定期健康診断の義務化はいつから?条件や実施に必要な知識全まとめ

2021年2月25日 更新 / 2021年2月25日 公開
健康診断の効率化

「従業員が増えてきたけど、健康診断の義務化となる条件は?」
「年に1回の健康診断は、いつまでに実施すべきもの?」
と悩むことはありませんか?

健康診断の実施は、法律(労働安全衛生規則 第44条)により年に1回の実施が義務づけられています

健康診断を実施していない場合は臨検(労働基準監督署の調査)で指摘されてしまい、指摘後も改善しなかった場合は書類送検となってしまうと可能性も。

そこで今回は、

  • 健康診断はいつまでに実施すればいいの?
  • 健康診断の結果報告が義務化となる条件は?
  • 健康診断にはどんな種類があるの?
  • 定期健康診断の具体的な流れは?

といった疑問にお答えしつつ、人事・総務担当者が健康診断の実施に備えるための情報をまとめてご紹介します。

なお、健康診断を実施するとき悩まないよう、記事の後半で「健康診断を開始するときによくある5つの質問と回答」もご紹介しています。「健康診断の業務を効率化する方法」などについても説明しているので、ぜひ最後までご一読ください。

また、健康診断を実施することによる「業務負荷」が心配に思っている人もいるでしょう。そんなときは、「健康診断代行」を活用するのも1つの手です。「健診代行を賢く選ぶ方法」で詳しく解説しているので、あわせてご一読ください。

定期健康診断の義務化はいつから?条件や実施しない場合のリスクを解説!

冒頭でお伝えしたように、定期健康診断は年に一度の実施が法律で定められています。そして健康診断の実施だけでなく、健康診断結果の報告についても義務付けられていることに注意が必要です。

健康診断結果の報告は事業場で働く人数によって変わるため、以下の流れで詳しく解説します。

  • 【条件】常時50人以上の労働者がいる事業場になったときから
  • 【リスク】健康診断結果の報告を怠った場合は、法律違反となる

1つずつ詳しく見ていきましょう。

【条件】常時50人以上の労働者がいる事業場になったときから

健康診断結果の報告は、「常時50人以上の労働者がいる事業場」が対象となります。「常時50人」の定義は、以下の通りです。

■常時50人の定義

  • 事業場(勤務先)で50人以上の労働者を使用している場合に該当する
  • 時短などの就業時間や、勤務日数に関係なく人数を計算する
  • 従業員のみならず、パートやアルバイトであっても対象となる

参考:パートは健康診断の対象に含まれる? 健康診断の対象者はこれ!

上記に該当している場合は、労働基準監督署に「定期健康診断結果報告書」を提出する必要があります。

このとき気になるポイントが、以下のように「事業場が別地区にある場合」です。

■事業場が別地区にある場合の例

  • 本社とは別に支社がある
  • 同じ会社でも別地区に部署がある

こういった場合でも、「常時50人以上の事業場であれば健康診断結果の報告が必要となる」ので注意しましょう。

とはいえ支社の場合は産業保健スタッフが少なく、健康診断の実施や報告の準備まで手が回らないことも。具体的な対策を以下でまとめているので、ご一読ください。

次に、健康診断結果の報告を怠った場合のリスクを見ていきましょう。

【リスク】健康診断結果の報告を怠った場合は、法律違反となる

健康診断結果の報告は、労働安全衛生法第66条1項で定められています。そのため、もしも健康診断結果の報告を怠った場合、労働基準監督署から指摘されてしまうことも。

さらに、指摘後に改善しなかった場合は「書類送検」となる可能性もあります。臨検が行われる条件や具体的な備えについては、以下をご一読ください。

また、常時50人未満の事業場であっても、定期健康診断の実施は法律(労働安全衛生法第66条1項)で定められています。そのため、「定期健康診断結果報告書の提出」が不要な場合でも、「健康診断の受診」は必須です。

とはいえ、事業場によっては産業医がまだいないケースもあるでしょう。健康診断結果の報告が必要な企業(50人以上の事業場)では、産業医の専任が義務付けられています。これから産業医を選定する方は、以下をご一読ください。

次に、健康診断の種類について見ていきましょう。

健康診断の2つの種類とは?対象や条件をやさしく解説!

