管理職必見!! メンタルヘルス対策の本質は職場のラインケアだ!!

2019.9.4 更新 / 2019.9.4 公開
ストレスチェックで組織改善
職場のラインケア

メンタルヘルスケアにはいくつかの種類がありますが、その中でも最も重要と考えられているのがラインケアです。さて、このラインケアとはいったいどのようなものなのでしょうか。一緒に考えてみましょう。

早速ですが、メンタルヘルスケアには大きく分けて4つの種類があります。厚生労働省の事業場における労働者の心の健康作りのための指針(PDF)で示されているセルフケア、ラインケア、事業場内の産業保健などのスタッフによるケア、事業場外資源による4つのケアです。今回、特にお話ししたいのはラインケアに関するものです。ラインケアというのは、管理監督者が部下に対して行うケアのことで、概要は下の図の通りです。

ケアの種類

なぜラインケアが重要なのか

労働者の個性や価値観が多様であることと同様に、ストレス耐性も人によって大きく異なります。そのような中で、業務に起因するストレスから個人的に抱えるストレスまで、労働者が抱える心の問題は数多く存在していることがすでに知られています。

ストレスを抱える本人が早期に気付いて自分自身で対処できれば良いのですが、個人ではどうにもならないような問題もたくさんあります。例えば、労働時間や業務の量、人間関係や各種のハラスメントなどがこれにあたります。これらへの対策として欠かせないのが、ラインケアです。労働者が個人で対応するだけでは解決への糸口が見えないものも、ラインケアとして管理監督者が手を差し伸べることで違う結果が期待できます。

労働者個人の力だけではどうにもならないような問題は、組織として計画的に対処していく必要があります。

労働契約法第5条では、使用者は労働者に対する安全配慮義務があることを述べています

この労働契約法第5条にあるように、会社(事業者)は労働者に対して疲労や負荷が過度に蓄積し心身の健康を害することがないように配慮しなければなりません。管理監督者は自分の管轄する部署に対して日常的に全体を把握できる立場にあるため、ストレスの要因となるものを把握しやすい状況にあります。把握した問題に関して、改善策を考え実行することが求められます。近年では、業務上のストレスを起因としたメンタルの不調に対して労災の認定がされているケースもありました。

上司として、部下がストレスで心身に不調をきたさないように早めに対応することは、部下のメンタルの不調を防いだり悪化を予防することに直結します。ですから、管理監督者が部署全体を見渡して問題の素因となるものを突き止め、善処していく必要があるのです。管理監督者がラインケアは、組織を健全に機能させるためにも欠かせないものといえます。

ラインケアで実施すること

就業する場所についての把握と改善

労働者が実際に就業する場所について、環境はどうか? 衛生的か? など、現状をきちんと把握し、必要なものに関しては改善するための計画をし、実行してください。

普段の部下の勤務状況や部署として抱える問題点、労働時間は長すぎないか、休憩は適切にとれる状況か、特定の人にだけ責任が偏り過ぎていないか、その環境下で働く労働者にとって就業する場所に不快な点や危険な点がないか、実際にその場所で就業している人の様子や言葉によく耳を傾けてください。労働者には新人から熟練者までいますので、それぞれの階層において価値観も異なります。ですから、特定の層の意見だけを聞くのではなく、全体を見聞きした上での対応が必要です。

部下からの相談への対応

メンタルヘルスケアでよく聞く言葉ですが「傾聴」を行うようにしましょう。個々の労働者が仕事に関して困難を抱えていないか、日常と変わった点がないかどうかの観察も含めて、問題点に早期に気付いて対処してください。

管理監督者が「いつもと何だか違う」と、部下の小さな変化に気付くことで早期対応ができます。普段との違いに早めに気付くためには部下と日頃からコミュニケーションをとり普段の状態を知っておくことが必要です。

これらの点を含めて、もう少し細かく見ていきましょう。

ラインケアで重視したいこと

部下のこんな様子に注意!

それまでは普通に出勤していた部下が、遅刻、早退、欠勤が増えたり、なぜか残業や休日に出勤したりしていませんか?本来の勤務能率と違ってきたり、報告、連絡、相談が減少もしくはなくなったり、逆に口数が異常なほど増えていたり、なぜかミスが続いたり…。人によってどんな症状が出るかは違いますが「いつもと違う」のであれば、要注意です。

早期発見、早期対応!

