2024年4月から2025年4月にかけて、人事関連の法改正が相次いで行われます。2024年10月に施行される「社会保険の適用拡大」や、同11月に新設される「フリーランス保護法」など、企業によっては、労働環境の根本的な見直しが求められるものもあります。経営層や人事担当者は、自社に関わる改正について早めに把握し、準備しておくことが必要です。本記事では、2024年〜2025年における各改正の概要と対象となる企業、必要な対応についてまとめました。また、2024年度の改正のなかには、長時間勤務の抑制や心身の負担の軽減など、従業員の健康状態への配慮がこれまで以上に求められる内容もあります。組織のさらなるウェルビーイング向上には、システムの導入による効率的な健康管理が役立ちます。健康診断結果や過重労働の管理、ストレスチェックなどに対応し、組織の健康情報を可視化できる健康管理クラウド「Carely」をぜひご活用ください。▼健康管理クラウド「Carely」について確認する%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Fsaas%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2F4JND6py%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E【2024年】人事・労務に関する法改正の一覧2024年から2025年にかけて、多くの法改正が予定されています。以下では、人事・労務に影響を与える主な法改正と対処が必要な企業を一覧にまとめました。各企業は改正内容を把握し、適切な対応を行う必要があります。法の名前(改正年月)内容対象企業労働基準法施行規則・労働基準法(2024年4月)労働条件明示事項の追加2024年4月1日以降に労働条件通知書や雇用契約書を発行するすべての企業労働基準法施行規則・労働基準法(2024年4月)裁量労働制に関する見直し裁量労働制を導入・継続するすべての企業労働基準法施行規則・労働基準法(2024年4月)時間外労働の上限規制適用猶予期間の終了建設事業、自動車運転業務、医師、鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業労働安全衛生法(2024年4月)化学物質管理者の選任義務化「リスクアセスメント対象物」を製造・取扱い、または譲渡提供する企業障害者雇用促進法(2024年4月・2025年4月)障がい者の法定雇用率2.5%に引き上げ・除外率の引き下げ従業員40名以上の企業健康保険法・厚生年金法(2024年10月)社会保険の適用拡大従業員数が51人以上であり週20時間以上の短時間労働者を雇う企業健康保険法・厚生年金法(2024年12月)マイナンバーカードと健康保険証の一体化従業員を雇うすべての企業フリーランス保護法(2024年11月)フリーランスの取引の適正化と環境整備フリーランスと取引する企業高齢者雇用安定法・雇用保険法(2025年4月)65歳までの雇用確保の義務化継続雇用制度の経過措置の適用企業高齢者雇用安定法・雇用保険法(2025年4月)高齢者雇用継続給付の縮小従業員を雇うすべての企業次の章から、上から順にそれぞれの法改正の概要と対応方法を解説していきます。労働基準法施行規則と労働基準法の改正労働基準法施行規則と労働基準法の改正にともなう変更事項や、企業側での対応方法を解説します。労働条件明示事項の追加(2024年4月)裁量労働制に関する見直し(2024年4月) 時間外労働の上限規制適用猶予期間の終了(2024年4月)特に1つ目の「労働条件明示事項の追加」は、今後従業員を雇う企業すべてに影響するため、内容を正しく理解し、法に沿った求人票や雇用契約書を作成しましょう。労働条件明示事項の追加(2024年4月)改正の影響のある企業:2024年4月1日以降に労働条件通知書や雇用契約書を発行するすべての企業労働基準法第15条では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と規定されています。具体的には、労働基準法施行規則の第5条第1項に規定されている事項を明示する必要があります。この労働基準法施行規則および「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改正にともない、2024年4月から「労働条件の明示事項」に新たに4項目が追加されました。▼2024年4月以降に追加された労働条件明示事項出典:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます(厚生労働省)1.就業場所・業務の変更の範囲(対象:すべての労働者)「就業場所と業務」とは、労働者が就業すると想定されている就業場所と、通常従事することが想定されている業務のことを指します。「変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、労働契約の期間内における就業場所や従事する業務の変更の範囲のことです。「変更の範囲」として、配置転換や在籍型出向が命じられた際の就業場所および業務も含まれます。ただし、出張・研修や臨時の他部門への応援業務など、就業場所や従事する業務が一時的に変更される際の変更先は含まれません。また、雇入れ直後から労働者がテレワークを行うことが想定されている場合は「雇入れ直後」の就業場所として、その労働契約期間中にいずれテレワークを行うことが想定される場合は「変更の範囲」として、テレワークが可能な場所の明示が求められます。