労働基準監督署の臨検や監督。ポイントは長時間労働の是正

2019.9.2 更新 / 2019.9.2 公開
過重労働対策を自動化
労働基準監督署の臨検や監督。ポイントは長時間労働の是正

働き過ぎ防止に関する調査は、労働基準監督署からの一通の通知からスタートします。調査の通知を受け取ると、ドキッとする人が大半ではないでしょうか。一体、何を調べられるのかを調べてみました。

働き過ぎ防止に関する調査に来るのは、通常は労働基準監督署(以下、労基署)です。では、この労基署がどんなところかということから確認しておきましょう。

労働基準監督署はこんなところです。

労基署は、労働関係のことについて指導や監督などをする公的な機関です。厚生労働省の発表(PDF)によると、労基署の労働基準監督官数 3,241名(平成28年度)、 監督指導対象となる事業場の数 428万事業場 労働者の数 5,209万人です。

主に労働基準法(以下、労基法)に規定されている事項がきちんと守られているかどうかを調査・管理・監督し、必要に応じて事業所に立ち入り調査に入ったり指導や助言をしたりします。労働基準行政は、最近では政府が積極的にかかわるようになってきていることもあり、小手先だけの対応でその場を逃れたつもりになってしまうと、取り返しのつかない事態を招きかねません。

少し前の話になりますが、株式会社電通の事件で違法な長時間労働がニュースになった際に、子会社も地元の労基署から是正勧告を受けていたことが報道されていました。労基法に違反した場合には、労基署はまずは行政指導である是正勧告を出し、改善されない場合には立件という流れをたどるのが一般的です。このニュースの際に、労基署の名前を繰り返し聞いた方が多いのではないでしょうか。

労基署は以上のように企業の調査・管理・監督をする機能を持つのですが、この監督業務(正式には臨検監督といいます。)は大きく4つにわけることができます。

労働基準監督署の定期監督

一般的な調査です。労基署の年度ごとの監督計画に任意の調査対象として組み込まれ、労基法全般に関しての調査がされます。基本的には予告はありませんが、事前に日程の連絡がある場合もあります。

最近では、集合監督といいますが、定期監督の一環として帳簿類を調べるために管轄内の複数の事業場をランダムに呼び出して、それぞれの事業所から労務管理の基本事項をヒアリングして、違反があれば是正勧告を出すものもあります。労基署からの呼び出しには特別の事情がない限り、出向くことをお勧めしますが、どうしても指定の日時に向かえない場合には労基署に支持を仰ぎましょう。

突然の調査に備えて用意をするのではなく、普段から必要なものをきちんと備えておく習慣をつけておくと良いですね。

労働基準監督署の申告監督

労働者から申告(告発や告訴など)があった場合に、その申告された内容の真偽を含め内容について確認をするためのものです。労働者からの申告があったことを明かして呼び出し状を発行する場合と、労働者からの申告については直接触れずに定期監督のように行われるケースがあります。在職者が申告する場合もありますが、どちらかというと退職者が在職中のことに関して申告するケースが多いようです。離職する際には、できる限り問題を残さないように労働者の話を聞くように心がけてください。トラブルを抱えたまま離職するのは、労使双方にとってあまり良い結果を招きません。ですから、できる限り誤解のない状態にして正しい情報を適切に労働者に伝えておく必要があります。

例えば、過去の残業代の未払いを労基署に申告したりするケースは往々にしてあります。他にも労基署への申告は残業時間が異様に長い、残業代が適正に払われない、パワーハラスメントを受けたなど、労働者からの申告内容はさまざまです。ただ、労基署は労働者からの申告を受けたからと言って、必ずしも監督に入る義務はありません。そうはいっても、申告した労働者にとっては非常に大きな問題ですから労基署の監督官は基本的に監督に入ると思ってください。

ちなみに、労基法第104条2項の規定(使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。)とありますので、事業主は申告を理由として不当な取り扱いをすると労基法違反になります。

労働基準監督署の災害時監督

労働災害が発生した時に、その災害が一定規模以上だった場合に、災害の発生した要因の確認や再発の防止のために行われます。この災害時監督では、違法な行為や状態がなかったかを確認し、問題があった場合にはその是正を行います。

