衛生委員会を有効活用
2022年12月16日 更新 / 2019年8月27日 公開

安全衛生委員会の人数構成を解説。メンバーの資格と選出する方法。

全衛生委員会の構成や人数はどうすればいい?

あなたの会社の衛生委員会は、正しい構成員を選べていますか?

常時使用する労働者が50人以上の事業場(支社や工場)をもつ企業では、事業場ごとに衛生委員会(または安全委員会)を設置していますよね。労働災害の防止やオフィス環境の改善のために、労使が一体となって審議するための組織です。

衛生委員会の設置については厚生労働省のよくある質問にて説明されています。しかし、メンバーを選出する際にどんな資格を持っている人をどのように指名するのか、という具体的な方法については解説されていません。

本記事では衛生委員会・安全委員会のメンバーの選出方法や注意点について確認していきましょう。

衛生委員会を設置する目的

安全衛生委員会の課題

事業主は、労働安全衛生法(以下、安衛法)に基づいて、一定の基準(※)に該当する事業場で安全委員会、 衛生委員会(もしくは両委員会を統合した安全衛生委員会)を設置しなければならない義務を負っています。

※ 安衛法の一定の基準とは

今回のテーマでもある安全衛生委員会に関して、安衛法で定められている一定の基準は以下の通りです。

安全委員会又は衛生委員会を設置しなければならない事業場

安全衛生委員会を設置しましょう(PDF)

なお安衛法第19条の規定により、安全委員会及び衛生委員会の両方を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することも認められています。

この安全衛生委員会は安全委員会・衛生委員会の両方の目的を持つものですから、安全もしくは衛生のどちらか片方にだけ偏ることのないようにバランスよく調査・審議をするようにしてください。社内に大きな問題がない場合などは、どうしても労災などに関する審議が増えたり情報の共有などに終始してしまい、衛生に関する事項が後回しになってしまう傾向があるようです。

設置義務・制度の目的

労働災害に関してのニュースを見聞きした方はたくさんいると思いますが、現在でも業種によって違いはあるものの、死亡を含めて重大な労働災害はたくさん起きています。

厚生労働省の資料「平成28年の労働災害発生状況を公表」によると、死亡災害の発生件数は前年を下回り2年連続過去最少、死傷災害の発生件数は前年を上回るそうです。死亡災害の件数は減少してはいるものの、労働災害による死亡者数は928人もいたということや、休業4日以上の死傷災害の発生件数は前年を上回っていたことも併せて発表されています。

労働災害発生状況の推移

厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課 平成28年労働災害発生状況(PDF)

全体として見ると確かに件数は減っていますが、まだまだ数多くの労働災害が発生していることが分かります。国としても労働災害には注視しているようで第12次労働災害防止計画(12次防)(平成25年度から平成29年度)が計画期間を終了して、平成30年4月からは第13次労働災害防止計画が始まりました。

この「労働災害防止計画」とは、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画ですが、労働災害を撲滅させるためには国の対策だけでは不十分です。

長時間労働や過重労働は電通の事件で社会的な大きなニュースにもなりました。この時のニュースで過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)の名前を耳にした方も多いのではないでしょうか。過労死やメンタルヘルス不調者への対策の重要性が増してきたことでストレスチェックの義務化などの動きもありました。

また就業構造の変化及び労働者の働き方の多様化もあり、国の対策だけではなく私たちが自分たちの手で事業場の安全や健康を守ることがより重要になってきました。

労働災害を未然に防ぐためには、労使が協調し必要な調査や審議を適切なタイミングで行うことが重要です。安全衛生委員会は、事業場の安全と衛生を守るために作業やその環境などに関して危険や健康障害がないかなどについて調査・審議するための貴重な機会です。

調査・審議する事項

安全衛生委員会では、以下の事項に関しての調査と審議をします。

[1]労働者の危険を防止し、健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
[2]労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
[3]労働災害の原因及び再発防止対策で、安全衛生に係るものに関すること。
[4]前三号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止、健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

厚生労働省 職場のあんぜんサイト:安全衛生委員会

事業場の労働者に関わる安全や衛生に関する全般に関しての調査・審議をすると考えてください。

開催の頻度

事業主は、労働安全衛生規則(以下、安衛則)第23条の規定によって、安全衛生委員会を毎月1回以上開催しなければなりません。そして、安全衛生委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを3年間保存しなければなりません。