2.更新上限の有無と内容(対象:アルバイトや契約社員など有期契約労働者)有期労働契約の締結および契約更新の際に、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)がある場合には、その内容の明示が必要です。具体的には「契約期間は通算◯年を上限とする」「契約の更新回数は◯回まで」 などの記載が求められます。また、最初に締結した契約以降に更新上限を新設または短縮する場合は、事前に理由の説明が必須となりました。3.無期転換申込機会(対象:無期転換申込権が発生する有期契約労働者)2013年施行の改正労働契約法により、同一の使用者(企業)との間で有期労働契約が更新され、通算5年を超えたときに、労働者の申し込みによって無期労働契約に転換される「無期転換ルール」が定められました。この無期転換ルールに従い、「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、該当する有期労働契約の契約期間の初日から満了日までの間、無期転換を申し込むことが可能な旨(無期転換申込機会)の明示が今回より必要になりました。初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も、有期労働契約を更新する場合は、更新のたびに明示が必要です。また事業主は、「有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項」(パート・有期労働法)に基づき、無期転換について企業内で相談できる体制の構築が求められます。4.無期転換後の労働条件(対象:無期転換申込権が発生する有期契約労働者)「無期転換申込権」が発生する契約更新ごとに、無期転換後の労働条件の書面での明示が必要になりました。明示内容は、労働契約締結の際の明示事項と同じものです。なお、「無期転換申込権が生じる契約更新時」と、「無期転換申込権の行使による無期労働契約の成立時」で労働条件を明示する必要があります。本改正への対応すべての労働者に対して明示事項が追加されたため、労働条件通知書や雇用契約書などの書式を、規定の明示事項を満たす内容に変更する必要があります。また、有期労働者への明示事項の追加にともない、それぞれの契約内容の明確化が求められます。各有期労働者の通算契約期間や更新回数の確認、無期転換ルールの適用者の把握などをリストアップして定期的に更新し、対応に漏れがないよう準備しておくことを推奨します。参考:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます(厚生労働省)裁量労働制に関する見直し(2024年4月)改正の影響のある企業:裁量労働制を導入・継続するすべての企業2024年4月1日に施行された労働基準法施行規則および労働基準法に関する改正により、新規もしくは継続して裁量労働制を導入する場合には、対応が必要となりました。裁量労働制とは「実際に働いた時間ではなく、事前に企業と労働者で合意した時間を働いたとみなし、その時間に基づいた賃金を支払う制度」のことです。裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があり、今回の法改正はそれぞれに変更事項があります。【専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制に共通する変更点】専門業務型・企画業務型に共通する主な追加事項をまとめて解説します。●共通の変更点1.労使協定への下記の定めの追加裁量労働制の適用において労働者本人の同意を得ること同意をしなかった場合に不利益な取り扱いをしないこと●共通の変更点2.労使委員会の決議における下記の定めの追加同意の撤回の手続き同意とその撤回に関する記録を保存すること●共通の変更点3.労働基準監督署への協定届・決議届の届出●共通の変更点4.健康・福祉確保措置の強化以下1と2から、1つずつ以上の措置を実施することが望ましいと定められました。1.長時間労働の抑制や休日確保を図るための事業場の適用労働者全員を対象とする措置勤務間インターバルの確保深夜労働の回数制限労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)連続した年次有給休暇の取得を含めた取得促進2.勤務状況や健康状態の改善を図るための個々の適用労働者の状況に応じて講ずる措置一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導代償休日または特別な休暇の付与健康診断の実施心と体の健康問題についての相談窓口設置適切な部署への配置転換産業医などによる助言・指導又は対象労働者に産業医などによる保健指導を受けさせること【専門業務型裁量労働制における変更点】専門業務型裁量労働制の対象業務として、新たに「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)」が加わりました。【企画業務型裁量労働制における変更点】企画業務型裁量労働制においては、労使委員会の運営規定に以下の内容が追加されました。対象労働者に適用される「賃金・評価制度」についての説明制度の実施状況の把握と運用改善についての項目6ヵ月以内ごとに1回の労使委員会の開催定期報告の頻度の変更(初回は6ヵ月以内に1回、その後1年以内ごとに1回)加えて、企画業務型裁量労働制の賃金・評価制度を変更する場合は、労使委員会に変更内容の説明を行うことを、労使委員会の決議に定める必要があります。