健康診断の判定区分の違いとは?就業判定に時間がかかる2つの理由と対処法を解説!

「従業員から健診結果の見方を相談されたけど、どう答えればいいの?」
「健診クリニックによって判定の表記が違うけど、どっちが正しい?」
と、専門家ではない人事・総務としては健診の判定区分は分かりづらいですよね。
健康診断の結果には、項目ごとにcやdなどの判定区分があります。しかし、判定区分を確認するだけで、「安全に働く上で問題ない」と判断することはできません。
そこで今回は、
- 健康診断の判定と産業医による就業判定は何が違うのか?
- 健康診断の判定区分はどのように分類されているの?
- 健康診断実施後の判定を期限までに間に合わせる方法は?
といった疑問にお答えしつつ、人事や総務担当者が、健康診断実施の事後措置をよりスムーズに終わらせるための情報をご紹介します。
記事の後半でもご紹介しますが、健康診断の就業判定における担当者の業務負担を減らすためには、「健康診断結果のペーパーレス化」が効果的です。ペーパーレス化については、以下セミナーにて詳しく解説しているので、あわせてご一読ください。

健康診断の判定には2つの種類がある!その目的とは?
「健康診断の判定」と聞くと、AやBなどの一定の基準によって表示された健康診断結果のことを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、健康診断の判定には以下の2種類が存在し、それぞれ異なった目的を持っています。
- 総合判定:個人の健康管理が目的
- 就業判定:今の仕事を続けられるかについての判断を行うことが目的
まずはそれぞれの判定の種類と目的について、詳しく解説します。
1.総合判定
総合判定とは、産業医ではなく健診機関やクリニックの医師が判定するものです。つまり、健康診断の結果に記載されている、判定区分が総合判定の結果となります。
定期健康診断の法定項目は、以下の11つ。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
- 胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査
- 血圧の測定貧血検査(血色素量および赤血球数)
- 肝機能検査(AST[GOT]、ALT[GPT]およびγ(ガンマ)-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロールおよびトリグリセライド)
- 血糖検査(空腹時血糖または随時血糖)
- 尿検査(尿中の糖および蛋白(たんぱく)の有無の検査)
- 心電図検査
それぞれの診断項目ごとに規定の基準値があり、結果が表示されます。診断結果がわかる判定区分の詳細は、後述します。
総合判定の目的は、個人の健康管理やセルフケアによるもので、「日常生活を送る上で健康状態に問題はないか」「精密検査が必要な項目はないか」など従業員の健康状態を把握するために行われます。
2.就業判定
一方就業判定とは、企業の産業医による判定のこと。目的は今の仕事や業務を続けても問題のない状態であるかを確認することで、健康状態をチェックする総合判定とは大きな違いがあります。
また就業判定では「仕事を続けられるか」について主に判断されるため、判定基準は業務の内容によって変化します。
就業判定は健康診断の結果をもとに判断されるものの、ただ健康診断の結果を見るだけではありません。就業判定の際には業務内容や労働時間、ストレスチェックの結果を含めて確認するため、総合判定と比較すると判定までに時間がかかることが多いです。
就業判定には大きく以下の3つの区分があり、産業医は健康診断の結果や様々な情報から判定を行います。
- 通常業務:通常の勤務が可能
- 就業制限:勤務に制限を加える必要あり(労働時間短縮や労働時間の短縮など)
- 要休業:勤務を休む必要あり
では、総合判定の場合はどのような判定区分があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
健康診断の判定区分は?c判定・d判定・e判定などの違いを解説
健康診断の結果を確認した際に、それぞれの項目の横に並んでいるアルファベットが判定区分です。
たとえば日本人間ドック学会では、以下のようなAからEまでの判定区分を用意し、検査結果を表示しています。
A:異常なし
日本人間ドック学会 2020年度版判定区分
B:軽度以上
C:要経過観察(生活改善・再検査)
D:要医療(D1:要治療/D2:要精検)
E:治療中
上記の判定区分を使用して体格指数の結果を確認した際について考えてみると、「血圧:A」とあれば異常なし、「血圧:C」とあれば生活改善や再検査が必要であることが分かります。
ただ、あくまでも上記は判定区分の一例であり、健診機関・クリニックによって判定区分は異なります。具体的に言うと、
- AからE以上に細かい項目に分類されているケース
- Aの表記はなく、異常がある項目のみ判定区分が記入される
といった場合も。
上記のような理由により、健康診断の結果だけ見て就業判定はしていません。では就業判定ではどういった判断をしているのか、詳しく見ていきましょう。
健康診断の判定区分だけでは、就業判定はしづらい!その理由とは?
上記の通り、健康診断の判定区分は各健診機関やクリニックによって異なるため、健康診断の結果だけで就業判定をすることは非常に難しいです。
ここでは、健康診断だけで就業判定ができない以下の2つの理由について紹介します。
- 健診結果の基準値が、健診機関やクリニックごとに違う
- 有所見者の特定は、労働時間やストレスチェックなどの確認も必要
それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。
【理由1】健診結果の基準値が、健診機関・クリニックごとに違う
1つ目の理由は、健康診断の基準値が各健診機関やクリニックによって異なる点です。
検査項目ごとに「異常」と判定する数値が異なると、クリニックごとに判定結果が左右されてしまい、その人が本当に正常なのか判断することが難しくなってしまいます。
よって健康診断の結果では「異常なし」と表示されている項目でも、自社の基準で確認した際には「異常あり」となってしまうケースも。
そのため健診結果の基準とは別に自社の基準を設けておくことが重要となり、健康診断の結果だけで就業判定を行うことは非常に難しいと言えます。
さらに有所見者を産業医が特定する際は、健診結果だけでなく、その他のチェック項目の確認も必要となります。2つ目の理由について詳しく見ていきましょう。
【理由2】就業制限の判定は、労働時間やストレスチェックなどの確認も必要
2つ目の理由は、就業制限や休業を指示する従業員を判定するには、健診結果でNGが出ている人だけでなく、以下のような情報も参考にして総合的に判断が必要だからです。
- 労働時間
- ストレスチェックの結果
- 過去の健診結果
このような総合的な判断が必要な理由は、健康診断では異常ありとの判定が出ていても、産業医によれば異常なしと判断される可能性があるためです。
例えば、仮に健診結果で「異常」と判定され再検査が必要になっていたとします。
しかし産業医が「再検査は不要」と判断した場合は、再検査を会社側から促す必要はありません。
また従業員がリスクを考慮して再検査をする場合も、会社側で費用負担する必要はなくなります。
産業医による就業判定は、
- 健診結果を見る
- 自社独自の基準値と比較する
- 基準値を超えた対象者のうち特にリスクの高い者は、他の健康情報を見る
- 3の情報を踏まえて、再検査の対象者や就業制限の指示を出す
といった流れで行われるため、総合判定と比較すると非常に時間がかかります。
またこれらのハイリスク者については、事後措置を適切に進める必要があり、人的コストも軽視できません。就業判定は従業員の人数に比例して負担が増えていく一方で、法律で期日が決められています。
ミス・漏れなく、事後措置を適切にかつ効率的に進めるにはどうすればいいのでしょうか。その回答は以下セミナーにて詳しく解説していますので、ご興味ある方はぜひご確認ください。