安全衛生委員会の構成メンバーと人数

では以上のようなことを調査・審議するために、事業主はどのような人を安全衛生委員会の構成メンバーにすれば良いのでしょうか。また、何人くらい構成メンバーを用意すれば良いのかについて、衛生委員会や安全委員会と比較しながら見ていきたいと思います。

衛生委員会の場合

  1. 総括安全衛生管理者またはそれ以外の者で、その事業場において事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者 1名(議長)
  2. 衛生管理者 1名以上
  3. 産業医 1名以上
  4. 当該事業場の労働者で衛生に関し経験を有する者 1名以上

事業場の労働者で作業環境測定を実施している作業環境測定士をメンバーに指名することもできます。ただし1以外のメンバーの半数については、その事業場の過半数労働組合(無い場合には労働者の過半数代表)の推薦に基づいて指名しなければいけません。

安全委員会の場合

安全委員会のメンバーは事業者が指名します。

  1. 総括安全衛生管理者またはそれ以外の者で、その事業場において事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者 1名(議長)
  2. 安全管理者 1名以上
  3. 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有する者 1名以上

ただし1以外のメンバーの半数については、その事業場の過半数労働組合(無い場合には労働者の過半数代表)の推薦に基づいて指名しなければいけません。

では、安全衛生委員会の構成メンバーは、誰がどのようにして決めれば良いのかについてお話ししたいと思います。

構成メンバーの規定

安衛法第19条の規定によって、安全衛生委員会の構成メンバーには規定があります。

  1. 総括安全衛生管理者または総括安全衛生管理者以外の者でその事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者の中から事業者が指名した者 1名
  2. 安全管理者及び衛生管理者の中から事業者が指名した者
  3. 産業医の中から事業者が指名した者
  4. 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するものの中から事業者が指名した者
  5. 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するものの中から事業者が指名した者

1以外のメンバーの半数については、その事業場の過半数労働組合(無い場合には労働者の過半数代表)の推薦に基づいて指名しなければいけないということを考えると、例えば、人数は以下のように考えれば良いことになります。

議長(1名)以外のメンバーの半数については、その事業場の過半数労働組合(無い場合には労働者の過半数代表)の推薦に基づいて指名しなければいけないわけですから、

【会社側が指名】 
安全管理者及び衛生管理者の中から事業者が指名した者(1名) 
産業医の中から事業者が指名した者(1名) 
当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するものの中から事業者が指名した者(1名) 
当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するものの中から事業者が指名した者(1名)

【労働者側が指名】 
その事業場の過半数労働組合(無い場合には労働者の過半数代表)の推薦による者(4名)

以上の場合、議長以外の4名ずつを会社側と労働者側でそれぞれ指名したことになりますので、法律上の要件を満たしたことになります。この場合には、この安全衛生委員会の人数は議長を含めて9名になりますね。

構成メンバーの人数に、規定はあるのか?

安全衛生委員会の構成メンバーは、事業主側の都合だけで決められるわけではありません。インターネット上では、安全衛生委員会の構成メンバーの最低数は〇名という諸説が出回っていますが、安衛法上、特に人数の定めはありません

先ほどの安全衛生委員会の構成メンバーの要件を満たしていれば、事業場の規模や作業の実態に応じて独自に決めて差し支えないと厚生労働省の発表(Q5.安全または衛生委員会の人数は何人としたらよいでしょうか?)にもあります。

まず、事業者がその事業場で事業の実施を統括管理する者などの中から一人を指名し、その者が議長となります。次に、安全管理者、衛生管理者、産業医、安全に関し経験を有する労働者、衛生に関し経験を有する労働者の中から、それぞれ、安全衛生委員会の構成メンバー(委員)として事業者が指名します。

ただし、議長となる構成メンバー以外の半数は、労働者の過半数で組織する労働組合(それがない場合には、労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づいて指名しなければいけません。

また、安全衛生委員会の構成メンバーを選ぶ際には〇〇以上など特定の役職以上を選ばなければならないという規定はありませんので、職務上の役職に関わらず適正だと思われる人を選んでください。安衛法上、特に安全衛生委員会の構成メンバーの人数に関しての決まりはありませんから、会社の規模などによって随時決定してください。

なお、あまりにも安全衛生委員会の規模が大きくなりすぎてしまうような場合には安全衛生委員会に下部組織を作って内容によって下部組織で調査・審議をするということもできます。

安全衛生委員会の選出方法

議長

総括安全衛生管理者(※)または総括安全衛生管理者以外の者でその事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者の中から事業者が指名した者が議長になります。安全衛生委員会の議事を進行させる役目を担うので、非常に重要なポジションです。

