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2022年5月24日 更新 / 2019年11月8日 公開

衛生管理者とは?選任の条件と人数、届出の出し方を解説

衛生管理者とは?

一定以上の従業員が働いている企業では、働くひとの健康を害さない職場を守るために衛生管理者という資格を有した人を選任する法律上の義務があります。また、衛生管理者を選んだときには、法律で定められた期間内に届出をする必要もあります。

衛生管理者の選任は一人だけとは限りません。事業場(オフィスや工場・倉庫など)で働く従業員の数や業務の種類によって、必要な人数や資格が異なってきます。そこで今回は、この制度の基礎知識と届出の出し方などを詳しく解説していきます。

衛生管理者とは?

衛生管理者とは、労働条件、労働環境における衛生改善や疾病予防処置などを担当する事業場の管理者です。労働安全衛生法では、一定以上の規模がある事業場に、衛生管理者や労働衛生コンサルタント、医師などの免許や資格を持つ人の選任を義務付けています。衛生管理者には、衛生工学衛生管理者・第一種衛生管理者・第二種衛生管理者という業務範囲の異なる3つの免許があります。

衛生管理者の職務内容

衛生管理者には、次のようにたくさんの仕事があります。

  • 健康に異常がある人の発見及び処置
  • 作業環境における衛生上の調査
  • 施設や作業条件などの衛生上の改善
  • 救急用具や労働衛生保護具などの点検及び整備
  • 健康相談や衛生教育、その他の労働者の健康保持に関わる必要な事項
  • 労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、移動及び欠勤に関する統計作成
  • その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所で行われる場合の衛生に関して、必要な措置
  • 衛生日誌の記載など職務上の記録整備
  • 事業場における定期的な巡視

この中で特に重要となるのが、「健康に異常のある者の発見及び処置」と「事業場の定期的な巡視」です。多忙な毎日を過ごす労働者と健康診断の日程調整を行い、受診率を高めることも衛生管理者の腕の見せどころとなります。健康診断に行く時間が取れない場合は、業務時間中に受診しやすい環境整備をすることも、有効な手段となるのです。衛生管理者のこうした取り組みにより健康異常の早期発見ができると、病気による退職や人員不足といった経営面の問題も解消しやすくなります。

一方、週1回以上のペースで行う定期巡視は、産業医制度とも大きく関係する重要な仕事です。高い頻度で行なわれる衛生管理者の定期巡視には、産業医よりも細かなところに早く気付ける利点があります。巡視頻度の低い産業医の視点をカバーするうえでも、衛生管理者は労働条件や労働環境の衛生的改善に欠かせない役割を担っているのです。

衛生管理者の選任が免除になるケース

選任すべき事業場であるが、選任できないやむを得ない事由が生じた場合、所轄の都道府県労働局長の許可を受けることで選任が免除されます。具体的には、衛生管理者の突然の退職や死亡といった特殊な事由によって生じた欠損の充足に、期間を要することがやむを得ないと判断された場合です。この条件に該当し、労働局長の許可が得られた場合は、次の2要件に合った対処をすることで、衛生管理者の選任が免除となります。

  • 特定の者を衛生管理の業務に従事させる
  • 期間はおおむね1年以内に限定

しかし、選任を免除されるからといって衛生管理者が不在である状態は労務リスクを高めることになります。人事・総務部門を中心に複数の労働者に衛生管理者の資格を取得させておくとより安心です。それではどうやって資格を取得するのかについてご説明しましょう。

衛生管理者の資格取得方法

保健師や薬剤師資格のない一般の人は、試験を受けて第一種衛生管理者もしくは第二種衛生管理者の国家資格を取得します。衛生管理者免許には、二種から一種という段階を踏まなくても、最初から上位免許の第一種を受けられる特徴があります。試験は、全国7ヶ所にある安全衛生技術センターで毎月1~3回程度のペースで定期的に行なわれています。衛生管理者の試験を受けるには、次のような受験資格のいずれかに該当する必要があります。

  • 大学または高等専門学校、短期大学を卒業し、労働衛生の実務経験が1年以上ある
  • 高等学校を卒業し、労働衛生に関する実務経験が3年以上ある
  • 労働衛生に関する実務経験が10年以上ある

衛生管理者の必要選任数

衛生管理者の選任数は、次のように事業場で働く従業員の人数に比例します。

事業場の労働者数選任が必要な衛生管理者の数
50~200人1人以上
201~500人2人以上
501~1,000人3人以上
1,001~2,000人4人以上
2,001~3,000人5人以上
3,001人~6人以上

50人未満の事業場には、衛生管理者の代わりに安全衛生推進者を選任することが義務付けられています。ただし安全衛生推進者の場合は、衛生管理者のように労働基準監督署に届出をする必要はありません。

業種ごとに必要な資格

衛生管理者の選任をするときには、その事業場の業種と必要となる免許の関係についても確認しなければなりません。

業務衛生工学
衛生管理者
第一種
衛生管理者
第二種
衛生管理者
法定の有害業務のうち一定の業務を行う有害業務事業場可能条件付きで可能
農林畜水産業、建設業、鉱業、製造業(物の加工業を含む。)、ガス業、電気業、水道業、熱供給業、機械修理業、自動車整備業、運送業、医療業及び清掃業可能可能
その他の業種(有害業務と関連の少ない金融保険業、卸売小売業、情報通信業など)可能可能可能

