優秀な産業医の選び方 / 紹介サービスを見極める3つのポイント

感染症対策、メンタル不調対策、健康診断の事後措置・・・ニューノーマル時代における労務管理では、「健康管理」の重要性が高まっています。いえ、会社によっては危機感を抱いているかもしれません。
それでは、あなたの会社では産業医と十分に連携がとれているでしょうか?そもそも健康管理について産業医からアドバイスがもらえていますか?
本記事では優秀な産業医の選び方を企業規模ごとに解説。また実際に産業医を探す場合に依頼する紹介サービスの見極め方も含めてご紹介します。
なぜ、あなたの会社の産業医は”役立たず”なのか?
まず産業医の選任は企業にとって義務です。ひとつの事業所(オフィスや店舗など)に50人以上の労働者が働く場合に、産業医を選任して労働基準監督署に届け出ることが必要です。
ここで産業医の選任状況を見てみましょう。日本全国に産業医を選任しなければならない事業所は16万以上ありますが、産業医資格を持っている医師は9万人。そのうち実働している産業医は3万人と推計されており、優秀な産業医であるほど複数の企業をかけもちしていることが分かります。

一方で、「うちの産業医は役に立たない」「月1回、会議に参加するけど何も話さずに帰ってしまう」「テレワークになってから相談したくても、相談できない」といった不満があがることも増えてきました。
確かに産業医の中には能力が足りなかったり、企業が求めるほどの成果を発揮してくれない人がいることも事実です。一方で、企業側(人事)が産業医の仕事について認識が誤っていることで、健康管理が整備されない結果になってしまうこともあります。
ですので、まずは産業医がどのような仕事をする役割なのか。法律上定められていることと、対応範囲ではないことの違いを明確にしておきましょう。
産業医は、病気の診断も治療もしない。
通常の病院で働いている医師(=主治医)の仕事は、患者個人の要望に答えて検査・診断・治療することです。一方で、企業と契約して働く医師(=産業医)の仕事は、健康管理・就業制限の助言指導・休復職の判断を行います。
同じ医師ではありますが、それぞれ目的が異なります。分かりやすく比較してみましょう。

大前提として、「働く」ということはリスクがあることです。
日常生活を送ることに加えて、通勤による事故・工場での作業・オフィスでの残業・・・あらゆることが健康を害する要因となります。残念ながら仕事が原因による死亡者は年間1000人近くにのぼります。
こうした不幸な出来事を予め防ぐために、医学的な知見をもとに「仕事が原因で健康を害していないかどうか」を判断する仕事が産業医なのです。
しかしながら、まだまだ多くの企業では産業医の仕事を主治医と混同してしまっています。これでは産業医の業務内容と企業として求めている成果にミスマッチが起きてしまうことも仕方ないですよね。
法律で定められた産業医9つの業務
企業が従業員の健康と安全を守るためにどのような義務が発生するのかについて、労働安全衛生法と労働安全衛生規則という法律に書かれています。産業医の業務内容についても明記されているので確認してみましょう。
- 健康診断の実施とその結果に基づく措置
- 長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
- ストレスチェックと高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
- 作業環境の維持管理
- 作業管理
- 上記以外の労働者の健康管理
- 健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
- 衛生教育
- 労働者の健康障害の調査、再発防止のための措置
(労働安全衛生規則第14条第1項より引用と関連条文を編集)
はい、これを見ても具体的にどんな業務を産業医が担当するのかイメージつかないですよね。そこで目的ごとに5つに分類して具体的な業務を併記してみました。

少し意外かもしれませんが、産業医の業務範囲は健康診断の結果をチェック(就業判定)したり、高ストレス者との面談をするだけではありません。
従業員が健康で安全に働ける職場環境を創るために、社内のルール整備や社員研修といった人事と密接に関わる業務も含まれています。上記で紹介した分類を「産業保健の5管理」と呼び、産業医にとっては基本中の基本の考え方です。
あらためて、あなたの会社で選任している産業医がどのような業務をしているのかを5管理に分類して整理してみてはいかがでしょうか。
メンタルヘルスは精神科出身の産業医でなければ対応できないのか?
