バリウム検査は受けたくない!会社の健康診断を受診拒否された場合の対策

「健康診断の受診は、法律で定められている」と従業員に説明しても、受診してもらえないことはあります。
「会社の健康診断を従業員は受診拒否できるのか?」
「胃のバリウム検査が嫌な人は、バリウムなしにできるのか?」
「受診拒否する従業員に、懲戒処分などはできるのか?」
「胃のバリウム検査は、なぜ必要なのか?」
「胃のバリウム検査を拒否された場合、代替案はあるのか?」
などなど、会社の立場から健康診断の受診を拒否する従業員への対応を3つのケースに分けて、わかりやすく解説していきます。
従業員が会社の健康診断を受診拒否した場合の対策
会社の健康診断は、労働安全衛生法第66条第5項で以下のように定められています。
5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
労働安全衛生法
このように、法律で健康診断の受診が義務付けられています。
そのため、基本的に従業員の都合で受診を拒否することはできません。
だからといっていきなり上司命令で強制的に受診をさせたり、就業規則に定められていることにより不可能ではないものの懲戒処分にするというのはさすがに気が引けてしまいますよね。
健康診断の中でも、「健康診断全体を受診したくないのか」「特定の項目を受けたくないのか」などによって、担当者が取るべき対応は変わってきます。
受診に抵抗のある従業員がいた際に適切に案内ができるよう、ケース別に対応方法を確認していきましょう。
【ケース1】健康診断の受診を従業員に拒否された場合
受診自体の拒否
会社の健康診断は労働安全衛生法第66条第5項に定められており、従業員が一方的に拒否できるものではありません。従業員がなぜ受診を拒否するのか、その理由から対応策を考えてみましょう。
「時間を取られたくない」などの理由で拒否された場合の対策
会社の健康診断は、労働安全衛生法第66条第5項で以下のように定められています。
5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
労働安全衛生法 第7章 健康の保持増進のための措置(第64条-第71条)
このように、法律で健康診断の受診が義務付けられています。そのため、基本的に従業員の都合で受診を拒否することはできません。
ただ、「会社指定の健康診断を受けたくない」といった理由の場合は、他のクリニックに代替えすることは可能です。とはいえ管理が複雑になる問題を抱えることにもなるため、会社の規程などで定めておくと良いでしょう。
とは言うものの、従業員は法律のことを知らない方がほとんどです。受診そのものを拒否する従業員には、
- 会社の健康診断は法律で定められている
- 業務に起因する病気が発覚した場合は、仕事内容の変更や勤務の調整ができる
といったことを伝えるなど、健康診断の重要性を丁寧に説明してみましょう。
また感染対策を考慮し、「会場での感染リスクがあるから、健康診断を見送りたい」と言う従業員が出てくることも想定されます。その場合の対策についても、見ていきましょう。
「感染対策を考慮し、受けたくない」と拒否された場合の対策
新型コロナウイルスの感染拡大を経験したこともあり、感染対策を考慮して
「大人数の会場に行くのは感染リスクがあるから、健康診断を見送りたい」
という従業員が出てくることも想定されます。
緊急事態宣言下で、健康診断の実施時期は感染対策によりこれまで2度延長されています(2021年2月10日時点)。
しかし、健康診断の実施そのものを拒否することは、いずれにしてもできません。
2021年2月10日時点では、厚生労働省で以下のように記載されています。
労働安全衛生法等に基づく健康診断については、いわゆる“三つの密”を避け、十分な感染防止対策を講じた健康診断実施機関において、実施してください。なお、健康診断実施に当たり、労働者が新型コロナウイルス感染症を気にして受診を控えようとしている場合は、健康診断の会場では換気や消毒を行うなど感染防止対策に努めていることを説明するとともに、受診を促してください。
新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)
つまり、感染対策が必要な場合においても、健康診断を受けることには変わりありません。十分な感染対策がされている会場であることを理解していただき、従業員自身もマスクの着用や手指の消毒などの対策をした上で受診してもらうよう促しましょう。
