派遣社員の健康診断は、派遣先企業が負担すべき?3つのケースに分けて解説

2021年4月1日 更新 / 2021年4月1日 公開
健康診断の効率化

「派遣社員の健康診断は、派遣先が費用負担するのか知りたい」
「派遣社員の健康診断を怠ることで、法的なペナルティを受けないか不安」
と思うことはありませんか。

健康診断は「労働安全衛生法 第66条および労働安全衛生規則 第44条」により、年に1度の実施が義務づけられています。

もし健康診断の実施や労基署への届出を怠ると、最悪の場合「書類送検」される可能性もあるので注意が必要です。

しかし派遣社員の健康診断をどこが費用負担すべきかは、場合によって異なるもの。そこで

  • 派遣元企業、派遣先企業どちらが健康診断を実施すべきか
  • 全てのケースで、派遣元企業が派遣社員の健診費用を負担するのか
  • そもそも健康診断に必要なコストとは何か

の流れで、派遣社員の健康診断ついてまとめて解説します。

なお、記事の後半では「もし派遣社員が健康診断を受診拒否したら、どのように対応すべきか」「そもそも健康診断の費用はどれくらい必要なのか」といった、よくある質問と回答も紹介しています。

健康診断についてお悩みの方は、ぜひ最後までご一読ください。

派遣社員には、派遣元企業・派遣先企業どちらが健康診断を受診させるべき?

派遣社員は、派遣元企業と労働契約を結んでいます。そのため、「労働安全衛生法 第66条」によって定められている「健康診断の実施義務」は派遣元企業に発生します。よって派遣先企業が派遣社員の健康診断まで実施する必要はありません。

健康診断を受診させる義務が発生するのは、以下2つの条件を満たした労働者です。

1.契約期間・無期契約労働者
・有期契約で契約期間が1年以上の労働者
・有期契約の更新により1年以上使用される予定のある(または使用されている)労働者
2.労働時間・1週間の労働時間が通常の労働者の所定労働時間の3/4以上の労働者

つまり「社会保険の適用者」であれば、派遣元企業は派遣社員に対して健康診断を実施する義務が発生します。

一方で、企業には労働契約法 第5条に定められている「安全配慮義務」があります。安全配慮義務は派遣元企業だけでなく、派遣先企業にも発生する点に注意が必要です。

つまり、派遣先企業は、

  • 派遣社員の健康診断まで実施する必要はない
  • ただし労働契約法の「安全配慮義務」は発生する
  • よって派遣社員が「健康で安全に働ける環境」の整備が必要

ということです。

このように、健康診断の実施費用は基本的に派遣元企業が負担します。しかし場合によっては派遣先企業が健康診断費用を負担するケースもあるので、詳しく見ましょう。

健康診断は、「派遣社員」「派遣元企業」「派遣先企業」の誰が費用負担となるのか

健康診断には、定期健康診断以外にも色々種類があります。ここでは、費用負担が分かれる次の3つのケースに分けて、理由や違いについて解説します。

  • 定期健康診断:派遣元の会社負担
  • 雇入れ時の健康診断:派遣元の会社、もしくは従業員の個人負担
  • 特殊健康診断:派遣先の会社負担

1つずつ詳しく見ていきましょう。

定期健康診断の場合【派遣元企業の負担となる】

健康診断名負担
定期健康診断派遣元企業

定期健康診断の場合、派遣社員の健康診断費用は派遣元企業の負担となります。

定期健康診断とは、1年に1度実施が義務付けられている健康診断のこと。週30時間以上(正社員の労働時間の3/4以上)働く労働者に対し、健康診断を行う必要があります。

また、派遣元企業事業場の人数が、派遣社員を含めて50人以上になる場合は「健康診断結果報告書」を労基署に提出する義務も。こういった健康診断の受診後の事後措置も含めて、派遣元企業が実施します。

ちなみに健康診断の実施費用は、都道府県や健診機関・クリニックによって異なります。

「詳細な健康診断の費用を知りたい」という方は、以下の記事をご一読ください。

また派遣社員を派遣先企業が迎える場合に実施する「雇入れ時の健康診断」は、費用を社員の個人負担とするケースも。具体的にどういうことか、見ていきましょう。

雇入れ時の健康診断の場合【個人負担とすることも】

健康診断名負担
雇入れ時の健康診断・派遣元企業
・派遣社員(健康診断書の提出により、個人負担となるケースも)

派遣元企業が労働者を採用する場合、「雇入れ時の健康診断」を実施する必要があります。派遣元企業もしくは社員個人があらかじめ健康診断を受診するため、派遣先企業は費用を負担する必要はありません。