産業医資格を有している のであれば、内科医であれ皮膚科であれメンタルヘルス不調者に対して十分に対応できます。
ここでも誤解を解くポイントは産業医と主治医の違いです。メンタルヘルス不調者を目の前にした人事担当者としては、目の前の従業員を患者として診て欲しい、と思ってしまうかもしれません。しかし不調者を診断して治療するのは主治医の仕事です。
産業医はメンタルヘルスの課題に対して、「業務内容や人間関係が不調の原因ではないか」「原因を解決するために企業がするべきこと」を助言・指導することが仕事です。
産業医と主治医の違いを人事担当者として正しく認識して、会社として達成したいことを産業医と相談して進めていけば、きっと従業員にとっても働きやすく、会社の事業成長にもつながる健康管理ができるようになります。
企業規模別におすすめ、産業医5つのタイプ
意外にも産業医に依頼すべき業務が幅広いことが分かりましたが、実際には企業規模によってどのような業務を重視するかは異なります。
そこで産業医を5つのタイプに分けてみました。企業規模や会社として課題だと感じている点に合わせて、産業医の得意・不得意があります。「とても優秀な先生だよ」と評判が良かったとしても、自社で一緒に働いてみるとそうでもなかった・・・というケースもあります。
具体的なケースをもとにオススメの産業医タイプを探してみましょう。

50人を超えて、初めて産業医を選ぶ場合
まずは産業医の選任について右も左もわからないケースです。
4月、新入社員を迎えてそろそろ従業員数が60人を迎えようとしている企業。昨年、50人を超えたばかりの頃はアルバイトを含んでいたので猶予があったが、今年は正社員だけで50人を超えることが分かった。
社労士から「そろそろ産業医を選任しなければ」とアドバイスがあったので、産業医を探している。しかし、担当者はこれまで産業医がいるような企業で働いたこともなく、どこから探せばいいかさえ分からない状況です。
はじめて産業医を選任するケースでおすすめなタイプは、法令遵守系 or 法令企画系の2タイプです。従業員50人を超えたタイミングは、産業医の選任だけでなく、衛生委員会の開催・ストレスチェックの実施・健康診断の労基署報告などこれまではなかった新たな義務が目白押しです。
人事担当者にとっては、どんな健康管理をどんなスケジュール・順番で進めていけば、新しい義務に正しく対応できるのかに右も左も分からない状態になることでしょう。
「法令遵守系」と「法令企画系」の違い。
どちらも労働安全衛生法に正しく対応する方法を教えてくれる産業医タイプですが、すでにメンタルヘルスによる不調者や休職者が発生しているかどうかで判断するといいでしょう。
法令遵守系の産業医なら、不調者や休職者への対応に主体的に動いてもらえますし、健康診断の実施状況や新しく実施するストレスチェックの進め方についてもアドバイスが得られやすいでしょう。
一方で法令企画系の産業医は、最低限の産業医衛生にプラスアルファした取り組みを可能になります。休職者発生時のルール作りや健康診断の事後措置フロー、最近義務化されたパワハラ防止法への対応など、新しい法制度にも詳しく人事にアドバイスがもらえます。

わざわざ「新規立ち上げ系」を選ぶ必要性はない。
はじめて産業医を選任するのだから新規立ち上げタイプが適任と思えるかもしれませんが、産業医紹介サービスを利用する場合はわざわざ選ぶ必要はないでしょう。
理由は2つあります。
ひとつめは、産業医紹介サービス自体に衛生委員会の立ち上げや初回のストレスチェック実施サポートが付帯していることが多いから。
ふたつめは、そもそも新規立ち上げの経験が豊富な産業医は数多くないから。ひとつめの理由の通り、立ち上げ自体は産業医紹介サービスが行うこともあるため、意外にもこのタイプは少ないのです。
毎月の業務時間は、月1回の訪問で1時間。
産業医の法律で定められた業務のひとつに職場巡視があります。これは選任された事業場で、従業員が実際に働いている状況を見て回り、作業内容や職場環境に危険な箇所がないかをチェックする業務です。
職場巡視は毎月1回実施することになっているのですが、2017年の法改正によって条件付きで2ヶ月に1回と頻度を減らすことが可能になりました。