それでも受診拒否された場合、就業規則違反としていきなり懲戒処分などの対応をとるのはよくありません。まずは産業医に相談し、健康診断の受診を拒否している理由をヒアリングしてもらうと良いでしょう。
参考として、厚生労働省健康局がん・疾病対策課による「がん検診受診率向上に向けたこれまでの取組」によるとがん検診を受診しない理由は下記の通りです。(n=856人)
- 受ける時間がないから:30.6%
- 健康状態に自信があり、必要性を感じないから:29.2%
- 心配なときはいつでも医療機関を受診できるから:23.7%
- 費用がかかり経済的にも負担になるから:15.9%
- がんであると分かるのが怖いから:11.7%
厚生労働省健康局がん・疾病対策課「がん検診受診率向上に向けたこれまでの取組」
では、健康診断の一部のみ拒否されてしまう場合は、どう対応すれば良いのでしょうか。
検査項目ごとに、詳しく見ていきましょう。
【ケース2】心電図検査を受けたくない!「法定項目」の受診拒否の対応
レントゲン検査や心電図検査など、健康診断で実施しなくてはならない法定項目(受診が必須となる診断項目)の一部を拒否されてしまうことも。
受けたくない検査項目が一部であったとしても、法定項目の場合は、原則拒否ができません。
法定項目の受診が、以下のように労働安全衛生法 第44条で定められているためです。
- 既往歴および業務歴の調査
- 自覚症状および他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
- 胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量および赤血球数)
- 肝機能検査(AST[GOT]、ALT[GPT]およびγ(ガンマ)-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロールおよびトリグリセライド)
- 血糖検査(空腹時血糖または随時血糖)
- 尿検査(尿中の糖および蛋白(たんぱく)の有無の検査)
- 心電図検査
健康診断で一部の項目を受けていない従業員がいた場合は、健康診断をする医師もしくは産業医に相談するのが最初のステップです。
仮に産業医の判断で、「今年は受けなくても問題なし」と判断された場合でも、労基署から「なぜ受けていないのか」といった指摘を避けるために、しっかりと産業医面談などの記録を残しておくことが重要です。
【ケース3】バリウム検査を受けたくない!「法定外項目」の受診拒否の対応
これまでお伝えしたように、法律で定められている法定項目は受診が必須です。しかし、バリウム検査や胃カメラなどの法定外項目の場合は、その限りではありません。
仮に従業員が「法定外項目」の受診を拒否したとしても、後日の再受診を促したり、産業医から個別対応をしてもらったりするなどの措置は原則不要です。法律で受診義務はない項目のため、受診するかしないかは、本人の自由です。
ただし、業務内容によっては法定外項目の受診が必要となる場合もあります。
具体的には「法定項目だけでは、健康な状態で働けるか判断できない」ケースです。産業医に相談の上、安全衛生委員会などで労使間の合意をした上で、就業規則等で定めておきましょう。
ここまで3つのケースに分けて、健康診断を拒否された場合の対策について解説しました。
ここまでの内容を、一度まとめます。
健康診断を拒否された場合の対策まとめ
- 原則、従業員の個人都合で会社の健康診断は拒否できない
- 法定項目を受診拒否された場合は、産業医に判断を仰ぐ
- 法定項目を受診していない場合、労基署に指摘される可能性があるので記録を残しておく
- 法定外項目を受診拒否された場合は、原則受診を促さなくても良い
※ただし、産業医が再受診必要と判断した場合を除く
従業員が会社の健康診断を拒否する理由は記載の通りさまざまです。こういった問題が起きたときにすぐ対処できるようにするには、事前に安全衛生委員会などで労使間で合意の上、ルールを決めておくことをおすすめします。
就業規則等で詳細を定めていない段階でも、対応方法を決めたときの議事録は残しておきましょう。議事録を見せながら従業員に説明したり、労基署に説明したりするなどの適切な対応が取れるようになります。