派遣社員の「雇入れ時の健康診断」については、以下の2パターンがあります。

1.社員に対して健康診断書の提出を求める
→費用は「個人負担」もしくは「後払いで派遣元会社が負担」

2.入社した後に健康診断を実施する
→費用は「派遣元の会社負担」

入社前に健康診断を実施する場合、費用は派遣元企業もしくは社員個人の負担となるため、派遣先企業が健康診断の費用を負担する必要はありません。また入社後に健康診断を実施する場合も、実施費用は派遣元企業の負担となります。

ただし「有害業務に常時従事する派遣労働者」の場合は「特殊健康診断」を実施する必要があり、費用は派遣先の会社負担となります。具体的にどういうことか、詳しく見ていきましょう。

特殊健康診断の場合【派遣先企業の負担となる】

健康診断名負担
特殊健康診断派遣先企業

放射線業務や高圧室内作業などの業務に常時従事する派遣労働者の場合、派遣先企業の負担で特殊健康診断を実施する必要があります。なぜなら、厚生労働省により、以下のように定められているからです。

 特殊健康診断は、派遣先の義務となっていますので、健康診断に要する費用は派遣先の負担となります。

厚生労働省「派遣元が実施すべき事項

特殊健康診断とは、労働安全衛生法 第66条に定められた有害業務に従事する労働者などを対象に行われる健康診断のこと。

【特殊健康診断の対象となる労働者】

a)有害業務に常時従事する派遣労働者に対する特殊健康診断
① 高圧室内作業等にかかる業務
② 放射線業務
③ 一定の特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務
④ 製造等禁止物質を試験研究のため製造し、又は使用する業務
⑤ 石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務
⑥ 鉛業務(遠隔操作によって行う隔離室におけるものを除く)
⑦ 四アルキル鉛等業務(遠隔操作によって行う隔離室におけるものを除く)
⑧ 屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部等の場所において一定の有機溶剤を製造し、若しくは取り扱う一定の業務

b)一定の有害業務に常時従事した後、配置転換した派遣労働者に対する特殊健康診断

厚生労働省「製造業における派遣労働者に係る安全衛生管理マニュアル

派遣労働者がこれらの業務を行う場合、特殊健康診断の実施は義務であり、費用負担および実施は派遣先企業となります。

まとめると、

  • 派遣元企業が負担:一般健康診断(定期健康診断、雇入れ時の健康診断など)
  • 派遣先企業が負担:特殊健康診断(じん肺健康診断、鉛健康診断など)

といった違いがあるので、注意しましょう。

ここまで聞いて、「健康管理を徹底するために、派遣社員も含めて自社で健康診断を実施したい」と考えている方もいるのではないでしょうか。そこで次に「派遣社員に健康診断を受けてもらうときによくある4つの疑問と回答」をご紹介します。

派遣社員に健康診断を受けさせるときよくある4つの質問

派遣社員に健康診断を受けてもらうとき、よくある疑問は以下の4つです。

  • 健康診断費用はどれくらいか
  • 健康診断中も賃金を支払う必要があるのか
  • 派遣社員は健康診断の受診を拒否した場合はどう対応すべきか
  • 健康診断を効率的に実施するにはどうするべきか

1つずつ詳しく見ていきましょう。

【質問1】健康診断費用は、どのぐらいかかるの?

健康診断の費用は地域や健診機関によって差があり、定期健康診断であれば7,000円から受診できることもある一方、12,000円ほど必要になる場合もあります。

「実際に健康診断を実施する場合の、料金相場を知りたい」という方は、以下の記事をご一読ください。

一方で「派遣社員の多くは時給制、健康診断の受診中も会社は賃金を支払うべきなのか」と悩んでいる方もいるでしょう。実際のところどうなのか、詳しく見ていきましょう。

【質問2】健康診断の間も賃金は支払うべき?

派遣社員に健康診断を受診させる場合、健康診断の検査費用は派遣元企業が負担します。なぜなら派遣元企業と派遣社員は契約を結んでおり、健康診断の受診は派遣元企業の義務となっているからです。

しかし、健康診断の受診中は労働時間とはみなされないため、賃金(時給)まで払う義務はない点に注意が必要です。

参考:健康診断受診時の時給は発生しますか?

なお、派遣先企業は検査費用・賃金どちらも支払う義務はありません。

一方、派遣社員でも特殊健康診断を受ける場合は、派遣先企業が賃金を支払う必要があります。他にも、健康診断の内容などによって費用負担すべきか迷うケースがあるのではないでしょうか。

たとえば、

  • 定期健康診断 + オプション検査の場合
  • 人間ドックで代用する場合
  • 再検査を受ける場

など。以下で詳しく解説しているので、ご一読ください。

また、健康診断の受診をお願いしたとき、拒否されてしまうことも。具体的な対策について、詳しく見てみましょう。

【質問3】派遣社員に健康診断を拒否された場合は、どうすればいいの?