健康診断の種類は、主に次の2つ。

  1. 特殊健康診断【特殊業務のみ】
  2. 一般健康診断【全企業が対象】

業種によっては、2つを併用して実施する必要も出てきます。詳しい違いを見ていきましょう。

1.特殊健康診断【特殊業務のみ】

特殊健康診断とは、法律(労働安全衛生法第66条2項)で定められた有害な業務を行う労働者に必要な健康診断のこと。業務の影響で健康障害を起こしていないか、調べる目的で実施します。

主に、次の業務を行っている労働者が対象となります。

対象となる業務の例必要となる健康診断の名称
粉じん作業(建設業など)じん肺健康診断
鉛業務鉛健康診断
四アルキル鉛等業務四アルキル鉛健康診断
有機溶剤業務有機溶剤等健康診断
特定化学物質を製造もしくは取り扱う業務特定化学物質健康診断
高圧室内業務または潜水業務高気圧業務健康診断
放射線業務電離放射線健康診断
放射線事故などで、緊急で発生した業務緊急時電離放射線健康診断
放射性物質などの除染業務除染等電離放射線健康診断
石綿作業石綿健康診断

特殊健康診断は、次の3つのタイミングで実施します。

  1. 雇い入れ
  2. 対象業務への配置替え
  3. 6ヶ月以内に1回

特殊健康診断では実施のタイミング以外においても、作業歴の記録や作業環境のリスクアセスメントなどの業務が発生します。企業毎に対応範囲は変わってきますので産業医と連携して進めてください。続いて、一般健康診断について見ていきましょう。

2.一般健康診断【全企業が対象】

一般健康診断とは、全企業が対象となる健康診断のこと。法律(労働安全衛生法第66条1項)で定められており、労働者の健康障害を調べる目的で実施します。

一般健康診断の診断項目は、以下の通りです。

  • 既往歴及び業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
  • 胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査
  • 血圧の測定
  • 貧血検査(血色素量および赤血球数)
  • 肝機能検査(AST[GOT]、ALT[GPT]およびγ(ガンマ)-GTP)
  • 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロールおよびトリグリセライド)
  • 血糖検査(空腹時血糖または随時血糖)
  • 尿検査(尿中の糖および蛋白(たんぱく)の有無の検査)
  • 心電図検査

また、一般健康診断は5つの種類に分かれています。実施時期に影響があるため、違いを詳しく見ていきましょう。

一般健康診断には5つの種類がある!それぞれの特徴や違いは?

一般健康診断の種類は、次の5つ。

健康診断の種類実施時期対象となる労働者労働安全衛生規則
雇入時の健康診断雇入れ時常時使用する労働者第43条
定期健康診断1年以内ごとに1回常時使用する労働者(特定業務従事者を除く)第44条
特定業務従事者の健康診断右記業務への配置替え時、6月以内ごとに1回労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者第45条
海外派遣労働者の健康診断海外に6月以上派遣時、帰国後国内業務への就業時海外に6ヶ月以上派遣する労働者第45条の2
給食従業員の検便雇入れ時、配置替え時事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者第47条
引用元:会社の義務である3種類の健康診断。人事が最低限受けさせるべき検査項目とは

とはいえ、いきなりこれら全てを覚えるのは難しいかもしれません。最低限、以下のポイントを抑えておくと良いでしょう。

■一般健康診断で最低限覚えておきたいこと

  • 従業員を雇用する際、【雇入時の健康診断】が必要となる
  • 雇用時以降は、基本的に年に1回の【定期健康診断】を実施する
  • 定期健康診断ではなく、【特定業務従事者の健康診断】が必要となることも
  • 【特定業務従事者の健康診断】を実施する場合は、6ヶ月以内ごとに1回実施する

なかでも定期健康診断はほとんどの企業が対象となるため、具体的な流れを知っておくのがおすすめです。次に、定期健康診断の流れについて見ていきましょう。

定期健康診断の具体的な流れは?

定期健康診断の流れは、主に次の4つ。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

【ステップ1】クリニックへの受診予約

受診予約は、クリニックに連絡するだけではありません。主に、次のような業務があります。

■健康診断の受診予約で必要となる業務の例

  1. 健康保険組合に健康診断のコースを確認
  2. クリニックを選定
  3. 従業員への実施希望日の調整
  4. クリニックへの受診予約

健康保険組合によってコースが複数に分かれていたり、後述する補助申請の対象とならないことも。

またクリニックへの受診予約は電話、FAX、クリニック独自のWEB予約システムなどさまざま。さらにFAXなどで送信する書類も、クリニックごとに異なります。

そのためクリニックに合わせて書類を作成する必要があり、人的コストがかかります。クリニックの受診予約を進めつつ、健康保険組合へ補助申請の準備をしていきましょう。

【ステップ2】健康保険組合への補助申請

健康診断では、受診後に補助金の申請が可能です。しかし健康保険組合によって細かいルールが異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

