調不良の原因が何なのかを判断するにとどまります。それに、ハラスメントは当事者が感情的になりやすいものです。一方だけの説明ではハラスメントかどうかは判断できません。

そのため労働者から「これ、ハラスメントですよね?」と聞かれた場合でも、ハラスメントの定義を説明するまでにとどめておきます。

やっぱり仲が良い、ごもっちゃんと青林。ソーシャルディスタンスは注意されなくなりました。

ハラスメント防止法に、人事として対応する3ステップ

ここまでは産業医としての対応について説明しましたが、ハラスメント対応としてはごく一部です。

企業として、人事として、ハラスメントへの対応には大きくわけて3つの段階があります。

  1. ハラスメントへの方針決め
  2. ハラスメントの予防と早期発見
  3. ハラスメントの再発防止

詳しくは以下の記事でも解説していますので参考にしてみてください。

産業医が対応できるのは3段階のうちの3番目「再発防止」にあたる部分だけになります。それよりも重要な1と2については人事として対応しなければなりません。

またこれら3ステップは2020年5月に改正されたパワハラ防止法と厚生労働省のガイドラインに沿ったものです。大企業では2020年6月から義務化されており、中小企業でも2022年4月からですが、対策して損することはありませんので早いうちに準備しておきましょう。

方針決め:社内規定と懲罰規定の明文化

ハラスメント防止法に準拠する実務のポイントをいくつかご紹介しておきましょう。

ひとつめのステップは「ハラスメントへの方針決め」です。ここでは社内規定を作ると同時に、懲罰規定を盛り込んでおきます。

ハラスメントが発生することは確かに労務上に問題ですが、もうひとつ人事の頭を悩ませる問題がハラスメント加害者への処罰です。もしハラスメントに対応する懲罰規定が就業規則や服務規程に書かれていない場合、ハラスメント加害者に懲戒すると逆に企業が訴えられてしまうこともあります。

ハラスメントへの懲罰規定があること自体が、企業の姿勢を見せて抑止力につながることも考えられるので、少なくともパワハラ防止法の範囲内に収まる社内規定を早々に作っておくべきです。

実際にハラスメント事案が発生したあとで事後的に方針を決めて対応することも難しいからです。

早期発見:残業とストレスチェックで見付ける仕組み

ふたつめのステップ「予防と早期発見」においては、相談窓口の設置と社員研修の実施が法律で規定されています。

一方で産業医としてはもうひとつ、残業やストレスチェックのデータを使って早期発見できる仕組みづくりが効果的であると考えます。

たとえばパワハラにあっている労働者は、長時間労働になりがちであったり遅刻や欠勤が目立つことが考えられます。特に残業が多い長時間労働は、産業医や保健師による面談をセッティングしやすい理由ですので、ぜひ活用してみてください。

再発防止:ハラスメント以外の原因を探る

みっつめのステップ「再発防止」では、当事者へのヒアリングから客観的な状況を明確にすることが大切です。

特にハラスメントの発生は個人の相性の問題ではなく、職場環境にも原因がないかどうかを探る視点をもつことです。長時間労働が慢性化していたり、仕事に偏りが発生していたり、職場の設備(換気や温度調節)に問題がないか、テレワークで社内コミュニケーションが取りづらくなっていないか、などです。

体調不良を起こしてしまった労働者の直接の原因がハラスメントであったとしても、間接的にハラスメントが起きやすい状況を作ってしまっている他の原因があるかもしれません。

このことについては産業医として助言・指導できることもありますので、人事労務の方は選任している産業医に相談をしてみることをおすすめします。

社内でネクタイを直す産業医。1話目の厳しさからは想像がつかない変わり様です。

来週こそは、#リモラブで産業医の仕事を見たい

冒頭にお伝えしましたが、今日のテーマは#リモラブの復習と言いつつ、まったくドラマのエピソードとは関係のないテーマを取り上げてみました。

しかしよくよく考えてみると、檸檬と草餅が社内でイチャコラしている風景は場合によっては周囲へのハラスメントにつながっているかもしれませんね。#リモラブ1話ではあれほどソーシャルディスタンスを叫んでいた産業医・美々先生も変わりましたね。

来週こそは、ひとつでも産業医の仕事が描かれることを願って。今週の8話目を視聴します、それではまた。

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