健康経営の実務
2022年12月27日 更新 / 2022年12月27日 公開

健康経営の推進に役立つ福利厚生とは?注目が集まる理由や認識の変化についても解説

健康経営の推進に役立つ福利厚生とは?

経済産業省が情報発信をしている資料(健康経営の推進について)によると健康経営とは、従業員等の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することと定義されています。

健康経営に取り組んだ結果として、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や組織としての価値向上へ繋がることが期待されているものです。そんななか、健康経営を推進するための手段として福利厚生を活用する企業が増えています。

そこで本記事では、健康経営を推進していくための手段として、福利厚生を活用していく際に役立つ情報をまとめました。

  • 健康経営に注目が集まっている理由
  • 健康経営の推進における福利厚生の必要性
  • 健康経営の推進に役立つ福利厚生の選び方

の流れで解説しているので、健康経営を推進するため福利厚生の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

なお、健康経営を実践している証の1つとして「健康経営優良法人」があります。下記の資料では「健康経営優良法人の近況と近未来予想」などについてもまとめておりますので、取得を考えている方はダウンロードのうえご活用ください!

そもそも、健康経営に注目が集まっている理由とは?

健康経営とは、従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することです。従業員の健康管理を投資として捉え取り組むことで、生産性の向上や従業員のモチベーションアップが見込め、業績向上も期待できます。

健康経営・健康投資とは

健康経営の推進について|経済産業省

ここからは、なぜ健康経営に注目が集まっているのか解説します。まずは、健康経営のはじまりや認識の変化を見てみましょう。

健康経営の始まり

健康経営の考え方は1992年、アメリカの臨床心理学者ロバート・H・ローゼンの著書「The Healthy Company」で提唱されたと言われています。しかし日本における「健康経営」の概念とは、やや異なる点も多いです。日本では、労働基準法や労働安全衛生法などの法改正や、長時間労働削減推進本部による長時間労働の削減への働きかけが推進された影響などもあり、「健康経営」の重要性が高まっています。

目指すべき姿 ~予防・健康管理への重点化~

健康経営の推進について|経済産業省

健康経営の考え方は、30年以上前に米国で提唱されたものですが日本においては、以下3つの理由から注目が集まっています。

  1. 育児・介護・出産・結婚・転勤など環境の変化によって働きづらい環境下であっても
    働き口を確保していく必要があるほど人手不足が深刻化
  2. 国家予算では補いきれず、税金で補っているところあるほど国民医療費の増大
  3. 21年4月に施行された高年齢者雇用安定法により、定年が70歳までに変更されたことも
    影響している労働人口の減少と高齢化

日本では、これら3つによる影響を受け国・行政による政策の推進がとられています。

健康経営への昨今における認識の変化

令和3年度健康経営度調査の結果

健康経営の推進について|経済産業省

2020年度と2021年度を比べると、健康経営度調査の回答数が約350社ほど増えています。制度が始まった2014年からの推移でも年々回答数も増加傾向にあり、健康経営優良法人に興味を持つ企業が増えていることが分かります。

回答数が増えている理由の1つとして、働き方改革やワークライフバランスが重要視されていることが考えられます。実際に健康経営に取り組む企業とそうでない企業では、以下のような差があります。

健康経営に取り組む企業等の傾向

第24回健康投資WG事務局説明資料|経済産業省

平均年次有給取得率、平均年次有給休暇取得日数ともに全国平均を上回っています。有給休暇を取得しやすい企業であることから、ワークライフバランスを実現しやすいと言えるでしょう。

こういった背景もあり、健康経営銘柄や健康経営優良法人の認定取得を目指す企業が増えています。

健康経営へ注目が集まる理由

健康投資ワーキンググループの資料によると、新型コロナウイルスの影響で、以下のような変化が起きています。

参考:健康に対する意識の変化

参考:健康に対する意識の変化

またテレワーク・在宅勤務を中心とした働き方の変化により、業務によるストレスが課題となっています。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり人々の健康意識が変化し、健康経営への注目が集まっています。

ここまで、健康経営が注目されている理由を紹介しました。次は、健康経営を推進するうえで重要になる「福利厚生サービス」の必要性や役割を紹介します。

健康経営を推進していく上で最適な福利厚生サービスの活用

健康経営の全体像と施策例

健康経営の全体像と施策例

健康経営を推進していく際のファーストステップとして、社内外問わず健康経営に取り組むという経営陣の意思表明から始まり、管理職や現場含め全社に理解を得ながら進めていくわけですが、制度・施策実施のステップで苦労する企業があります。

具体的には、自社の課題を解決するための施策って何を実施すれば良いのか分からないというもの。そもそも課題が何かを正確に把握している企業が少ないのも事実です。そこで、課題解決のために施策を実施することの手段として外部サービスを福利厚生として活用して、健康経営に取り組むことをオススメします。

