支社も含めた健康経営。本社の健康管理体制が成功のカギ

2020年8月21日 更新 / 2020年4月3日 公開
健康経営の実務

支社は従業員が少ないため、生産性の低い社員や欠勤する社員がいると、他の従業員の負担になります。

人の少ない支社だからこそ、本社よりも健康管理の体制を整えることが大切です。しかし、支社では人事や産業保健スタッフがいないため、本社と同じような健康管理はできません。

支社では、支社ならではの健康管理の工夫があります。ポイントは、「本社の情報をどれだけ支社に伝えられるか」と、「ツールをどれだけ活用できるか」の2つです。支社ならではのハードルを克服して、効率的に健康管理を進めていきましょう!

支社の健康管理義務

はじめに、支社で必要な健康管理の内容を確認します。

安全衛生法では、事業場ごとに安全衛生の取り組みが義務付けられています。(事業場の範囲はこちらを参照。)主な健康管理業務は、各担当者の選任と、健康診断の実施、ストレスチェックの実施、衛生委員会の開催です。

支社や支店が大きくなると、法律上の健康管理の義務が増えてきます。従業員の人数規模ごとの実施義務リストはこちらです。

選任・実施義務対象事業所規模実施規定(一部)参考資料
統括安全管理者屋外的業種は労働者100人以上等厚生労働省HP
衛生管理者全業種50人以上業種に応じた資格が必要厚生労働省HP
安全管理者屋外・工業的業種50人以上安全管理者の資格が必要厚生労働省HP
産業医全業種50人以上1000人以上(有害業務では500人以上)で専属産業医厚生労働省HP
衛生委員会全業種50人以上毎月1回以上開催する厚生労働省HP
安全委員会屋外・工業的業種50人以上衛生委員会と合体可能厚生労働省HP
作業主任者危険有害作業ごと厚生労働省HP
衛生推進者非工業的業種10人以上50人未満選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任厚生労働省HP
安全衛生推進者主に工業的業種10人以上50人未満選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任厚生労働省HP
定期健康診断報告全業種50人以上遅滞なく所轄労働基準監督署に報告厚生労働省PDF
ストレスチェック全業種50人以上集団分析は努力義務厚生労働省HP
Carely 事業場に応じて必要な選任。安全衛生法で定義する事業場の範囲とは?参照、2020年4月3日時点)

支社ならではの健康管理のハードル

支社には人事と産業保健スタッフがいないため、支社特有の問題が生じます。きちんとできていないと、安衛法の義務違反や健康経営優良法人の認定基準をクリアできなくなってしまいます。

ここでは、支社でよく直面する問題をまとめます。自分の支社ではこれらの問題が発生していないか、確認してみてください。

①健康診断のハードル

支社の健康診断は、「制度はあるけれども従業員の健康状態は把握できていない」、となってしまうことが多いです。

例えば、具体的にはこんな問題があります。

  • 受診率、再受診率、結果の提出率が低い
  • 保健指導ができていない
  • 産業医面談ができていない
  • 就業判定の基準が支社によってバラバラ

支社には、健康診断を受診するように催促する人がいません。健康診断をめんどうだと思っている社員は、受診しないままになっていまいます。健診結果の提出も、提出する相手がその場にいないので、提出しなくても大丈夫だと思ってしまいます。

支社に保健師や産業医がいないので、健診結果が悪くても面談をすることができません。不健康でも保健指導ができず、そのまま体調不良で休職してしまう可能性があります。

本社の産業医に健診結果を見てもらおうとしても、支社の健診結果は見ない、という産業医もいるようです。産業医や健診病院によって就業判定の基準も変わってしまうので、全社で統一した基準を作る必要があります。

②ストレスチェックのハードル

ストレスチェックは、全国の実施義務のある事業場の内、約83%が実施しています(平成 29 年)。まだストレスチェックを始めていない事業場では、早急に実施するようにしましょう。

支社のストレスチェックのハードルは、次のような例が挙げられます。

  • 受検率が低い
  • 集団分析の結果が活かされない
  • 各種研修のために本社へ行かなくてはいけない
  • 保健師面談や産業医面談が実施できない

もし受検率が低い場合は、ストレスチェックの目的や、企業はストレスチェックの結果を見られないというルールが従業員に伝わっていないのかもしれません。ストレスチェックの受検率アップの方法は、こちらの記事にまとめています