しかし、初めて産業医を選任する企業では社内の人員だけでは健康管理に対応できないこともあり、なんだかんだと産業医へと相談することが発生します。そのため巡視をする・しないに関わらず、毎月定期的に産業医に訪問してもらうことをおすすめします。
業務時間としては、職場巡視・衛生委員会の参加・従業員との面談を行ったとしても1時間で十分間に合います。
全社で300人を超えるが、50人未満の支社や店舗の割合が多い場合
次に、すでに産業医を選任しているものの一人ではカバーしきれなくなったケースです。
コロナ禍にあっても事業は順調で、関東圏を中心にチェーン展開している企業。会社全体の従業員数は300人を超えているものの、本社勤務がようやく50人を超えているが各店舗には20名前後が在籍しているだけなので、産業医は一人しか選任していない状況です。しかし、従業員からの健康相談が増えてきており、会社としても健康管理に力をいれなければと意識が高まってきました。
すでに産業医を選任しているものの、支社や店舗が増えてきたケースで新たに産業医を探すのであれば法令遵守系または制度設計系のどちらかのタイプがおすすめです。
現在の労働安全衛生法では、会社全体の従業員数は多くても事業所ごとでは人数が少ない企業においては健康管理の義務がほとんど発生しない法制度になってしまっています。
本社で一人でも産業医を選任していればまだマシです。とはいえ、50人〜100人未満の中小企業に比べて300人を超えるような中規模企業では、会社として抱える課題や社内制度はより複雑になります。企業規模が変わることで産業医に求められる役割も変わってくるため、立ち上げ期とは別タイプの産業医を選ぶ必要があるでしょう。

ハイリスクアプローチか、ポピュレーションアプローチか
企業として従業員の健康を守る考え方として、ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチという2つの考え方があります。
どちらを重視するかは会社の状況(事業戦略や従業員の年齢構成)によって変わります。ですが、一般的にはハイリスクアプローチから健康管理体制を整えるほうが、企業のリスクヘッジにつながります。
例えば、休職者が多く発生していたり(全従業員に対して1%以上)、平均年齢が高くなってきて生活習慣病のリスクが懸念されるような状況でならば、ハイリスクアプローチを重視して不調者対応に強い法令遵守タイプの産業医を増員してみるといいでしょう。
テレワークが広がったことにより、オンラインでの産業医面談も実施しやすくなりました。東京にいる産業医が地方拠点の従業員と面談するケースも増えてきたので、すでにいる産業医と担当エリアを分けて受け持つこともアリですね。
一方で、例えば従業員の平均年齢が若く、過度な残業なども発生しにくい企業であれば、ポピュレーションアプローチの考え方から制度設計タイプの産業医を探してみるといいでしょう。
新卒や管理職向けの研修を実施してもらったり、さらなる事業拡大に向けて社内規定の整備に尽力してもらえます。もちろん法律上の業務を飛び越えた範囲までカバーすることになるので、これほど優秀な産業医を探すことは難しく、報酬も高くなってきます。
健康診断業務の効率化も同時に考える
産業医の業務とは直接関係ないのですが、人事や総務が抱える健康診断業務の効率化も同時に検討してください。
健康診断業務には大きく分けて2つのフェーズがあります。健診の予約〜受診するフェーズと、健診結果をもとに事後措置をとるフェーズです。このどちらのフェーズも従業員数が300人を超えてくると、すべてを内製化で対応することが難しくなってきます。
健診クリニックへの予約では日程再調整の数が増えてきて、電話やFAXの対応に手が離せなくなってきます。無事に受診が終わった後も、健診結果を産業医に就業判定してもらい労基署への報告書をつくる作業は、アナログで地味な作業ながら時間ばかりがかかるものです。
産業医を増員する代わりに、健康診断の予約サービスや管理システムを導入することも解決策のひとつになるので検討してみてください。
採用強化のために健康経営に取り組む大企業の場合
最後に、トップダウンによる健康経営に取り組もうとしている大企業(1000人超)のケースです。