本改正への対応まずは専門業務型・企画業務型ともに、裁量労働制の適用への同意に関する事項など、規定の項目を追加した労使協定の締結が必要です。同時に、労働者本人に同意を得るため、労使協定の内容を明示して説明します。労働契約や就業規則の見直しが必要となる場合もあります。また、企画業務型においては、労使委員会の運営規定に必要項目を追加しましょう。次に、自社を管轄する労働基準監督署へ、協定届と決議届の提出が必要です。所定の様式は、厚生労働省のHPでダウンロードできます。届出後、裁量労働制を自社で適用できます。労使協定に準拠し、実際に制度を適切に実施していくことが重要です。また、健康・福祉確保措置の強化には、適切な勤怠管理や職場環境の整備が必要です。健康管理システムの導入をはじめHRテックなどのツールの活用も有効でしょう。下記の資料では、法令遵守のために企業が行うべき健康管理業務や、健康管理システムの活用方法など、健康管理システムの導入にあたって知っておきたいポイントをまとめました。「従業員の健康改善を効率的に行いたい」とお考えの方は、ぜひご参照ください。▼お役立ち資料%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Flibrary%2Fmanagement-system%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2FxpiYkGh%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E参考:裁量労働制の概要(厚生労働省)参考:裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です(厚生労働省)参考:企画業務型裁量労働制について(厚生労働省)参考:専門業務型裁量労働制について(厚生労働省)時間外労働の上限規制適用猶予期間の終了(2024年4月)改正の影響のある業務:建設事業、自動車運転業務、医師、鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業労働基準法では、2019年より時間外労働の上限が規定されています。一方で、一部の業務については、その特性や取引慣行における課題から、上限規制の適用が5年間猶予されていました。▼時間外労働の上限規定のイメージ出典:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説(厚生労働省)この猶予期間の終了にともない、2024年4月から、すべての業務を対象に時間外労働の上限規制が適用されることとなりました。次の業種に該当する場合、対応が必要です。1.建設事業建設事業においては、災害復旧や復興の事業を除き、時間外労働の上限規制はすべて適用されます。災害復旧などの事業では、時間外労働と休日労働の合計を「月100時間未満」「2〜6ヵ月平均80時間以内」とする上限は適用されません。2.自動車運転業務自動車運転の業務については、時間外労働の上限規制は原則すべて適用されますが、特別条項付き36協定を締結する場合は、年間の時間外労働上限は「年960時間」です。また時間外労働と休日労働の合計を「月100時間未満」「2〜6ヵ月平均80時間以内」とする規制および「時間外労働が月45時間を超えられるのは年6ヵ月まで」とする規制も適用されません。3.医師医業に従事する医師については、特別条項付き36協定を締結する場合、年間の時間外・休日労働の上限が最大1860時間となります。時間外労働と休日労働の合計について、「月100時間未満」、「2〜6ヵ月平均80時間以内」とする規制が適用されません。また、「時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヵ月まで」とする規制も適用されません。4.鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業時間外労働の上限規制がすべて適用されます。参考:建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務、厚生労働省)参考:医師の働き方改革2024年4月までの手続きガイド(厚生労働省)本改正への対応時間外労働の上限規制猶予期間終了業務において、あらためて適切な勤怠管理が求められます。あわせて、対象業務の労働環境の見直しが必要となる場合もあるでしょう。参考:時間外労働の上限規制(厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)なお、長時間労働の定義や企業が取り組める対策については以下の記事をご覧ください。%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Fcompany-care%2Flong-working-hours%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2FCtwdzGR%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E労働安全衛生法の改正労働安全衛生法の改正にともなう変更事項や、企業側での対応方法を解説します。2024年の改正点の中から、人事に関連の高い「化学物質管理者」の選任について解説します。