「長時間労働者への産業医による面接指導は何時間からが対象?」「長時間労働をする従業員に産業医面談をしたあと、何をすべきなの?」と思うことはありませんか?長時間労働の対策は国をあげて実施されており、そのうちの1つが「長時間労働者への産業医による面接指導制度」です。しかし、制度があることを知らなかったり、産業医面談後の取り組みが適切ではなかったりした場合は法律違反となることも。そこで、長時間労働者への産業医による面接指導制度の概要と、面談を実施したあとに企業がすべきことを解説します。制度の内容を把握し、法律に沿った社内体制を整えたい方は、ご一読ください。 長時間労働の定義や実態は?企業が取り組みたい具体的な対策も解説長時間労働者への産業医による面接指導制度とは?長時間労働の基準は知っているものの「実際に基準を超える従業員がいた場合に、どう対応すればよいかわからない」といったことも。そこで覚えておきたいのが「長時間労働者への産業医による面接指導制度」です。ここでは、制度を詳しく知らない方に向けて、以下3つのポイントを解説します。長時間労働者への産業医による面接指導制度の概要産業医面談が必要になる長時間労働者の基準長時間労働者へ産業医面談を実施する流れそれぞれ見ていきましょう。長時間労働者への産業医による面接指導制度の概要企業は、長時間の時間外・休日労働をする従業員に対し、医師による面接指導(産業医面談)を実施するよう労働安全衛生法(第66条 8項)で義務づけられています。長時間労働が続くと、従業員が脳・心疾患を発症して働けなくなるリスクがあったり、取締りを厳しくしている労基署からの指導対象になったりすることも。そのため、リスクの高い従業員の健康状態を把握し、適切な指導を講じなくてはなりません。脳・心疾患などの重い病気を予防する観点から、産業医との連携を強化し、面談を行うことが重要です。では、産業医面談が必要になる長時間労働者の基準を見てみましょう。産業医面談が必要になる長時間労働者の基準産業医面談が必要になる長時間労働者の基準は、働き方によって3つの区分に分けられています。労働者研究開発業務従事者高度プロフェッショナル制度適用者従業員がどれに当てはまるのかによって基準は異なります。詳細は以下の表をご覧ください。区分義務努力義務労働者※裁量労働制、管理監督者含む・月80時間超の時間外・休日労働。疲労蓄積があり、面談を申し出た者・企業が自主的に定めた基準に該当する者研究開発業務従事者・月100時間超の時間外・休日労働・月80時間超の時間外・休日労働。疲労蓄積があり、面談を申し出た者・企業が自主的に定めた基準に該当する者高度プロフェッショナル制度適用者・1週間あたりの健康管理時間が40時間を超えた時間について月100時間超行った者・左記の対象者以外で面談を申し出た者面接指導の対象は「過労死ライン」と言われる、脳・心疾患発症前1ヶ月間におおむね100時間または2~6ヶ月間に渡って1ヶ月あたりおおむね80時間の時間外労働が基準として採用されています。しかし、過労死ラインを超えていないからといって、従業員への面接指導を怠ってはいけません。労働時間が基準に満たしていない場合でも、従業員の業務負荷や健康診断の結果などにより、産業医の判断が必要になることがあるからです。適切に健康状態を把握するために、45~60時間の時間外労働をする従業員を対象に、産業医面談を実施する企業も多くあります。法律で定められている時間だけではなく、企業独自で基準を定め、産業医面談をする体制を強化していくことが重要です。続いて、産業医面談を実施する流れについても見ていきましょう。長時間労働者へ産業医面談を実施する流れ長時間労働者への 医師による面接指導制度について - 厚生労働省(PDF)長時間労働者へ産業医面談を実施する流れの中で、企業が担当する部分をピックアップしました。産業医面談を実施するまでに、従業員の健康状態が分かる資料の準備が必要です。特に労働時間や労働環境だけではわかりにくい、疲労蓄積度チェックリストや生活状況の把握のためのチェックリストの実施も必要となります。疲労蓄積度チェックリストを活用した過重労働の対策は、小規模事業者~大企業によって対応の流れがやや異なります。具体的な対応手順については、以下をご一読ください! 過重労働者の産業医面談で、疲労蓄積度チェックリストを有効活用する方法長時間労働者の産業医面談後に企業が対応すべき4つのこと長時間労働者に産業医面談を実施したあと、企業が対応すべきことは以下の4つです。