健康診断の効率化
2021年11月27日 更新 / 2019年8月27日 公開

雇い入れ時健康診断は入社前? 雇い入れ時健康診断の疑問を解決します!

雇い入れ時健康診断は入社前? 雇い入れ時健康診断の疑問を解決します!

事業主の義務の1つ、雇い入れ時健康診断。雇い入れ時健康診断が必要なのは、新卒も中途も同じです。では、その雇い入れ時健康診断は入社前なのか後なのか、費用はどうすれば良いのか?疑問をまとめて解決します。

本題に入る前に、雇い入れ時健康診断や毎年1回の定期健康診断結果をデータで一元管理することに興味ありませんか。

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健康診断は事業主の義務

事業主にはいくつかの義務があります。納税などは言うに及ばずですが、事業主の義務の1つが雇い入れ時健康診断です。

事業主は労働安全衛生法(以下、安衛法)第66条に基づき労働者を1人でも雇用していれば、事業主には健康診断の義務が課せられています。義務の対象になる健康診断は雇い入れ時健康診断、定期健康診断などがあります。

中には、雇い入れ時健康診断の受診を拒否する労働者がいるかもしれません。しかし労働者は安衛法に規定された雇い入れ時健康診断の受診義務を負っているので、事業主は受診命令に従わない労働者に対して懲戒処分をもって対処することもできます。

ただし、事業主が指定する医師以外の医師による健康診断を受ける「医師選択の自由」を認めています。ですから労働者は、事業主が指定した医師による健康診断の受診を希望しない場合、別の医師による健康診断を受けてその結果を事業主に提出しなければなりません。

安衛法は労働者に対して健康診断の受診義務違反を規定していないのですが、判例によると事業主は健康診断の受診を業務命令として命じることができ、労働者がこれに従わない場合には懲戒処分を行うことが認められています。(懲戒処分には必要な手続きを事前に済ませていることが必要です。)

ちなみに労働者の健康診断の受診義務や医師選択の自由に関する安衛法の規定は、事業主が自主的に行う法定外の健康診断(安衛法上の健康診断には該当しない健康診断)には関与しません。

また義務化されているかといって、ただ健康診断だけを実施すれば大丈夫……というわけではありません。

従業員に健康診断を受診させるだけでなく、事後措置の対応が必要です。

実は法令遵守の観点では、実施部分よりも事後措置において重点的に義務が課されています。事後措置の中でも、業務負荷の高い義務を4つについて以下で詳しく解説しています。ぜひご活用ください。

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健康診断の種類

事業主に課せられた健康診断の義務ですが、下記のものが挙げられます。

一般健康診断

雇い入れ時健康診断(労働安全規則(以下、安衛則)第43条)
対象:常時使用する労働者 
時期:雇い入れの際

定期健康診断 (安衛則第44条)
対象:常時使用する労働者(次項の特定業務従事者を除く) 
時期:1年以内ごとに1回

特定業務従事者の健康診断 (安衛則第45条)
対象:労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者 
時期:特定業務への配置替えの際、6か月以内ごとに1回

海外派遣労働者の健康診断 (安衛則第45条の2)
対象:海外に6か月以上派遣する労働者 
時期:海外に6か月以上派遣する際、帰国後国内業務に就かせる際

給食従業員の検便 (安衛則第47条)
対象:事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者 
時期:雇い入れの際、配置替えの際

他にも有害な業務に常時従事する労働者等に対し、原則として雇い入れ時に配置替えの際及び6か月以内ごとに1回(じん肺健診は管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回)、それぞれ特別の健康診断を実施しなければなりません。

いくつかの健康診断を挙げましたが、雇い入れ時健康診断や定期健康診断は、業種や規模には関係なく労働者を使用している全ての事業主の義務とされています。今回は、この「雇い入れ時健康診断」の疑問にお答えしていきたいと思います。

雇い入れ時健康診断の注意すべきポイント

雇い入れ時健康診断は、どのようにすれば良いのでしょうか。いくつかポイントを挙げていきたいと思います。

雇い入れ時健康診断の対象者には一定のパートも含む

雇い入れ時健康診断の対象者は、常時使用する労働者です。安衛則第43条では、以下の規定があります。

(雇入時の健康診断)
第四十三条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。 
一 既往歴及び業務歴の調査 
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。次条第一項第三号において同じ。)の検査 
四 胸部エックス線検査 
五 血圧の測定 
六 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。) 
七 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。) 
八 低比重リポ蛋たん白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋たん白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。) 
九 血糖検査 
十 尿中の糖及び蛋たん白の有無の検査(次条第一項第十号において「尿検査」という。) 
十一 心電図検査

e-gov 労働安全衛生規則

上の安衛則に「事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならない。」と書かれているように、事業主(事業者)には労働者に対して医師による健康診断を実施することが義務付けられています。