化学物質管理者の選任義務化(2024年4月)改正の影響のある企業:「リスクアセスメント対象物」を製造・取扱い、または譲渡提供する企業労働安全衛生法の改正により、化学物質規制の措置義務対象が大幅に拡大し、事業者の自律的な化学物質管理が求められることとなりました。その一環として、2024年4月から、「リスクアセスメント対象物」※を製造・取扱い、または譲渡提供をする事業場では、化学物質管理者の選任が義務化されました。※労働安全衛生法第57条の3でリスクアセスメントの実施が義務付けられている危険・有害物質本改正への対応まずは、事業場での取り扱い化学物質をリストアップし、取扱い物質が「リスクアセスメント対象物」に該当するか確認しましょう。詳しくは、独立行政法人労働者健康安全機構による労働安全衛生総合研究所のサイト「ケミサポ」や、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」を参考にしてください。リスクアセスメント対象物を製造・取扱い、譲渡提供する事業場では、化学物質管理者の選任が必要です。また、労働者に保護具を使用させるときは、保護具着用管理責任者の選任も必要です。いずれも選任すべき事由が発生した日から14日以内に行い、対象者への権限の付与および関係労働者への周知が必要です。さらに、該当事業場では「リスクアセスメント」の実施が必要です。リスクアセスメントとは、化学物質による危険性・有害性を特定し、そのリスクを見積もり、低減措置(リスクを減らす対策)の内容を検討することです。厚生労働省による「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に、リスクアセスメントの内容が示されています。参考:労働安全衛生法の新たな化学物質規制(厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)障害者雇用促進法の改正障害者雇用促進法の改正にともなう変更事項や、企業側での対応方法を解説します。今回は「障害者法定雇用率」「除外率」についてお伝えします。障がい者の法定雇用率2.5%に引き上げ(2024年4月)・除外率の引き下げ(2025年4月)改正の影響のある企業:従業員40名以上の企業障害者雇用促進法に基づき、民間企業における障害者法定雇用率が、2024年4月より2.5%に引き上げられました。また、対象事業主の範囲が拡大し、従業員数40.0人以上の企業が対象となりました。▼障害者法定雇用率の引き上げの推移出典:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク)法定雇用率は段階的な引き上げが決定しており、2026年7月には2.7%に引き上げられる予定です。さらに、対象事業主の範囲は従業員数37.5人以上の企業へと拡大する予定です。一方、障がい者の就業が一般的に困難であると認められる業種については、雇用労働者数を計算する際に「除外率」に相当する労働者数が控除され、障がい者の雇用義務が軽減される制度が設けられていました。この除外率制度は2002年に廃止となり、経過措置として段階的に縮小されていますが、2025年4月からは下図のとおり引き下げられることが決まっています。▼2025年4月以降の障がい者雇用における除外率出典:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク)また、障がい者雇用における障がい者の算定方法も一部変更となりました。2024年4月より、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障がい者、重度身体障がい者および重度知的障がい者について、雇用率上、0.5カウントとして算定できるようになりました。本改正への対応新たに障がい者雇用の対象となる企業では、障がい者雇用に向けた取り組みが必要となります。障がい者雇用についての方針の決定、担当者の選任、業務の切り出し、採用活動、必要な設備や支援の準備などがあげられます。また、障がい者雇用の対象企業は、毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告する必要があります。さらに、「障害者雇用推進者」を選任し、障がい者雇用の取り組み体制の整備に努めることが求められます。障害者雇用状況報告の様式内には、推進者の役職・氏名を記入する欄があります。障がい者雇用の経験やノウハウがない場合、ハローワークや障害者職業センターといった、事業主が相談できるサポート機関の活用も選択肢の一つです。また、障がい者を雇い入れた場合には、特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用助成金など、助成金が受給できる場合があります。すでに障がい者雇用を実施している企業でも、法定雇用率の引き上げにともない雇用すべき人数が変化するかどうかを確認し、必要に応じて採用を進める必要があります。参考:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク)参考:はじめての障害者雇用(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)健康保険法・厚生年金法の改正健康保険法・厚生年金法の改正にともなう変更事項や、企業側での対応方法を解説します。主な内容は次のとおりです。社会保険の適用拡大(2024年10月)マイナンバーカードと健康保険証の一体化(2024年12月)従業員を雇うすべての企業に影響があるため、内容や対応方法は把握しておきましょう。