まずは、健康経営における福利厚生サービスの必要性を紹介します。

健康経営推進における福利厚生サービスの必要性

福利厚生の活用は、健康経営の推進につながる有効な選択肢の一つとして捉えられていますがいわゆる福利厚生には、2つの種類があります。

  1. 法定福利厚生
  2. 法定外福利厚生

健康経営の推進において活用するのは、「法定外福利厚生」です。日本経済団体連合会の報告書によると、法定福利費は2009年から毎年緩やかに上昇傾向にあり、法定外福利費は1997年から減少傾向にあります。

福利厚生費等の推移

第 64 回 福利厚生費調査結果報告|日本経済団体連合会

法定福利厚生と法定外福利厚生の大きな違いは、法律による定めがあるかどうかです。具体的に言うと、以下のような違いがあります。

福利厚生の種類

令和3年就労条件総合調査の概況

多くの場合、従業員の働きやすさを向上させるために導入されますが、その代表例として住宅手当(家賃補助)や通勤手当・社員食堂や忘年会・新年会の費用負担などが該当します。

その中でも、「栄養バランスのよい食事支援」や「運動機会の提供」を福利厚生として提供することで健康経営の推進につながることが見込まれます。

ここで重要なことは、法定外福利厚生を導入することがすなわち健康経営を実現している訳ではないということです。法定外福利厚生を導入することは、健康経営を推進していく過程において企業が抱える健康課題を解消するための解決策の一つのとして捉え、推進していくことが重要です。

健康経営の推進にオススメの福利厚生の選び方3つ

健康経営の推進につながる福利厚生サービスの選び方を紹介します。

  1. 従業員の健康につながるサービスを選ぶ
  2. 今の働き方に合わせた福利厚生を選ぶ
  3. 健康に働くための支援ができるシステムも検討する

具体的にどう選ぶのか、詳しく紹介します。

【選び方1】従業員の健康につながるサービスを選ぶ

健康経営を推進する場合、食生活の改善や運動機会を増やすなど心身の健康増進につながる福利厚生を選びましょう。具体的にはバランスのよい社食やスポーツジムの会費補助などが代表例として挙げられます。

社員の健康維持増進につながるサービスを選ぶことは、健康経営の取り組みの一環となります。

【選び方2】今の働き方に合わせた福利厚生を選ぶ

テレワークを推進している企業はもちろん、そうではない企業でもここ数年で働き方は大きく変わり続けています。特に働く場所や時間にとらわれない働き方に合った福利厚生を選ぶことも、健康経営を推進するうえで重要です。

日本経済団体連合(略称:経団連)の福利厚生費調査結果報告によると、従業員1名1ヶ月あたりの平均金額が多いのは住宅関連やライフサポートであり、法定外福利厚生費用のうち7割弱をしめています。(2019年度福利厚生費調査結果の概要

その中で、健康経営への推進へ影響する具体的な法定外福利厚生サービスは、

  • 食生活を改善や健康的な食事を提供するもの
  • 生活習慣や運動解消のきっかけを提供するもの
  • 健康情報の提供をするもの

などが該当し、それらを活用する際に自社の就業環境に合ったサービスを選ぶことが重要です。

【選び方3】職場の安全と健康を支援できるシステムも検討する

福利厚生は直接的に従業員にメリットがある施策であり、もう一方で企業が従業員の安全と健康を守る施策として健康管理があります。組織の健康管理を円滑に行うために、業務効率化にも繋がる健康管理システムの導入もオススメです。

健康経営を推進するには、適切に従業員の健康管理を行う必要があります。従業員からの申告を待つだけではなく、会社側が従業員の不調やその予兆を早期発見し対応することが、健康経営の推進には重要です。

健康管理の具体的な業務である健康診断・ストレスチェック・過重労働対策などにはExcel・紙・PDF といったアナログ管理がつきものです。それらの業務を円滑に進めるために健康管理システムを導入した企業では、効率化された時間を健康経営施策に有効活用しています。

まとめ:健康経営への第一歩として福利厚生の活用はおすすめ

今回は、健康経営の推進に役立つ福利厚生の必要性や選び方などを紹介しました。最後にここで紹介した内容をまとめます。

  • 離職防止や新規採用の強化の観点から、健康経営への注目が高まっている
  • 健康経営を推進する方法のひとつとして、福利厚生はオススメ
  • 外部サービスの活用や健康管理システムの導入もオススメ

食事支援や運動機会の提供など、健康経営の推進に役立つ福利厚生は多くあります。ただし健康経営は、福利厚生を導入して終わるものではありません。福利厚生を活用しつつ、社内制度や健康管理の仕組みを見直す必要があります。

執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。