日本の労働人口が減少する中で、これまで通りの新卒採用だけでは十分な人材を確保できなくなった企業。優秀な社員を採用するためにも「今いる社員」のために健康経営を実施し、社内外のブランディングにつなげようと考えています。まずは健康経営優良法人の認定取得を目指しますが、法律以上の健康管理とは何をすればいいのかは分からない状況です。
直接的に従業員の健康に関与するのではなく、人事戦略レベルで健康管理を推進するならばコンサルタイプの産業医のちからが必要になってきます。
従業員数1,000人を超える大企業であれば、産業医だけではなく産業保健師・産業看護師を加えたチームが組まれているはずです。健康診断後の保健指導や再検査の勧奨、高ストレス者・長時間労働者への面談といった業務だけでも、従業員数が多くなればなるほど事務作業のハンザツさは増していきます。
そこに加えて、健康経営に取り組むなら健康データを分析したり、企業特性にあった施策を企画し実施するマネジメント力というプラスアルファのスキルが必要になってきます。すべてを産業医に任せるわけではありませんが、様々な企業の取り組みを経験しているコンサルタイプの産業医によるアドバイスはきっと役に立つはずです。
健康経営のはじめの一歩は、健康管理体制の構築から。
経済産業省が主導する「健康経営優良法人」認定の取得を目指していることを前提に、まずは何から手をつけはじめるべきか。優良法人の認定基準を確認してみましょう。(大規模法人部門の場合)

文字が細かく見づらいのですが、注目すべきは大項目の3番です。
認定要件は全23項目のうち19項目のクリアが必要です。そのうち12項目、つまり半分以上が大項目3番の「制度・施策実行」に関する要件です。また「健康経営銘柄」や「ホワイト500・ブライト500」と冠がつけられている上位表彰の選ぶ際にも、大項目3番の良し悪しが成否を分けます。
評価されるポイントとしては、細かくひとつひとつの施策に取り組むだけでは足りず、健康施策の取り組み全体を通して“経営課題の解決につながっているかどうか”。
つまり、健康経営を推進する体制が社内または外部委託によって整っているか?が問われています。そのため健康経営の第一歩は、産業医と連携することで健康管理体制をキッチリと構築することと言えます。
ではどこまでキッチリすればOKなのか、というと産業医業務の説明でお話した「産業保健の5管理」をモレなく揃えることなのです。あらためて5管理の具体例を載せておきますね。

専属産業医はどうやって探せば良いのか?
大企業における産業医では、難しい課題がひとつあります。それが常駐義務のある専属産業医の選任です。
専属産業医とは、1,000人以上の事業所では選任が義務付けられており、業務時に訪問する嘱託産業医とは異なり事業所に常駐する必要があります。簡単に言えば、医師を一人雇わないといけないということです。
法律上義務ではあるのですが、現実には専属産業医を正しく選任できないケースはよくあります。そもそも医師一人を雇うには高額な報酬(年1,500〜2,000万円が相場)がかかってしまいますし、また専属産業医を引き受ける産業医が足りないためです。
そのため一人の専属産業医を常駐させるのではなく、複数人の嘱託産業医をローテーションで常駐してもらう方式を採用することで健康管理体制を築いているケースもあります。
ただし、法律と現実が即していない状況をみて産業医の常駐義務が廃止される動きがあります。いずれにしろ大事なことは産業医・産業看護職含めて従業員の健康が守れる体制を築くことですので、紹介サービスを利用する際にも「専属産業医が見付からない場合どうするのか?」とあらかじめ相談しておきましょう。

自社にマッチした優秀な産業医を見抜く面接
産業医がカバーする業務範囲とはどこからどこまでなのか、そして自社にマッチした産業医はどのタイプなのか。
この2点が理解できたら、実際に産業医を探して選ぶフェーズになります。ここからが人事担当者にとって気が抜けないポイントなのですが、産業医紹介サービスを利用した場合に「産業医を探して紹介」はしてくれますが、「自社にマッチした産業医を選ぶ」ことは人事担当者の役割になります。
具体的には、紹介された産業医と面接を通して判断します。一般的な採用面接と同じようなものだと捉えてください。産業医としてスキルや経験はもちろん、会社文化や人柄も考慮にいれて産業医として選任するかどうか決めます。
