健康診断の費用はどこまで会社で負担すべき?5つのケースに分けて解説

2021年3月2日 更新 / 2021年3月2日 公開
健康診断の効率化

「健康診断の報告が必要になったけど、費用は全て負担すべき?」
「会社が合併し、健康診断のルールについても考える必要が出てきた……」
と悩むことはありませんか?

健康診断は「労働安全衛生規則 第44条」により、年に1回の実施が義務づけられています。しかし「1人あたりの検査費用 × 従業員数」の費用が毎年発生するのは、企業側にも大きな負担ですよね。

そこで今回は、健康診断の

  • 実施費用はすべて会社負担なのか?
  • 費用負担が発生するケースとは?
  • 活用できる助成金はあるの?

といった疑問にお答えしつつ、人事・総務担当者が健康診断の実施に備えるための情報をまとめてご紹介します。

なお、記事の後半で「健康診断中の賃金の支払い」や「実施に必要な人的コスト」についても解説しています。「健康診断にかかる費用の目安を知りたい」という方は、ぜひ最後までご一読ください。

また、健康診断を実施することによる「業務負荷」が心配な方もいるでしょう。健康診断の業務負荷を抑えるには、「健康診断の代行サービス」も効果的です。「健診代行を賢く選ぶ方法」で詳しく解説しているので、あわせてご一読ください。

健康診断の費用は、会社負担すべき?関連する法律も解説

冒頭でもお伝えしましたが、年に1回の定期健康診断の実施は必須です。労働安全衛生規則 第44条で定められているため、法定項目の費用は会社負担が基本となります。

法定項目は、次の11項目です。

第四十四条  事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

  一  既往歴及び業務歴の調査
  二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  四 胸部エックス線検査及び喀(かく)痰(たん)検査
  五 血圧の測定
  六 貧血検査
  七 肝機能検査
  八 血中脂質検査
  九 血糖検査
  十 尿検査
  十一  心電図検査

中央労働災害防止協会

一方で記載がない項目を検査する場合(オプション検査や、人間ドックでの代用の場合)は、従業員の個人負担となるケースも。

まとめると、

  • 法定項目の受診の場合は、企業側の負担が基本
  • オプション検査や人間ドックの受診にかかる費用は、従業員の個人負担となるケースもある

といった状況に応じてどちらで負担すべきか決める必要が出てきます。

とはいえ、「実際のところ、どんなケースで会社負担となるの?」と思った方もいるかもしれませんね。続いて、「会社で費用負担すべきか迷いやすい、5つの健康診断のケース」について解説します。

会社で費用負担すべきか迷いやすい、「5つの健康診断のケース」とは?

会社で健康診断の費用を負担すべきか迷いやすいのは、次の5つのケース。

  1. 定期健康診断
  2. 雇入れ時の健康診断
  3. 定期健康診断+オプション検査
  4. 人間ドック
  5. 再検査

「法定項目以外の受診でも、会社負担となるケース」もあるので、詳しく見ていきましょう。

【ケース1】定期健康診断

定期健康診断は、労働安全衛生規則第44条によって実施が義務付けられています。よって定期健康診断の法定項目にかかる費用は、すべて会社側の負担とするのが基本です。

ちなみに、特殊健康診断(法律で定められた、有害な業務で働く労働者向けの健康診断)にかかる費用も、会社側の負担となります。

では、雇入れ時はどうなるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

【ケース2】雇入れ時の健康診断

従業員を新規雇用した場合、「労働安全衛生規則 第43条」に基づき、健康診断を行う必要があります。ただしこのとき、必ずしも健康診断の費用は会社負担とならないケースも。

雇入れ時の健康診断には、以下の2パターンがあります。

  • 入社後に雇入れ時の健康診断を実施して、会社負担にする場合
  • 健康診断書の提出を求めて、個人負担(もしくは後払い)にする場合

入社後に雇入れ時の健康診断を実施する場合は、定期健康診断と同じく費用は会社負担となります。一方で、健康診断書の提出を求める場合は、入社する従業員の負担とするケースも。

しかし健康診断の実施は法律で義務付けられているため、可能であれば個人負担ではなく、領収書をもらって会社負担とするのが望ましいでしょう。

ちなみに契約社員や派遣社員であったとしても、雇入れ時の健康診断が必要となるケースはあります。以下で詳しく解説しているので、詳細について知りたい方はご一読ください。

