効果が実感できない健康経営。指標の立て方を優良法人事例から学ぶ

2020.2.19 更新 / 2020.2.19 公開
健康経営の実務

健康経営を始めていくと、やっていることが合ってるのか不安、効果が出ているのか分からないといった思いが出ていきます。

東京商工会議所が行った調査では、「健康経営を実践するにあたり、課題になる(なっている)と思うのはどれですか?」という質問に対して、「どのようなことをしたらよいか分からない(指標がない)」が1位となっています(45.5%)。

(引用元:東京京商工会議所 健康経営に関する実態調査 調査結果)

企業がするべきことや効果が分からないのは、健康KPIを設定していないことが背景にあることが多いのです。企業が目指すゴールにぴったり合った健康KPIを設定できるかが、健康経営成功の分かれ道です。

この記事では健康KPIの立て方と良好事例をまとめています。健康KPIをマスターして、健康経営優良法人の認定もゲット、経営者と従業員の実感度もアップさせましょう!

※健康KPIとは?
基本的には経営指標であるKey Performance Indicatorと同じです。健康は効果が見えにくいため、「プロセス指標」と「アウトカム指標」の2つに分けて設定します。(詳しくは記事後半で)

1.なぜ健康KPIが大事?良好事例で学ぶ

健康経営において、施策の評価に用いる健康KPIは、次の表のような観点で設定していきます。

※注力分野の項目はよくある例であり、実際は会社に合った注力分野を定めます。

自社の「あるべき姿」を実現するための注力分野を選択し、1つの分野対して1つ以上のKPIを設定します。それぞれのKPIについて単年度と中期の目標値を設定していきます。

実際の例を見てみましょう。

良好事例① 三井化学株式会社

(健康経営優良法人2019(大規模法人部門)ホワイト500認定)

三井化学株式会社は、3年連続で健康経営優良法人(大規模法人部門)ホワイト500に認定されています。

三井化学のKPIは、「疾病強度率」「メンタル不調休業強度率」「生活習慣病平均所見率」「禁煙率」の4つです。

企業の健康推進の注力分野に「疾病予防」「メンタル不調予防」「生活習慣病予防・改善」「喫煙率低下」の4つを掲げ、それぞれ次の表の表のように「対象(集計)範囲」と「単年度目標」「中長期目標」を設定しています。

引用)三井化学株式会社ホームページ

健康経営の柱について、「強度率」という独自の数値を作り、その変化を目標としていることがわかります。自社が特にモニタリングしたい指数を作る企業は多いです。自社の強みや弱み、どんな変化を捉えたいか、という点から、指数を作っていきます。

良好事例② 三菱ケミカルホールディングス

(健康経営優良法人 2018ホワイト500認定)
自社の健康経営を「KAITEKI健康経営」と命名。

目標を「多様な人材がいきいきと活力高く働ける会社・職場づくりを通じて、高い生産性と豊かな創造性の基盤を築くことをめざします。」と設定し、系統的な健康経営を推進しています。

KPIは「いきいき活力指数」「働き方指数」「健康指数」の3つです。健康サーベイや健康診断の結果から指数を出し、経年変化を見ています。

引用)(出典:三菱ケミカルホールディングス プレスリリース)

ポジティブな働く姿勢を重要視した指標をKPIに置いています。「従業員が健康でいきいき働くことで、将来的な会社の競争力向上に繋がる」という経営方針がベースになっています。

KPIの目標値を掲げることで、健康経営のとりくみの結果を可視化することができます。経営者や従業員の意識が統一され、健康意識が高まったり、新しい取り組みを始められることもあります。

良好事例③ 株式会社デンソー

(健康経営銘柄2019認定)
3年連続で銘柄を獲得し、グループ会社の多くも健康経営優良法人の認定を受けているデンソー。注力分野は「メンタルヘルス」「生活習慣病対策の推進」「感染症対策」などがあります。

デンソーの特徴は、KPIに健康経営指標「生活習慣スコア」を独自に設定している点です。

「独自の健康指標「生活習慣スコア」の全社平均値等を定期報告。個々人のスコアと全社平均値との比較などを専用アプリ等を活用し見える化することで、気づきと行動改善(運動、食事、喫煙など)のきっかけ提供」しているとのこと。
(引用:https://www.jisha.or.jp/health/jirei/pdf/jirei2019_1.pdf

生活習慣を点数化している例は珍しく、多くの企業は健康診断やストレスチェックから分かることをKPIに置いています。

生活習慣で何を使っているかは分かりませんが、企業の健康課題によって注目するべき生活習慣は変わってきます。

車での通勤が多い企業では歩数が重要ですし、食べるのが早い社員が多い場合は食事にかけた時間が大切になってきます。飲酒や睡眠、同僚との会話の量など、自社に合った生活習慣をスコア化してみましょう。

生活習慣から体調不良が分かり、病気の早期発見・対応に繋がります。企業の生活習慣の目標設定に活かせるだけでなく、社員のヘルスリテラシー向上にも繋がります。

健康KPIとPDCAが成功への道

健康経営失敗の典型例は「場当たり的なつぎはぎ施策」、「効果が感じられずなあなあに」なってしまい、経営者や従業員のモチベーションが下がってしまうオチです。

モチベーションが落ちる原因で多いのが、

  • 短期的なスパンで効果を期待している
  • 効果検証する指標(KPI)を決めずに実施している
  • 毎回同じ施策をやっている

といった健康経営です。

KPIを設定して中長期的な目標を設定して、PDCAを回していくことで、経営者や従業員のやる気を高めて健康経営を成功させることができます。

良好事例で上げた三菱ケミカルでは、このようにPDCAを回しています。

(引用:https://www.mitsubishichem-hd.co.jp/kaiteki_management/health_productivity_management/

