保健師が伝える、新入社員の健康管理を年間計画表を使って効果的にする方法

2021年1月14日 更新 / 2020年10月23日 公開
衛生委員会を有効活用

「健康診断やストレスチェックは毎年やっているけど、不調者が絶えない」
「若手社員の離職率が高く新入社員もすぐに辞めてしまい人材が育たない」

せっかく入社してくれた社員が健康を理由に会社を辞めてしまうことは、人事としてどうにか解決したい問題ですよね。新入社員の定着率が悪かったり、十分な生産性が発揮できないと、どれだけ採用に力を入れていても穴の空いたバケツに水を汲むようなものです。

しかし人事・労務の仕事の中でも健康管理は、企業の規模(従業員数)や事業内容(働き方)によって最適な解決策が異なってきます。ですので、この記事では労働者の健康管理のうち『新入社員の健康管理』に焦点を当てて解説します。

保健師として約10年の経験から、新入社員に対して計画的に健康管理をおこなうことには3つのメリットがあります。

  1. 不調を早期に発見・対応しやすくなる
  2. 離職、休職を予防し人材確保につながる
  3. 予算管理や他部署との連携がしやすい

それぞれ具体的な業務に当てはめて解説していきながら、記事の最後に年間の健康管理計画表も記載しています。ぜひ来年からの健康計画の参考にお使いください。

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労働者の健康管理とは会社の義務。新入社員の場合は?

なにが労働者の健康管理の義務にあたるのか

すでにご存知かと思いますが、あらためて労働者の健康管理についておさらいをしましょう。

労働者の健康管理とは労働安全衛生法を中心に法律や規則、指針で定められた項目により労働者の健康の保持増進をおこなうことを言います。具体的には以下の項目について事業主は施策を講じることが[義務]、[努力義務]、[ガイドライン]で示されています。

  • 安全衛生管理体制を構築する [義務]
  • 健康診断をおこなう [義務]
  • 健康診断後の事後措置をおこなう [義務]
  • こころの健康の保持増進、ストレスチェックと面接指導 [指針・義務 – 条件あり]
  • 過重労働による健康障害を防ぐ [義務あるいは努力義務]
  • 治療と仕事の両立支援 [ガイドライン]
  • 感染症対策 [ガイドライン]
  • 受動喫煙防止対策 [義務]

新入社員の場合は特に何を気を付けなければいけないのか

新入社員の健康管理において特に気をつけるポイントが2つあります。

  • メンタルヘルスケア
  • 基本的な生活習慣の確立

理由は社会人となり環境の変化が起きることに対し、社員本人が適応していかなければならないからです。ただ「組織の一員として働く」という変化に対し、うまく適応できる人もいればそうでない人もいます。

うまく適応できないとメンタルヘルスの不調があらわれたり、学生時代の生活習慣が抜けきれず食生活や睡眠リズムが乱れたままといった状態が続く人もでてくるかも知れません。

わたしが担当する新入社員にも、『朝ごはんを食べる習慣がない』『平日と休日の起床・就床時間に大きなズレがある』といった人が少なくありません。

またよく聞かれる話ですが、入社後ストレスが増大しても誰にも相談できず、不眠や食欲不振、勤怠不良といった症状がでてくるケースがあります。ですので「メンタルヘルスケア」「基本的な生活習慣の確立」に気をつけていく必要があります。

新入社員の健康管理を計画的におこなうメリット3つ

労働者の健康管理について年間計画は立てていますか?もしまだ年間計画を立てたことがない企業では必ず取り組んでください。

なぜなら、産業保健師や産業医が常駐するような大手企業に比べて、500名未満の企業では健康管理の専任担当者がいないことが多いからです。他の業務との掛け持ちをしていたり、健康診断やストレスチェックをバラバラの担当者が実施していると、企業として効果的な健康管理を実施することが難しくなってしまいます。

新入社員を新卒・中途を問わず毎年10名以上採用続けているならば、健康管理の年間計画を立てて、新入社員用のプログラムも盛り込んでおくことをオススメします。

健康管理を計画的におこなうメリットは以下3つです。

  • 不調を早期に発見・対応しやすくなる
  • 離職、休職を予防し人材確保につながる
  • 予算管理や他部署との連携がしやすい

それぞれご説明していきますね。

1、不調を早期に発見・対応しやすくなる

第一に、心身の不調を早期に発見・対応しやすくなります。理由は配属された後も年間を通して新入社員と関わり、様子を確認することができるためです。不調になる前の普段の様子を知っていると、「あれ、おかしいな」という気づきにつながります。心身の不調を早期に発見・対応しやすくなるのは大きなメリットと言えます。

2、離職、休職を予防し人材確保につながる

1の内容をさらに発展させると、健康管理を計画的におこなうことで離職・休職を予防し人材確保につながります。

新入社員が退職する理由として『肉体的・精神的に健康を損ねた』『職場の人間関係がよくない』が上位に挙げられているという調査結果があります(下図参照)。

 「初めての正社員勤務先」を離職した理由(MA,性別,離職者全体)
出典:第5章 「初めての正社員勤務先」を離職した理由と相談相手 / 独立行政法人労働政策研究・研修機構(PDF:819KB)

『肉体的・精神的に健康を損ねた』『職場の人間関係がよくない』に適切なフォローができれば』離職率を下げられる可能性が高くなります。また、上記理由は会社を休職する理由にもなりますので健康管理をおこなうことで離職・休職を予防し人材確保につながります。

3、予算管理や他部署との連携がしやすい

健康管理を計画的におこなうことで予算管理や他部署との連携がしやすくなるメリットもあります。計画を立案することで健康診断・ストレスチェック費用や研修会での外部講師代といった健康管理にかかる費用を年度の予算として見積もることができたり、配属部署との連携も取りやすくなるからです。