■健康保険組合によるルールの違いの例

  • 協会けんぽの場合
    • 申請用紙に余白が10cm以上ないと受理されない
  • 東京実業健保の場合
    • 一部の人間ドックコースのでは、1人1人の申請書作成が必要
  • 健康保険組合によるコースや補助申請の違いについては、以下で詳しく解説しています。準備を徹底したい方は、ご一読ください。

    健康保険組合への補助申請の準備と並行して、健康診断の受診を進めていく流れとなります。受診後は支払いの準備が必要となるので、詳しく見ていきましょう。

    【ステップ3】健康機関への支払い

    健診費用の支払いの流れは、健康保険組合によって異なります。とはいえ、例がないとイメージしづらい方も多いと思いますので、一例をご紹介します。

    ■健診費用の支払いの流れの一例

    1. クリニックの請求書・領収書を確認し、健診費用を支払い
    2. ステップ2で確認した、補助金申請書類を健康保険組合に提出
    3. 補助金の振り込みがあり次第、経理処理を進める

    ここまでの対応で、定期健康診断の受診は完了です。しかし定期健康診断は、受診して終わりではありません。次に、健康診断後に必要となる事後措置について見ていきましょう。

    【ステップ4】健康診断の事後処置

    事後措置とは、健康診断で異常が見つかった方(有所見者と呼ぶ)を対象に行う対応のこと。事後措置で主に必要となる業務は、以下の5つ。

    ■事後措置で必要となる業務の例

    1. 健康診断結果の受領
    2. 診断区分を判定
      • 健康診断結果に応じて、従業員を以下に分類
      • 異常なし
      • 要観察
      • 要医療
    3. 必要に応じて、産業医面談を実施
    4. 健康診断結果を労働者へ通知
    5. 産業医へ意見聴取を実施
      • 健康診断の結果、就業状況、産業医面談の結果をもとに、産業医に意見聴取を行う
      • 法律により、健康診断実施日から3ヶ月以内の実施が必要
    6. 安全衛生委員会などで審議
      • 安全衛生委員会などで、事業者に産業医から意見を報告報告
      • 内容に応じて、今後の対応や方針を決定する

    特に、

    • 診断区分の判定のため、従業員ごとに就業状況を確認
    • 有所見者への産業医面談の調整・実施
    • 健康診断結果 + 就業状況 + 産業医面談の結果を合わせた、方針の決定

    といった業務の負荷が高く、人的コストがかかります。

    以上の4つが、定期健康診断の流れでした。

    これまでお伝えしたように、定期健康診断の準備・実施・実施後の措置など、定期健康診断で対応すべき業務はとても多いです。特に事後措置は業務負荷が高くなることもあり、「法律で定められた期日までに実施できるか不安に思った方」もいるのではないでしょうか。

    法律で定められた期間内に事後措置を終えるには、業務効率化が重要となります。具体的に言うと、健康診断業務のペーパーレス化を進めると良いでしょう。

    ペーパーレス化で効率化できる業務について、以下で詳しくまとめています。健康診断に関する法令順守を徹底したい方は、ご一読ください。

    また、健康診断をいざ実施しようと思ったときに、細かい点で困ることも。最後に、健康診断を開始するときによくある質問と回答を見ていきましょう。

    健康診断を開始するときによくある5つの質問

    健康診断を開始するときによくある質問は、次の5つ。

    1. 定期健康診断はいつまでにすべき?
    2. 健康診断の費用は企業側が負担すべき?
    3. 健康診断を拒否された場合はどうすればいいの?
    4. 産休・育休・介護休を取っている従業員はどうすればいいの?
    5. 健康診断の病院予約・調整を効率化する方法は?

    事前に疑問を解決しておけば、スムーズに健康診断を実施しやすくなります。実施が遅れて法律違反となるリスクを抑えられるため、1つずつ詳しく見ていきましょう。

    【質問1】定期健康診断はいつまでにすべき?