その他、健康診断結果を他人に閲覧されることを始めとする個人情報に関することが拒否理由の場合、従業員の健康情報を取り扱う人やその権限を定めることなど、「健康情報取扱規程」の策定が義務化されています。衛生管理者など結果を見ることができる権限を予め確定し、定期健康診断の際に周知・公表することで従業員の不安を少しでも解消することをおすすめします。
バリウム検査の受診義務と健保補助の関係
健康診断の受診を拒否されてしまう3つのケースについて見てきましたが、もっともよくあるのが
「バリウム検査を受けたくない」というパターン。
法定外項目の中でも健診コースに含まれている事が多いバリウム検査は、受診する際の負担感から受けたくないという声が特に多いものです。
胃のバリウム検査について詳しく解説していきます。
バリウム検査の受診義務
バリウム検査は法定外項目のため、受診は必須ではありません。
「めんどくさそう」「気持ちが悪くなりそう」というイメージがある方は、必須でないのなら受診したくないと思われるかもしれません。
ただし、バリウム検査を受けることには当然メリットもあります。
バリウム検査の健保補助
協会けんぽの生活習慣病予防健診では、コースに含まれる全ての項目を受診して初めて補助金の適用を受けることができます。したがって、バリウム検査を受けないと補助がおりない可能性があるのです。
健診クリニックによっては、当日体調不良による受診不可として処理してくれる場合もありますが、一概には言えないので、基本的には協会けんぽの生活習慣病予防健診など健保の補助金適用のためにバリウム検査も受診必須と考えておいた方が良いでしょう。
バリウム検査とは?
若年の方の中にはまだバリウム検査を受けたことがない方もいらっしゃるでしょう。
そもそも「バリウム検査」とは何なのでしょうか。
バリウム検査は、バリウム(造影剤)を飲んで発泡剤で胃を膨らませ、X線(レントゲン)を連続的に照射しながら撮影する検査です。「上部消化管検査」「上部消化管X線検査」と呼ばれることもあります。
日本では食道や胃、大腸などの消化管の病変を発見するための検査として一般的で、協会けんぽが生活習慣病予防健診コースに組み込んで補助を出している他、各健保中高年向けの健診コースに組み込んだり、オプション検査として補助金を出していることが多いです。
バリウム検査で分かること
バリウム検査では消化管に関する以下のような病気を発見することができます。
- 胃がん
- 胃潰瘍
- 胃ポリープ
- 胃炎
- 食道がん
- 食道ポリープ
- 十二指腸潰瘍 など
バリウムを飲んで胃内に薄く付着させると、正常であれば粘膜のヒダが整って見られますが、潰瘍やがん、ポリープなどがあると粘膜の凹凸や隆起にバリウムが流れ込んで輪郭に異常が現れます。これがレントゲン写真に映り込むことにより病気を見つけることができるのです。
バリウム検査方法
バリウム検査の検査方法は以下のような流れになっています。
【検査前日】
アルコールや脂肪分の多いものを避けて早めに済ませる。
【検査当日】
当日の朝食は抜く。
飲み物は水のみ。
【検査手順】
胃を膨らませるための発泡剤を少量の水で飲む。
バリウムは全量をゆっくり飲む。
透視台の上で体位変換を行う。
透視台を立ててお腹を圧迫筒という装置で押さえる。
検査後は下剤を服用し、バリウムが全て体内から排出されたら検査の全行程が終了です。
バリウム検査と胃カメラの違い
バリウムと胃カメラはどちらも消化管の異常を調べるものですが、どこに違いがあるのでしょうか。それぞれのメリットとデメリットについて考えてみましょう。
バリウム検査のメリット
- 費用が安い
- 予約が取りやすい
- 痛みが少ない
- 胃の全体像を把握しやすい
- 麻酔が不要で10分ほどで検査できる
バリウム検査のデメリット
- X線による被曝がある
- 便秘や腸閉塞のリスクがある
- 検査に伴う心身の苦痛が大きい(まずいバリウム・発泡剤を飲みゲップを我慢する必要性、誤嚥リスク、検査後の下剤服薬、検査後の便秘など)
- 早期がんの発見はしにくい
- 異常が見つかった場合に内視鏡検査を受けるため二度手間になる
胃カメラ検査のメリット
- バリウムに比べて胃がんの発見精度が高い
- 検査中に組織を採取して良性か悪性かを調べることができる
- 食道がんを発見しやすい
- ピロリ菌感染を発見しやすい
- バリウム・発泡剤を飲み込む苦痛がない
胃カメラ検査のデメリット
- 費用が高額
- 予約が取りにくい
- 麻酔が必要で検査時間が長くかかる
