復職時に必要な「主治医の診断書」は何を意味しているのか

2019.8.27 更新 / 2019.8.27 公開
休職・復職にムリなく対応
復職時に必要な「主治医の診断書」は何を意味しているのか

近年、グローバル化による競争の激化、社会構造の変化など、日本における働く環境の変化により、働く人々のストレス・不安が増加し、メンタルヘルス不調者は増えています。会社においても、メンタルヘルス不調者による休職者は増加しており、人事スタッフはこのような従業員への対応も、業務の一貫として求められています。では、メンタルヘルス不調により休職している従業員から、「主治医の復職可の診断書」を提出された場合、果たして人事は復職を認めなければならないのでしょうか。「診断書」と「意見書」の違い、そして復職における「診断書」の持つ意味を理解し、復職支援に役立てていきましょう。

「主治医」と「産業医」の違いとは

まず、人事スタッフの皆さんは「主治医」と「産業医」の違いを知っているでしょうか?同じ医師という職業でも、役割は大きく違います。○主治医患者の疾患の診療方針全般に対して主たる責任を有する医師のことであり、外来診療や入院診療において診察・診断・治療を行います。○産業医事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師を言います。

大きな違いは、主治医が診察・診断・治療を行うのに対して、産業医は診察・診断・治療は行いません。大企業で会社に診療所がある場合など、中には産業医が診療業務を行うケースもありますが、基本的には診療業務は産業医の役割に含まれていません。産業医の任務は、産業保健や労働衛生に関する専門的知識に精通することで、労働者の健康障害を予防し、また心身の健康を保持増進することを目指した活動を遂行することなのです。

職場における健康管理を行うためには、医学的な知識が不可欠です。そのため労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、産業医の選任が義務付けられています。会社全体の健康管理を行う上で、それぞれの会社の業務内容を把握している産業の意見を取り入れることは、とても重要です。

復職時の「診断書」と「意見書」は何が違うの?

次に、「診断書」と「意見書」の違いについてです。

「診断書」は、医師法で交付が義務付けられている書類であり、診断結果に基づき、診断名や治癒までにかかると想定される期間が記されています。一方で「意見書」は、診断結果に基づいて医師が『~するほうが望ましい』と意見を述べているものを指します。

復職時に必要となる「診断書」と「意見書」は少し特殊なため、確認していきましょう。

診断書

まず、復職時に診断書を作成するのは「主治医」です。

私傷病により休職に入る際には、休職が必要であることを証明するために主治医の診断書が必要ですよね。同じように復職をする際にも、復職が可能な状態か否かを主治医に診断してもらい、診断書に記してもらう必要があります。この復職可の診断書が提出されたら、会社は、復職に向けて本格的に動き出します。

意見書

次に、復職時の意見書を作成するのは、「産業医」です。

休職者より主治医の診断書が提出されたら、次に産業医が復職するにあたり業務遂行が可能かどうかを判断し、「意見書」として事業主に提示します。この意見書をもとに、事業主は復職の最終決定を行うのです。

「主治医による診断書→産業医による意見書→会社が復職を決定」この流れが重要であることを押さえておきましょう。

復職の診断書はどういう意味があるの?

では、主治医が作成する「復職可の診断書」には、どのような意味があるのかを確認していきましょう。

●会社には安全配慮義務により、従業員が安全・健康に働くことができるように配慮する義務があります。そのため従業員の健康状態が労働できる状態かどうかを把握した上で、就業させなければならないのです。患者の病状を一番理解しているのは、主治医です。なので主治医の就業可の診断をもらうことは、安全配慮義務を満たす上で必要不可欠です。

●会社に安全配慮義務があるように、従業員には自己保健義務があります。自己保健義務では、労働をするにあたり自身の健康・安全を確保するために、従業員自身も健康管理・安全への配慮を行わなければならないと定められています。

従業員が私傷病により十分な労働提供ができない健康状態に陥った場合、会社はその状態が継続していると考えるのが通常です。そのため、求められる労働が提供できる健康状態に回復したのであれば、従業員自らが会社にそのことを明らかにする必要があります。そして、それを明らかにする手段として、主治医の診断書の提出が有効といえるのです。

「復職可の診断書」の意味を理解する上で、間違えやすいポイントが、「主治医が復職可と言っても復職決定ではない」ということです。復職を決定づけるためには3つの安定が不可欠です。1つめは、疾病の安定性。2つめは、日常の安定性。3つめが業務の安定性です。

主治医の診断は、あくまで休職に至った疾病の症状が安定しているのかどうかを証明しているにすぎません。従って1つめを証明するものになります。

2つめの日常の安定性をしっかりと確認される主治医もいますが、残念ながら確認できていない主治医も多くいらっしゃいます。だからこそ直近の生活リズム表を最低でも2週間記載してもらうことで日常の安定性をチェックすることができます。

このように主治医の復職可の診断書は、就業して仕事を遂行できるかの判断とは別物です。実際に就業するためには、主治医の診断をもらった後、産業医が医学的な考え方をもとに、その会社の業務が遂行できるかどうかを見極める必要があるのです。「主治医の就業可の診断書≠就業可」であることをしっかりと理解し、産業医の意見をもとに、会社が復職できるかの決定をするようにしましょう。

産業医が復職時にみるべき業務遂行性に関してはこちらを参照ください。→復職に必要な「業務遂行性」3つのチェックポイント

診断書のみでは復職の判断ができない場合や、主治医の診断に不透明な部分があり十分な信頼ができないと会社側が感じた際は、本人の同意を得て主治医と面談をしたり、会社が指定した医師への受診を指示し、再判断を依頼することもできます。しかしこれは、このようなケースがあることを、あらかじめ就業規程で定めていることが前提となるため、自身の会社の就業規程に記載されているかをチェックしておきましょう。

さいごに

大規模な事業所では専属の産業医がおり、常に産業医の支援が受けられるところもあるでしょう。しかし、多くの会社は嘱託産業医の意見のもとに、人事スタッフが職場復帰において大きな役割を担っているのが現状です。そのため人事スタッフにも産業保健の知識が求められています。「休職」「復職」に関しては判断・対応が難しいケースも多く見られるでしょう。主治医と産業医の違いを理解したうえで、産業医とうまく連携をとり、健康経営に役立てていきましょう。

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