一方で「オプション検査」を実施する場合は、従業員の負担とするケースも。詳しく見ていきましょう。

【ケース3】定期健康診断 + オプション検査

法定項目については、これまでお伝えした通り会社負担が基本です。しかしオプション検査を実施する場合は、従業員の個人負担となる場合も。具体的にいうと、以下のようなオプション検査があります。

■オプション検査の例

  • 胃カメラ
  • 乳がん検査
  • 子宮頸がん検査

こういったオプション検査の受診は、法律で義務付けられてはいません。そのため、仮に従業員から希望があった場合でも、受診費用は「個人負担」となります。

しかし、オプション検査の費用は、従業員の負担とならないケースもあるので注意が必要です。具体的に言うと、「産業医が就業判定のために、オプション検査の結果が必要なケース」では、会社負担とすべきでしょう。

ただ、担当者個人の判断で会社負担、個人負担を決めるわけにはいきません。安全衛生委員会で労使の合意を取り、議事録に残したうえで就業規則等へ反映するのが望ましいでしょう。

続いて、人間ドックの受診をした場合の費用負担について見ていきましょう。

【ケース4】人間ドック

人間ドックは定期健康診断よりも検査項目が多く、健康に関して気になる従業員から受診を希望される場合も。しかし定期健康診断よりも費用が高いため、全額会社負担にすべきか気になる方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、法定外項目は受診が必須ではないため「人間ドックの費用は個人負担」でも問題ありません。ただ、自治体や健康保険組合などから独自の補助金を出していることもあるため、一部会社負担としている企業も。

具体的に言うと以下のように対象者を絞り込み、費用の一部を負担するケースがあります。

■人間ドックの対象者を決める方法

  • 入社歴
  • 奇数の年齢
  • 偶数の年齢

まとめると、

  • 人間ドックは健康診断として代用可能
  • 検査費用は高いため、利用できる補助金にあわせて負担額を決めるのがおすすめ
  • 検査対象者となる条件についても定義しておくと、管理がしやすい

の3つを抑えておくと良いでしょう。

実際に制度を導入する際は、安全衛生委員会で労使間の合意を取ったうえで議事録に残し、就業規則などに定めて運用するのが望ましいです。また健康診断を人間ドックで代用する場合、注意点が2つあります。人事・労務管理者の方は、以下の記事もご一読ください。

続いて、再検査になった場合についても見ていきましょう。

【ケース5】再検査

健康診断で「再検査」が必要となった場合も、再検査の受診が必須とは限りません。企業には「安全配慮義務」がありますが、

  • 健診機関・クリニックによって再検査となる基準値が異なる
  • 従業員が規定値を超えた根拠を考慮していない

といった点から、「再検査が必要」とは限らないからです。

しかし健康診断結果を踏まえて、産業医が「再検査しないと、安全に働けるか判断できない」といった判定をした場合は別です。会社には「安全配慮義務」があるため、再検査を受診できるよう配慮が必要となります。

(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

労働契約法

たとえば

  • 再検査の費用を会社負担
  • 再検査日に有給を許可
  • 再検査ができるよう業務調整を指示

といった対応をするのが望ましいです。従業員が再検査を受けやすいよう、「再受診しやすい環境作り」を心がけましょう。

また、特殊健康診断で「有所見(異常あり)」となった場合は、再検査が必須です。費用も会社負担となるので、注意しましょう。

ここまで、会社の健康診断の費用負担をすべき5つのケースについて解説しました。ここで、これまでの内容を一度まとめます。

■会社で健康診断の費用負担すべき5つのケースのまとめ

  • 健康診断の実施費用は、法定項目であれば会社負担となる
  • 法定外項目の場合(オプション検査など)は、個人負担にするケースも
  • 健康診断の代用として人間ドックをうけた場合でも、一部負担とするケースも
  • 産業医の指示で再検査が必要な場合は、会社側でも配慮が必要

また健康診断は、受診費用だけでなく人的コストにも目を向けなければなりません。健康診断の業務コストを抑えるために有効なのが、ペーパレス化です。詳細については、以下をご一読ください。

他にも、健康診断の実施するとき、細かい点で悩むことも。次に、「健康診断の費用に関するよくある3つの質問と回答」を見ていきましょう。

健康診断の費用に関するよくある3つの質問

健康診断の費用についてのよくある質問は、次の3つ。

  • 健康診断の費用はどれほど必要か
  • 健康診断を実施中の賃金はどうするべきか
  • 健康診断に助成金は活用できるか

実際の費用感や、助成金などの情報は気になる方も多いのではないでしょうか。1つずつ詳しく見ていきましょう。

【質問1】健康診断の費用はどのぐらいかかるもの?

