集団分析のまとめ。職場環境を改善するストレス判定図の見方。

2020年10月6日 更新 / 2020年1月6日 公開
ストレスチェックで組織改善

ストレスチェックの結果が出てきても、何をどうしたらいいの?となりませんか?ストレスチェックが終わると、会社や部署でまとめた結果が出てきますが、これがとてもややこしい。

しかも「ストレスチェックの結果を上司や経営者に報告して」と言われることも。何を報告したら良いのでしょうか。そんなときに役立つ、ストレスチェック集団分析の結果の見方をご紹介します。

ストレスチェック実施会社からの結果をいじる必要は一切なし。結果から読み取るポイントや、結果を受けてからの次のアクションをお伝えします。

*多くのストレスチェック実施会社が、厚生労働省の公表している仕事のストレス判定図を用いて結果を出しています。今回はその仕事のストレスチェック判定図の読み取り方を中心にご紹介します。別の形で結果が出てきても応用できる方法です。

メンタル不調の危険がある部署はどこか?

ストレスチェックの結果は、うつ病など精神的な病気になる危険のある部署を見つけるために使います。部署ごとや社内全体で「仕事のストレス判定図」が出てくるので、その中の「総合健康リスク」という数字を見ていきます。

「総合健康リスク」は、日本の平均的な事業所を基準として、今回の部署で休職者が発生する確率がどのくらい高いか点数化しています。その点数が、大きい部署は要注意です。

「何点から職場の改善をしないといけないのか?」と気になるかもしれません。しかし、総合健康リスクは何点から危険なのか、つまり職場環境改善が必要なのかは決まっていません。では、どう判断するのかというと、社内の部署同士を比べたり、同業他社と比較します。

図1.仕事のストレス判定図(厚生労働省)を用いた結果の例

社内で総合健康リスクが比較的高い部署を見つける

社内全ての部署について、総合健康リスクの一覧を作り、相対的に点数が高い部署TOP3に注目します。それらの部署が、社内で注意の必要な部署となります。

4位以降はあまり部署の状況が変わらないことが多いので、3位くらいまでで十分です。部署を多く選びすぎても、もっと細かく部署の状態を見ていく時に大変になります。

また、仕事のストレス判定図では「量-コントロール判定図(A)」と「職場の支援判定図(B)」という2つの数字もあります。これらは総合健康リスクを計算する材料になった数字です。それぞれの点数も部署間で比較してみて、どちらかがあまりにも大きい部署にも注目しましょう。

次に、それらの部署について、数値が偶然大きくなっているわけではないことを確認します。そのために、「部署の人数」と「受検者数」が10人を超えているかをチェックします。

部署の人数が10人以下だと、飛びぬけて点数の悪い人に結果が引っ張られてしまったり、部署の一部の人についてしか反映できていない点数になってしまっている可能性があります。点数が異様に高い場合なども、データが変になっている可能性を考えてみてください。

同業他社の高ストレス者率や総合健康リスクと比べる

部署間で比較して注意する部署を選んだら、次に同業他社と比べても問題なレベルなのかを調べます。

実は会社全体で病む危険度が高いかもしれません。部署間で比べるだけでなく、同業他社と比較していきます。高ストレス者率や総合健康リスクの点数は、性別や年代、職種、雇用形態、職位によって違うので、同業他社と比べます。

経営者としても、同業他社の中での自社の立ち位置は大きな注目点です。比較に使う情報は全国労働衛生団体連合会の(こちら)をご使用ください。業種別の高ストレス者の割合や総合健康リスクをまとめています。 

例えば、総合健康リスクについて「男女とも120 を超えている職種はなく、総合健康リスクの最も大きい職種は男女とも技能職(生産工程/労務作業)である( 引用:全国労働衛生団体連合会 )」ことが分かっています。

また、職場改善が必要かどうかの判断で、120や140くらいをだいたいの目安にしている企業もあります。自社で大体の基準を決めておいてもいいかもしれません。

注意の必要な部署を更に正確に見つける方法を集団分析の社内報告マニュアルで詳しく解説しています。経営者がメンタルヘルスに注目する理由は何なのか、社内報告で気を付けるべきポイントはどこか、ここでしか得られない情報が満載です。

~総合健康リスクは何を意味しているのか?~

例えば、総合健康リスクが150となったら、全国平均よりも1.5倍メンタルヘルス不調が起こる可能性があることを指しています。国の計算では、平均的な職場では100人に1人の割合でメンタルヘルス不調による休職者が出ると設定しています。リスクが150の場合、平均の1.5倍なので1.5人の不調者が出る可能性があることになります。
微々たる差に見えるかもしれませんが、1人の休職者による影響を考えると…

~量-コントロール判定図(A)と職場の支援判定図(B)は何を意味しているのか?~

量-コントロール判定図(A)は、どれだけストレスが大きい職場かを表しています。仕事の中で最もストレスになるものの例が、仕事の量と裁量権(コントロール)の低さです。仕事の量が多ければ多いほど、そして仕事の裁量権が低ければ低いほど、メンタルヘルス不調になる危険度が増します。この危険度を数値化したのが「量-コントロール判定図(A)」です。

職場の支援判定図(B)は、どれだけ支援(サポート)の大きい職場かを表しています。サポートの大きさは、上司からの支援と同僚からの支援によって決まります。どちらも大きければ大きいほどメンタルヘルス不調になる危険度は下がります。この危険度を数値化したのが「職場の支援判定図(B)」です。

なぜその部署は危険度が高いのか?