なお、労働者が労災で負傷した場合で休業4日以上の労災事故の場合には、「労働者死傷病報告書」を提出してください。そして、休業補償給付などの労災保険給付の請求を労基署長あてに行ってください。労災による休業が4日未満の場合は、労災保険の請求ではなく、使用者が労働者に対して休業補償を行わなければなりません。

念のため付け加えますが、労災を隠蔽するいわゆる労災隠しは犯罪行為です。労災隠しというのは、「労働者死傷病報告書」を提出しないケースと「労働者死傷病報告書」に虚偽の内容を記載して提出することを指し、50万円以下の罰金が課されます。

また、労災での負傷の際に、労災による給付を受けるための請求の手続きをせずに健康保険を使って治療を受けてしまうと、一時的に治療費の全額を自己負担することになってしまいます。万が一、労災による負傷を健康保険で治療を受けてしまった場合には受診した病院に、健康保険から労災保険への切り替えができるかどうか、速やかに確認してください。

労災発生時には労基署の調査を恐れずに必ず必要な対応をしてください。

労働基準監督署の再監督

監督を受け是正勧告を受けた後に、適正に是正勧告に従ったか同課をチェックするために行われたり、是正勧告に対して是正報告書を提出しなかったりした場合に行われます。

後述する「平成29年度地方労働行政運営方針」の策定についてが毎年4月に厚生労働省から発表され、それを基にして都道府県ごとに重点ポイントを決めます。平成29年度の場合、「働き方改革」の推進などを通じた労働環境の整備・生産性の向上が一つ目、女性、若者、高齢者、障害者等の多様な働き手の参画が二つ目に挙げられています。長時間労働にも触れられていますので、今年度は長時間労働対策に主眼を置く地方が多いかもしれません。

労働基準監督行政について、厚生労働省から発表されている資料も確認しましょう。

労働基準監督業務の流れ
厚生労働省 労働基準監督行政について(PDF)より
監督業務の実施状況
厚生労働省 労働基準監督行政について(PDF)より

下の表から、労働時間に関する違反数と賃金不払いや割り増し賃金に関する違反の数が多いことが分かります。

監督業務で発覚したこれらの違反事項と、働き方改革を進める政府の動きからより厳格な法規制の執行強化(PDF)につながっていることが分かります。また、「平成29年度地方労働行政運営方針」の策定についてと合わせて考えると、過労死の防止、長時間労働の是正、健康障害の防止など働き過ぎを原因とする諸問題に対して労基署が働き過ぎ防止のための調査を行う理由が分かってきます。

何がチェックされる??

労基署が事業所に立ち入る監督業務の際にチェックするのは、法令に違反していないかという点です。一般的に用意しておくべきものからお話を進めていきたいと思います。基本的に労働者に関連する書類や帳簿はすべて必要だと思ってください。

ここまでお話ししてきたような労基署による臨検はご存じの方も多いかもしれませんね。ところが、最近ではこれまでの臨検だけではなく働き過ぎ防止に関する調査が呼び出しで行われるケースもあるようです。働き方改革が進む中で、企業への立ち入り調査である臨検、呼び出しが増えているという話を聞きます。また、集合監督など、いくつもの企業を一斉に呼び出して行うものもあります。そのような中で企業は何をすべきなのでしょうか。

必要な書類は普段から適正な管理を

それから、労基署の調査の際に何を見られるか分からないという声を聞きますが、一般的には以下のものを普段から用意しておく必要があります。労基署の監督や調査の際に、下記の書類が常にすべて必要というわけではありません。ただ、本来は日常的に適正に管理しておかなければならないものばかりですので、この機会に念のために確認しておくと安心かもしれません。

  1. 企業の組織図
  2. 労働者名簿
  3. 賃金台帳
  4. 労働条件通知書
  5. 就業規則(労働時間制度等の別規程を含む)
  6. 各労働者のタイムカードなど労働時間が適格に確認できる書類(時間外労働・休日労働も含みます)
  7. 各労働者の時間外労働・休日労働に関する協定届(控)
  8. 変形労働時間制を採用している場合の関係書類(労使協定・勤務割表など)
  9. 変形労働時間制のシフト勤務表
  10. 年次有給休暇の取得状況に関する書類
  11. 安全管理者、衛生管理者の選任に関する書類
  12. 安全委員会、衛生委員会などの議事録など
  13. 安全委員会、衛生委員会などでの調査審議状況が確認できる書類
  14. 産業医の選任状況と面接指導の制度や実施状況が確認できる書類
  15. 健康診断の個人票など実施結果