派遣社員の健康診断の受診は、派遣元企業の義務(労働安全衛生法 第66条)です。しかし法律で定められた義務だからと言って、一方的に懲戒処分とするのはよくありません。

なぜなら拒否するには理由があり、それを聞かずに懲戒処分などにしてしまうと、「何のために産業医がいるのか」と労基署に指摘されてしまう可能性があるからです。

もしも派遣社員に健康診断の受診を拒否された場合は、産業医に相談したうえで、従業員にヒアリングを行いましょう。

健康診断を拒否された場合の対応手順

  1. 産業医に相談し、判断を仰ぐ
  2. 従業員に対してヒアリングを実施
  3. 産業医の判断で問題なしの場合は、内容を記録を残して終了
  4. ただし受診が必要と判断した場合は、労基署に相談
  5. 労基署からの回答をもとに対応し、記録に残して終了

労基署に確認するときは、「産業医に健康診断の受診をした方が良いと言われたが、受診を拒否している従業員(派遣先企業で仕事している従業員)がいる。

業務上の指示と伝えても受診してもらえない場合、懲戒処分などをしても法律上問題がないか?」といった、「法律上問題がないか」といった視点で質問をしましょう。

また「レントゲン検査を拒否する」「胃カメラを拒否する」など、ケースごとの対応方法を知りたい場合は、以下記事もご一読ください。

実際に健康診断を実施すると、健康診断の受診前後の業務が多く負荷がかかるもの。そこで、健康診断の業務を効率化する方法についても見ていきましょう。

【質問4】健康診断の業務を効率化する方法はないの?

健康診断は「クリニックを予約して、従業員に健診を受けさせる」だけでなく、以下のような業務が発生します。

よって健康診断には、費用だけでなく人的コストも発生します。とくに健康診断後に必要な「事後措置」は、業務をペーパーレス化していないと「有所見者の特定」や「就業判定」などに時間がかかるもの。

たとえば紙ベースで健康診断の結果を確認する場合、「有所見」となった人を把握するだけでも時間がかかります。健康診断の業務は、従業員数が増えるほど手間がかかるもの。

また事後措置を怠ったり実施したことを証明したりできないと、臨検で是正勧告されるリスクもあります。具体的に必要となる事後措置については、以下をご一読ください。

健康診断を効率化するには、

  • 健診代行業者の利用
  • 健康診断業務のペーパーレス化

が有効です。それぞれ、次のようなメリットがあります。

■「健診代行業者の利用」で効率化できる健康診断業務の例

  1. 健診機関・クリニックの選定、支払い、補助金申請などを代行し、人的コストを削減可能
  2. 従業員へ受診日ヒアリングを行い、健診スケジュールの調整を代行可能
  3. 残業時間、ストレスチェック、産業医面談の記録をシステムで管理可能

■ペーパーレス化で効率化できる健康診断業務の例

  1. 結果がデータで届くため、自動的に個人票の作成を保管
  2. 結果を1枚ずつ確認しなくても、労基署報告書の作成を時短
  3. 履歴を確認しやすくなり、産業医面談の準備を効率化

「健康診断業務の外部委託を検討している」という方は、以下で健康診断代行について詳しく解説しております。ぜひご一読ください。

一方で「健康診断業務をペーパーレス化したいが、どのように実現すれば良いのか分からない」という方は、こちらをご一読ください。

まとめ:企業側は派遣社員の健康診断を行う必要あり

今回は、派遣社員の健康診断は実施する必要があるのか、また費用負担は派遣先企業がするのか、などについて解説しました。最後に派遣社員への健康診断について、重要事項をまとめます。

  • 派遣社員への健康診断について
    • 派遣社員への健康診断は、条件によっては実施が必要
    • 一般健康診断は派遣元企業が実施(実施のみ派遣先企業が行うケースも)
    • 特殊健康診断は派遣先企業が実施
  • 健康診断の費用負担について
    • 健康診断の費用は、基本的に派遣元企業の負担
    • ただし特殊健康診断の場合は、派遣先企業が負担
  • 派遣社員への健康診断でよくある質問への回答
    • 健康診断費用は地域や健診機関によって異なる
    • 健康診断を受診拒否された場合は、産業医と相談のうえ対応する
    • 健康診断業務の効率化には「健診代行業者の利用」もしくは「業務のペーパーレス化」が効果的

派遣社員の健康診断は、派遣元企業が必ず実施する義務(労働安全衛生法 第66条)があります。

また、派遣元企業の事業場の人数が50人以上(派遣先に常駐している社員を含めて)になる場合は、「健康診断結果報告書」を労基署に提出する義務も。

そのため、期限内に確実かつ正確に健康診断を済ませる必要があるもの。

ただし健康診断は「健診クリニックに予約をするだけで終わり」というものではなく、以下の業務へ対応しなくてはなりません。

これらの業務対応には時間がかかり、社内の人的リソースが取られるもの。健康診断の業務負担を減らすには、システムを活用して業務効率化するのがおすすめです。

「自社で効率化できる健康労務が何なのか明確化していない」という場合も、相談が可能です。以下からお気軽にお問い合わせください。

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