産業医とスムーズな連絡・共有
2021年8月25日 更新 / 2021年3月25日 公開

人事が産業医を育てる!企業にマッチした産業医は自分たちで育成しよう

人事が産業医を育てる

あなたの企業で専任されている産業医は自社にマッチしていると思いますか?
「いまいちこちらの望むような働きをしてくれない」
「もっと優秀な産業医がいれば今の産業医から変更してもいい」
そんな気持ちの人事担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。

医師の届け出数は約32万人で、そのうち産業医の養成研修を終了している医師は約10万人と言われています。多くの産業医は臨床医との兼業です。企業は『産業医は普段医療機関等に勤務する医師が多い』ことを念頭に、産業医との関係構築、育成が必要となります。

「自社にマッチした優秀な産業医と契約したい」と考える人事担当者の方に、まずお伝えしたいことは「最初から自社の社風や価値観を理解し、人柄もよく産業医としての腕も一流」という医師はいない、ということです。

ではどうすればよいか?その答えは、産業医の人柄を慎重に見極め、この人だ!という産業医がいれば「自社の社風や価値観を理解した優秀な産業医」となるよう「自分たちで育てて」いくことです。

この記事では、産業保健師の観点から、自社にマッチした産業医になってもらうためのチェックリストを作成しました。ぜひ産業医との関係構築、育成にお役立てください。

なぜ人事が産業医を育てるのか

冒頭でもお伝えしましたが、なぜ人事が産業医を育てる必要があるのでしょうか。その根拠を2点あげます。

1. 最初から自社のことを理解し、かつ優秀な産業医はいない

繰り返しになりますが、「最初から自社の社風や価値観を理解し、人柄もよく産業医としての腕も一流」という医師は残念ながらいません。

そのため人事担当者は、産業医に自分の会社を知ってもらうことから産業との関係構築を行う必要があります。

「こんなことを産業医に聞いていいのだろうか」
「そもそも何をどう相談すればいいのかわからない」

と、産業医との会話に緊張や不安を覚える担当者もいるかも知れません。そんなときは産業医と担当者で『情報交換をする時間』をあらかじめ設けることが有効です。

1回に5分でも10分でもかまいません。相談したいことがなくても、決めた時間は産業医と話をするようにします。定期的に話す場を作ることで業務中に「次の産業医訪問ではこの話を聞いてみよう」と確認事項を用意できるようになります。

New call-to-action

2. メンタルヘルスは産業医の基礎科目

冒頭でも述べたように日本に約10万人いる産業医ですが、兼業の医師が多いため専門科目もさまざまです。それぞれに得意な業種や専門科目があります。
産業医と契約する前に医師のバックグラウンドを理解しておきましょう。

「心療内科の先生でないとメンタル不調者の対応はできないのだろうか」
といった心配をする方もいるかもしれませんね。

専門が心療内科でなければメンタルヘルスの対応は難しい、というのは誤った認識です。フィジカルもメンタルも、両方対応できなくては産業医は務まりません。産業医として認定を受けた医師は、そのための知識や経験を有しています。

心療内科の医師にこだわらずに人柄や産業医としての考え方等をよく見極め、自社に来てほしいと思える産業医と契約することが最も重要です。

シチュエーションごとのチェックリスト

シチュエーションごとのチェックリストを作成しました。

  • 産業医による社員面談をおこなう場合
  • 全社的な情報を伝える場合
  • 職場巡視をおこなう場合

それぞれに対し、産業医と情報共有するとよい項目をリスト化しています。

1、産業医による社員面談をおこなう場合

高ストレス者、過重労働者、健診事後措置、メンタル不調者の休職中・復職時面談等、産業医と社員の面談を調整する場面は多いですね。面談前にチェックリストにある内容を情報共有しておくと、スムーズな面談につながります。

「すべて網羅しなければいけないのか」
「一回で伝えなければいけないのか」

といった疑問をお持ちの方もいるかもしれませんが、『必要な情報を必要なときに伝える』のでかまいません。

また、産業医も面談時本人に直接質問して必要な情報を収集します。そのため不足情報があっても産業医自身が情報を補うので心配はいりません。

チェックリスト【産業医による社員面談をおこなう場合】

2、全社的な情報を伝える場合

全社的な情報も産業医を育てる上で必要な情報です。なぜ全社的な情報を伝える必要があるのでしょうか。
その理由は、産業医は『事業主と労働者双方の立場を理解したうえで事業主と労働者の両方にとって最善となる意見を述べたい』と考えているからです。

産業医は労働者の代弁者となる場合が多くありますが、労働者側に寄り添いつつも一定の距離を保ち、常に客観的に物事をみています。また衛生委員会等での発言も、会社のことがわかっていなければ的確な意見を述べることはできません。

皆さんなら「どの企業の衛生委員会でも同じ話をする産業医」と、「全社的な情報に則り、個別性のある話をする産業医」、どちらの産業医と契約を結びたいでしょうか。産業医を育てるために、全社的な情報も伝えましょう。

チェックリスト【全社的な情報を伝える場合】

全社的な情報に関して、よくある質問と回答をまとめました。

人事考課制度の情報は、なぜ必要なのでしょうか?