と、そうは言っても社員の採用面接とは違い、産業医という専門家をどんな基準で選べばいいのか分からない!と思いますので、報酬の相場観と面接のポイントについて解説していきます。
産業医報酬の相場
やはり気になるのは産業医報酬、つまり毎月どれくらいの費用がかかるのかですよね。業務に必要なときだけ訪問する嘱託産業医の場合の報酬目安をまとめてみました。

産業医の業務に訪問は必須か、不要か。
感染症対策によりテレワークが広まり、産業医業務に訪問が発生しないことも増えてきました。これまでは職場巡視や衛生委員会の参加のために訪問が必要であり、同じタイミングで従業員との産業医面談が実施されていました。
しかし、オフィスで働く人が減り衛生委員会の開催もオンラインでの実施が容認されたので訪問の必要性がなくなりました。またZoomやTeamsなどのオンライン会議ツールを利用した産業医面談は、時間を自由に決めやすくなったので、従業員にとっても産業医自身にとってもメリットになっています。
今はまだテレワークの普及に法律の改正が追いついていないので、ある程度の訪問は必要かもしれません。しかし以前よりも訪問頻度は少なく、そのかわりオンラインツールを上手に活用して細やかなコミュニケーションをとる形式に移り変わっていくでしょう。
注意点として、仮に訪問がなかったとしても産業医の月額報酬は発生する契約がほとんどです。訪問していない時間にも、健康診断やストレスチェックの結果をチェックしたり研修用の資料作りも発生します。月額報酬に加えてどのようなオプション費用が発生するかも事前に契約書で定めておくようにしましょう。
制度設計・コンサル力の見極めは、経験と実績
それでは実際に産業医と対面して、自社にマッチした優秀な産業医かどうかを見極めていきます。すでに紹介した「産業医5つのタイプ」を覚えていますか?まずはこのうち、制度設計系とコンサル系の2つのタイプをどのように見極めるか。
制度設計系・コンサル系、この2つのタイプは産業保健の業務にとどまらず、各企業の事業特性や人事戦略を考慮した上で、新しいルールづくりや自ら企画を立てて社内推進するタイプです。非常に優秀であると同時に産業医の中でも限られた方しかいませんので、当然ながら報酬額も高くなります。
こうした産業医を見極めることはカンタンで、担当した企業とそこでの実績を面接の場で尋ねることです。たとえば以下のような質問です。
経験と実績を見極めるための質問リスト
- これまで担当した企業の規模や業界を教えて下さい。
- 健康管理についてどのような体制(チーム)で動いていましたか。
- 人事担当とはどのような課題を共有して、解決しましたか。
- 弊社のような企業で、健康管理上リスクになるポイントはありますか。
評価軸としては、あなたの会社の事業内容について事前に調べているか?法律的な対応にプラスアルファの企画力が備わっているか?を判断していきます。
とはいえ、経験豊富な産業医であれば具体例な事例を語ってくれますので、面接を通して判断しやすいタイプです。
法令遵守・企画力の見極める、面接の評価軸と質問事項
一方で、意外にも見極めが難しいのが、法令遵守系・法令企画系の2タイプです。報酬額も相場と同じか少し安いぐらいなので、初めて産業医を選任する企業とマッチするタイプです。しかし、このタイプの産業医の中には経験社数が多くてもスキルが不十分だったり、新しい法改正をキャッチアップできていないこともあります。
産業医紹介サービスを利用した場合、履歴書のような形式で事前に経験社数や専門科を知ることができます。そんな書面だけでは判断できない、産業医の実務スキルを見極める面接のポイントを紹介しておきます。
実務スキルがあるかどうかがチェックできる質問リスト
まずは産業医として最低限の実務スキルが備わっているかどうかを、面接の質問を通して判断します。なるべく産業保健の現場に沿った質問を用意しましたので、ぜひ活用してみてください。
法令遵守の実務スキルを見極める質問リスト
- 弊社のHPは見て頂けましたか?事業について印象をお聞かせください。
- 月1回 1時間の場合、どのような時間割で業務が進みますか。
- 衛生委員会には毎回参加してもらえますか?