要注意の部署が出てきたら、「何が原因なのか?」を考えていきます。経営者やその部署の管理監督者はその原因を知りたがります。ここでは、原因を調べる方法と気を付けるポイントについて説明します。

対象部署へヒアリングに行く

結果が悪かった原因を一番よく知れるのは、本人たちへのヒアリングです。その際に注意点が3つあります。

  1. 高ストレス者だけに聞くのではなく、部署のメンバー全員にヒアリングする
  2. プライバシーが確保された環境で聞く
  3. 悪者探しにならないよう、どんな部署になってほしいかの理想を聞く

1つ目について、高ストレス者だけにヒアリングすると、高ストレス者であることが部署の人たちにバレてしまいます。ヒアリングに応じてくれる社員がいなくなってしまうので、部署の全員にヒアリングします。

また、ヒアリングする場所は会議室などの密室で、個別に行うのが良いです。部署内で問題があってストレスチェックの結果が悪くなっている可能性があるので、部署の人たちには声が聞こえないように、そしてできれば面談の様子が見えないように配慮します。

最後に、部署のネガティブな面にばかり聞いていると、「先輩が相談に乗ってくれない」「定時で帰れない」「社員間の会話がない」というように、ないものばかりが出てきて暗い雰囲気になってしまいます。

ヒアリングが終わった時に前向きな気持ちで社員が仕事に戻れるように、どういう職場になってほしいか、という観点で話を聞くのがベターです。

産業保健スタッフへヒアリングする

保健師や産業医は、今回の結果になった原因に心当たりがあるかもしれません。個別のケースについては守秘義務があるので話してもらえないこともありますが、普段の保健指導や面談の中での情報や、医学的な視点で見て今回の結果をどう判断するか、意見を聞いていきましょう。

また、報告書が産業医のチェックを受けているものというお墨付きをもらうことで、経営者に報告書を見せた時の信用度が上がります。

他の社内データも参照する

残業時間や勤怠管理、人事異動のデータなどと比較してみると、なぜメンタルヘルス不調の危険度が高いのか予想できることがあります。

残業時間が多くてストレスがとてもかかっていたり、最近部署異動してきた部長との関係が上手くいっていないのかもしれません。部署ごとの繁忙期など、部署の状況が分かる様々なデータが活用できます。

お役立ち資料"従業員50人からはじめる健康労務の法令遵守"をダウンロードする
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来年のストレスチェックで成果を出すために

工夫すれば、もっと経営に役立つものになったり人事としての評価も掴めるのがストレスチェックです。もっと使いやすくて価値のあるストレスチェックのシステムを導入できるかもしれません。ここでは、いくつかの企業が行っている次回のストレスチェックまでの動きをご紹介します。

従業員満足度や受検率を高める

ストレスチェックは正直、従業員にとって答えるのが面倒で、なぜ回答しないといけないのか、理解されにくいです。でも一番面倒なのは人事、ストレスチェック実施者です。

従業員のストレスチェックへの理解度を上げて受検率を高める方法をこちらにまとめています↓

ストレスチェック受検率は、経営者も重視します。ストレスチェックを受けるメリットや情報保護の徹底をアピールし、受検率を上げていきましょう。

ストレスチェック結果を従業員が活用できるようにする

メンタルヘルス不調になる原因を見つけても、改善できなければ毎年同じ結果を出す繰り返しになります。原因を解消して、せっかく出したストレスチェックの結果を有意義に使っていけると良いですよね。

方法としては、次のようなものがあります。

  • 経営者に改善策を提案し、採択してもらう。
  • 管理職に結果を渡すときに、アクションチェックリストを添える。
  • 衛生委員会で議題に上げる。
  • 現場の管理職向けに説明会やワークショップを開く。
  • 従業員参加型のワークショップを開く。

職場環境改善のために、いろいろなツールが作られています(厚生労働省HP)。職場環境改善をこれから始める方向けの素材や(こちら)、従業員が中心にいきいき職場へ変えていくための手引きもあります(こちら)

職場環境改善の進め方や効果について、(こちら)にまとめていますので、社内で集団分析の効果を示すためにもご利用ください。

良い結果を出している部署をまねる

今回はストレスチェック結果の悪かった部署に注目しましたが、逆に結果の良かった部署に注目してその理由を探ることで、会社全体に広めていく試みをしている企業もあります。

総合健康リスクが低い部署をピックアップしてヒアリングをしたり、ご自分が知っている良い職場の取り組みについてまとめていきます。それを社内報に載せたり衛生委員会で取り上げて会社全体の取り組みにしていくのです。

いろんな会社の良好事例をまとめているサイトもあります(こちら)。ご自身の会社で使えそうな対策はあるでしょうか?

厚生労働省が出している 職場改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト) もご参照ください。

参考文献・資料

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