メンタル不調者の休職判断に必要な4つの手続き。休職拒否への対応も解説

2020年7月6日 更新 / 2020年5月22日 公開
休職・復職にムリなく対応

メンタルヘルス不調の気配がある従業員について、「休職が必要なのかだろうか?」「どう判断したら良いのか?」と迷ったことはないでしょうか。

本人から休職の申し出があった場合は、休職規定にもとづいて産業医に医学的判断をもらえば良いのですが、本人からの申告がない場合は、人事や上司が社員の不調に気づき、対応が必要なのかを判断し、本人に休職を言い渡さなければなりません。

傷病休職制度(いわゆる休職)は法律で定めらた制度ではなく企業ごとに規定の異なる制度です。もし体調不良の原因が「仕事の要因」である場合、仕事を継続できないことを理由に解雇することは禁止されています。(労働基準法第19条)。一方で、「仕事の要因」で体調不良になった場合に、休職を判断することも安全配慮義務の観点から企業としての義務といえます。

メンタル不調者が発生したら、いち早く見つけて対処することが大切です。対応が遅れると病状が悪化して、休職期間が伸びたり離職になる危険性があります。

ここでは、どうやって不調者を見つければよいのか、そして休職までに必要な手続きには何があるのかを説明します。休職者も会社側も納得できる情報を収集して、適切な休職手続きを行っていきましょう。

休職判断までの4つのステップ

メンタルヘルス不調者を見つけて、休職を言い渡すまで、次の4つのステップを踏みます。

この流れの中で、産業医の役割は業務遂行ができるかどうか「医学的判断」を下す部分です。実際に休職できるかを判断・決定するのは会社側(人事)であり、産業医ではありません。また、従業員が自分から休職を願い出た場合は、産業医に医学的判断をもらうところからスタートします。

不調者を見つけて原因を特定し、産業医の医学的判断を受けて休職の判断をするのが人事の役割です。それぞれのステップについて、人事や産業医がどのような情報を使って、どう判断していけばよいのか、解説していきます。

1.メンタル不調者を見つける

メンタル不調者を見つける方法は、「ストレスチェックの結果」「長時間労働」「生活の様子」の3つを総合的に加味して、対応が必要かどうか判断します。不調になる予兆を把握して、早期発見・早期治療できるようにしましょう。

ストレスチェックの結果

高ストレス者であったり、高ストレス者の割合が高い部署にいる社員には、注意が必要です。50人以上の事業場では毎年実施が義務付けられているストレスチェックの結果を活用しましょう。

過重労働

疲労蓄積のある過重社員や、環境変化がある社員にも注意が必要です。部署異動や転勤による職場環境の変化は、ストレスの原因になります。残業時間の長さにも注意しながら、過度な負担がかかっていないか注意しましょう。

生活の様子

普段の仕事をする様子も、従業員の不調を見つけるサインです。上司や同僚に話を聞いて次の3点を整理します。

  1. 業務上での変化
  2. 外見の変化
  3. 情緒面での変化

例えば、次のようなサインが挙げられます。

1.業務上での変化:遅刻・欠勤・早退が目立つようになった、仕事のペースが著しく低下している、ケアレスミスが目立つようなった、きちんと整理されていたデスクが散らかってきた、同僚・上司とのコミュニケーションがうまくいっていない

2.外見の変化:顔色が悪い、覇気がない、身だしなみに気を使わなくなった

3.情緒面での変化:イライラしている、ネガティブコメントが多い、口数・声が小さくなった、何事にも興味を示さない

最も重要なのが、遅刻・欠勤・早退といった勤務管理上の変化です。労働日の9割を下回るような勤怠不良があれば、「上司や人事による面談」を行いましょう。

2.上司・人事面談で不調の原因を見つける

上司や人事での面談では、「ストレス反応」を発見することがポイントです。ストレス反応が続くと、うつ病、パニック障害、不安障害、適応障害という「疾病」に繋がります。

うつ病などの疾病の前段階であるストレス反応を見つけて、問題の早期発見・早期解決に繋げます。ストレスの原因が「仕事の要因」と「仕事外の要因」のどちらなのかを判断して、会社としての対応方針を決めます。