ここでいう「常時使用する労働者」というのは、正社員はもちろんですが、パートタイマーやアルバイトであっても、規定の条件に該当する人も含めて考えなければなりません。常時使用する労働者とは、次のいずれにも該当する労働者をいいます。

  1. 期間の定めのない労働契約により使用される者、契約期間が1年以上の労働契約により使用される者、契約更新により 1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者。
  2. 1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の 1 週間の所定労働時間数の4分の3以上である者。

なお、上記2つの要件に該当しない労働者であっても、上記1の要件に該当し、1週間の労働時間数がその事業場の同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおよそ2分の1以上である労働者に対しては一般健康診断を実施することが望まれます。

雇い入れ時健康診断の項目は省略できない

法定の検査項目は上の安衛則にある11項目は雇い入れ時健康診断では検査項目の省略はできません。原則として検査項目の省略は認められませんが、医師による健康診断を受けてから3か月以内の場合でその結果を証明する書類を提出した場合には、その項目は省略できます。

定期健康診断の場合には、安衛則第44条第2項の規定により厚生労働省告示に基づいて、医師が必要でないと認めるときは省略することができるとされています。雇い入れ時健康診断と定期健康診断は全く別のものですのでご注意ください。

雇い入れ時健康診断そのものを省略できる?

では次に、雇い入れ後の間もない時期に定期健康診断が行われる場合には雇い入れ時健康診断そのものを省略して良いのでしょうか?結論からお話しすると、雇い入れ時健康診断を省略することは認められていません。このような場合には、雇い入れ時健康診断の結果については、1年間は他の健康診断の結果に代えることができる点を活かし、1年以内であれば、定期健康診断を省略するという方法で対応してください。

雇い入れ時健康診断を実施した日から1年間は、雇い入れ時健康診断の際に受診した項目に相当する項目については省略できますから、受診項目に不足がないかどうかを必ず確認してください。特に中途入社の場合には、定期健康診断の直前の時期の雇い入れというケースもありますね。そのような場合には、特に注意しておくと良いでしょう。

雇い入れ時健康診断はいつまでに実施?

常時使用する労働者(一定のパート・アルバイトも含む)を雇い入れる直前又は直後に実施しなければなりません。雇い入れ時健康診断は入社前に行っても差し支えありませんが、あくまでも雇い入れの直前のものに限定されます。また医師による健康診断を受けてから3か月以内で、その結果を証明する書類を提出した場合にはその項目は省略できます。これは、安衛則第43条但し書きによります。

雇い入れ時健康診断の目的は常時使用する労働者を雇い入れた際における適正配置、入職後の健康管理に役立てることです。ですから、仮に入社の直前に雇い入れ時健康診断を実施した場合に、その結果だけを理由に採用の内定を覆すことはできません。もし、大きな疾病などが見つかった場合には勤務開始日に就労できるかどうかを考えてください。このような場合には、人事部などの会社側の人だけで判断するのではなく医師に判断を仰ぎ、慎重に十分検討した上で判断するようにしてください。

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雇い入れ時健康診断の費用は誰が負担?

事業主には労働者に対する雇い入れ時健康診断の実施が義務付けられています。重要なことですので、順を追って確認していきたいと思います。まず、安衛法第66条に「事業者は労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の第1項に規定する検査を除く)を行わなければならない」という規定があり、さらに安衛則第43条で下記のような規定があります。

事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合においてその者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない

厚生労働省

そして、厚生労働省の通達「昭和47年9月18日基発第602号」のⅠ法律関係の13健康管理(2)ロに以下のような記載があります。

健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般に対して行なわれる、いわゆる一般健康診断は一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えるとその受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと

厚生労働省

以上のことから、当然に雇い入れ健康診断の費用も事業主が負担すると解釈するのが一般的です。ちなみに、雇い入れ時健康診断の実施時の賃金についての支払い義務はありませんが、これに関しては労使間の協議や就業規則などによって決定すべき事項とお考え下さい。

ただし、雇い入れ時健康診断の円滑な受診を考えると、受診にかかった時間の賃金を事業主が支払うことが望ましいというのが厚生労働省の見解です。その一方で、特殊健康診断は業務の遂行に関して、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断ですので、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要です。両社に関する賃金についての考え方を混同しないようにしましょう。

それから、気になる金額ですがインターネット上で雇い入れ時健康診断にかかる費用を公開している病院などの金額を50件ほど調べてみたところ、だいたい5000円~15000円くらいまで幅広く設定されていました。事業場に医師に来てもらうのか、労働者が医師のいる医療機関に出向くのか、どのような条件で雇い入れ時健康診断を実施するのかで選んでも良いですね。