ストレスチェックの集団分析をしても、結果が活用されないこともあります。結果が活用されないのは、管理職が結果の使い方を知らないからかもしれません。しかし、管理監督者研修をするにも本社にいかなくてはならず、管理職の負担になります。

高ストレス者は保健師や産業医からの医学的なサポートが必要ですが、本社の産業保健スタッフや、外部のサービスを使う必要があります。

③衛生委員会のハードル

衛生委員会は月1回の開催が義務ですが、上手く活用できている企業は少ないです。

労働者衛生委員会の負担が大きすぎる、衛生委員会で話すことがなくて形式的になっている、など衛生委員会の運営で難しさを感じたことはないでしょうか。

支社には産業保健スタッフがいないので、医学的な話題ができません。また、支社の健康意識が低いと参加率も落ち、単なる面倒な時間になってしまいます。衛生委員会を活性化する戦略は、こちらの記事にまとめていますのでご覧ください。

お役立ち資料"人事が主導する、健康経営スタートガイド"をダウンロードする
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支社のハードルを解決する方法

支社ならではの健康管理のハードルは、次の4つの方法で解決できます。

支社の健康管理のポイントは、「本社の情報をどれだけ支社に伝えられるか」と、「ツールをどれだけ活用できるか」です。

ここまで、多くのハードルを紹介してきましたが、健康診断などの業務に限らず、全ての健康管理業務に活かせる方法です。

①オンライン通話を活用する

産業医や保健師による面談を、本社の保健師や産業医とのオンライン通話で行います。面談が周囲の従業員にバレにくいため、プライバシー保護のメリットもあります。

衛生委員会も、本社と支社が合同でオンライン通信しながら行う企業もあります。医学的な話題の提供や、支社できちんとした委員会が行われているかを見守ることができます。

また、本社の健康づくりの取り組みを支社に紹介したり、本社が支社を気にかけていることをアピールする場にもなります。支社の従業員たちの健康管理へのモチベーションを上げる有効な機会です。

②e-learningを活用する

高ストレス者へのセルフケアの研修を、e-learningで行うことも効果的です。従業員にe-learningを提供すると、抑うつ効果があることが研究で示されています(こちら)

人事は高ストレス者が誰か分からないので、本部の産業医やストレスチェック実施会社を通して、高ストレス者にe-learningの案内を流します。

管理監督者研修も、e-learningを使えば、本社へわざわざ行くことなく手軽に受けることができます。ストレスチェックの集団分析結果を管理職へ渡す時や、パワハラやセクハラ防止、ラインケア研修などの研修をする際、ぜひe-learningを活用してみてください。

③現地のEAP会社を活用する

EAP(Employee Assistance Program)会社を活用し、管理監督者研修やセルフケア研修などを実施する方法もあります。EAP会社では、ストレスやハラスメント問題の解決や、ワークライフバランス、マネジメントスキルまで、幅広いサポートがあります。

上司のマネジメントスキル向上、従業員のモチベーション向上に、EAPを活用してみてください。EAP活用のコツは、こちらのページをご参照ください。

④健康経営支援システムを導入する

健康経営支援システムを導入し、健康診断予約代行やストレスチェックの実施を依頼することもできます。担当者の負担が軽減されますし、健診受診率やストレスチェック受検率の向上にも繋がります。

システムによっては、管理職が使いにくい結果の出し方をしたり、個人情報の保護が不安なものもあります。自社に合ったシステムを選んでいきましょう。

健康管理のメリットや選び方については、こちらの記事をご参照ください。
健康管理システムとは?目的やメリット、費用相場をまとめてみた

最後に…

健康管理体制を充実させるカギは、「本社の情報をどれだけ支社に伝えられるか」と、「ツールをどれだけ活用できるか」です。

本社の「健康づくりに取り組んでいる感」を支社に発信していき、支社のモチベーションを上げていきましょう。支社で健康管理に熱心な従業員を1人でも見つけると、体制づくりがスムーズに進みます。

支社が主体的に健康管理体制を回していけるように、情報提供やツールの導入をしてみてください。

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