ストレス反応

ストレス反応には、活気の低下、イライラ、疲れ、不安感、身体愁訴、抑うつなどがあります。「最近よく眠れない」「食欲がない」などの症状を訴える場合は、企業として対応する必要があるかもしれません。不調が見られたら、積極的に産業医面接を実施しましょう。

ストレス反応についての詳細はこちら「厚生労働省 こころの耳」をご覧ください。

仕事の要因(業務起因性の要因)

仕事の要因でストレス反応が起きている場合は、会社として上司・部署への介入や業務の調整をする必要が出てきます。確認するストレス要因は、「業務量」「マネジメント」「コミュニケーション」の3つです。

「業務量」は「業務内容」×「業務時間」に分解できます。業務時間の長さや時間帯などか体調に影響していないか、常務時間帯やシフト勤務による生活リズムへの影響はないかを確認していきます。

「マネジメント」は、上司が部下の不調に気づきマネジメントできているか、求められる仕事のスキルと実際の本人がもつスキルに大きなずれがないか、の2点を確認します。責任感が強い人ほど、求められる仕事スキルと実際に必要なスキルの乖離でストレスを感じる人が多いです。実際のスキルに合った仕事のゴール設定をすることが大切です。

「コミュニケーション」は、言いたいことが言える環境になっているか、職場の人間関係に問題がないかを確認します。人間関係はメンタル不調の大きな原因の1つです。上司や同僚からのサポートが得られているかも確認しましょう。

仕事外の要因(私的な要因)

プライベート上の環境変化(例:結婚、出産、引越し)や家庭事情(例:介護、育児)などがあります。「仕事外の要因」の場合は、会社側が解決できる問題ではなく、本人で解決する必要があります。仕事に支障がある場合は、産業医との面談や医療機関への受診を促します。必要であれば、就業可否の診断書を提出してもらいましょう。

時間が経っても勤怠不良が改善しなかったり、従業員が受診を拒否をすることもあります。その場合、再度面談して上司や人事からの命令として受診を強制します。従業員は企業との契約の中で、自分の体調を管理して労働できる状態にし、事業主からの命令に従う義務があるとされています。

3.産業医の医学的判断をもらう

業務起因性の要因で体調不良になっていることが分かったら、産業医面談を設定して就業可能な状態かどうかを産業医に判断してもらいます。産業医への依頼が難しい場合は、主治医に意見をもらうこともできます。

医学的判断から、業務から離れ休養すべきなのか、それとも職場環境を調整することで改善が見込めるのかを見極めていきます。体調の業務遂行性は次の3つに分けられます。

業務遂行性(体調)の区分

人の体調は「安静が必要」、「日常生活が可能」、「就業が可能な状態」の3つに分けられます。業務を遂行できるのは「就業可能な状態」のみです。

主治医や産業医が医学的に治療・休養が必要かを意見し、その意見をもとに上司や人事が休職の可否を判断します。医師が判断するのはあくまで医学的判断です。実際に休職を許可するかどうか決定するのは会社(人事)である点に注意してください。

また、主治医は通常の日常生活を送れるかを判断することはできても、働けるかどうかの判断には弱い可能性があります。主治医の診断書などから、就業可能なのかどうかは注意して判断するようにしてください。

職場環境の調整

業務の内容や量の変更や、座席や部署(可能な場合)の変更を指します。上司と相談しながら、周囲から「特別扱い」という不公平感が生まれないよう注意しながら、可能な範囲での対策を行います。

4.本人へ休職の連絡をし、詳細を相談する

最低限、本人に伝えておくべき情報

1. 休職の目的

休職の目的を理解し、復職に向けた生活を送ることが体調を良くするために大切です。近年、休職中に遊びに行った様子をSNSでアップし、職場の同僚の反感をかうケースも多くなりました。復職後、働きづらい環境を作らないためにも、休職中にやったほうがよいこと、行わないほうがいいことのアドバイスも必要です。

