#リモラブ の復習1話目。産業医の”実際の業務内容”を詳しく解説

2020年10月21日 更新 / 2020年10月21日 公開
産業医とスムーズな連絡・共有

おはようございます、産業医の山田です。

いつも私たちのメディア「健康管理の最新常識」をご覧いただきありがとうございます。普段は、企業の健康管理を担当されている人事労務の方に向けて実務上のノウハウや法改正の対応などを解説しています。

今日は、ドラマ「#リモラブ」で主人公・大桜美々の仕事である「産業医」について実際の業務内容を、ドラマ第1話にでてきたエピソードをもとに解説したいと思います。

主人公・大桜美々の仕事は「産業医」
#リモラブ公式HPフォトギャラリーより引用

というのも、ドラマの最後のテロップに「産業医の職務の描写は実際とは異なります」と注釈が表示されました。

では「具体的にどこが実際の業務内容と異なっていて、正しい業務はどういったものなのか?」「自分の会社にいる産業医とは全然違うんだけど、どっちが本当の産業医の働き方なのだろう?」と疑問を持った方もいるかと思いますので、本記事でその疑問に答えていきます。

なお、「#リモラブ」はラブストーリーではありますが、ストーリーの内容や人間関係の考察などには一切触れないのでご了承ください。

産業医を選任しないといけない会社は、従業員数で決まる

#リモラブ、第一話の冒頭では唐突に産業医についての説明がありました。令和のドラマらしい演出ですね。

産業医とは、

従業員が健やかに働けるよう、環境を整え、健康を管理し、病気を予防し、指導助言する医師であり、1000人以上が働く企業には専属の産業医が常勤する。

普段なじみの少ない産業医という仕事について、20秒ほどの短時間で説明できており素晴らしい。実は産業医はすべての企業で常駐しているわけではなく、そもそも産業医がいない(選任されていない)会社もあります。

産業医を選任すべき会社の条件

企業(事業者)はひとつのオフィス(事業場)で50人以上の従業員が働く場合に産業医を選任する義務が発生します。(参考:産業医について教えて下さい | 厚労省HP

ですので、従業員数が50人未満の会社では産業医はいませんし、50人を超えている会社であっても小さな店舗ばかりで50人を超える事業場がないと産業医を選任する義務は発生しません。

また#リモラブの舞台であるカネパル(鐘木パルプコーポレーション)は従業員が約1100人ほどでしたが、3000人を超える事業場ではあれば2人以上を選任する必要もあります。

常駐する専属産業医と、訪問する嘱託産業医

さらにややこしい話になるのですが、企業で働くすべての産業医が常駐するわけではありません。

ドラマ冒頭の説明であったように、従業員が1000人を超える企業では常駐する「専属産業医」が必要です。50人以上1000人未満の企業では毎月決まった時間に訪問する「嘱託産業医」を選任しています。

もし、専属産業医と嘱託産業医の働き方に何か違いに興味があれば以下の記事も参考にしてみてください。

ちなみに下記のニュースで発表された通り、政府として行政手続きを簡素化するロードマップの中には「産業医の常駐義務の廃止」が組み込まれています。数年後には美々先生のように常駐する産業医は減っていくのかもしれませんね。

河野氏、産業医の常駐義務見直しへ 「人口が減る中で物事が回らなくなる」

感染症対策も重要な業務。でもオフィスを歩き回ることよりも大事なことがある。

新型コロナウイルス感染症の流行により、にわかに危機意識が広まった感染症対策。#リモラブの中でも、出社時の検温、手指の消毒、マスクの着用や捨て方について美々先生が何度も何度も注意を払っていましたね。

その描写を見て、「産業医ってこんなにオフィスの中を歩き回るもの?」と疑問に思った方がいるでしょう。

37.5度の発熱があった社員に、会社中歩き回って在宅勤務を命じる
#リモラブ公式HPフォトギャラリーより引用

産業医の職務には、職場巡視がある

法律上定められている産業医の職務はいくつかあります。そのひとつが職場巡視です。

職場巡視とは、従業員が働いている現場(オフィスや工場、倉庫など)を実際に定期的に視て巡る職務のこと。具体的に健康を脅かすような要因がないかをチェックすると同時に、従業員がどんな仕事をしているのかを把握する重要な業務です。