健康診断の実施費用は、地域や利用する医療機関、労働組合の有無などによって変動します。とはいえ、実際のところどのぐらいかかるか気になる方もいるでしょう。

そんな方向けに、「47都道府県別の健康診断の料金」を調べてまとめています。
(※2021年2月25日(木)時点の情報です)

都道府県名 定期健康診断の平均料金
1.北海道 8148円
2.青森県 6817円
3.岩手県 9966円
4.宮城県 10,284円
5.秋田県 9,052円
6.山形県 9,678円
7.福島県 8,728円
8.茨城県 10,403円
9.栃木県 9,926円
10.群馬県 9,312円
11.埼玉県 10,921円
12.千葉県 10,252円
13.東京都 12,034円
14.神奈川県 12,122円
15.新潟県 9,416円
16.富山県 9,870円
17.石川県 7,871円
18.福井県 9,036円
19.山梨県 10,990円
20.長野県 10,780円
21.岐阜県 9,680円
22.静岡県 11,345円
23.愛知県 11,000円
24.三重県 9,790円
25.滋賀県 10,446円
26.京都府 10,309円
27.大阪府 10,078円
28.兵庫県 10,307円
29.奈良県 8,368円
30.和歌山県 9,408円
31.鳥取県 10,700円
32.島根県 9,825円
33.岡山県 10,290円
34.広島県 9,218円
35.山口県 9,394円
36.徳島県 8,976円
37.香川県 9,857円
38.愛媛県 9,359円
39.高知県 8,565円
40.福岡県 8,470円
41.佐賀県 8,326円
42.長崎県 9,798円
43.熊本県 8,728円
44.大分県 7,644円
45.宮崎県 8,382円
46.鹿児島県 8,503円
47.沖縄県 8,364円

詳細な費用については、以下をご一読ください。

【質問2】健康診断を実施するときの賃金はどうなる?

「業務時間中や休日に健康診断を実施する場合、拘束時間に対して賃金を支払うべきだろうか」と悩んでいる人もいるでしょう。

結論から言うと、健康診断を実施する時の賃金についても「会社負担」にするのが望ましいです。理由はこれまでお伝えした通り、健康診断の受診が法律で定められているからです。

実際に厚生労働省では、以下のように健康診断時の賃金についての回答があります。

一般健康診断は、一般的な健康確保を目的として事業者に実施義務を課したものですので、業務遂行との直接の関連において行われるものではありません。そのため、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきものになります。ただし、円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。

健康診断を受けている間の賃金はどうなるのでしょうか?|厚生労働省

厚生労働省の回答にもある通り、安全衛生委員会を開いて労使間で合意を取り、議事録を残したうえで就業規則等で定めておきましょう。

【質問3】健康診断に助成金は使えるの?

健康診断の実施には、「キャリアアップ助成金」や「人間ドック受診の助成金」といった制度を活用できます。まずは、キャリアアップ助成金の「健康診断制度コース」について、概要を見ていきましょう。

金額1事業所あたり38万円。生産性の向上が認められた場合は48万円
※大企業の場合は28万5,000円。また生産性の向上が認められた場合は36万円
対象となる労働者以下①~④のすべてに該当する労働者
①支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等であること。
②雇入時健康診断もしくは定期健康診断または人間ドックを受診する日に、当該対象適用事業所において、雇用保険被保険者であること。
③健康診断制度を新たに設け実施した事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること。
④支給申請日において離職していない者であること。
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内

詳しい適用条件や申請手順については、「キャリアアップ助成金パンフレット – 厚生労働省」の39ページをご確認ください。

また定期健康診断を人間ドックで代用する場合、各自治体や健康保険組合などによっては補助金もしくは助成金を受けられるケースもあります。「人間ドックを健康診断の代表として活用しよう」と考えている人は、ぜひご確認ください。

■人間ドックの助成金・割引制度を探す方法

  • 「人間ドック 助成金 (お住まいの地域名)」で検索
  • 加入している健康保険組合または健康保険協会をチェック
  • 民間の保険会社や損害保険会社をチェック

ここまで、健康診断の「費用」に関するよくある質問を解説しました。

健康診断の実施費用は、決して安くありません。また基本的に会社負担で健康診断を実施するため、コストもかかるもの。しかし補助金や助成金を活用すれば、会社の負担は減らせます。

ただし健康診断のコストは、実際にかかる費用だけではありません。健康診断の「実施コスト」にも目を向ける必要があります。詳しく見ていきましょう。

健康診断の費用は、人的コストがかかる点にも注意が必要!