- 麻酔を使う場合は交通手段に制限がある(車で健診センターにいけない)
バリウム検査のメリットは、なんと言っても安価な費用で受診ができる点です。
また、胃カメラ検査は1日の実施数が限られている上に人気が高いため、予約が半年先になってしまうといったこともよくあります。
バリウムの味が苦手な場合は胃カメラ一択という方もいらっしゃいます。追加費用で全身麻酔をオプションとして付ければ、寝ている間に不快な思いをすることなく胃の検査ができます。
健康診断結果の提出を拒否された場合
健康診断は、受診して終わりではありません。
結果確認や異常な場合の対応が必要となります。
健康診断を受けたものの、「診断結果を上司や担当者に見られたくない」といった理由で、結果提出を拒否されることもあります。しかし、受診結果の提出についても労働安全衛生法第66条5項で定められており、従業員の都合で提出拒否はできません。
5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
労働安全衛生法 第7章 健康の保持増進のための措置(第64条-第71条)|安全衛生情報センター
このように健康診断(法定項目)は、受診して結果を提出するところまでがワンセットです。つまり、「労働者には法定項目の検査結果を提出する義務がある」と言えます。
しかし、健康診断結果は個人情報です。胃カメラや婦人科診断といった法定外項目なども含み、取り扱いには注意しなくてはなりません。
そのため、健康診断結果を閲覧・確認できるのは、ごく限られた人のみに指定しておくことが重要となります。
- 産業保健スタッフ(産業医・保健師など)
- 企業の人事労務担当
など閲覧できる人を限定し、安全衛生委員会で労使間で合意の上、就業規則等で定めておきましょう。対象者以外は閲覧できないよう、厳重な管理が必要です。
また、オプション検査などの法定外項目は、一部例外(就業規則等で法定外項目の受診が必須とされている、産業医が法定外項目の結果を見ないと判断できない場合など)を除き、受診必須ではないため結果提出も不要です。
ただ、受診結果の用紙は法定項目と法定外項目が1枚にまとまっており、どう取り扱えば良いか悩むこともあります。こちらも、就業規則等で提出や取り扱いに関する規定を安全衛生委員会などで定めておくと良いでしょう。
どうしても法定外項目の結果を提出したくない従業員がいた場合は、法定外項目を隠した上で結果用紙をコピーしても問題ありません。あくまでも「法定外項目の提出は必須ではない」ということを覚えておきましょう。
産業医との面談を拒否された場合
健康診断の結果から、心身の状況把握や指導を行うために「産業医面談」が必要になる場合もあります。しかし、従業員が「周りの同僚に産業医面談をしていると知られたくない」といった理由で拒否することも考えられます。
産業医との面談についても、労働安全衛生法 第66条の8で以下のように定められています。
第六十六条の八 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。
2 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
労働安全衛生法 第7章 健康の保持増進のための措置(第64条-第71条)
このように産業医面談の実施が義務付けられています。どうしても産業医との面談をしたくないときは、他の医師から同等の指導を受けて書面による提出が必要です。
従業員が働ける状況にあるのか判断するための面談ですので、拒否はできないのが基本となります。しかし、「実際に面談を拒否されたとき、どう対処したら良いの?」と悩むこともあります。
このときの対処法として、以下が効果的です。
産業医面談を拒否された場合の対応
- 産業医面談は法律で定められていることを伝えて理解を促す
- 面談対象になった理由が本人にあることを伝える
- それでも対応してもらえないときは、業務命令を発令する可能性があることを伝える
それでも産業医面談を拒否する従業員がいる場合は、心情にも配慮して以下のように対応すると良いでしょう。
- スケジュール上は上司との面談をすることにしておく
- オンラインで面談をする
従業員の気持ちに配慮しつつ進めると、面談を受け入れやすくなることもあります。
柔軟な対応で産業医面談を実施するように促していきましょう。
何度受診勧奨しても定期健康診断を拒否されたらどうすれば良い?