メンタルヘルスやストレスに影響を与える場合があるからです。人事考課制度の全ての内容が必要ということではありません。必要時可能な範囲で伝えます。

伝えた方が良い内容(例)

  • 従業員はどのような評価のされ方をしているか
  • 昇格・昇進の仕組み
  • 年功序列か能力主義か

これらの情報は従業員のやりがいや将来的なキャリアアップに影響を及ぼします。メンタルヘルスへの影響も否定できず、また企業ごとに全く考え方が異なる部分です。必要時、可能な範囲で産業医と情報共有をおこなうようにします。

就業規則はどの部分を伝えれば良いでしょうか?

就業規則についても必要時可能な範囲で伝えます。

  • 休職・復職に関する規定

上記の内容は社員面談時にも必要ですので、事前に共有しておくといいでしょう。

3、職場巡視をおこなう場合

職場巡視は産業医に自社を知ってもらう良い機会です。産業医はオフィス内の安全管理、衛生管理状態を確認しますが、一見だけではわからないこと、気づかないことも多くあります。産業医と一緒に職場内を歩く際に、チェックリストの内容を伝えましょう。

チェックリスト【職場巡視をおこなう場合】

まとめ “大切なのはコミュニケーション”

ここまで「産業医を育てる」というテーマでお伝えしてきました。
産業医を育てる上で一番大切なことを一言でいうと、わたしは『人事と産業医のコミュニケーション』だと考えています。チェックリストで紹介した項目について話すことも、産業医とコミュニケーションの一部です。

加えて普段の会話の中でも「お昼はどこで食べる人が多いんですか?」といった内容から会社近隣にはどんなお店があり、どのようにランチする人が多いのか?社員の傾向が見えてきます。

  • ファーストフード店が多く、ファーストフードを食べる人が多い
  • 飲食店が少ないのでコンビニで弁当を買って食べる人が多い
  • 買いに行く時間がなくカップラーメンですませる人が多い 等

例えば、これらと健診結果の脂質や血圧で有所見者が多いという傾向を結びつけて、産業医から衛生委員会で健診結果と食事について講話してもらうというアプローチもできます。普段の会話から産業医活動につながるケースですね。

医師との会話は緊張する担当者の方もいるかも知れませんが、『対等なビジネスパートナー』として積極的にコミュニケーションをとってほしいです。ぜひチェックリストの内容をご活用ください。

執筆・監修

  • 小川 剛史
    この記事を書いた人
    小川 剛史
    1986年広島県生まれ。
    大学在学時から幅広い業種のデジタルマーケティングを手がける。(小売・食品・金融・医療etc)
    現職では、企業の健康管理・健康経営についての情報発信を続けており、オンライン記事では月間12万人、ダウンロード資料は延べ2万社が閲覧している。
  • 山田 洋太
    監修者
    山田 洋太
    金沢大学医学部卒業後、2008年久米島で離島医療に従事。
    2010年慶應義塾大学MBA入学。2011年株式会社iCAREを設立。2012年経営企画室室長として病院再建に携わり、病院の黒字化に成功。
    2017年厚生労働省の検討会にて産業医の立場から提言。2018年より同省委員として従事。