健康診断のコストを抑えるなら、健康診断の「人的コスト削減」にも注目しましょう。たとえば健康診断の実施には、以下のような業務があります。

健診機関・クリニックへの受診予約ひとつとっても、

  • 電話
  • FAX
  • 専用のWebフォーム

など予約方法が異なり、健診機関・クリニックごとに対応が求められます。また健診機関・クリニックの日程と従業員の日程を調整するため、予約業務だけでも負荷がかかります。

さらに健康保険組合によって補助金の条件などが異なり、それらの確認に時間がかかることも。そしていざ健康診断を受診したとしても、受診結果をもとに事後措置と呼ばれる業務があります。

■事後措置とは?

  • 健康診断の結果を確認し、有所見者(異常が見つかった人)を確認する
  • 労働時間、ストレスチェックなどを踏まえて、産業医面談の対象者を絞り込む
  • 産業医面談を実施してヒアリングを行う
  • 安全衛生委員会などを開き、問題への対応方針(長時間労働の対策など)を決めて議事録を残す

このように健康診断の業務はとても多く、負荷がかかります。一方で

  • 1年に1度の健康診断の受診し、結果の報告が必要
  • 医師の意見聴取は、健康診断結果が届いてから3カ月以内まで

といった法律で定められた期間までに対応が求められるため、他の業務があるからと言って放置できるものでもありません。

業務効率化を進めないと期間を過ぎてしまい、労働基準監督署に指摘されてしまう可能性も。こういった健康診断の業務負荷を抑えには、ペーパレス化が有効です。

■ペーパレス化で効率化できる健康診断業務の例

  • 結果がデータで届くため、効率的に個人票の作成が可能
  • 結果を1枚ずつ確認しなくても、有所見の確認が可能
  • 履歴を確認しやすくなり、産業医面談の準備を効率化

ペーパレス化で効率化できる業務について詳しく確認したい方は、以下をご一読ください。

また、もしも「社内のリソースが足りていない!」と既にお悩みの場合は、健診代行サービスを利用するのも1つの手です。以下で詳しくまとめているので、あわせてご一読ください。

まとめ:法定項目は、会社負担が基本。それ以外は労使間で相談が必要!

今回は5つに分けて、会社側で健康診断の費用負担となるケースについて解説しました。最後に、解説した中で重要なポイントをまとめます。

  • 法定項目については、健康診断の費用も会社側で負担すべき
  • ただしオプション検査など、個人負担にしても問題ないケースもある
  • 健康診断費用を会社負担とする5つのケース
    • 1.定期健康診断
    • 2.雇入れ時の健康診断
    • 3.定期健康診断+オプション検査(オプション検査は、個人負担も可能)
    • 4.人間ドック(検査が義務付けられている項目以外は、個人負担も可能)
    • 5.再検査 (特殊健康診断の場合は会社負担とする)
  • 健康診断の費用に関する、よくある3つの質問と回答
    • 1.健康診断の費用は地域や医療機関によって異なる
    • 2.健康診断を実施するときの賃金は会社側が負担する
    • 3.健康診断の実施には助成金が活用できる
  • 健康診断の実施には費用だけでなく人的コストも発生する
  • 健康診断業務の効率化にはペーパレス化が必要

健康診断の実施費用は、基本的に会社が負担するべきです。 ただし健康診断の費用は決して安くないため、従業員数が増えるとコストも比例して増大します。

また健康診断の実施にはお金だけでなく、医療機関への手続きや健康診断のスケジュール調整、事後措置といった「人的コスト」が発生するもの。法律で定められた期間に間に合わせるために、できる限り業務効率化を図ることが大切です。

とくにペーパレス化は業務の効率化に役立つもの。健康診断に必要な人的コストを削減するのに有効です。以下で詳しくご紹介しているので、ご一読ください。

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