産業医の安全衛生委員会で役割とは? とりあえずいればOK?

2019.9.9 更新 / 2019.9.9 公開
衛生委員会を有効活用
産業医の安全衛生委員会で役割とは? とりあえずいればOK?

ストレスチェックが義務化されて、嘱託産業医と契約した企業も多いと思いますが、産業医は安全衛生委員会でどんな役割を持っているのでしょう。今回は産業医の安全衛生委員会での仕事をチェックしてみましょう。

言葉の定義

今日のお話を進めていくうえで、キーワードになるいくつかの言葉についての定義を最初にお話ししておきたいと思います。

産業医とは

企業と契約して、事業場で労働者の心身の健康管理を行う医師のことで、労働者の健康管理などに関して、医師としての専門的な立場から指導・助言を行います。労働安全衛生法第13条で、常時使用する労働者が50人以上のすべての事業場には産業医の選任義務を、常時使用する労働者が1,000人以上の事業場と有害な業務に常時500人以上の労働者を使用する事業場には専属の産業医の選任義務が規定されています。

産業医は、事業場における労働者の健康管理などを行うための専門性を持っていなければいけません。ですから、単に医師であるだけでは産業医としての要件は満たしているとは言えません。労働安全衛生規則第14条第2項に詳細な規定はありますが、以下の要件を満たして初めて産業医を名乗ることができます。

その1) 厚生労働大臣の指定する法人が行う労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修を修了していること 
その2)  産業医科大学その他の大学(産業医の養成などを目的とする医学の正規の課程を設置)で厚生労働大臣の指定するもので正規に課程を修めて卒業し、その大学の実習を履修していたこと 
その3) 労働衛生コンサルタント試験(試験の区分が保健衛生)に合格した者であること 
その4) 学校教育法に規定する大学で労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授もしくは講師(常勤勤務)の職にあるか、あった者 
その5) 以上の他に、厚生労働大臣が適当と認め定めた者

以上の要件を満たしていなければなりません。

必要な過程を履修し、専門的な知識を身に着けているからこそ、事業場における労働者の健康管理などに関わっていくことができるのです。

厚生労働省の平成22年労働安全衛生基本調査の概況(PDF)によると、産業医を選任している事業所で実際に産業医に安全衛生委員会(衛生委員会も含む)に参加してもらっている事業場は企業の規模に比例しているようです。せっかく契約している産業医の専門的な知識をもっと活用し、より安全で衛生的な就業環境を整えられるようにしましょう。

統計から分かる実際に産業医が担った役割は以下の通りです。

  1. 健康診断の実施に関すること
  2. 健康診断結果に基づく事後措置・再発防止措置の指導
  3. 健康管理計画の企画・立案の指導助言
  4. 健康相談・保健指導等の実施
  5. 労働者の健康障害の原因の調査
  6. 作業環境に関する医学的な評価、又は必要な措置の勧告指導
  7. 衛生委員会(安全衛生委員会)への参加
  8. 長時間労働者への面接指導の実施
  9. メンタルヘルスに関する相談
  10. 労働者の健康情報の保護に関する相談
  11. 職場巡視

安全衛生委員会とは

安全衛生委員会とは、簡単に言うと、安全衛生に関する労働者の意見を聴くための機会です。事業主は安全委員会と衛生委員会を設置しなければならないときに、それぞれの委員会を個別に設置することに代えて安全衛生委員会を設置することも認められています。

労働安全衛生法(以下、安衛法と言います。)では、第13条で、常時使用する労働者が50人以上のすべての事業場には産業医の選任義務を、常時使用する労働者が1,000人以上の事業場と有害な業務に常時500人以上の労働者を使用する事業場には専属の産業医の選任義務が規定されている他にも、事業場での安全衛生を確保するための安全衛生管理体制を整えることが義務付けられています。もちろん、事業主がどんなに頑張ってもそこで働く労働者に安全衛生に関する意識が足りなければうまくいくはずはありません。労働者が事業場での安全衛生に自ら関心を持ち、意見を言う機会も必要ですね。そんな労働者の安全衛生に関する意見などを反映させる機会として安全員会、衛生委員会、それからこれらを一緒にした安全衛生委員会があります。

労働安全衛生規則(以下、安衛則と言います。)第23条1項で、事業者は毎月1回以上の上記の委員会を開催しなければいけないこと、委員会の議事録を3年間保存しなければならないことが義務付けられています。

この安全衛生委員会での審議事項として、時間外・休日労働時間の状況、産業医による面接指導の実施状況、面接指導のフォロー結果、年次有給休暇の取得状況、定期健康診断の結果、衛生管理者・産業医巡視結果の報告などがあります。

では、この安全衛生委員会で産業医はどのような仕事をし、どのような役割があるのでしょうか。

産業医は安全衛生委員会で何をするのか?