2. 休職開始~休職中~職場復帰までのおおまかな流れやルール

パンフレットなど書面に下記のような項目を明記し、分かりやすいように、そして後からも見直せるように説明します。

  • 休職開始〜休職中〜職場復帰までの大まかな流れ
  • 休職中に本人が実施すべき事項(生活リズム表の記入等)
  • 休職中の会社とのコンタクト方法
  • 休職中の生活
  • 休職中の給与や傷病手当金
  • 休職時、復職時に必要な書類
  • 休職可能な期間

病態が安定し、復職に近づいたら、生活リズム表を記入してもらうことも伝えておきましょう。また、給与や傷病手当金、休職可能な期間など本人の経済面に関することも伝えることで、生活の安心感につながります。

産業医は以下の5つを基準にして復職を判断します。復職をイメージして休職に入れるように、復職の目安も伝えておきましょう。

  1. 従業員が復職に対して十分な意欲を示していること(=就業意欲力)
  2. 食事や外出などの生活リズムが整っていること(=リズム力)
  3. 1日の疲労が翌日までに回復できる体力があること(=回復力)
  4. 通勤時間帯に一人で安全に通勤できること(=通勤力)
  5. 職場環境に適応できるかどうか(=適応力)

実際に復職するためにはこれにプラスして、職場の受け入れ準備が整うこと、そして主治医・産業医の意見を踏まえた上で、会社側が復職可能の判断しています。

休職を拒否する社員への対応

休職を伝えても、本人が休職を嫌がったり、解雇されるのではないかと不安になって拒否することがあります。本人に休職を納得してもらえない場合は、次の2つの方法で説得してみてください。

  1. 本人の希望通りに休職をしない方向で調整するが、この段階で「2週間の間の勤怠」を通常に戻すことも同時に約束し、もし勤怠不良がこの期間であれば休職とする
  2. 休職の扱いではなく、まずは有給で1〜2週間休み、休み明けの初日に再評価する。有給がない場合には休職の約束をする

本人は、まだ仕事がやれる、休職すると家族からの視線が恥ずかしい等、複雑な心境であることは事実です。従って、「ルールの中で強制して休職にする」のも1つですが、「自分のコンディションが悪く、休みが必要なのだ」という納得感を醸成する期間を設置するとスムーズにいきます。

メンタル不良の従業員を無理に働かせると、症状が悪化し、さらに悪い事態を引き起こし、会社がその責任を負います。休職は解雇ではなく、体調を良くして復職するための休養期間であり、体調が改善したら復職できることを伝え、安心して療養に入れるようサポートしていきましょう。

今まで「働き続けてきたのだからカラダとココロにも休みをあげることも大切」です。新たに再出発するための手段だと、前向きにとらえられるような関わり方をしていくことで、従業員との信頼関係を築いていきましょう。

~コラム 復職の割合~

従業員が休職、復職に対して抱える不安をもっている場合には、復職率等も参考になるでしょう。

健康診断等で異常所見が出ている従業員をフォローアップしている企業は60.8%です。そのうち、メンタルヘルスでは59.9%(約6割)の企業が、主治医と連携し、フォローアップを行っています。そして過去3年間で病気により休職した従業員を抱える企業は52.0%と、約半数の企業で休職者が発生しています。その中で、休職後の復職率は51.9%と、約半数の従業員が復職しています。

51.9%という数字にはメンタルヘルス不調だけではなく、がんや脳血管疾患などのフィジカル疾患も含まれているため、一概にメンタルヘルス不調の従業員の復職率とは言えません。しかし休職後に退職した理由を見てみると、がん(42.7%)、メンタルヘルス(42.3%)、脳血管疾患(41.6%)と、メンタルヘルス不調が理由による退職が二番目に多いことがわかります。

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