- 衛生委員会は毎月実施する必要がありますか?
- 産業医面談はどのような人が対象になりますか?
- 産業医面談は1回あたり何分ぐらいかかりますか?
- もし産業医面談を拒否されたらどうしたらいいですか?
- メンタル不調者の対応はしてもらえますか?
- ストレスチェックの実施者になってもらえますか?
- 健康診断の結果はどういった観点でチェックしますか?
- 長時間労働者とは産業はどのように関わるのですか?
- テレワークなのでオンラインでの面談に対応していただけますか?
- 産業医面談の内容は人事にも共有してもらえますか?
評価軸は、経験社数よりも自社にマッチしているかどうか。
以上のような質問を通して、間違った回答が返ってこないかどうかをチェックすることはもちろん、明瞭な伝え方で答えてくれるかもチェックしてください。
仮に経験社数が多い産業医であっても、あなたの会社の業務内容に興味をもっていなかったり、面接を通じて従業員の年齢層や働き方についてのヒアリングがないようならば、自社にマッチしない可能性が高いので避けるべきでしょう。
また、名刺の渡し方や服装などビジネスマナーのチェックも必要です。産業医の中で専門として従事している人は少数派で、多数は自分でクリニックをしていたり病院に勤めながらのかけもちです。ビジネスマナーに疎い産業医では、契約後のメールのレスポンスが遅かったり、業務面での不要なトラブルが起きてしまうリスクも高まります。
ビジネスマナーなんて些細なこと・・・と見逃してしまわず、正しくチェックしてください。
産業医を選任後、最初の3ヶ月で依頼すべき4つの業務
無事に自社にマッチした優秀な産業医を選ぶことができた!と、ここで気を抜いてはもったいない。冒頭にお伝えした通り、どれだけ優秀な産業医であったとしても、人事担当者と連携をとりあって自社のことを理解してもらう必要があります。
また毎月の業務が進んでいけば計画通りに進めていけるのですが、選任直後の数ヶ月は企業(人事)の受け入れ側としても産業医としても探り探りの状態です。そこで産業医紹介サービスによるサポートが重要になってきます。
具体的に産業医紹介サービスからどのようなサポートが受けられるのか。もしサポートがなかったとしても、人事としてどんな業務を優先して依頼すべきなのか、順番に見ていきましょう。
業務1 : 産業医の選任届を提出する
まずは法律に則って、選任届を労基署に提出します。
労働安全衛生規則により、「産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任すること」と書かれているのですが、届け出をいつまでに出すべきかについては書かれていません。だから提出しが遅れてもいい、ということにはなりません。
適切な時期に産業医を選任していなければ、50万円以下の罰金となります。初回の業務が開始する前には選任届を作成して、管轄の労基署に提出しましょう。
具体的に選任届の書き方については以下の記事で解説しています。産業医の生年月日や証明書も必要になるので、産業医紹介サービスが作成してもらうことも可能です。
業務2:自社の事業内容・働き方を理解してもらう
次にあなたの会社がどんな事業をしていて、従業員はどんな環境でどういう内容の作業をしているかについて、産業医にレクチャーします。
優秀な産業医であれば、職場巡視を通して人事や衛生管理者に質問を投げたり、衛生委員会の中で従業員代表とのコミュニケーションをとって、自発的に会社理解を深めてくれます。しかしそれだけでは理解までに時間がかかってしまいますので、企業側から積極的に情報開示するといいでしょう。
どんな情報を提供するのか、なぜそんな情報が必要なのか、についても別の記事にて詳しく解説しています。産業保健師の立場から書かれており、すぐに実務で使えるリストもあるので参考にしてください。
業務3:年間のスケジュール(衛生計画)をたてる
これは必須の業務ではないのですが、余裕があれば取り組んでもらいたい業務です。
産業医の業務はよほどの大企業でない限り、月次で進んでいきます。もし「あっ今月実施しておくべきだったのに忘れていた」という業務があれば1ヶ月まるごと後ろ倒しになってしまいます。