1つずつ、解説していきます。1.長時間労働者と産業医との面談内容を記録する面談の内容を産業医から聞き、記録・保管するのは企業の義務です。面談後、おおむね1ヶ月以内を目安に、従業員が抱える疲労の蓄積度合いや勤務場所・時間の変更有無などを産業医からヒアリングします。ヒアリングした内容は、労働安全衛生法66条8項の3、および労働安全衛生規則52条6項により5年間の保存が義務です。しかし、紙やWord、Excelなどの方法を使って、ただ保存しておけば良いわけではありません。実務で使うことを考慮して、探しやすさも考慮して保存することが大切です。たとえば、産業医から「過去に面談をした有無を確認したい」「すでに書いてある内容を事前に把握したい」と記録の閲覧を依頼されたときに、該当従業員のものがすぐに見つからないと探す作業に時間がかかってしまいます。さらに産業医面談の際に、健康診断やストレスチェックの結果、労働時間の記録などの情報も提供しなくてはならず、それぞれを別の場所から探し出すのは手間がかかります。「Carely健康管理クラウド」は、以下で従業員・組織の健康を創り、人事担当と伴走します。産業医面談記録や従業員の健康管理に必要な情報を一元管理長時間労働者だけでなく、ストレスチェックによる高ストレス者や健康診断による有所見者から、ハイリスク者を自動抽出し、リスクが高い順に面談候補者としてピックアップCarelyなら、産業医面談の記録作成や共有、必要な情報の保管などがシステム上でまとめてできるようになります。\産業医面談の記録・保管を効率化/Carely健康管理クラウドとは?2.産業医の意見を元に、適切な事後措置を行う産業医面談の内容をヒアリングした結果を元に、長時間労働の対策を実施します。▼長時間労働の対策例就業場所の変更労働時間の短縮所属部署の転換業務内容の見直し など人事担当者が勝手に判断するのではなく、産業医の意見を聞いた上で適切な対策が必要です。また、メンタルヘルスの不調が見られる場合は、精神科医などと連携した対応が求められます。たとえば、うつによる過労自殺を防ぐための継続的なケアや、気軽に相談できる窓口の設置などの取り組みが有効です。3.衛生委員会で従業員の健康被害を防止する策を調査・審議する長時間労働者に産業医面談をしたあと個別の事後措置を実施しても、企業全体として根本的な問題解決には至らないのではないでしょうか。そのまま問題を放置しておくと、長時間労働が原因で他の従業員にも心身の不調が起こる可能性も。そこで、職場での健康被害の拡大を防止するために、衛生委員会などで内容を調査・審議が必要です。衛生委員会での審議事項は以下をご覧ください。時間労働者への 医師による面接指導制度について - 厚生労働省(PDF)衛生委員会で決まった対策は、企業内で実施していきましょう。なお、衛生委員会は月1回以上の開催が労働安全衛生法により定められています。4.事業者全体として長時間労働の対策をする長時間労働を削減していくために、企業全体で対策していくことが重要です。企業がすべき、長時間労働の対策として以下の7つを挙げてみました。長時間労働に関する対策は多岐に渡ります。労働時間を正確に把握するところから始まり、就業制限が必要な従業員のチェックや産業医面談のルール策定なども大切です。具体的な内容については以下の記事にて解説しています。企業全体として長時間労働の対策を強化していきたい方は、ご一読ください。 長時間労働の対策に企業がすべき7つのこと!改善に成功した企業事例3選も紹介ここまで、長時間労働者の産業医面談後に企業がやるべきことを4つ解説しました。産業医面談をして終わりではなく、それを踏まえた記録・保管作成や事後措置の実施などが重要です。さらに、企業には産業医とのスムーズな連携が求められます。しかし、企業に産業医が常駐しているわけではないため、面談内容のヒアリングを依頼できる時間が限られることも。従業員300人規模の企業の場合、健康リスクの高まる長時間労働(時間外労働45時間超)の従業員は10名ほど発生します。しかし、産業医の稼働時間は月2時間程度。そのため、すべての対象者に産業医面談を実施できないケースもあるのが実情です。そこで、産業医の稼働時間内で対応しきれない場合は、外部のサポートを利用する方法を検討してみてはいかがでしょうか。