求められているのは、日頃からの適正な管理です。その場しのぎの書類では必ずほころびが出てしまいますし、何よりも、労働者にとって安全な就業環境が守られているとは言えません。労働基準関係法令違反に係る公表事案(PDF)などで、実際に問題があった事例などをチェックし、社内に同じような事例が起こる懸念がないか確認しておきましょう。

「地方労働行政運営方針」の策定について

先ほどから言及している「平成29年度地方労働行政運営方針」の策定については、ご存じでしょうか。これは厚生労働省から毎年4月に発表されるもので、各都道府県労働局が管内事情に即した重点課題・対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図る基にしているものです。

今年度の場合は、労働環境の整備・生産性の向上、女性、若者、高齢者、障害者等の多様な働き手の参画、長時間労働の是正と労働時間の適正な管理などがポイントです。また、労働新聞社の記事によると、特別条項付き時間外労働協(※)定などについても気を付けておきたい部分ですが、今年度のポイントとして、以下の点には特に注意してください。

過重労働をはじめとする長時間労働、賃金の不払い(残業代も含まれます)、技能実習生を適正に使用しているか否かという労働条件に関するものと、ストレスチェック制度、重大な労災発生企業、第12次労働災害防止計画重点業種の労災防止などの安全衛生に関するものが多くの企業に共通して注意していただきたい部分です。

中小企業庁の都道府県・大都市別企業数、常用雇用者数(PDF)によると、大企業が最も多いのが東京都、中小企業が最も多いのが相模原市でした。企業の規模や業種は地域によって偏りがありますが、今回は規模に関して見ていきたいと思います。

まずは大企業が多い東京都からは、三田労働基準監督署(東京労働局)の業務概要(PDF)を見てみましょう。平成29年度の重点実施事項として以下の4つがポイントとして挙げられています。

  1. 長時間労働の抑制、過重労働による健康障害の防止 (時間外・休日労働が月 80 時間を超えていると考えられる事業場や過労死等に係る労災請求が 行われた事業場に対する重点的な監督指導の実施) 
    →今年度の厚生労働省の法規制の執行強化(PDF)にある内容です。
  2. 12 次防の計画目標の達成に向け、死亡災害、死傷災害を減少させる重点的で積極的な指導 
    →厚生労働省の第12次労働災害防止計画は、平成25年度~29年度に行われるものです。
  3. メンタルヘルス対策及び職業性疾病対策の推進 
    →平成27年12月1日に労働安全衛生法の一部改正を受けストレスチェック制度が施行されたことに関連しています。
  4. 迅速・適正な労災補償の実施 
    都道府県労働局長あて厚生労働省大臣官房審議官(労災、賃金担当)通知)に関連しています。

次に、中小企業が多い相模原市の相模原労働基準監督署(神奈川労働局)の重点施策(PDF)を見てみましょう。

  1. 働き過ぎ防止に向けた取組の推進 
    →長時間労働の抑制と過重労働による健康障害防止に係る監督指導は今年度の厚生労働省の法規制の執行強化(PDF)にある内容です。
  2. 労働条件の確保・改善対策
    →今年度の厚生労働省の法規制の執行強化(PDF)にある内容です。賃金不払いにされている残業の防止や若者の使い捨ての防止など、社会的に問題となったことも反映されています。
  3. 最低賃金制度の適切な運営
    →平成28年10月1日以降(地方ごとに日程の多少の違いはあります)最低賃金が改正されていますので、ご注意ください。都道府県別の最低賃金は厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧で確認できます。
  4. 労働者が安全で健康に働くことができる職場づくり 
    「平成29年度地方労働行政運営方針」の策定についてでも労災について触れられています。
  5. 労災補償対策の推進 
    都道府県労働局長あて厚生労働省大臣官房審議官(労災、賃金担当)通知)に関連しています。

このように、労働局ごとに重点を置くポイントは違います。各労働局がそれぞれの管内の地域の特性に合わせて何を重点指導ポイントとして掲げているかはインターネットなどで確認できますので、本社所在地や事業場を管轄する労働局の重点指導事項を確認してみてください。