例えば、健康診断の受診はいつから開始するのか、新入社員へのメンタルヘルス研修、衛生委員会での議題など。イメージしやすいようにサンプルを掲載しておきますので、産業医と相談して作成してみてください。
年間計画表 | |
---|---|
4月 | 雇入れ健診、オリエンテーション研修(安全衛生教育) |
5月 | 健診事後フォロー、2次検査受診勧奨 |
6月 | メンタルヘルス研修(1回目) テーマ:セルフケア、コミュニケーションの基本 |
7月 | 新入社員ヒアリング |
8月 | 配属部署先輩・上司ヒアリング |
9月 | ストレスチェックの実施 |
10月 | ストレスチェック事後措置、メンタルヘルス研修(2回目) テーマ:入職6か月の悩みを新入社員同士で共有 |
11月 | 産業医との全員面談、随時フォロー面談 |
12月 | 管理職向け研修 傾聴力UP、ラインケア、1on1 ストレスチェック集団分析結果確認と社内報告 |
1月 | 新入社員受け入れ準備 |
2月 | 管理職向け研修 傾聴力UP、ラインケア、1on1 |
3月 | 年間計画の振り返り |
4月 | 2年目メンタルヘルスフォローアップ研修(3回目) テーマ:アサーティブコミュニケーション、レジリエンス |
業務4:産業医面談をセッティングする
そして産業医と従業員との面談(面接指導)の日時を決めて実施します。
これまで産業医がいなかった企業にとっては、初めて「医師と1対1で話をする」機会はどうも特別なことに捉えてしまいがちです。どちらかといえば、ネガティブに受け取ってしまう従業員がおおいのではないでしょうか。
会社として事業を拡大し、様々な従業員が働き始めると、労務リスクは自然と増え続けます。リスクをなるべく早く察知して解消するためにも、産業医面談を適切に実施できる風潮を作り出すことは重要です。
産業医が選任されたばかりで、産業医面談をスムーズにはじめる3ステップをご紹介しましょう。

ステップ1:産業医面談の目的を事前周知する。
事前周知にあたって必ず伝えてほしいことが3つあります。
- 法律で決まっている手続きであること
- 人事考課には一切関係なく、働ための健康状態かを診るためであること
- 産業医が誰であるか写真付きで紹介する
特に3番は効果的です。産業医面談のときだけでなく、職場巡視でオフィス内を見て回る際にも産業医自身がコミュニケーションをとりやすくなるので、ぜひ実施していただきたい事前周知です。
ステップ2:勤怠不良・長時間労働者へルールの説明。
健康診断やストレスチェックの後にも産業医面談が実施されますが、これらは検査の時期が決まっているので選任直後ですぐに面談が必要な従業員がいないかもしれません。
勤怠不良者や長時間労働者は毎月一定の割合で発生するので、そうしたリスクが高いと思われる従業員から個別に説明をして産業医面談の日程を決めましょう。
ポイントとしては、「産業医面談を希望するか?」と質問するのではなく「産業医面談のルールが決まったから◯月◯日に予定を入れたよ」と会社として決定事項だと伝えることです。
ステップ3:人事・総務との情報共有
産業医面談が終了したら、必要な情報の連携をおこないます。産業医面談の中でもプライバシーにかかわる情報も含まれるため、すべての情報を企業側に開示することはありません。
しかし、従業員が健康を害する要因が職場や働き方にある場合には、企業側に対策をとってもらわなければいけませんし、産業医の業務として助言・指導する必要があります。
面談の中で判明した健康リスクを共有する。そして人事・総務として職場改善に努めることで、従業員の健康と安全が守られる、働きやすい職場環境を創ることができるのです。
産業医紹介サービスを見極める3つのポイント
ここまで優秀な産業医をどのようにして選ぶのか、そしてあなたの会社にマッチした産業医はどんなタイプなのかについて、解説してきました。
「まだすべては読めていないよ」という方もいらっしゃると思うのですが、目次だけを眺めてみても、本記事で紹介した内容を100%理解して産業医をチェックすることって至難の業ですよね。
私たちは健康管理システムCarelyを開発・提供する中で、健康管理のキープレイヤーである産業医とも企業の健康管理について議論を重ねています。そんな私たちから見ても、優秀な産業医であるかどうかを見極めることは難易度の高いことですから、専門家ではない人事担当者にとってはなおさらです。