総括安全衛生管理者がその事業場にいる場合にはその総括安全衛生管理者に、いない場合には「その事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者」から選びますので支店長や工場長、あるいは人事総務部長などを指名すると良いですね。

※ 総括安全衛生管理者とは

事業主は、政令で定める規模の事業場ごとにその事業場の事業の実施を統括管理する者の中から、総括安全衛生管理者を選任しなければなりません。総括安全衛生管理者は、安全管理者・衛生管理者、安衛法第25条2第2項に基づく技術的事項管理者を指揮するとともに、以下の業務を統括管理する義務を負います。

  1. 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
  2. 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
  3. 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
  4. 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
  5. 前各号に掲げるもののほか労働災害を防止するため必要な業務で厚生労働省令で定めるもの

また、総括安全衛生管理者は以下の規模の事業場ごとに配置しなければいけないことになっています。

  1. 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 100人
  2. 製造業(物の加工を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 300人
  3. その他の業種 1,000人

このような人数の要件がありますが、安全委員会や衛生委員会は常時使用する労働者の人数によって設置の義務の有無が違います。

安全委員会又は衛生委員会を設置しなければならない事業場

安全衛生委員会を設置しましょう(PDF)

上記の厚生労働省の資料と総括安全衛生管理者の人数要件には違いがありますので、安全衛生委員会が必要な事業場に必ずしも総括安全衛生管理者がいるとは限りません。ですから、そのような場合には、支店長や工場長、あるいは人事総務部長などを指名するのが一般的です。

安全管理者及び衛生管理者

安全衛生委員会には、安全管理者(※)や衛生管理者(※)の資格を持っている構成メンバーが必要です。事業場にその資格を持っている人がいなかった場合には、人事や総務、あるいは庶務部門の人が資格をとって担当することが多いようです。

衛生管理者は、労働者の健康を守るために、専門的な資格の下で職場の衛生管理全般に関わる人で、事業場の安全衛生業務のうち、衛生に係る技術的事項を管理します。

安全管理者はその事業場の安全にかかわる事項、衛生管理者はその事業場の衛生に関する事項や事業場の毎週1回の定期巡視などを行います。

※ 安全管理者

事業主は、安全管理者について法定の一定の業種について50人以上の労働者を使用する事業場で、有資格者から選任することになっています。安全管理者は事業所に専属の者でなければなりませんが、2人以上の安全管理者を選任する場合で、安全管理者の中に労働安全コンサルタントが選任されている場合には、労働安全コンサルタントの中の一人については専属でなくても差し支えありません。ただし、特殊化学設備を備える事業場で、都道府県労働局長が指定した場合には、都道府県労働局長が指定する生産施設単位ごとに必要な数の安全管理者を選任しなければなりません。また、業種ごとの事業場規模により、安全管理者は事業場専任のものを少なくとも一人選任しなければなりません。

※ 衛生管理者

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、その事業場専属の衛生管理者を選任しなければいけません。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合で、衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいるときは、労働衛生コンサルタントのうち一人については専属でなくても差し支えありません。選任すべき人数は事業場の労働者数に応じて決められています。また、誰でも良いわけでなく、衛生管理者に選任されるためには業種に応じた資格が必要です。

産業医

専門的な見地から事業主に対して意見を述べることができます。安全衛生委員会に必ずしも毎回出席することを義務付けられているわけではありませんが、出来る限り安全衛生委員会に出席してもらうようにしてください。使用者側のメンバーとしてカウントします。

事業場の労働者で、安全に関し経験を有する者の中で事業者に指名された者

その事業場で、安全に関しての経験を持つメンバーです。必ずしも資格は必要ありません。

事業場の労働者で、衛生に関し経験を有する者の中で事業者に指名された者

その事業場で、衛生に関しての経験を持つメンバーです。必ずしも資格は必要ありません。

労働者側の委員

会社側が指名した人数に応じて労働者側でも構成メンバーを決めましょう。

このように、安全衛生委員会の構成メンバーは会社側と労働者側でどちらか一方だけが不利な状況にならないような配慮の下、適正な者を選び、委員会の正常な運営を妨げないようにしなくてはなりません。

議題やテーマに関しても、広く社内から募るなどして、誰もが安全で健康的に就業できるように努めてください。

さいごに

安全衛生委員会の構成メンバーは議長以外の半数は労働者側の推薦に基づいて決めなければなりません。安全衛生委員会の規模が大きくなりすぎる場合には、下部組織を設けるなど必要に応じて随時検討してみると良いですね。

執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。