健康への取り組みは効果が直ぐに出るものではありません。健康経営の成功には、長期的な目線を持つことと、変化を捉えやすいKPIを設定してPDCAを回していくことが重要です。

2.自社のあるべき姿、KPIを設定する方法

自社に合ったKPIを設定する方法をご紹介します。健康経営の推進計画を立てる際に決める手順は、次の3つです。前に載せた表を再掲します。

※注力分野の項目はよくある例であり、実際は会社に合った注力分野を定めます。

手順① 全てをひっくるめた企業の「あるべき姿」を決める

企業が健康経営に取り組む目的や、実現したい従業員の姿を文章化します。

経産省の健康経営ガイドラインでは、健康経営のメリットをこのように置いています。

『従業員の健康保持・増進、生産性の向上、企業イメージの 向上等につながるものであり、ひいては組織の活性化、企業業績等の向上にも寄与するも のと考えられる。(引用元)

いきいき働ける企業づくり⇒生産性向上・活性化⇒企業の業績向上

といった流れを意識したあるべき姿を設定している企業が多いです。

健康経営優良法人選定企業レポートでは、ホワイト500の企業の目指す姿や注力分野が照会されています。自社の企業理念や経営方針と照らし合わせながら、あるべき姿を明文化してみてください。

手順② 会社に課題に合った「注力分野」を決める

健康診断やストレスチェックなどのデータから分かる企業の課題や、企業が課題だと感じている分野を選びます。メンタルヘルス不調者が出てしまったり、安全衛生上の事故が起きてしまったことがある場合は、それらを注力分野としてもいいでしょう。

簡単なのは、健康経営の認定基準②~⑯の中から注力分野を選ぶ方法です。自社の事業上大切な分野や、取り組みやすい分野から決めてもいいでしょう。

(引用:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2020_daikibo_ninteikijyun.pdf

手順③ プロセスKPIとアウトカムKPIを設定する

いよいよKPIの設定ですが、ポイントはプロセス評価のためのKPIと、アウトカム評価のためのKPIの2つを設定することです。1つの注力分野に対して、プロセスKPIとアウトカムKPIの両方を設定します。

アウトカムKPIは、健康そのものを捉える数値になります。例えば、喫煙率やBMI、有所見者率やストレスチェック高ストレス者率があります。会社が目指している健康状態そのものを捉えられる指標にします。

プロセスKPIは、アウトカムKPIを向上させるために、その前段階として評価できるポイントを設定します。例えば、研修参加率や健康診断再受検率、保健指導実施回数などです。プロセスKPI自体は健康状態を捉えるものではありません。

KPIを2つに分ける理由は、健康自体が直ぐに変化するものではないからです。アウトカムKPIが良くなることを本来は目指していますが、実際に良くなるには数年がかかるでしょう。単年度で健康経営の効果を見るために、効果の変化が出やすいプロセスKPIも設定するのです。

KPIで何を設定するかですが、最近のトレンドでは、メンタルヘルスの指標にプレゼンティーズムやアブセンティーズムを使う企業が増えてきています。生産性やワーク・エンゲイジメントに関係するため、経営者にウケが良いからです。休職者数や高ストレス者数に加えてみてもいいかもしれません。

*プレゼンティーズム、アブセンティーズムとは

プレゼンティーズムは、健康問題によって出勤していても生産性が下がっている状態を表します。アブセンティズームは、健康問題による欠勤を表します。健康不調による企業の損失の約8割をプレゼンティーズムが占めるという研究結果もあり、プレゼンティーズムをどうやって削減していくかが、経営者の関心の的となっています。

(引用:厚生労働省保険局 コラボヘルスガイドライン

手順④ 単年度目標と中期目標を設定する

KPIが決まったら、次は単年度目標と中期目標を設定します。手順③でも書きましたが、アウトカムKPIは単年度での変化が出にくいものです。無理な目標を設定せず、まずはプロセスKPIの向上を重視しましょう。

目標の目安には、同業他社の平均値や医学的な正常値を使うのが便利です。例えば、業種別の健康診断有所見者率が発表されています(こちら)。産業保健スタッフに相談すると妥当な目標が設定できるでしょう。

目標を設定したら、具体的な施策について、立案【Plan】と実施【Do】、効果検証【Check】、対策立案【Action】のPDCAサイクルを回していきます。

効果検証は良好事例①の三井化学の表を参考に、注力分野ごとに目標、実績、達成度をまとめると分かりやすいです。グラフで可視化して社内に公表することが大切です。経年変化も見ていきましょう。

対策立案は、目標が実際に達成できたかどうかを見て、もっと施策を良くしていくにはどうしたらよいかを考えます。取り組み自体の選択が適切であったか、参加者の声などから次年度ではどう改善したらよいかを見ていきましょう。

健康経営の成功には、健康KPIを設定してPDCAサイクルを回すことが必要です。「健康経営で何をしたらいいのか分からない…」という疑問を解消する方法をお伝えしてきました。健康KPIを設定する際には、ご紹介した方法を参考にしてみてください!

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