#リモラブ の復習6話目。海外赴任者、50人未満の支社の健康管理をはじめよう。

2020年12月2日 更新 / 2020年12月2日 公開
産業医とスムーズな連絡・共有

おはようございます、産業医の山田です。

先週は#リモラブがお休みだったため間が空きましたね。第6話目の復習では、「支社の健康管理」について取りあげましょう。

SNSの恋人・檸檬こと青林の意外な才能が垣間見えたエピソード。健康相談室「こころの相談窓口」にかかってきた電話は海外支社の現地社員。英語が通じない電話が次々とかかってくる中、ベトナム語・ヒンドゥー語・ジャワ語といった様々な言語にすべて対応する人事部所属の青林でした。

しかし、産業医は海外社員の健康管理までみる必要があるのでしょうか?産業医はあくまで事業所内の従業員の健康管理が職務です、海外支社、あるいは国内の支社は職務外ではないでしょうか?解説していきましょう。

海外支社は職務範囲外。とはいえ・・・

#リモラブ を視聴して、この記事を読んでいるあなたであれば解説は不要かと思いますが、あらためて産業医の職務範囲について説明しますね。

密です。それでも祝福せざるを得ない、健康管理室の仲間たち。

訪問する嘱託産業医と、常駐する専属産業医

企業には従業員が安全に健康に働ける職場環境をつくるために、産業医を選任して健康管理を担ってもらう義務があります。すべての会社に産業医がいるわけではなく、事業所(オフィスや店舗、工場など)に常時50人以上の従業員が働くようになると義務が発生します。

さらに人数が増えて事業所の人数が1000人(業種によっては500人)を超えると、専属産業医が必要となります。カネパルは本社に約1,100人が働いているので、大桜美々は専属産業医として常駐しています。一方で、精神科の富近ゆりは嘱託産業医ですので常駐せず、定期的に訪問しています。

海外支社は事業所外。だから産業医の職務範囲”外”

この「事業所」、という単位が従業員の健康管理にあたっては重要な考え方です。

産業医の選任だけでなく、ストレスチェックの実施や健康診断の労基署報告、衛生委員会の設置といった企業が実施すべき健康管理の義務のほとんどが事業所単位で決まっています。なぜ事業所単位かと言うと、企業の労務管理(健康管理以外にも労働時間や賃金を管理すること)を規制しているのが労働基準監督署だからなんですね。

ですので、産業医は事業所で働く従業員だけを対象に健康管理をすることが法律で定められていることです。そして企業は50人を超える事業所には必ず産業医を選任しなければなりません。

さて、それでは海外支社の場合はどうなるんでしょうか?

日本企業の海外支社では、日本の法律ではなく現地の法律の規制をうけることになります。もし現地に日本と同様の産業医制度があれば、現地で産業医を選任しなければなりませんが・・・実は日本のような産業医制度が整っている外国はほとんどありません。

選任義務があるのは主にフランスやドイツ。イギリスやアメリカ、北欧諸国にも選任義務はありません。もし興味がある方は、以下の資料を参考にしてみてください。

諸外国の産業医および産業保健サービス機関に関する制度(総括表)

得意先へのカレンダー配布を再開したい営業部。産業医にも協力を願います。

海外赴任者のための健康管理は、産業医として必須

日本の事業所で選任されている産業医として、海外支社の健康管理を見る必要性はありません。とは言うものの、実際には安全配慮義務を正しく達成するためには本社の産業医が関わることもあります。

中でも必ず健康管理するべきは、海外赴任者の健康リスクの評価です。極端な気候の変化や感染症など日本とは異なる環境によって健康リスクは高くなります。対策については、どこの国にどのような業務でどれくらいの期間で赴任することになるかによって変わってきますので、ここでは大きく3つの対策をご紹介しましょう。

ポイント1:派遣する人を選ぶ

まずは健康な人を派遣することが基本中の基本です。健康診断の結果を参考に派遣社員を選ぶのですが、近年は海外赴任者が高齢化しているケースが増えてきました。

業務上どうしても替えがきかなく高齢で慢性的な病気を抱えている人を派遣しなければならないときは、現地でも病院に通い治療を続けられるかどうかがポイントになってきます。

ポイント2:出国前の健康診断

海外赴任前の健康診断は、労働安全衛生規則45条の2で定められています。この健康診断の結果は必ず現地に持っていくように徹底しましょう。(もちろん英訳することを忘れずに)