安全衛生委員会への出席と積極的な関与

安全衛生委員会は、毎月1回以上の実施が義務付けられています。産業医は、安全衛生委員会に出席して、その構成員として専門的な立場から事業場の労働者のために、安全衛生上で必要な措置について意見を出します。特殊検診のルール作りや、安全衛生に関する規定の作成、作業環境測定の結果の評価と対策に関する審議、疾病の予防活動に関する審議などにも産業医が参画することが理想的です。産業医が出席しても発言の機会がないと安全衛生委員会の不活化につながります。ですから、どうしても産業医の都合がつかない場合には、事前に議題を見せて意見を聴いておくことも不活化の予防になります。

産業医は多忙のため、毎月の安全衛生委員会に出席することが難しいケースがよくあります。他の事業場とも嘱託産業医契約をしていることも多いようですが、もともとの自分の医師としての勤務もあり毎月の安全衛生委員会の出席にまで手が回らないという事情があると聞きますが、忙しい産業医の予定をなんとか押さえたいのは各社の担当者が思っていることではないでしょうか。

事業場の巡視と同じ日程で安全衛生委員会を開催するなどして、産業医に参加してもらいやすいタイミングをお勧めします。それから、産業医との契約の際には安全衛生委員会の所要時間なども含めて契約書に盛り込んでおきましょう。産業医に議事録だけ渡して目を通してもらっているという企業もあるようですが、それでは安全衛生委員会で産業医の意見を聴くことはできません。安全衛生委員会の趣旨から考えても議事録を渡すだけではなく、ぜひ産業医に出席してもらい議事に参加してもらうようにしましょう。欠席の状態化が起きないようにしてください。

安全衛生委員会では、産業医に専門的な立場からの発言を中心に積極的に意見を出してもらうようにします。例えば、産業医による面接指導の実施状況の報告などにとどまらず、特に過重労働対策では産業医に積極的に関わってもらえるようにしたいものです。それから、労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS:DCAサイクルによってその事業場の安全と衛生の水準を高めることを目的にした安全衛生管理の仕組み)にも積極的に関与してもらってください。

過重労働に関しての問題点に労使が共通認識を持てるように専門的な立場から過重労働の何がどのように問題なのかを説明してもらうのも良いでしょう。そして、過重労働対策を事業場内に周知させるための協力を仰いでください。産業医には積極的な発言をしてもらえるようにしておきましょう。

これらと併せてストレスチェックやメンタルヘルス対策に関して面接指導の全体的な結果を産業医から説明してもらい、労働者のメンタルヘルスの保持や増進に関しての意見も聴くようにしてください。

安全衛生講話や健康講話

安全衛生委員会や事業場で、労働者の健康管理や安全衛生管理について産業医や産業保健スタッフが労働者に向けて話す研修を安全衛生講話と言います。時期に応じて産業医に講話の内容をリクエストするのもお勧めです。インフルエンザや熱中症など職場でも防ぎたい疾病についてなど、労働者も興味を持てる内容での講話だと聴きやすいですね。

最近では働き方改革の推進もあり、企業や労働者自身の健康への興味が以前よりも高まってきています。そのような中で、労働者に対して健康に関する教育の一環として企業からの依頼に応じて産業医がその事業場に適した衛生講話を行います。ただ、法的に規定されているものではありませんから企業に安全衛生講話の実施義務も内容に関しても規定はありません、企業の自発的な意思によるところが大きいのですが、労働者が自らの心身の健康状態への関心を高めるきっかけにもなりますので、できれば実施したいところです。

<企業の準備>

研修をするための時間の確保、場所の確保をしましょう。出来るだけ多くの労働者が参加できるように、講話に関して告知方法も検討して準備してください。

事業場の巡視に関する報告

産業医は、基本的に毎月1回以上(※)の割合で事業場を訪問して、事業場の巡視をします。多くの場合には、安全衛生委員会の開催日にまとめて事業場の巡視を行って、産業医の仕事が1日で終わるように配慮しているように思います。

この巡視を通して、産業医は自分の目で労働者が就業する事業場の環境を確認した上で専門的な知識の下で問題点や改善点を見つけて、指導したり助言したりします。産業医による事業場の巡視は一人で行っても構いませんが、できれば安全衛生スタッフや設備の担当者、産業看護師、現場の責任者などが一緒に回ると普段の様子も聞くことができます。

事業場の巡視は悪い部分を指摘することだけではありません。安全衛生などに関して工夫されている部分や他のお手本になるような部分に関しても評価をするようにお願いしてください。また、できれば現場の責任者と産業医が巡視中に会話をすることで、現場の生の声や本心や悩みなどを聴くことができますので、産業医には積極的な会話をするように依頼しておきましょう。
巡視の際のチェック項目は事業場によっても異なりますが、設備、作業場所・方法に危険がある場合の措置の実施や安全装置、保護具等の設備・器具の点検、温度や休憩室やトイレなどの衛生状態、照度、4S(整理、整頓、清掃、清潔:必要なものだけが置かれ、必要なものがいつも同じ場所にあり、必要なものが清潔な状態であり、いつでも職場がその状態で作業者の身体や服装がきれいであるという状態にする活動のこと)などは、どこの事業場でも共通してチェックしています。

<企業の準備>

事業場の巡視の関係者の予定を調整して産業医と一緒に事業場を回ることができるように準備しておきましょう。また、事業場の巡視計画を作成し目的や重点的にチェックしておきたいことなどを漏れがないように、また、産業医に明確に伝わりやすくなるようにしておいてください。これに併せて、チェックリストなどを用意できるとより充実した事業場の巡視が実施できます。

※産業医の事情場への巡視の回数について

平成29年3月31日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について」(基発0331第68号)という通達が出され、条件付きですが、産業医の事業場への巡視は2カ月に1回になりました。産業医の事業場への巡視回数の変更に関する詳細については別記事の「通達あり!! 産業医の巡視の規定が変更されました」でお話ししていますが、事業主側が必要な情報を産業医に提供することと、回数の変更に事業主が同意することが必要です。

さいごに

産業医は専門的な知識を武器に事業場の安全や衛生に関する力強いサポーターになってくれます。安全衛生委員会の不活化の防止にもなりますので、産業医の知識も存在も大いに活用していけるといいですね。

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