    結論から言うと、定期健康診断は年に1回の実施が法律で定められているだけで、具体的な日付の指定はありません。

    そのため自社の繁忙期などの状況を考慮して、実施時期を定めておけば問題ないでしょう。

    ただし、法律で定められた期日を超えないように注意が必要です。具体的に言うと、以下の期日を超えないように健康診断を進めていく必要があります。

    ■法律で定められた期日に関する事項まとめ

    • 年に1回、健康診断を実施する・健康診断実施から3ヶ月以内に、産業医の意見聴取を実施する
    • 定期健康診断結果報告書は、遅滞なく提出すること(遅くとも1年を超えない)

    特に定期健康診断結果報告書の提出は、1年を超えてしまうと労働基準監督署に指摘されてしまう可能性もあるので注意しましょう。

    【質問2】健康診断の費用は企業側が負担すべき?

    健康診断結果の費用は従業員ではなく、企業が負担します。しかし全てを負担するのではなく、健康保険組合に補助金を申請することも可能です。

    補助金を除いてどの程度費用がかかるのか、事前に確認しておくと良いでしょう。

    「健康診断にかかる費用の目安」や「オプション検査による費用の違い」など、健康診断の費用に関しては以下をご一読ください。

    【質問3】健康診断を拒否された場合はどうすればいいの?

    結論から言うと、法律(労働安全衛生法第66条1項)で定められているため、そもそも健康診断の受診拒否はできません。

    企業には安全配慮義務により健康診断を実施する義務があり、従業員にも自己保健義務により健康診断を受診して会社に報告する義務があります。従業員としては、「今の仕事を続けられる健康状態であることを証明する」ことが健康診断の役割になります。

    そのため強硬手段を取るなら、

    • 職務上の命令として、健康診断の受診を指示
    • 健康診断を拒否する従業員に対して懲戒処分

    といったことも可能です。とはいえ、このような強硬手段に出づらいのが実情でしょう。

    健康診断を拒否されないよう、健康診断の重要性について日頃から労働者に説明しておくことが重要です。

    【質問4】産休・育休・介護休を取っている従業員はどうすればいいの?

    産休・育休・介護休を取っている従業員に、無理やり定期健康診断の受診をさせる必要はありません。しかし、復職した場合はすみやかに定期健康診断を実施する必要があります。

    復職時の規程などに、健康診断に関するルールを定めておくと良いでしょう。

    【質問5】健康診断の業務を効率化する方法は?

    健康診断の業務を効率化する方法は、主に次の2つ。

    • 健康診断の代行サービスを利用
    • ペーパーレス化を推進

    健康診断の代行サービスを利用すると、以下の業務を効率化できます。

    ■健康診断の代行サービスで効率化できる業務の例

    1. クリニック・健康保険組合などの連絡・調整を依頼できる
    2. 健康保険組合への補助申請を自動化

    詳細は以下で詳しく解説しているので、ご一読ください。

    またペーパーレス化を実現できると、以下の業務を効率化できます。

    ■ペーパーレス化で効率化できる業務の例

    1. 健康診断の結果がデータで届くため、効率的に個人票の作成が可能
    2. 健康診断の結果を1枚ずつ確認しなくても、有所見の確認が可能
    3. 健康診断の履歴を確認しやすくなり、産業医面談の準備を効率化

    ペーパレス化で効率化できる業務について詳しく確認したい方は、以下をご一読ください。

    まとめ:健康診断は法律で義務付けられているため、実施と事後措置が必要!

    今回は、健康診断の義務化となる条件や、健康診断実施に必要な情報をまとめてご紹介しました。最後に、解説した中で特に重要な点をまとめます。

    • 定期健康診断は、年に1回の実施が必須(事業場の人数は関係ない)
    • 定期健康診断結果の報告は、常時50人以上の労働者がいる事業場が条件
    • 定期健康診断の実施や報告は、法律で義務付けられている
    • 定期健康診断の流れは、次の4ステップ
      1. クリニックへの受診予約
      2. 健康保険組合への補助申請
      3. 健康機関への支払い
      4. 健康診断の事後処置
    • 健康診断業務を効率化するコツは、次の2つの検討
      1. クリニック・健康保険組合などの連絡・調整を依頼できる
      2. 健康保険組合への補助申請を自動化

    健康診断の実施は、これまでお伝えしたとおり法律で定められているため必須です。しかし業務負荷が高く、法律で定められた期日までの実施が難しいことも。

    ただ、「期日までに間に合わせること」を重視した結果、適切な就業判定ができなくなっては意味がありません。大切な従業員を守れなくなってしまうため、可能な限り業務効率化を進めておくことが重要です。

    特にペーパーレス化は、法律で定められた期日を守る上で効果の高い施策です。以下で詳しくご紹介しているので、ご一読ください。

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