従業員が多いと「何度も受診の催促や注意をしているのに、理解されず対応に困っている」という人も少なからずいるのではないでしょうか。
健康診断の受診が必要だと伝えても対応してもらえない場合は、懲戒処分などの就業上の措置を取らざるを得ないケースもあります。しかし、法律で定められているからと言って、
- 職務上の命令として、健康診断の受診を強制する
- 法定項目を受診してもらえなかったため、就業規則に基づき懲戒処分
といった対応を取ると、労基署から「何のために産業医や安全衛生委員がいるのか?」といった指摘をされかねません。
健康診断を実施する本来の目的は、「従業員が安全に働ける状態か確認し、問題があった場合は適切な対応をすること」です。懲戒処分は最終的な対応となりますので、判断を下す前に、「産業医に相談」をしましょう。そして、産業医面談などを実施し判断を仰ぐ流れとなります。
産業医面談の内容や拒否した理由などは、適切に記録しておくことが重要です。記録があれば「なぜ健康診断を受診しない従業員がいるのか」といった労基署からの指摘にも対応できるようになります。
このように拒否している従業員毎に記録を残しておくことが基本ですが、中には判断に迷う場合もあります。判断に少しでも迷った場合は、労基署に相談し回答も一緒に記録しておくと安心です。
各都道府県別、労働基準監督署の所在地や連絡先は以下からご参照ください。
全国労働基準監督署の所在案内 |厚生労働省
まとめ:法律で決められた検査項目は従業員の都合で拒否できない!
今回は、会社の健康診断を拒否される3つのケースと対策について解説しました。最後に、特に重要な点をまとめます。
法定項目の受診を拒否された場合、法定項目は基本的に受診必須
- 受診を拒否されても、いきなり業務上の命令や懲戒処分などで脅すのはNG
- 法定項目の受診を拒否された場合は、産業医にまずは相談する
- 万が一受診しないことになった場合は労基署に受診していない理由などを聞かれたときの対策として、
産業医面談や安全衛生委員会などの記録は残しておくことが重要
法定外項目を受信拒否された場合
- 法定外項目の場合は、一部の例外を除き受診を促す必要はない
- 法定外項目で受診が必要となるのは、産業医の判断に必要な場合のみ
- 受診が必要な場合は、安全衛生委員会などで労使間の合意上、就業規則等で定めておくことが望ましい
企業は健康診断の受診を促すことや実施すること、健診結果によっては指導が必要になったときの産業医面談、健康診断結果の提出に至るまで、法律で義務づけられています。そのため、従業員の個人的な都合で拒否することは、原則できません。
とはいえ、人事労務・産業保健スタッフからの働きかけに対して応じてもらえないこともあります。そのときは、産業医に指示を仰ぎつつ、面談の記録や拒否している理由を適切に記録し管理することが重要です。
あくまでも会社の健康診断は「従業員が安全に働ける状態か確認し、問題があった場合は適切な対応をすること」が目的で、業務命令で強制してまで受診させるものではありません。
従業員が拒否する理由によって対応方法はさまざまですが、いざというときにすぐ対応できるように、就業規則や安全衛生委員会で規定やルールを決めておきましょう。