※特別条項付き時間外労働協について 
特別条項付き時間外労働協は、大臣告示で決められている時間外労働の限度時間を超えて例外として上限なく働かせることができるもので、特に大企業で使用割合が高いものです。際限なく働かせることができてしまうと、労働者の心身への影響が心配になります。

長時間労働をめぐる社会の様子

日本経済団体連合会(以下、経団連といいます)が発表した2017年労働時間等実態調査集計結果(調査対象は経団連会員企業ほか。回答状況は249社(対象労働者110万4389人))によると、2016年は36協定の上限時間を協定上で「60時間~80時間」としている企業が37%で他の層よりも目立っていました。ちなみに、「80時間超~100時間」が23%、「100時間超」が15%です。

長時間労働をめぐる政府の状況

厚生労働省の法規制の執行強化(PDF)によると、執行面の対応として労働基準監督署による監督指導が強化されています。これまでは、月の残業時間が100時間超で重点監督対象とされていたのですが、今は80時間超で重点監督の対象です。基本的に、月80時間超が確認できた全ての事業場がこの対象とされています。また、違法な長時間労働などの過重労働の問題に専門で取り組む「かとく」(過重労働撲滅特別対策班の略称で、他にも過特班、かとく班とも呼びます。)を東京と大阪に作り、監督指導や捜査体制の強化を図っています。さらに、厚生労働省だけではなく、国土交通省や、中小企業庁・公正取引委員会と連携して、長時間労働の原因となりやすい「手待ち時間」や「短納期での発注」などの取引環境や取引条件の改善などに向けて取り組んでいます。

これらのことから、今後、労基署による監督や調査、是正勧告はさらに増えていくことと思われます。

政府の長時間労働の削減対策について

ここまで見てきたことと、「平成29年度地方労働行政運営方針」の策定についてを見ると、今年度の指導重点事項が分かります。まず長時間労働の索然のために労基署が積極的に動くことが推測できます。労基署による監督や調査、違法性があれば行政指導として是正勧告、従わなければ送検も否定できないでしょう。

もともと労基法では、1日に8時間、1週に40時間の労働が原則とされていますが、労使協定(時間外労働に関するもの)を締結することで1月に45時間までの残業が認められています。さらに、その労使協定に特別条項があれば45時間を超える残業が認められます。ただ、この特別条項を入れることで残業時間に上限がなくなってしまうという非常に大きな問題があります。皆さんのご記憶にもあると思いますが、あの電通の過労死事件では月に100時間を超えるような残業が行われていました。過重な労働は労働者の心身の健康を害する要因になりますし、時には精神に問題をきたして自殺してしまうこともあります。たとえ、労基署から長時間労働や過重労働に対する監督や調査があり、是正勧告が出されたとしても一度損なってしまった心身の健康を取り戻すのが難しいのは周知の事実です。

「働き方改革」の推進などを通じた労働環境の整備・生産性の向上

長時間労働が行われている事業場に対する監督指導の徹底がされています。これまでもニュースなどで見聞きした方も多いと思いますが、同一労働同一賃金がポイントの一つに上がっています。非正規雇用の労働者の待遇の改善についてです。待遇というのは賃金面だけではなく、福利厚生面や年次有給休暇なども含めて考えます。

また、長時間労働の是正は特に重点ポイントにされていると考えた方が良いでしょう。これまでは月の残業時間が100時間超で重点監督対象とされていたのに対し、最近では80時間超で重点監督の対象で、基本的に月80時間超が確認できた全ての事業場がこの対象とされています。36協定を締結していても残業時間を上限がきちんと守られているか、特別条項を盾に残業を無制限にさせていないか、社内の状況を調査してみてください。

今年度は、これまでよりも時間外労働に対しる監視が厳しくなっています。例えば、これまでは月100時間超残業が疑われる全ての事業場を対象に労基署による監督が行われていました。平成27年度の場合、10,185事業場に重点監督が行われ、7,798事業場(76.6%)に是正指導がされ、違法な時間外労働は5,775事業場(56.7%)もありました。