前述の表の第一種衛生管理者のところに書かれた「条件付きで可能」とは、次の条件に該当する事業場において、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者の免許を持つ人から選任する必要があるという意味です。

衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者にする条件 業種(参考)
常時500人を超える労働者を使う事業場で、坑内労働または労働基準法施行規則第18条第1号、第3号から第5号までもしくは、第9号に掲げる業務に常時30人以上の労働者を従事させているところ 著しく暑熱な場所における業務及び多量の高熱物体を取り扱う業務(1号)
エックス線、ラジウム放射線その他の有害放射線にさらされる業務(3号)
獣毛、土石等のじんあいまたは粉末を著しく飛散する場所における業務(4号)
異常気圧下における業務(5号)
水銀、鉛、クロム、黄りん、砒素、塩素、弗素、硝酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、アニリン、ベンゼン、その他これに準ずる有害物の粉じん、ガスまたは蒸気を発散する場所における業務(9号)

次の条件に該当する事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を選任の衛生管理者にする必要があります。

衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者にする条件 業務(参考)
常時1,000人を超える労働者を使用する事業場 指定なし(全業務が対象)
常時500人を超える労働者を使う事業場で、坑内労働または労働基準法施行規則第18条各号に掲げる業務に常時30人以上の労働者を従事させているところ 著しく暑熱な場所における業務及び多量の高熱物体を取り扱う業務
著しく寒冷な場所における業務及び多量の低温物体を取り扱う業務
獣毛、土石等の粉末またはじんあいを著しく飛散する場所における業務
異常気圧下における業務
鋲打機や削岩機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
重量物の取り扱等重激なる業務
ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
水銀、鉛、クロム、黄りん、砒素、塩素、弗素、硝酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、アニリン、ベンゼン、その他これに準ずる有害物の粉じん、ガスまたは蒸気を発散する場所における業務
その他厚生労働大臣の指定する業務

衛生管理者の選任届の出し方とタイミング、必要書類

事業者が行う衛生管理者の選任届の出し方や、提出のタイミングや必要書類について詳しくご紹介していきます。

選任届を提出するタイミング

衛生管理者を選任したら、所轄の労働基準監督署長に遅延なく選任報告書を提出する必要があります。選任の手続きは、ひとつの事業場における常時使用する労働者数が50人以上といった選任事由が発生してから、14日以内に随時行なわなければなりません。

厚労省のHPから用紙をダウンロードする

衛生管理者の届出に使う用紙は、次の厚生労働省ホームページからダウンロードしてください。
総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告

届出書の読み込みは、専用の機械を使って行なわれます。そのため、印刷用紙は白色度80%以上のものを使ってください。印刷した紙のコピーは機械読み取りができない可能性があるため、基本的に使用禁止です。プリントアウトが難しい場合は、労働基準監督署の窓口で用紙をもらえます。提出部数は2部となっており、1枚は事業者側の控えです。

用紙に記入する

次の記入例を見ながら、事業場や選任した衛生管理者の情報を書いていきます。
安全管理者選任報告書 記入例

「事業の種類」の項目では、労働安全衛生法施行令第2条第1号または第2合の業種を記入します。「衛生管理者選任の基準となる労働者数」は、派遣やパートなども含めた事業場で働く人の人数です。企業全体の労働者数ではありませんので、注意をしてください。

続いて、「安全衛生管理者または衛生管理者の場合は担当すべき職務」については、2人以上の管理者を選任し、かつ法令でさだめる職務を分担した場合にのみ記入をしていきます。届出用紙の最後の「事業者職氏名」に、事業場の長の名前や押印をするときには、その会社の社長名も併記してください。

記入例を見ても判断できない項目がある場合は、提出先となる最寄りの労働基準監督署に問い合わせをしてみても良いでしょう。

事業場を管轄している労働基準監督署に郵送か窓口、電子申請で提出する

記入した用紙は、労働基準監督署への郵送もしくは直接持ち込み、電子申請のいずれかの方法で提出します。所轄の労働基準監督署に郵送する場合は、申請書の控えを返送してもらうために、切手を貼った返信用封筒を同封してください。

電子証明書やPC環境が整っている場合は、24時間利用可能なe-Govいうサイトから電子申請をする方法もおすすめです。
電子政府の総合窓口 e-Gov

また、委員会の構成員を選出した後は、衛生計画を立てなければいけません。どういった衛生計画を立てれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。そんな方に向けて、基本的な衛生計画の立て方やよくある問題を以下にまとめました。ぜひご活用ください。

まとめ

衛生管理者は、事業場における衛生全般の管理をする人です。一定規模以上の事業場には、法律で定められた国家資格を持つ衛生管理者の選任が義務付けられています。選任すべき人数や担当者の保有資格は、事業場の規模や業種によって異なります。衛生管理者の届出は、厚生労働省のホームページからダウンロードした用紙に記入後、窓口への持ち込み・郵送・電子申請の3方法から選択可能です。選任事由の発生から提出までの日数にもルールがありますので、手続きが遅れて労基署から指摘が入らないように早め早めの準備を進めてください。

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執筆・監修

  • Carely編集部
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    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。