美々先生のようにオフィス内をくまなく見て回ったり、従業員に声掛けをして日常的にコミュニケーションをとるようにすることは産業医として当然の職務内容なんですね。

ですが、ドラマの中であるように発熱している社員を追いかけ回したり、直接消毒をして回るような仕事の進め方はしません。実際には人事部や総務部と協力して対応したり、感染症対策としての社内規定やガイドライン作成を進めることになります。

Beforeコロナから重要だった感染症対策

感染症対策は新型コロナウイルスが流行する以前から、企業の健康管理にとって重要な業務です。

今回は突発的に流行しましたが、これまでも季節性の感染症は年間を通して発生しています。たとえば、夏季には夏かぜや食中毒が、冬季にはインフルエンザやノロウイルスが発生していますよね。これらの予防と発生時の対策は、企業が産業医と話し合って決めるべきことです。たとえば・・・

  • 予防接種の呼びかけ、会社での費用負担
  • 咳エチケットや手洗いの周知
  • 消毒液の設置、ドアノブなどの消毒
  • 発熱時の出社制限

などです。こうした一律のルールを定めるだけでなく、働く状況に合わせて柔軟に運用していきます。

これからの季節、増えてくるインフルエンザの場合ですと多くの会社では解熱後48時間を経過するまでは出社制限をしているでしょう。しかし、テレワークを実施している場合には他の従業員に感染させるリスクがないのでもっと早い段階で業務に復帰していいですよね。

こういった感染症対策と企業の事業継続の考え方については以下のスライドでまとめていますので、参考にしてみてください。

働き方改革で、残業時間が厳格化。産業医の権限も強化されました。

ドラマのワンシーンで気付いたのですが、産業医・美々先生が所属する健康管理室は人事部と同じフロアにあるようですね。実際の企業でも健康管理室や安全衛生部といった従業員の健康管理を担当する部署は、人事部と協力して仕事を進めることが多です。

さて、そんな中で人事部が夜遅くまで仕事で残っていたことを強く咎める場面がありました。「産業医って残業時間まで指摘する仕事なの?」と思った方もいるでしょう。

2019年の法改正で残業時間の管理は厳格化

企業で働いている中で体調を崩してしまうことで社会問題にもなっているのが、過重労働とメンタルヘルス不調です。働いている方にとってすでに実感していることでしょう。

そのため2019年4月に行われた働き方改革関連法の改正が行われました。たとえば、残業時間の罰則付き上限規制が設けられたり、有給取得の義務化や同一労働同一賃金が大きな話題に取り上げられましたね。

ですので2020年の現在、企業は残業時間を本当に厳しく見ています。とはいえ実際に個々の従業員の残業時間を管理するのは人事・労務の役割。産業医には別の業務が求められています。

夜遅くまで残業を続ける人事部の社員に注意を促す「残業は昭和の悪しき習慣です!」
#リモラブ公式HPフォトギャラリーより引用

産業医は疲労が見られる従業員と面談する

法律上、産業医に求められる職務の一つが産業医面談です。産業医面談は健康リスクが高いとみられる従業員と1対1で話をし、必要であれば従業員に健康指導を行ったり、事業者に対して就業上の措置をアドバイスします。

産業医面談にはいくつか種類があるのですが、そのうちの一つが長時間労働者への面接指導です。

企業は、1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超えて疲労が認められる従業員から「産業医面談を受けたい」と申し出があれば産業医面談をセッティングする義務があります。これはあくまで法律上の義務ですので、会社によってはより厳格な基準が定められています。

たとえば、80時間ではすでに働きすぎであるため60時間に区切っていたり、残業時間が45時間であっても「疲労蓄積度チェックリスト」を受けてもらい結果によっては産業医面談につないだりします。

長時間労働者への面接指導は、産業医としてもっとも多くの時間を割く業務のひとつです。詳しくは以下の記事で解説しましたので、人事労務として気になる方は参考にしてみてください。

産業医は治療はしない。では、なぜ会社に産業医が必要なのか。

#リモラブで初めて産業医という仕事を知った人や、会社に訪問する産業医と会ったことがない人にとってもっとも驚きがあったのが「産業医は治療行為をしません」のシーンではないでしょうか。