今年度は、約2万事業場が月80時間超の事業場として労基署の監督の対象になっています。平成28年度上半期の場合、10,059事業場に重点監督が行われ、6,659事業場(66.2%)に是正指導がされ、違法な時間外労働は4,416事業場(43.9%)ありました。厚生労働省の発表によると、過労死(※1)認定基準(※2)を超える残業がされている事業場が労基署の監督業務の重点対象とされるとのことですから、社内の労働時間に関して自主的に点検し改善しておいた方が良いでしょう。

監督指導・捜査体制の強化「かとく」

さらに、これまでは監督指導と捜査体制を強化するために東京と大阪に「かとく」があったのですが、それを全国展開することになりました。かとくに関しては、電通の過労死事件でも何度もニュースでご覧になったことと思います。今度は、厚生労働省本省内に長時間労働に対する対策班をおいて広域捜査の指導調査にあたるようです。この対策班が各都道府県の労働局に対して必要な指導調整をし、都道府県の47労働局に「過重労働特別監督監理官」(仮称)が新設されます。そして、全ての労働局に「過重労働特別監督監理官」(仮称)という長時間労働に関する監督指導等を専門の担当者を1人ずつ配置することになりました。この担当官が問題のある業種に対して重点的に監督業務を行ったり、月80時間超の残業のある事業場に対する全数監督の総括をしたり、夜間臨検の実施・調整、長時間・過重労働に係る司法処理事案の監理などを行ったりします。これまでよりも、きめ細かな指導・監督がされることが推測できますので、違反事案に対する是正勧告も必然的に増えてくるのではないでしょうか。
まずは、労基署の指導や調査がいつあっても慌てることのないように普段からきちんとしておきましょう。

※1 過労死とは 
過労死とは、過労死等防止対策推進法第2条で、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。」と定義されているものです。過労死に至る原因として挙げられているのが、長時間の残業、度重なる休日の出勤、周りからの圧力や強制(言葉を伴うものとは限らない)などによって過酷な労働が続くことで、心身が過重な負荷を受けたことで脳や心臓が病気になってしまうケースや、仕事のストレスが精神に障害を招いたりして、それらを原因として死亡してしまうケース、あるいは脳や心臓が病気になってしまうケース、または精神面に障害を負ってしまうケースをさします。

※2 過労死認定基準とは 
過労死認定基準に関しては、「基発1063号、平成13年。脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について(PDF)」という労働局長あての文書でも厚生労働省が明確な基準や数字を打ち出しています。

過労死等と時間外労働の相関

これによると、月の残業が45時間超で業務と過労死等との関連が強まってくるということですから、労基署の監督業務には関係なく45時間超の事業場は十分に労働時間と労働者の心身の健康に関して配慮をする必要があると言えます。

また、厚生労働省が言う月80時間超を監督業務の重点とするというのは下記のような考え方の下と思われます。

心身が疲弊した状態では生産性も上がらず、労災の原因も増えますし、何よりも労働者の心身の健康に悪影響があります。ですから、今年度は、ぜひ労働時間について事業場内で再確認をし、見直しをしてはいかがでしょうか。

本社に対する監督指導

平成29年1月からは、違法な長時間労働などを2事業場で行うなどの企業に対する全社的な監督指導が行われるようになります。本社の管理機能がさらに求められることになります。就業規則や36協定など、もう一度確認しておきましょう。

企業名の公表

これまでは、月残業100時間超などの違法な長時間労働を社会的に影響力の大きな企業が複数の事業場で行っていると企業名が社会に公表されていました。
平成29年1月からは、上記に過労死などの事案が追加され違法な長時間労働も月80時間超になり、より企業名が公表される範囲が広がります。なお、厚生労働省労働基準局監督課の最新の発表「労働基準関係法令違反に係る公表事案(平成28年10月1日~平成29年6月30日公表分)」(掲載日は平成29年7月14日)によると全国で400件近い送検事案(うち4件は最終的に不起訴)がありました。そのうち、労働時間などに関連しているものが非常に多くありました。詳細は労働基準関係法令違反に係る公表事案(PDF)をご確認いただきたいのですが、内容を確認するとさまざまな違反が見受けられますので、長時間労働だけではなく労働者の就業環境などにもこれまで以上に配慮していく必要があることが分かります。