雇い入れ時健康診断の義務とは

事業主には雇い入れ時健康診断を実施する義務があり、常時使用される労働者にはその受診の義務があります。労働者には雇い入れ時健康診断の受診の義務がありますからその雇い入れ時健康診断自体を拒否することはできませんが、企業の指定した医師以外の健康診断書の提出でも構いません。その健康診断書に必要な項目が足りていることが前提ですが、企業の指定した医師以外の医師の健康診断書の提出で代用できる場合もあります。

事業主は常時使用する労働者に必要な健康診断を受診させなかった場合には、義務を怠ったことに対して50万円以下の罰金が課される場合もあります。それから、健康診断を受診させなかった場合に重大な健康障害が生じてしまった場合等には事業主の安全配慮義務違反が問われ、損害賠償を請求される可能性もあり、労働者の死亡など最悪の場合には損害賠償額も高額になりますし、社会的な信用も失墜することになってしまいます。

とはいえ義務化されているかといって、ただ健康診断だけを実施すれば大丈夫…というわけではありません。

従業員に健康診断を受診させるだけでなく、事後措置の対応が必要です。

実は法令遵守の観点では、実施部分よりも事後措置において重点的に義務が課されています。事後措置の中でも、業務負荷の高い義務を4つについて以下で詳しく解説しています。ぜひご活用ください。

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雇い入れ時健康診断の未受診をなくすには

もし、労働者が事業主の指定する雇い入れ時健康診断の受診そのものを拒否したらどうなるのでしょう。

事業主は、法定の健康診断以外にも業務の種類や必要に応じて労働者に健康診断の受診をさせることがあります。そのような場合に、労働者が合理的な理由がなく健康診断の受診を拒否してしまった場合を考えてみてください。将来、労働者に健康障害が生じた場合には事業主に対する安全配慮義務違反に基づいて損害賠償が請求される際に、過失相殺の対象となる可能性もあります。ただ、健康上の不具合から労災事故が起きる可能性も否めませんので、必要な健康診断は時間をかけて説得してでも受診させるようにしてください。

雇い入れ時健康診断を受診させることは法律上も必要なことですので、業務や日程を調整して、受診しない場合のリスクを丁寧に説明することで未受診者が出ないように注意してください。未受診をなくすために、就業規則などの社内規定に健康診断の受診の義務を規定したり、受診しなかった場合の懲戒処分を設けたりすることも一案です。

ただし犯罪行為ではないため、懲罰の程度は軽いものにするのが一般的です。懲戒処分は事前に明文化してルール化し社内に周知させておくことが必要です。どのような事柄が懲戒の対象になるのか、それに対してどのような懲戒処分が運用されるのかなどを事前に明文化して規定して社内に周知させておかなければ、懲戒処分としては法的に有効になりません。その際の手続きはどうなっているのかをできる限り具体的に記載してください。

雇い入れ時健康診断と採用選考時の健康診断の考え方

雇い入れ時健康診断の目的を考えると、その扱い方に関する注意点も見えてきます。雇い入れ時健康診断の目的は、先ほどお話ししたように常時使用する労働者を雇い入れた際における適正配置、入職後の健康管理に役立てることです。新しく雇い入れた労働者の健康状態に問題がないか、問題があった場合に適切な安全配慮をすることも事業主としては考えなければなりませんね。

しかし、この雇い入れ時健康診断は採用選考時に実施することを義務づけたものではなく、また応募者の採否を決定するために実施するものではありません。雇い入れ時健康診断の規定があることを盾に採用選考時に健康診断を実施しているケースが見受けられるようですが、これは応募者の適性と能力を判断するうえで必要のない事項を把握する可能性があり、結果として就職差別と判断されかねません。

例えば、不要な血液検査などをして結果に問題があった場合などを想像してみると分かりやすいと思います。雇い入れ時健康診断の目的をもう1度確認してみることをお勧めします。なお、こちらに関しては1993年5月に労働省職業安定局業務調査課長補佐・雇用促進室長補佐から各都道府県職業安定主管課長宛に「採用選考時の健康診断について」という事務連絡がされています。ただし、採用前の健康診断が法律上禁止されているわけではありませんから、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で本当に必要かどうか慎重に検討し、業務に必要な最小限の範囲にとどめてください。

さいごに

雇い入れ時健康診断にはいくつか注意すべき点があることをお伝えしましたが、いかがでしたか。雇い入れ時健康診断の結果をうまく使って、適正な人員配置をし、離職率の改善や生産性の向上に繋げていけると良いですね。

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執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。

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