社会保険の適用拡大(2024年10月)改正の影響のある企業:従業員数が51人以上であり週20時間以上の短時間労働者を雇う企業2024年10月より、社会保険の適用範囲が拡大します。厚生年金保険の被保険者数51人以上の企業などで働く、週20時間以上の短時間労働者の厚生年金保険・健康保険の加入が義務化されます。適用対象者は、厚生年金保険の対象となる従業員数が51人以上の企業で働く、以下の条件を満たしたパートタイマーやアルバイトです。週の所定労働時間が20時間以上30時間未満所定内賃金が月額8.8万円以上(基本給および諸手当)2ヵ月を超える雇用の見込みがある学生ではない本改正への対応まずは、新たに社会保険の被保険者となる労働者を把握し、対象労働者に改正内容を正しく通知します。個人面談や説明会を実施して、社会保険の加入による影響を説明しましょう。そのうえで、必要であれば雇用契約内容の見直しを行う場合があります。また、企業と対象労働者の保険料負担について確認しておくことも重要です。書類の届出も必要です。従業員数51人〜100人の企業には、2024年9月上旬までに、日本年金機構から新たに適用拡大の対象となる旨の通知書類が届きます。2024年10月7日までに厚生年金保険被保険者取得資格届を提出する必要があります。参考:社会保険適用拡大特設サイト(厚生労働省)マイナンバーカードと健康保険証の一体化(2024年12月)改正の影響のある企業:従業員を雇うすべての企業2023年6月の改正マイナンバーカード法の可決にともなう健康保険法の改正により、2024年の12月から、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録した「マイナ保険証」の使用が必須となります。従来の健康保険証は2024年12月2日に廃止されますが、退職などで資格喪失にならない限り、2025年12月1日まで使用できます。また、「マイナ保険証」を持っていない人には代わりとなる「資格確認書」の交付が予定されています。本改正への対応現在、マイナンバーカードの取得は義務付けられていませんが、現行の健康保険証は廃止となるため、今後はマイナ保険証の利用が国民に普及すると考えられます。マイナ保険証を利用するためには、マイナンバーカードの交付申請と、マイナンバーカードの健康保険証としての利用の申し込みが必要です。この手続きは、従業員本人が行う必要があります。企業としては、マイナ保険証の普及により、保険証の郵送や退職時の保険証の回収、高額医療費の申請が不要になるなどのメリットがある反面、従業員の保険証の種類が統一されず業務が煩雑になる可能性もあります。スムーズな移行のためには、マイナ保険証の利用に必要な申請について、早めに従業員へアナウンスしておきましょう。参考:健康保険証とマイナンバーカードの 一体化(マイナ保険証)に関する 制度説明資料(全国健康保険協会)参考:マイナンバーカードと健康保険証の一体化について(厚生労働省)フリーランス保護法の新設ここでは、フリーランス保護法の新設の概要と企業側での対応方法を解説します。フリーランスと取引する企業は、トラブル防止のために内容と対応方法を把握しておきましょう。フリーランスの取引の適正化と環境整備(2024年11月)改正の影響のある企業:フリーランスと取引する企業2024年11月、新設の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」、通称「フリーランス保護法」が施行されます。フリーランス保護法とは、フリーランスと取引をする事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備などを義務付けるものです。フリーランスと発注業者における取引の適正化と、フリーランスにおける就業環境の整備を目的とします。具体的には、フリーランスと取引を行う事業者に、主に下記のような義務が生じることとなります。詳しくは、厚生労働省の「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」をご確認ください。▼フリーランス保護法で生じる義務●業務委託者は受注者に対して報酬額などを書面か電磁的方法で通知する●業務委託者は成果物を受け取った日から60日以内に受注者へ報酬を支払う●業務委託契約にあたり以下を禁止する受注者に原因がないにも関わらず成果物の受け取り拒否や返品、報酬額の減額を行う受注者に原因がないにも関わらず成果物の内容変更ややり直しをさせる相場より著しく低い報酬額を設定する正当な理由なく指定するモノ・サービスの購入を強制する金銭など経済上の利益を提供させる●募集情報に虚偽記載をしない●受注者が育児や介護を行えるよう配慮する●受注者に対するハラスメント行為の防止措置と対応のための体制整備を講じる●契約を中途解除などする場合、解除日の30日前までに予告する参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の概要 (新規)|厚生労働省本改正への対応まずは、フリーランス保護法の適用範囲となる契約をリストアップし、内容を把握しておきましょう。施行後は、成果物の内容、報酬、支払期日など委託業務内容を明確化し、取引を行うフリーランス労働者に対し書面やメール・電子契約書にて通知する必要があります。加えて募集情報と実際の業務内容の一致が求められるほか、報酬の支払いについても規定があるため、必要に応じて契約書や募集内容、支払い方法の見直しを行いましょう。