従業員が怪我や病気の療養などを理由に、業務を中断する休職。そして休職が明けて業務に戻る復職。昨今では長時間労働やパワハラ、セクハラなど、精神的な疾患を理由に業務を中断せざるを得ない従業員も増加傾向にあります。そのため、休職・復職の手続きをしっかりと把握し、滞りなく遂行できることが近年の企業では求められています。健康経営を実践するためにも大切な休職・復職の基礎知識について、本記事でご紹介したいと思います。休職・復職とはそもそも休職・復職とは、どのようなものなのでしょうか?ここでは、休職や復職の定義や、法的な位置づけなどについてご紹介していきたいと思います。休職休職とは、業務外の病気や怪我、その他の理由により、雇用関係を維持したまま一定期間業務を休むことを言います。私傷病休職制度などとも呼ばれていますが、法的に義務付けられた制度ではなく、制度内容は会社によって就業規則で定められます。休職中の給与は自己都合ということもあり、無給の場合が一般的です。ただし、なかには休業補償制度を導入し、補償を行う会社もあります。復職復職はその名の通り、休職から復帰し、業務に戻ることを指します。病気や怪我などの他、妊娠出産を理由とした産休・育休から復帰した場合も復職に当たります。会社は復職者がスムーズに業務に復帰できるように、就労移行支援や短時間勤務制度など、復職後のプランを考えておく必要が出てくるでしょう。いずれの制度も従業員の離職を防止するために、必要不可欠な措置となるので、法的な強制力がないとはいえ、整備を進めておくことをおすすめします。休職・復職の流れとは休職・復職の対応は主に人事部門に任されます。では、休職・復職において、人事はどのような対応が求められるのでしょうか?ここでは、近年取り沙汰されることの多いメンタル不調者の休職・復職の流れを時系列で説明しながら、その時々の注意点についてご紹介していきたいと思います。休職前:休職対象者を見つける休職は本人による申請、または、会社からの命令で行われます。メンタル不調者をそのまま放置していると、多くの場合、そのまま離職してしまうケースがほとんどです。そのため、人事は産業医と連携した上で、休職をする必要がある社員を見つけなくてはなりません。休職を判断するまでのステップは以下の4つです。メンタル不調者を見つける上司・人事面談で不調の原因を見つける産業医の医学的判断をもらう本人へ休職の連絡をし、詳細を相談するメンタル不調者を見つけるためには、従業員の健康データをしっかりと把握しておく必要があります。ストレスチェックの状態や、過重労働など勤務状況、その他、生活態度などがメンタル不調者を見つける指標となります。もちろん、それだけでは休職を勧奨することは難しいので、面談や産業医の所見をもらうことで、適切な判断を行う必要があります。以下の記事にてさらに詳しい情報を紹介していますので、ぜひご参照ください。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Fcompany-care%2Fjudgement-of-sickleave%2F%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2FL34N6bb%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3Eまた、休職の合意が得られた場合は、休職から復帰までのおおよその流れや、休職中の給与や傷病手当金など、給付金の紹介などを行うとよいでしょう。休職期間の決め方などは以下の記事をご参照ください。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Fcompany-care%2Fabsence-from-work-postponement%2F%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2FeNSID5c%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E休職開始〜休職中休職が決まったあとは手続きを行って、休職に入ります。しかし、そこで人事の仕事が終わるわけではありません。休職中も対象の従業員とはコミュニケーションを取り続ける必要がありますし、復職が近づいてくると、復職に向けた準備をする必要が出てきます。休職手続き合意を得られた従業員が無事に休職に入ってもらうためには、いくつかの書類を準備してもらう必要があります。必要になる書類は会社によって異なる場合もありますが、1.診断書、2.休職願、3.長期休務報告書の3つは必要になってくるでしょう。診断書病気による休職であることを証明するためにも、医師による診断書を用意してもらうようにしましょう。診断書には必要な療養期間を明記してもらい、有効期間を定めるとよいでしょう。また、病気の回復が十分ではなく、休職を延長する場合などは、再度診断書を用意してもらいましょう。休職願就業規定によっては休職願、いわゆる休職の申請書が必要になる場合があります。提出する人は規定で定めておく必要がありますが、本人の提出が難しい場合は上司が対応するなど、臨機応変に対応できるようにしておくとよいでしょう。長期休務報告書こちらは上司から会社に対して用意する書類になります。部署で長期休務を(何日で長期休暇とするかは、会社次第)している従業員がいる場合に提出する書類で、人事が従業員の勤怠・給与管理を行う際に使用します。書類の詳細や、傷病手当金をもらうために必要な手続きなどについては以下の記事をご参照ください。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Fcompany-care%2Fblog-20180322%2F%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2FWEfosMX%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E休職中の対応休職に入ってからも人事の対応は続きます。休職者は期間によって取るべき対応が変わってきます。休職者の状態に応じた対応を心がけなくてはなりません。休職から復職までの主なステップは以下の通りです。【STEP1】自宅で安静にする期間休職に入った直後の従業員は「自宅安静が必要な状態」です。体調が不安定で、生活リズムもお昼まで起床できないなど乱れがちです。従業員の体調に合わせて、定期的に連絡を取り、安心して療養に専念してもらいながらも、会社への信頼や復職意欲を維持することが大切です。