また、研修講師は人気のある講師だと4月5月の予定は1年以上前に埋まっているということも。健康診断の予約も早めに取ることで希望日に実施できる可能性が高くなります。配属部署と情報を共有すれば、健康管理を連携しておこなえると同時に部署の研修計画を考慮したスケジュールを組むことができます。

このように計画的におこなうことで予算管理や他部署との連携がしやすくなります。

新入社員の年間健康管理計画を立案する際のポイント3つ

ここまで読んで、

「具体的にどの時期にどんな内容をやればいいのだろう」
「法律に義務化されていない項目でもやる必要はあるんだろうか」

といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。計画案と計画を立案する際のポイントは以下3つです。

  • 法律で義務付けられていることを計画に盛り込む
  • メンタルヘルス研修は複数回、段階的に、管理職も
  • 産業医との個人面談をすることで普段の様子を共有

それぞれ詳しくご紹介します。

1、法律で義務付けられていることを計画に盛り込む

1つ目は健康管理に関する『法律で義務付けられている内容』を計画に盛り込みます。具体的には以下3つの内容をもれなく盛り込むのがポイントです。

  • 健康診断をおこなう [義務]
  • 健康診断後の事後措置をおこなう [義務]
  • ストレスチェック [義務 – 条件あり]

健康診断に関する詳細はこちら↓

健康診断後の事後措置に関する詳細はこちら↓

ストレスチェックに関する詳細はこちら↓

年間計画に入れることで実施を忘れたり漏れを防げるので、担当者も管理がしやすくなります。法律を遵守した健康管理をおこなう上で年間計画を立てることはとても重要です。

2、メンタルヘルス研修は複数回、段階的に、管理職も

メンタルヘルスに関する研修は年間を通して複数回、段階的に、管理職へもおこなうことがポイントです。ストレスに対するセルフケアやコミュニケーション方法といった『ストレスコーピング』を身につけると心身の不調や離職予防につながるからです。

例えば4月にはセルフケア研修、コミュニケーション研修などストレスとうまく付き合う方法や良好な人間関係を構築するための研修、入社半年経過時点では仕事の悩みを社員同士で共有したりどう乗り越えるか考えるピア・カウンセリングやレリジエンス研修などを組み込みます。

並行して管理職へはラインケア研修やハラスメント研修を導入します。複数回、段階的に、管理職へも研修をおこなうことがポイントです。

3、産業医との個人面談をすることで普段の様子を共有

産業医との個人面談を計画に盛り込むことで不調前の様子を共有できるのもポイントです。わたしが関わった企業では産業医と新入社員の個別面談を実施しています。不調になる前に個人面談をすることで普段の様子を共有できますので、その後不調者が現れた際にも産業医へつなぎやすくなります。また新入社員側も「産業医ってこんな人なんだ」と把握できいざというときに相談したすくなる効果も期待できます。

産業医との関わりは、

  • 休職・復職面談
  • 高ストレス者面談
  • 長時間労働者面談
  • 健康診断の事後措置
  • 衛生委員会への出席

という企業もあるかもしれません。年間計画に産業医と面談を盛り込み、新入社員の普段の様子を共有できます。ぜひ参考にされてみてくださいね。

新入社員の健康管理計画表

新入社員の健康管理計画表を作成しました。職場の課題や状況に応じて内容を変更したり、加減してください。

計画立案のポイント

1.研修内容はそれぞれの職場に合ったものを計画する

研修は皆さんの職場に合った内容で計画します。外部講師を招く場合は早めに手配・準備が必要です。また、研修内容は講師と相談しながら決めるのがおすすめです。人気のある講師だと4月はスケジュールが埋まるのが早いので、1年以上前から日程だけ確保する場合もあります。

2.1年でおこなうのが難しい場合は、2ヵ年・3ヵ年計画でおこなう

計画通りにいかない場合も出てくると思いますが、その際は中期的なスパンで計画を立てたり見直したりといった対応をします。

年間計画表
4月雇入れ健診、オリエンテーション研修(安全衛生教育)
5月健診事後フォロー、2次検査受診勧奨
6月メンタルヘルス研修(1回目)
テーマ:セルフケア、コミュニケーションの基本
7月新入社員ヒアリング
8月配属部署先輩・上司ヒアリング
9月ストレスチェックの実施
10月ストレスチェック事後措置、メンタルヘルス研修(2回目)
テーマ:入職6か月の悩みを新入社員同士で共有
11月産業医との全員面談、随時フォロー面談
12月管理職向け研修
傾聴力UP、ラインケア、1on1
ストレスチェック集団分析結果確認と社内報告
1月 新入社員受け入れ準備
2月管理職向け研修
傾聴力UP、ラインケア、1on1
3月年間計画の振り返り
4月2年目メンタルヘルスフォローアップ研修(3回目)
テーマ:アサーティブコミュニケーション、レジリエンス

まとめ

ここまで新入社員の健康管理について年間計画を立てておこなうメリットとポイントをお伝えしてきました。

健康管理を計画的におこなうメリットは以下3つです。

  • 不調を早期に発見・対応しやすくなる
  • 離職、休職を予防し人材確保につながる
  • 予算管理や他部署との連携がしやすい

計画案と計画を立案する際のポイントは以下3つです。

  • 法律で義務付けられていることを計画に盛り込む
  • メンタルヘルス研修は複数回、段階的に、管理職も
  • 産業医との個人面談をすることで普段の様子を共有

新入社員は慣れない新生活で不安もストレスも大きくなりがちです。会社全体で新入社員の心身の不調や離職を予防できるよう計画を立案し、体制を構築をはかっていくことが求められます。この記事が少しでも参考になれば幸いです。

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