では、具体的にはいつまでにどのような作業を終わらせる必要があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
【注意】健康診断実施後の判定は、法律で定められた期日までに対応が必要!
定期健康診断は、以下のように期日が定められています。
- 定期健康診断の実施:1年に1回
- 医師への意見聴取:健康診断実施後から3カ月以内
ここで言う「医師への意見聴取」とは、企業の健診業務担当者が産業医などに意見を伺うことです。つまり、健康診断実施後から3ヶ月以内に以下のすべての作業を行い、記録を残しておく必要があります。
- 健診結果の回収し、産業医へ送付
- 産業医による就業判定(高ストレス者の確認、産業医面談など)
- 判定結果を会社として受け取る(医師への意見聴取)
従業員の人数が多いほど就業判定の業務負荷は高くなってしまうため、対応が遅れないような仕組みづくりが非常に重要です。
また健康診断の判定を効率化するためには、ペーパレス化が非常に効果的です。その仕組みについて、詳しく見ていきましょう。
「今すぐ知りたい!」という方は、以下の資料をご一読ください。
健康診断の判定を効率化する鍵はペーパレス化!その理由とは?
健康診断のペーパレス化を行うと、
- 各健診機関からの結果をまとめ、1枚ずつ確認する
- 判定結果がバラバラのため、自社の基準で再確認する
- 診断結果を確認して産業医面談が必要な社員を特定する
といった健康診断の判定業務で時間のかかる業務を、効率化できます。
たとえば健康管理システム「Carely」では、自社の基準値を事前に設定しておくことにより、自動的に「要面談・有所見・所見なし」の3つに振り分けます。

つまり、「健康診断の結果を1枚ずつ時間をかけて確認する」ではなく、「基準値を超えた従業員を確認する」といった手順に変わるため、大幅に工数を削減できます。
ペーパレス化のメリットや効率化できる業務内容については、以下の資料をご一読ください。
まとめ:就業判定は健康診断の区分だけでなく、労働時間など総合的な判断が必要
今回は健康診断の判定と、判定業務における負担を解消する方法について解説しました。
最後に、判定の際に特に重要なポイントをまとめます。
- 健康診断の判定は総合判定と就業判定の2種類
- 健康診断の判定区分は健診機関・クリニックによって大きく異なる
- 健康診断の判定区分だけで、就業判定を行うことは難しい
- 健康診断後の判定は、健康診断実施後から3カ月以内に行う必要がある
健康診断の結果に表示されている判定区分は統一されていないため、総合判定だけで就業判定を行うことはできません。
また就業判定を行うためには、「自社の基準で結果を再確認する」「1枚ずつ結果を確認して有所見者を特定する」などの手間のかかる作業が必要になり、人的コストがかかります。
健康診断に関する業務をできるだけ効率化をするためには、ペーパーレス化を行い、スムーズな情報共有や作業工数の削減が重要です。
ただ単に健康診断結果をスキャンするだけでなく、システム化することにより「残業時間の削減」や「健康づくりのPCDAを回せる」などの数多くのメリットが存在します。
健康診断結果の業務効率化を図り、健康づくりのPDCAを回す方法について、以下セミナーにて詳しく解説しています。ご興味ある方はぜひご確認ください。
