衛生委員会を有効活用
2023年4月20日 更新 / 2023年4月20日 公開

安全衛生委員会の基礎知識。メンバー構成や罰則、運用のポイントをご紹介

一定の規模の企業に設置・運営が義務付けられている安全衛生委員会。従業員の健康を守るために必要な組織ですが、その詳細をしっかりと把握できているでしょうか?健康経営を目指す企業にとっては、適切な運営は必要不可欠です。

今回は安全衛生委員会の基本情報や、運営のポイントについて網羅的に紹介していきたいと思います。

安全衛生委員会とは

安全衛生委員会をはじめとした各種委員会は、従業員の健康や、職場の衛生環境、安全性などについて、管理者と労働者が話し合う会議体のこと。
一定の基準を超える企業には各種委員会の設置が労働安全衛生法第18条により義務付けられています。
設置が求められる委員会は以下の3つです。

  • 安全委員会
  • 衛生委員会
  • 安全衛生委員会

安全委員会は労働者の危険を取り除き、安全を守るためのもので、労働災害の原因究明や再発防止策などについて議論が行われます。対して、衛生委員会は主に衛生面に関する議題を取り扱い、労働者の健康を守るためのもの。そして、この2つを統合した機能を有するのが安全衛生委員会です。

安全衛生委員会の設置が求められる事業規模

労働安全衛生法により、一定の規模を超える企業は委員会の設置が義務付けられています。
その設置基準が以下になります。

・安全委員会

①常時使用する労働者が50人以上の事業場で、次の業種に該当するもの:林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、 金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種、(道路貨物運送業、 港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業

②常時使用する労働者が100人以上の事業場で、次の業種に該当するもの:製造業のうち①以外の業種、運送業のうち①以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業

・衛生委員会

常時使用する労働者が50人以上の事業場(全業種)

引用:安全衛生委員会を設置しましょう|厚生労働省

衛生委員会の設置基準が50人以上の事業場であることを考えると、安全委員会の設置が求められる企業は、そのほとんどが衛生委員会の設置も義務付けられていることになります。
2つの委員会の設置が義務付けられている場合は、統合して安全衛生委員会として設置・運営することができます。

安全衛生委員会の基本情報については、以下の記事もご参照ください。

開催の頻度

事業主は、労働安全衛生規則(以下、安衛則)第23条の規定によって、安全衛生委員会を毎月1回以上開催しなければなりません。そして、安全衛生委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを3年間保存しなければなりません。

安全衛生委員会のメンバー構成

各種委員会を運営していくためには、適切な人員を選定していかなければなりません。それでは、どのようなメンバーをどのような基準で選定すればよいのでしょうか。

ここでは、衛生委員会、安全委員会、そして、安全衛生委員会のメンバー構成や人員資格についてご紹介していきます。

衛生委員会の種類と構成員

安全衛生委員会のメンバーは労働安全衛生法第19条で以下のように規定されています。

  • 総括安全衛生管理者または総括安全衛生管理者以外の者でその事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者の中から事業者が指名した者 1名
  • 安全管理者及び衛生管理者の中から事業者が指名した者
  • 産業医の中から事業者が指名した者
  • 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するものの中から事業者が指名した者
  • 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するものの中から事業者が指名した者

メンバーは事業者側から指名することができますが、議長以外のメンバーの半数は、過半数労働組合、または労働者の過半数代表の推薦をもとに指名しなければなりません。

また、メンバーの人数については特に規定はありませんので、会社の規模に応じて人数を決めるとよいでしょう。議論を円滑に進められるように、奇数になるように構成することをおすすめします。