また、契約における禁止事項の遵守とともに、フリーランスが働きやすい環境整備に努めることが求められます。厚生労働省による「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」などを参考に、社内で対策を進めてください。参考:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ(厚生労働省)高齢者雇用安定法・雇用保険法の改正高齢者雇用安定法・雇用保険法の改正にともなう、65歳までの雇用機会の確保の義務化および高齢者雇用継続給付の縮小について解説します。今後のシニア人材の活用を見据えて、賃金制度などの方針を検討しましょう。65歳までの雇用確保の義務化(2025年4月)改正の影響のある企業:継続雇用制度の経過措置の適用企業高年齢者雇用安定法では、定年を65歳未満に定めている企業に対し、以下のうち、いずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じることが義務づけられています。65歳までの定年の引き上げ希望者全員を対象とする、65歳までの継続雇用制度の導入定年の廃止このうち継続雇用制度について、2013年3月31日までに、継続雇用制度の対象者を限定する基準を労使協定で設けていた企業には、対象者の限定を許可する経過措置が認められていました。この経過措置期間が2025年3月31日に終了し、2025年4月1日以降は、すべての企業を対象に、希望者全員に対する65歳までの雇用機会の確保が義務化されます。ただし、高年齢者雇用確保措置の選択肢に変更はなく、「65歳までの定年の引き上げ」は義務化されません。高年齢者雇用確保措置はあくまで希望者に対する措置であり、必ず65歳までの社員全員を雇用する義務はありません。本改正への対応2025年3月に継続雇用制度の対象者に関して経過措置が終了する対象企業は、同年4月以降に継続雇用制度の対象者を「希望者全員」と定める必要があるため、雇用契約の内容や就業規則の改定が求められます。高齢者雇用継続給付の縮小(2025年4月)改正の影響のある企業:従業員を雇うすべての企業また、2025年4月からは高年齢雇用継続給付が賃金の「最大15%」から「最大10%」に縮小されます。高年齢雇用継続給付は、高年齢者の雇用継続の援助のため、一定の要件を満たす対象者に賃金の補助として支給されるものです。5年以上の被保険者期間がある60〜65歳の労働者で、次の条件で支給額が決まります。60歳以上65歳未満の各月の賃金が60歳時点の賃金の61%以下に低下した場合:各月の賃金の15%相当額60歳時点の賃金の61%超75%未満に低下した場合:低下率に応じて、各月の賃金の15%相当額未満の額本改正への対応高年齢雇用継続給付を加味した賃金設定を行っている場合、高年齢雇用継続給付の縮小による収入の減少で、対象となるシニア社員のモチベーションの低下を招く恐れがあります。シニア社員の就業意欲を高め、離職を防ぐためには、賃金制度の見直しも検討するとよいでしょう。加えて、処遇や職場環境の改善、評価制度や人材配置の見直し、シニア向け研修の実施など、シニア層がモチベーションを保ちながら働き続けられる環境作りを心がけることが重要です。参考:高年齢者雇用安定法の改正(厚生労働省)参考:高年齢雇用継続給付の見直し(厚生労働省)2024年の法改正の内容と必要な対応を把握し準備しよう2024年4月〜2025年4月に施行される法改正は多岐にわたり、人事労務領域の実務に関わるものが多くあります。書類の変更や事務的な手続きだけでなく、企業全体で働き方の見直しが必要となる法改正もいくつか実施されます。事前に着実な準備ができるよう、早い段階から法改正の内容を把握し、自社内でどのような対応が求められるのかを理解しておくとよいでしょう。時間外労働の上限規制適用や、障害者雇用の対象拡大と法定雇用率の引き上げ、高齢者の雇用確保など、法改正によって就業体制の変化をともなうこともあります。働き方や業務内容の変化、また年齢や障害の有無にかかわらず、すべての従業員が健康的に働き続けられるよう、職場環境を整えることが必要不可欠です。「Carely健康管理クラウド」では、健康診断結果の一元管理や健康リスクの可視化、ストレスチェック、産業医・保健師との面談管理など、多様な機能で従業員の健康管理を効率的にサポートできます。新たな健康経営の取り組みとして、ぜひご検討ください。▼「Carely健康管理クラウド」について確認する%3Cdiv%20class%3D%22iframely-embed%22%3E%3Cdiv%20class%3D%22iframely-responsive%22%20style%3D%22height%3A%20140px%3B%20padding-bottom%3A%200%3B%22%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Fwww.carely.jp%2Fsaas%22%20data-iframely-url%3D%22%2F%2Fiframely.net%2F4JND6py%3Fcard%3Dsmall%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fdiv%3E%3C%2Fdiv%3E%3Cscript%20async%20src%3D%22%2F%2Fiframely.net%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E