そこで利用するのが産業医紹介サービス。
ただ単に、あなたの会社の地域に近い産業医を探すだけの役割ではわざわざ紹介サービスを利用する必要はありません。本記事で紹介したチェックポイントをすべてクリアした上で、あなたの会社にマッチした産業医を選んで紹介してくれるサービスを利用するべきですよね。
最後におさらいとして、産業医紹介サービスを見極める3つのポイントをまとめておきます。もしあなたが産業医を初めて選任する時、あるいは新しい産業医を探すときには、以下のチェックポイントを参考に産業医紹介サービスを選んでください。
ポイント1:産業医業務と法定義務を正しく理解しているか
すでに病気が発症している患者を診断して治療する主治医ではなく、仕事が原因で健康を害してしまうことを予防するために対策をとることが産業医の業務です。
そのために「産業保健の5管理」を産業医紹介サービスも正しく理解している必要があります。

特に初めて産業医を選任する、従業員数が50人を超えた企業の場合には産業医以外にも新たな健康管理の義務がいくつもあります。以下に義務の一覧をあげておきますが、すべての義務について産業医が関わってきます。
- 産業医の選任
- 衛生管理者の選任
- 衛生委員会の設置と毎月の実施
- 衛生委員会の議事録の保管と周知
- 職場巡視の実施
- ストレスチェックの実施
- ストレスチェックによる高ストレス者対応
- 健康診断の労基署報告書の提出
産業医を紹介するだけでなく、選任時に同時進行しなければいけない義務(衛生委員会の立ち上げやストレスチェックの実施)についてもアドバイスがあるかどうかは、産業医紹介サービスを見極めるひとつのチェックポイントになります。
ポイント2:事業内容や働き方をヒアリングしているか
産業医には実績やスキルによって5つのタイプにわかれます。あなたの会社がどれくらいの従業員規模で、どんな事業内容であり、従業員の働き方はどうなっているのかによって、自社にマッチする産業医のタイプは異なります。

また産業医スキルを見極める目も、産業医紹介サービスには必要です。経験社数や報酬額といった書面上だけでなく、面接を通してどのようなポイントをチェックするべきかを積極的にアドバイスしてくれる産業医紹介サービスを選ぶべきでしょう。
そのために、産業医紹介サービス自身があなたの会社の事業内容や働き方について理解を深める必要があります。事前にヒアリングを重ねて、企業側の要望を聞くだけでなく、産業医を選任することでどのような健康管理体制を築けるのか提案をしてくれることも、サービスを選ぶチェックポイントになります。
ポイント3:選任後のサポートも含まれているか
たとえスキル的に優秀な産業医が選べたとしても、企業側の受け入れ体制が不十分であれば、適切な健康管理体制を築けないまま高い報酬を払うことになります。
毎月の運用が軌道にのるまでに企業側として産業医に依頼する業務もサポートしてくれるのかをチェックしておきましょう。具体的には以下の4つの業務が、選任後数ヶ月以内に進めておきたい業務です。
- 産業医の選任届を作成・提出する
- 産業医に、事業内容や従業員の働き方をレクチャーする
- 年間のスケジュールをたてる
- はじめての産業医面談をセッティングする
健康管理システムCarelyを使った産業医を紹介します。
さきほどもお話しましたが、私たちは健康管理システム『Carely』を開発・提供しています。健康管理システムとは、健康診断・ストレスチェック・残業時間・産業医面談などの健康情報を一元管理することで、企業と従業員の健康創りが効率的になるシステムです。
Carelyを使うことで、専門知識のない人事担当者であっても健康管理ができるようになるのですが、産業医と連携することでより一層効果を発揮するように開発されています。そこでCarelyではシステム開発だけでなく、産業医・産業保健師の紹介サービスを行っています。
もし本記事をお読みいただいて「Carelyを使っている産業医と話をしてみたいな」と興味をもっていただけましたら、以下のページからお問い合わせください。Carelyを契約するしない関わらず、あなたの会社にとってはどんな産業医がマッチしているのか?についてお話いたします。