また高齢者の場合には法定項目以外にもMRIなどを追加しておくと、現地でも生活習慣病の早期発見ができるようになり健康リスクを正しく判断できます。

ポイント3:赴任先特有の健康問題を教育する

海外赴任先によっては日本とは異なる健康問題が発生します。熱帯や亜熱帯地域での脱水症状や乾燥した地域での呼吸器疾患など自然環境の変化によって起こる健康問題や、衛生環境が悪いことから起こる感染症、あるいはメンタルヘルス障害です。こうした情報は、外務省海外安全ホームページ厚生労働省検疫所で最新情報を知ることができます。

現地での対処法をあらかじめ教育しておいたり、日本の産業医との面談を組めるように事前調整をしておくことがリスクヘッジになります。

第6話では、この他にも草餅と檸檬による壁ドンの応酬が見られました。

50人未満の支社の健康管理もはじめよう

支社の健康管理、という問題では海外支社以外にも日本国内にある従業員50人未満の支社や店舗の健康管理についても産業医や人事労務は考えなければいけません。

小規模な支社ならではの健康管理のハードル

従業員の健康管理を定めた労働安全衛生法では、多くの義務が従業員50人以上の事業所に課せられています。ということは、たとえば全社員が300人を超える企業であっても、本社と支社が10箇所あってそれぞれ30人が在籍している場合には、ひとつの事業所で50人を超えないので産業医が一人も選任されません。

また支社や店舗を広く展開している企業では、労務管理などのバックオフィス業務を本社で一括管理していることもあるため、事業所ごとに健康管理が行き届いていないことも珍しくありません。

具体的なハードルとその解決策をご紹介しておきましょう。

健康診断のハードル

「制度はあるけれども健康状態の把握はできていない」状態が起こりやすいのが支社の健康診断です。

健康診断は予約をとって病院で検査を受ければ終わりではありませんよね。従業員の健診結果がそろったら、就業判定を行い、産業保健スタッフによる保健指導や再検査のための面談も必要です。

しかし産業保健スタッフは本社に勤めているため、対面での保健指導・面談ができないためオンラインで実施する体制づくりが必要です。テレワークの普及によってオンライン対応が進みましたし、#リモラブ内でも大桜美々がオンライン産業医面談をしていまたね。

ストレスチェックのハードル

もし健康経営優良法人の取得を目指しているなら、50人未満の事業所のストレスチェックも認定基準に含まれているので実施しましょう。

ストレスチェックも健康診断と同様に実施後の評価が大切です。ストレスチェックサービスには集団分析がついてきますが、これを十分に活用できている企業はほとんどありません。ましてや産業医のいない支社では「高ストレス者がいたかどうか」だけしか見られません。

管理職向けのストレスチェックやラインケアの研修を行う必要があります。

過重労働のハードル

2019年の働き方改革関連法の改正により、長時間労働者への産業医面談の義務が強化されました。

これは従業員が50人であるかどうかは関係ないので、月の残業が80時間を超えて産業医面談を希望する従業員には、面談をセッティングしなければいけません。これもオンライン対応が進んだので実施されやすくなったはずです。

個人情報のハードル

最後に産業医として私がもっとも大きな課題だと感じるのが、個人情報のハードルです。

従業員の健康情報(健診結果やストレスチェック、面談記録など)は要配慮個人情報として、マイナンバー並に厳重な管理・活用が求められている情報です。産業医が本社にしか在籍しておらず、支社には健康管理の担当者がいない場合にはうかつに従業員の健康情報を共有するわけにはいきません。

産業医や健康管理を担当している人事労務が、遠隔地にいてもスムーズに健康情報を閲覧できる環境は絶対に整えて置かなければいけません。

この点については、テレワークが普及した今でも課題に感じている大手企業が多いでしょう。これまでのように紙やエクセルでの管理のままではクリアできないハードルですので、ペーパレス化・デジタルトランスフォーメーションを推進していってほしいと考えます。

まだまだ健康管理室での産業医の業務は続けてください。大桜美々先生。

もしかすると、もう産業保健の話題はなくなるかもしれない

#リモラブ 6話目ではついに草餅と檸檬が付き合うことになりましたね。やっと、ラブストーリーが始まるのかと楽しみにしている視聴者の方も多いと思いますが、産業医としては「もう産業保健のエピソードは映らなくなるのでは」と心配しています。

2週間ぶりの#リモラブ 第7話もドラマの隅々まで見て、解説記事を書いていきます。それではまた。

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