【STEP2】徐々に体調が回復する期間休職後1~2カ月目は日常生活が安定しておらず、体調の波がある期間です。この期間は心身の休息が最優先です。会社から従業員への連絡はプレッシャーとなるため最小限にしましょう。人事としては、最低限の定期的な連絡で通院の有無や手続き面での不明点を確認します。【STEP3】復職準備の開始期間この期間は復職に向けて、日中に外出して活動して夜に睡眠が取れるよう生活リズムを整えたり、復職に向けた具体的な時期や通勤訓練、復職時の業務内容などの準備をします。人事としては定期的な連絡の際に職場復帰の希望を確認し始めます。復職の意思が確認できたら、復職するための目標と計画を立てていきます。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Fcompany-care%2Fblog-20170810%2F%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2FYXI0xzN%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E【STEP4】復職の手続き期間従業員の体調が回復し、復職の希望を希望する場合、復職の手続きと判断を進めます。人事が行うことは以下の3点です。「生活記録表」「復職願」「主治医の復職可の診断書」を従業員から提出してもらう産業医の復職面談を設定する産業医の意見をもとに復職可否を判定する%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Fcompany-care%2Freinstatement-preparation-documents%2F%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fxn48v8d%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E最も注意が必要な休職者への定期連絡ですが、下記の記事で文例を掲載しながら、より詳細な情報を紹介していますので、ぜひご参照ください。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Fcompany-care%2Fcare-during-sickleave%2F%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2FKqSC9k4%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E復職休職が終わり、無事に職場に復帰しても、最初の2〜8週間はフォローをしっかりしていく必要があります。厚生労働省の研究から、「うつ病になり病気休暇を取得した人の中で、再発して病気休暇を再取得した人」の割合は、復帰から1年で全体の28.3%、2年で37.7%と高く、5年以内で47.1%に達していたことが分かっています。一度休職してしまうと、復職できてもその後同じ理由で再休職に至る可能性が高くなってしまうのです。再休職・体調悪化は、事業主側の決定や支援体制に不備があったと判断されかねません。また復職者のサポート体制が不十分だと、復職者本人だけでなく、同僚など周りの従業員の負担や不満が増加し、職場全体の生産性が低下してしまう可能性もあります。そのため、復職者ができるだけスムーズに職場復帰ができるように、人事は上司と復職支援プランを作成することが求められます。以下の記事にて、その必要性と作成のポイントなどをご紹介していますので、ご参照ください。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Fcompany-care%2Freinstatement-support-plan%2F%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2FbIzosNu%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E復職判断について休職していた従業員の職場復帰を行うにあたって、復職判断が必要になってきます。従業員が仕事に戻れるかどうかを判断する指標として、「業務遂行性」という考えがあります。業務遂行性とは「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態のこと」を言い、業務起因性と合わせて、労災保険の業務上災害における基本的な認定基準の一つとして用いられます。しかし、休職や復職の際に用いられる業務遂行性は少し意味合いが変わってきます。復職時に業務遂行性を確認する際は、「仕事を行う上で、集中力が維持できるのか、判断力は従前と変わらないのか、内服薬での副作用による影響はどうか、病気の後遺症による影響はどうか」という意味で用います。この業務遂行性があるかないかが、復職できるかどうかを判断する際に重要となるのです。主治医はあくまで日常生活の部分での回復を判断するため、主治医が復職可能と判断したとしても、そのまま復職とすることはできません。産業医が業務遂行性があるかどうかを判断した上で、復職の可否を決めましょう。業務遂行性を判断する際のポイントは以下になります。ポイント1:業種、部署の特徴を踏まえて判断するポイント2:復帰直後は70%くらいの仕事でよいポイント3:就業上の措置があれば働けるのか判断するまた、人事がチェックできる5つのポイントとして以下があるので、産業医と合わせて復職判断の際にご活用ください。人事のチェックポイントや、業務遂行性についての詳細は以下の記事にまとめていますので、合わせてご確認ください。【産業医が教える】人事が復職を判断できる5つの基準復職に必要な「業務遂行性」3つのチェックポイントまとめ従業員が安心して休養に専念できる休職制度、そして、スムーズに業務に復帰できる復職制度は、従業員の健康を管理し、維持向上することで事業の生産性を向上させる健康経営に必要不可欠な制度です。しかし、企業としてしっかりとした体制が整っていなければ、休職を繰り返してしまったり、退職につながってしまうなど、逆に生産性を下げてしまう要因にもなりかねません。本記事で休職・復職の基本を抑え、従業員にとっても、企業にとっても最適な休職・復職制度の構築にお役立てください。また、そもそも休職者を出さないことが健康経営にとっては大切です。ストレスチェックや、産業医面談、健康診断結果の管理など、未然に防ぐ対応を心がけましょう。