情報の提供・収集体制の強化

平成26年9月からは、平日夜間・土日に使用できる労働条件に関する電話相談窓口「労働条件相談ほっとライン」があり、ここに平成27年度は29,124件の相談、平成28年度は12月までで22,951件の相談が寄せられました。これだけでもかなりの件数がある印象を受けますが、平成27年7月からはインターネット上に掲載されている求人情報などが監視・収集の対象になったので、労基署による監督指導などにも使用されています。インターネット上の情報で監視・収集の対象になっているのは「労働条件に係る違法の疑いのある事業場情報」です。企業の求人広告に応じる将来の労働者候補を未然に救えるのは非常に喜ばしいことです。その一方で、誤解を招く恐れのある募集は行わないよう再度確認をしておきましょう。

女性、若者、高齢者、障害者等の多様な働き手の参画

働き方改革では就業の場でのダイバーシティについても課題になっています。また、生産年齢人口の減少や年金財政を考えた場合にも、働く意欲がある人が働ける環境をどのようにして作り出すのかが問われています。

厚生労働省の資料「女性、若者、高齢者、障害者等の多様な働き手の参画」によると、今年度は以下のポイントが特に重視されています。

1つ目:女性の活躍推進・ひとり親に対する就業対策の強化など

女性活躍推進法に基づいて、行動計画の策定等が努力義務となっている300人以下の中小企業に対して女性活躍に向けた取組を促進するために行動計画策定に向けた相談支援や助成金の支給などが行われます。そして、平成29年1月に施行される妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント等 職場におけるハラスメントの防止に向けた事業主の措置(PDF)の義務付けなどを含めて、職場におけるハラスメント対策を総合的に推進することになっています。このことから、今後は職場における男女の性別による差別に対して一層厳しい対応がとられる可能性があります。

そして、喫緊の課題にもなっている女性の再就職への支援がさらに推進される予定です。マザーズハローワーク事業の強化や職業訓練など、より実態に即した形での支援が強化されていきます。また、女性に限らず、就業と家庭の両立は働き方改革でも繰り返し話題に上がっていますが、今後なお一層推進されていくことになっています。

2つ目:若者の活躍の促進

「団塊ジュニア世代」を含む就職氷河期に就職時期を迎えた不安定就労 者等に対する支援が強化されることになりました。短期集中的なセミナー、企業に対する雇入れ支援なども始まります。また、職場への定着を促進するために特定求職者雇用開発助成金を充実させること、若年無業者等に対する就労支援の一層の推進を図ることも発表されています。

3つ目:高齢者の活躍の推進

これまで以上に企業における高齢者の定年延長・継続雇用の促進が奨励されるようになりました。具体的には、65 歳以降の定年延長や継続雇用制度の導入を行う企業に対する支援を実施したり、65 歳以上の高齢者の就労を重点的に支援する「生涯現役支援窓口」、高年齢退職 予定者キャリア人材バンクの機能が拡張されたりします。年金の受給開始年齢、また年金の受給金額などを勘案すると働ける意思と意欲のあるうちはできる限り現役で働いてほしいという政府の考えが見えます。

3つ目)障害者、難病・がん患者などの活躍の促進
別の記事でもご案内しましたが、平成30年4月より、法定雇用率の算定基礎に精神障害者が追加されることによって法定雇用率が改訂される見通しです。これに向けて、精神障害者・発達障害者・若年性認知症患者等に対する就労支援が強化されます。企業と障害者のマッ チングの促進やテレワークによる在宅雇用の促進、在宅就業障害者に対する支援など障碍者の雇用に関して職域の拡大が図られることになっています。

障害者の雇用には、障害の特性や程度に合わせた環境の整備や通院などにも配慮した細やかな労務管理が必要です。雇用管理や雇用形態の見直し、職場に適応するための取り組みなど課題は山積みですが、政府では障害者と企業の双方に対して職場に定着するための支援を強化することを表明しています。

難病相談支援センターの実施体制を充実させて、難病患者の長期療養生活上の悩みや不安を和らげ、社会参加への意欲を高めるための体制が構築され、がんなどの長期の療養を必要とする労働者に対する就労の支援も強化されることになっています。治療と両立できる求人の確保をハローワークの専門相談員が行い就職の支援にあたります。

さいごに

働き過ぎを防止するために政府が細かな対応をしようとしている関連で、労基署の調査や監督も厳しくなり法規制の執行も強化の傾向にあります。労基署がいつ来ても慌てることのないように、日頃からの管理を徹底しておきましょう。

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