いわゆるみなさんが想像するような病院にいる臨床医と、企業で健康管理を担う産業医は、同じ医師の資格を持っていますが様々な違いがあります。

産業医が診断するのは、働けるかどうか

よく誤解されやすい点ですのでぜひ正しく理解していただきたいのですが、産業医は個人の疾病の診断や治療は行いません。

臨床医は患者さんが日常生活を送ることができるかを判断します。一方で産業医はその人が働けるかどうかを判断します。働くことは日常生活を送ることに比べて怪我をするリスクが高かったり、ストレスを抱えやすい状況です。

従業員が今のままの仕事で働き続けることができるかどうかを判断するには、どんな職場で、どのような業務内容に従事しているかの情報を収集する必要があるんですよね。だから企業には特定の産業医を選任して、定期的に情報共有をして、必要であれば産業医面談を実施する義務が法律で課せられているのです。

また臨床医は患者さん自身の行動を変えることで改善へと導きますが、産業医はその人だけでなく企業(経営者や上司、人事部など)に働きかけルールや職場環境を変えることで根本的な予防を目指しています。

嘱託医であり精神科の富近先生。全社員がリモートワーク中でも会社に出社している。
#リモラブ公式HPフォトギャラリーより引用

テレワークでも健康管理は必要。オフィス勤務とは異なる健康障害に対策する。

#リモラブはどうやら「少し先の今」を描いたドラマのようです。第1話の時点で新型コロナウイルスの流行から、緊急事態宣言の発令と解除までが一気に進みました。緊急事態宣言中はカネパルでも全社員のリモートワークが実施されていましたね。

テレワークでの健康管理ついて、ドラマ内では産業医の業務が細かく描写されることはなかったのですが、私たち今まさにテレワークによって生まれた新しい健康障害への対策が必要になってきています。

長期間のテレワークは新しい健康リスクを生み出す

日本全体でこれほど一斉に在宅勤務が実施されたことはかつないことでした。まずは感染症対策として突発的な流行を防ぐために人と人との接触を減らすということは一定の成果が見られましたよね。

一方で、長期間の在宅勤務・テレワークを続けることで感染症とは別の健康リスクが発生することも分かってきました。

これは健康管理システムCarelyの中で受け付けている健康相談の内容を、テレワーク発生前と発生後で件数比較をしたものです。特に増加した相談内容は、「メンタルヘルス/ストレス」・「睡眠」・「筋骨格系症状(腰や肩、手首の痛みなど)」がいずれも1.5倍以上と増えています。

たとえば週1〜2回程度の在宅勤務ではこのような症状がでるリスクは低いのですが、フルタイムで長期間のテレワークでは作業環境が整っていなかったり、コミュニケーションの取りづらさから健康障害が発生してしまっているんですね。

だからこそ産業医には、これまでオフィス勤務が中心だった健康管理の手法をテレワークも含めた健康管理にアップデートする業務が求められています。

労務管理上のガイドラインを作成したり、こまめなアセスメントの実施、そしてWEBでの産業医面談にも対応していかなければいけません。美々先生もテレワークに不安を覚える社員とWEB面談をしていましたよね。

テレワーク導入時の健康管理についても詳しく解説していますので、人事労務の方は参考にしてみてください。

企業の健康管理は産業医に任せっきりでは出来ない。

以上、#リモラブ第1話を振り返って実際の業務の解説をしてみました。これでもまだまだ産業医の業務内容としては一部ですので、これからストーリーが進むにつれて産業医の働き方が描かれていくと期待しています。

第2話からは、健康管理室とともに人事部も健康管理に協力するストーリーに期待。
#リモラブ公式HPフォトギャラリーより引用

最後にぜひ知っていただきたいことは、企業の健康管理とは産業医に任せっきりでは適切に実施できないということです。専属産業医・美々先生はパワフルに積極的に従業員と関わっていますが、多くの企業では常駐しない嘱託産業医を選任することになります。

月数回程度の訪問で、数百人といるすべての従業員の健康管理をやりきることは現実的ではありません。

実際の大企業では産業医に代わって産業看護師・産業保健師の方が常駐していたり、中小企業では人事労務が健康管理の役割を担うことになります。ましてやテレワークが進むと従業員の顔も働き方も見えない中で健康管理しなければいけない時代です。

産業医に任せっきりにすることなく、産業医と人事が協力して従業員が健康で安全に働ける職場環境を作っていく様子が#リモラブで紡がれることを楽しみにしています。

来週からも解説記事を書いていく予定です、それではまた。

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