「面談が必要な従業員がいるけれど、すぐ産業医に依頼できない」といったときは、外部の健康相談窓口の利用がおすすめです。ここまで読んで「健康管理に関する業務が初めてで、長時間労働による産業医面談のことはよくわからない」といった悩みを持つ方もいるのではないでしょうか。以下で、よくある質問と回答をまとめたので参考にしてみてください。長時間労働による産業医面談に関してよくある3つの質問と回答ここでは、長時間労働による産業医面談に関する、よくある質問を3つ挙げてみました。従業員が長時間労働による産業医面談を拒否した場合は?産業医面談の記録内容の保管期間はどれくらい?そもそも長時間労働によって起きる問題とは?それぞれの質問に対する回答を見ていきましょう。【質問1】従業員が長時間労働による産業医面談を拒否した場合は?残業時間が長時間労働の基準に到達していて、産業医面談の対象になっているにもかかわらず、従業員自身が面談拒否をすることも。その場合は、企業側から産業医面談を強制することはできません。従業員本人から面談希望の申し出があった上で、実施するようにしましょう。ただしすでに長時間労働をしている状態ですので、健康障害のリスクが高まっている可能性もあります。面談を拒否されたからと言って、そのままにするのではなく、法律によって義務付けられていることを伝えた上で受けたくない理由を聞いたり、産業医面談で得られるメリットを伝えたりすることも大切です。 当たり前すぎてコワイ!面接指導拒否への対応ポイント3つ【質問2】産業医面談の記録内容の保管期間はどれくらい?産業医面談の記録内容を保管するのは、5年間と定められています。これは労働安全衛生規則52条6項により義務づけられている期間です。企業は産業医面談や指導などの記録をしっかり作成し、保管していかなくてはなりません。また、記録の内容は従業員のセンシティブな情報です。簡単に担当者以外が閲覧することのないように厳重な保管体制を整えましょう。【質問3】そもそも長時間労働によって起きる問題とは?従業員が長時間労働を続けると、企業にとってどのような影響があるのでしょうか。長時間労働が常態化すると、従業員の健康障害リスクが高くなるだけではなく、次のような悪影響も懸念されます。たとえば労働基準法違反による罰則があったり、万が一、従業員が過労死したりすると、社会的な信用を失い、そのあとの信頼回復に莫大な時間がかかる恐れも。社内だけではなく、取引先や顧客などにも影響する可能性があるため、長時間労働への対策を継続して実施していくことが重要です。お伝えした問題の具体的な内容については、以下の記事にて解説しています。企業に起こり得る問題を事前に把握し、社内の対策に盛り込みたい方は、ご一読ください。 従業員に長時間労働させる5つの問題点!企業に起こりうるリスクとは?まとめ:産業医面談を実施して長時間労働者に適切な事後措置を長時間労働者への産業医による面接指導制度の概要、および産業医面談の実施後に企業が対応すべきことを解説しました。全体のまとめは以下の通りです。長時間労働が続くと脳・心疾患を発症させるリスクが高まるため、医師による面接指導を実施するよう労働安全衛生法で義務づけられている申し出のあった長時間労働者と産業医面談を実施した後、企業は内容を記録、保管をしなくてはならない産業医の意見を元に、就業場所の変更や労働時間の短縮など、適切な事後措置を行う長時間労働に関する調査・審議を衛生委員会で行うことや、企業全体で対策を実施することも重要企業は申し出のあった長時間労働者に産業医面談を実施し、作成した記録は5年間保管する義務があります。さらに、産業医の意見をもとに適切な事後措置が求められます。とは言うものの、法律に則ってするべきことはわかっていても、実際の業務となると担当者に大きな負荷がかかることも。そこで、長時間労働者への産業医面談の実施に必要な作業を効率化するには、「Carely健康管理クラウド」がおすすめです。Carelyなら、以下のことが1つのシステム内ですべて完結します。Carelyがあれば、煩雑になりがちな産業医面談にかかる作業をまとめて行えるため、業務の効率化が期待できます。「長時間労働者のチェックにかかる手間を削減したい」「産業医面談前後で負担となる業務を効率化したい」とお考えの方は、以下からお問い合わせください。\産業医面談前後の業務効率UP/Carely健康管理クラウドとは?