お役立ち資料

  1. 健康経営優良法人の攻略ガイド〜調査票の健康管理編〜
    健康経営優良法人取得に向けて、調査票作成という観点で押さえておくことが望ましいポイントをお伝えします。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  2. Carelyの活用で健康経営優良法人を攻略する
    認定企業数が増え続けている健康経営優良法人。 変化の激しい現代では、コロナウイルスへの対応項目やSDGsへの取り組み項目など、新しい項目が続々と追加されています。 そんな中、毎年取得し続けなければいけない健康経営優良法人にプレッシャーを感じていませんか? 今回は、健康管理システム「Carely」を使って、健康経営優良法人を効率的に取得する方法をお伝えします。
    健康診断
    資料をダウンロードする
  3. 第8回健康経営サミット – 録画配信 –
    本セミナーでは実際の健康経営度調査をもとに、 項目変更の背景理由、中長期視点で抑えるべきポイントについて解説します。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  4. 第7回健康経営サミット – 録画配信 –
    今回の健康経営サミットでは、人事通算歴13年、現在は人事コンサルタントとして活躍する金丸 美紀子氏をゲストにお迎えし、
    組織がいま取り組むべき健康経営について学びます。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  5. Carelyサービス資料
    健康管理システムCarelyの大企業向けサービス資料です。 Carelyは産業保健スタッフや人事労務の実務担当者の方が抱える、健康診断、ストレスチェック、過重労働等の健康データを一元管理し、効率的に実施する仕組みづくりをサポートします。
    健康管理システム
    資料をダウンロードする
  6. 第6回 健康経営サミット – 録画配信
    本セミナーは、株式会社サイボウズ、株式会社iCAREの共催で行います。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  7. 定期健康診断の事後措置ガイドブック 冊子版(PDF)
    健康診断の義務は、実施よりも"事後措置"の方が重要です。業務効率化を図りながら、ミス・モレのない実務ノウハウを解説します。
    健康診断
    資料をダウンロードする
  8. 健康経営2021 ステップアップ講座
    2020年は健康経営推進担当者にとって波乱の年になりました。今年そして来年以降の健康経営計画の見直しをふまえた、最短で認定取得を目指すステップアップ講座です。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  9. 特殊健診は怖くない!有機溶剤編
    初めて特殊健診を管理する保健師・衛生管理者向けに、「有機溶剤予防規則に基づく健康診断」について解説しました。(監修:産業医・労働衛生コンサルタント 山田洋太)
    健康診断
    資料をダウンロードする
  10. ー改訂版ー
    オフィスの感染予防 対策ガイドラインの解説
    経団連が発表した感染症対策ガイドラインをさらに深堀って解説します。抽象的な指針だけでは分からない、実務レベルの対策を解説しています。
    テレワーク / コロナ
    資料をダウンロードする
  11. 健康診断をペーパレス化。メリットと外部業者の選び方
    まだ紙で管理しますか?延べ200社の健康診断の管理をペーパレス化してきたから分かった、人事労務・保健師の業務を効率化するコツと運用法を解説します。
    健康診断
    資料をダウンロードする
  12. 「健康投資管理会計ガイドライン」を会計士が人事総務向けに解説
    公式では分かりづらい管理会計のガイドラインを、労働安全衛生法に精通した会計士が分かりやすく解説します。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  13. 人事が主導する、健康経営スタートガイド
    社員食堂の整備やウォーキングの目標設定よりも、前に実践すべきことがあります。人事の仕事がラクになる健康経営のコツを紹介します。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  14. 健康管理費のコストカット表
    会社から経費削減を命じられているものの「健康管理費はどこまで削減していいものか」分からない方へ。従業員の健康を守りながらコストを削減する事例を紹介します。
    健康経営
    資料をダウンロードする
  15. 働き方改革の新しい義務『健康情報管理規程』の策定マニュアル
    厚労省から公表されているサンプルでは分かりづらい、という人事の方へ。ハンザツな規程作成が5ステップで完了します。
    法律 / ガイドライン
    資料をダウンロードする
  16. 集団分析の社内報告マニュアル
    ストレスチェック担当者が、上司・経営者から評価を得るために。厚労省の判定図の正しい読み方から社内報告の方法を産業医視点で解説します。
    メンタル / 過重労働
    資料をダウンロードする
  17. 急増するテレワーク中のメンタルヘルス対策と、失敗する予防策
    テレワークとオフィス勤務が混在する働き方の企業向けに メンタル不調者への法的に正しい実務対応を30分で解説します。
    テレワーク / コロナ
    資料をダウンロードする
  18. 健康管理検定 中小企業の法令遵守編
    本セミナーは従業員数50人〜200名程度の企業が対象です。 あなたの会社では健康管理の法的義務に正しく対応できていますか?
    健康経営
    資料をダウンロードする
  19. ベテラン人事こそ失敗する、休復職者対応5つの落とし穴
    「スムーズに復職は、休職前の準備は大事」 人事の工数を最小限におさえる休復職対応を、保健師が解説します。
    産業医
    資料をダウンロードする
  20. 2021年度、コロナ禍での健康診断を再計画
    コロナ禍で重要度があがった従業員の健康管理。 2021の健康診断では、ルールの正確が必要です。最近情報は30分で紹介。
    健康診断
    資料をダウンロードする