さらに詳しい人員の規定などについては下記の記事をご参照ください。

安全衛生委員会を設置しない場合の罰則

安全委員会・衛生委員会・安全衛生委員会は、労働安全衛生法により設置が義務付けられています。そのため、設置をしなかった場合は罰則があります。

例えば、安全衛生委員会を設置しなければならない事業場において、委員会を設置しなかった場合、50万円以下の罰則となります。

また、委員会を設置しても月1回の会議を実施できていないなど、委員会が正しく機能していない場合は、労働基準監督署から是正勧告が行なわれる可能性があります。

会議の遅延や議事録の非保管などに具体的な罰則はありませんが、是正勧告後、改善が見られないような場合は違法行為とみなされ、指導対象となることもあるでしょう。

安全衛生委員会で話し合われる議題

安全衛生委員会をはじめとした各種委員会は、従業員の健康や、職場の衛生環境、安全性などについて、管理者と労働者が話し合う会議体のことと序盤にお伝えしました。

では、具体的にはどのようなことが取り上げられるのでしょうか。ここでは、委員会で主に議題に上がる内容や、議題の出し方などについてご紹介していきます。

安全衛生委員会では、以下の事項に関しての調査と審議をします。

[1]労働者の危険を防止し、健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。

[2]労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。

[3]労働災害の原因及び再発防止対策で、安全衛生に係るものに関すること。

[4]前三号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止、健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

厚生労働省 職場のあんぜんサイト:安全衛生委員会

審議する内容は従業員の健康や安全にとって非常に重要な内容となっていますが、同じ業種、同じ職場で何度も開催していると、どうしても同じような議題を話し合うことになり、マンネリ化してしまうことが発生します。

安全衛生委員会のマンネリ化の要因と対策

安全衛生委員会がマンネリ化する主なケースとしては以下が挙げられます。

その1)毎年、同じような時期に同じようなテーマの季節ネタを扱っている
その2)発言者が限定的になっている
その3)現場の声が届かない
その4)情報の共有の場にしかなっていない
その5)開催することが目的になってしまっている
その6)産業医に丸投げする

衛生委員会がマンネリ化する原因として挙げられるのは、は事業場の規模に合った構成になっていないことが挙げられます。あまりにも大きすぎる衛生委員会では個々の出席者は発言の機会が得にくくなってしまいます。どうしても巨大な組織になってしまう場合には、テーマごとに下部組織を作っても良いでしょう。

次に人材が適正かどうかということが挙げられます。衛生委員会をマンネリ化させないためにも、衛生委員会の活動に積極的な人材であることは必須条件です。事業場の衛生に関して消極的な考えの人や、発言する気のない人がいては衛生委員会の雰囲気も望ましくないものになってしまいます。全体の士気を落とすことになってしまいますので、時には思い切って人材の見直しをしたり、衛生委員会のメンバーとしての辞令を出すなども一つの方法として挙げられます。

では、委員会を活性化させるためには、どのような対策が考えられるでしょうか?
例えば、以下のような対策があります。

その1)トップがやる気を見せる
その2)風通しの良い職場作りをする
その3)衛生委員会の議題やテーマは計画的に
その4)衛生委員会の議題やテーマは社内からの募集も視野に

議題やテーマ選びももちろん重要ですが、衛生活動は労使双方が自発的に考える機会を作ることで大きな効果が見られます。
詳しい対策内容については、以下の記事をご参照ください。

安全衛生委員会と産業医の関係

安全衛生委員会の構成員の中には、必ず産業医が含まれています。
産業医とは、事業場で労働者の心身の健康管理を行う医師のことで、労働者の健康管理などに関して、医師としての専門的な立場から指導・助言を行います。

労働安全衛生法第13条で、常時使用する労働者が50人以上のすべての事業場には産業医の選任義務を、常時使用する労働者が1,000人以上の事業場と有害な業務に常時500人以上の労働者を使用する事業場には専属の産業医の選任義務が規定されています。

ストレスチェックや休職・復職の判断などにも関わり、企業の健康経営に重要な役割を果たす産業医ですが、安全衛生委員会ではどのような役割を担っているのでしょうか?

産業医は、安全衛生委員会に出席して、その構成員として専門的な立場から事業場の労働者のために、安全衛生上で必要な措置について意見を出します。特殊検診のルール作りや、安全衛生に関する規定の作成、作業環境測定の結果の評価と対策に関する審議、疾病の予防活動に関する審議などにも産業医が参画することが理想的です。

産業医の安全衛生委員会への関わりや、役割、企業側の準備など、詳しい情報は下記の記事をご参照ください。

まとめ

安全衛生委員会は職場の健康や安全などについて、従業員側と話し合うことができる、健康経営にとって非常に重要な機会となっています。安全衛生委員会の正しい運営について、本記事で理解し、活性化させることで、自社の健康経営を推進するきっかけにしていただけますと幸いです。

執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。