「いつもと違う」と感じたら、管理監督者が直接部下に対応できる内容なのか、産業医や保健師などの保険スタッフの対応が必要なのか、もしくは上司が保健スタッフに相談に行くのか、状況から判断してください。ただし、個人情報保護の観点から、上司が保健スタッフに相談に行く場合には部下の同意を得てからにしてください。

部下の話は最後まで聞く

管理監督者は部下の近くにいる立場を活用して、普段から部下とコミュニケーションをとるだけではなく、部下に対して関心を持ち、それを日頃から伝えておくことも必要です。普段から部下の立場に立って共感しながら話を聞くことで、部下との間に良い関係が生まれ話をより聞きやすい状態を保つことができます。部下の話を聞くときは、相手の言葉だけではなく言葉、表情、姿勢などさりげなく観察してください。

何がストレスに繋がっているのか

どのような場合に労働者に精神的な負荷がかかっているのか、業務から部下が感じたストレスはどのような内容なのか、まずはストレスの要因になるものを普段から意識的に考えるようにしてください。

職場ストレスのベクトル
厚生労働省 15分でわかるラインによるケア(PDF)より

業務に関係するストレスの要因は上の図のように大きく3つに分けることができます。管理監督者として、できる限りの調節をし、高ストレス状態を招かないように事前に対応しておくことも効果的です。また、ストレス要因を把握出来たら、その改善をはかりましょう。まずは、上の図の3つの側面に関しての対応をお願いします。その上で、就業の場所の物理的な環境も定期的にチェックしておきましょう。例えば、タバコの煙で体調を崩す人もいますし、適切な室温管理ができていない状況を我慢し続けて体調を崩してしまう人もいます。体の不調は心の不調にもつながりますので、注意しておきましょう。

ストレスの要因は改善

就業の場所やその環境は、労働者がたとえ不快に感じていても労働者自らの意志ではどうにもできない場合が多々あります。就業の場所に絡むもの、つまり業務に対する負荷や自由度、照明の具合や騒音などの環境、作業する際の道具や方法なども、ストレスにつながることがあります。ここで重要になるのは、多面的に就業の場所について検討することです。そして、何らかの問題があれば改善策を模索し、改善策を実施した場合にどうなるのかシミュレーションをしてみるのも良いでしょう。就業の場所から受けるストレスは労災につながることもありますから、慎重に検討してみてください。

休職や職場復帰への支援

時には管理監督者や産業医などの保健スタッフが連携して対処しても、労働者が業務に耐えられない状況に陥ってしまい休職を余儀なくされることもあります。その休職後、職場に復帰する際と復帰してからしばらくの間は休職していた人への支援が必要になります。職場へ復帰したとしてもいわゆる「病み上がり」の状態の労働者に対して無理は禁物です。休職者が職場に復帰しても、以前の健康な時と同じようなパフォーマンスはすぐには求められません。業務の量や質を調整しながら、時間をかけて職務に復帰できるように支援してあげましょう。

そもそも、どうして休職したのか?という部分に頭を切り替えてみてください。復帰してしばらくの間、その労働者は自分が周りからどう思われているのかを気にしたり、病気の再発や悪化を心配したりしています。そのような復帰者の心の声に寄り添い、職場に少しずつ適応できるように、管理監督者である上司はいつでも手を差し伸べられるような心構えをしておきましょう。もちろん、これは復帰者と上司との間に信頼関係があることが前提ですので、まずは信頼関係の構築から始めてください。

厚生労働省が推す職場復帰支援

ご覧いただいているように、厚生労働省では下の7つを職場復帰支援のポイントとして案内しています。

休職者が職場復帰する際のカギを握るのは直属の上司です。短期的な事象で判断せずに、時間はかかりますが心身の健康を取り戻し健全な社会人として就業できるように知っておいてほしいポイントです。

職場復帰支援について
厚生労働省 15分でわかるラインによるケア(PDF)より

受け入れ側のフォローも

休職から復帰した人を支援するにあたり忘れてはならないのが、復帰後の職場の労働者の存在です。復職者に気を遣うあまり、周りの他の労働者の負担が増えすぎて新たな不調者を出してしまっては本末転倒です。同じ職場には複数の部下がいるのですから、復職者の負担ばかりを考えて特別扱いしてしまうことのないように、また受け入れ側に注意しておいてほしいことがある場合には受け入れ側が聞き入れやすい伝え方を工夫するなど配慮しておくと安心です。

そして、上司としてラインケアをするためには、まずは自分自身の心身を健全な状態に保つことも忘れてはなりません。自分が健康でなければ効果的なラインケアをできませんから、管理監督者も労働者の一人としてセルフケアに努めてください。

さいごに

上司が部下にできる身近なラインケアは、部下の日常を知り、「いつもと違う」ことに早く気づいて対応することです。そのためにも、ラインケアの基礎知識をつけ、普段から部下とのコミュニケーションに努めていただければと思います。

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